半導体製造のダイシング(切断)やグラインディング(研削)工程において使用される精密加工装置で世界的に高いシェアを持つディスコ。半導体チップの製造に不可欠となる「極めて細かく正確」にKiru(切削)Kezuru(研削)Migaku(研磨)技術を提供している。

ディスコのユニークなポイントは、精密加工装置メーカーでありながら、装置制御ソフトウェアや社内システムの内製化にこだわり、ソフトエンジニアの活躍の場を広げ続けていることだ。自身もソフトエンジニアとしてキャリアをスタートさせた同社 代表執行役社長 関家一馬氏をはじめ、さまざまな立場のソフトエンジニアたちに、ディスコならではのエンジニア文化と同社が求める人材像について話を聞いた。

世界最先端の技術開発を支えるソフトウェア──ディスコがソフトエンジニアを重視する理由

ディスコにおけるソフトエンジニアの活躍の場は多岐にわたる。装置を高精度に制御するためのソフトウェア開発、複数の装置を連携させるシステムの構築、センサーデータの収集・分析、さらには工場の生産管理システムの開発まで、メカ・エレキ・ソフト三位一体の開発体制があってこそ、世界最先端の製造装置が実現できる。

(写真)関家一馬氏

株式会社ディスコ
代表執行役社長 関家 一馬 氏

「装置製造において、メカニカルの性能だけでは十分ではありません。どんなに優れた機械でも、制御するソフトウェアに問題があれば装置は正しく動作しません。逆に、優れたソフトウェアがあれば、同じ機械でもより高い性能を引き出すことができるのです」と語るのは、技術開発部門でのキャリアを重ね、2009年からディスコの社長を務める関家氏だ。自身も中学時代からプログラミングに親しみ、大学時代にはソフトウェア開発のアルバイトで実績を重ねてきた経験を持つ。ディスコへ入社後も一貫して技術開発の最前線に携わってきた。

「ソフトウェア開発は、開発段階での投資はもちろん必要ですが、ハードウェアと比べると生産段階でのコストを抑えることができます。お客さまにとって重要なのは装置の機能そのものであり、それがソフトウェアで実現されているか、ハードウェアで実現されているかは問題ではありません。優秀なソフトエンジニアがいれば、多くの機能をソフトウェアだけで実現できる。これは競争上の大きな優位性につながります」(関家氏)

(写真)T氏

株式会社ディスコ
技術開発本部 ダイサー技術部 T氏

2006年の入社以来、18年以上ソフトウェア開発に携わり、現在はセンサーや画像処理システムの要素技術開発に取り組むT氏は、同社入社の決め手について次のように説明する。

「ソフトエンジニアがいても、下請け会社のスケジュール管理や要件定義のみ行っている会社があることは、大学時代から知っていました。自社でコードを書いているというのが会社探しの条件でもありました。また、自社に世界的に高いシェアを持っている製品があることも重要だと考えていました」(T氏)

実際に、半導体の高度な加工分野で、ディスコは世界シェアのトップを取っている。同社が開発している技術は、世界最先端の半導体製造を支えているのだ。「私たちが開発している技術は、常に数世代先を見据えています。たとえば、世界中の人々が待ち望む次々世代スマートフォンの製造に必要な技術を、私たちは何年も前から開発しているのです」とT氏は胸を張る。

内製化にこだわるからこそ実現できた、自律的な組織運営

ディスコの大きな特徴は、半導体製造装置の制御ソフトウェアから社内の業務システムまで、すべてのソフトウェア開発を自社内で完結させていることだ。多くの装置メーカーでは、機械系エンジニアと電気系エンジニアは自社で抱える一方、ソフトウェア開発は外注する傾向にある。しかし、ディスコではすべての開発を自社で行うことにこだわっているという。それは「自分たちでつくる」という強い信念があるためだ。

社内通貨「Will」を用いた独自の管理会計制度「個人Will会計」も、社内で開発したシステムが支えている。個人Willは、業務やサービス、備品などをWillという単位で金額換算し、社員一人ひとりが収支を管理する仕組みだ。関家氏は、この革新的なシステムが実現できた背景を次のように説明する。

「多くの企業は基幹システムの開発・運用を外部に依存していますが、私たちは会計システムも含めて内製化にこだわってきました。だからこそ、個人Willという新しい発想を具現化できたのです。情報システム部門が最初のバージョンを3カ月ほどで作り上げ、その後も現場の声を聞きながら改良を重ねています。外注していれば、変更のたびに膨大なコストと時間がかかり、このような柔軟な運用は実現できなかったでしょう」(関家氏)

この「すべてを自分たちでつくる」という姿勢は、ディスコのソフトエンジニアの強みとなっている。製造装置の開発では最先端の制御技術に挑戦でき、社内システムの開発では革新的な仕組みを生み出せる——。どちらの領域でも、エンジニアは自らの手でソフトウェアを作り上げ、改善を重ねていく。

エンジニアの自律性を支える個人Will

(写真)Y氏

株式会社ディスコ
技術開発本部 ダイサー技術部 Y氏

個人Willの仕組みは、エンジニアの働き方にも大きな影響を与えている。個人Willによって、エンジニアは自身の貢献を定量的に把握できるだけでなく、より主体的なキャリア形成が可能になった。この制度はエンジニアの自律性を促す独自の仕組みも備えている。それが、「社内オークション制度」だ。多くの業務がオークション形式で公開され、社員は「これくらいのWillで担当したい」という希望を出して仕事を獲得していく。2020年に中途入社し、現在はグラインダーのソフトウェア開発に携わるY氏は、この制度の効果をこう評価する。

「ディスコの大きな特徴は、社員一人ひとりの意志が尊重されることです。数年後のキャリアが決まっているような会社ではなく、自分次第で未来を切り開いていける会社だと思います。個人Willは、一般的な会社にはない制度ですが、自分にはとても合っています。成果が数字として現れ、定量的に判断・比較できるので、自分のがんばりが見えやすく、それが個人のモチベーションにもつながっています」(Y氏)

(写真)N氏

株式会社ディスコ
技術開発本部 ダイサー技術部 N氏

2020年に新卒入社し、現在は複数のダイサーを連携させるシステムを開発するN氏も、個人Willがもたらす効果について「部署の枠を超えて仕事を選べるため、自分の興味のある分野にチャレンジする機会も多くあります」と説明する。実際にN氏は、その仕組みを活かして新たな挑戦も行っている。

「通常の業務とは別に、ウェーハの新しい切断方法の検証に取り組む機会がありました。これは上司から指示されたものではなく、純粋に自分たちの発案でした。同期をはじめ社内のメンバーと協力して検証を重ね、最終的にはその技術を実際のお客さまに導入することができました。このように、自主的な取り組みが実際のビジネスにつながる可能性も広がっています」(N氏)

"職人"としてのキャリアパスも歩める、エンジニアとしての成長環境

ディスコでは、新卒入社の社員向けに「アプリケーション大学」という独自の研修制度を設けている。新人研修を修了するとアプリケーション大学に配属され、ディスコの事業ドメインである「高度なKiru・Kezuru・Migaku技術」の核ともいえるアプリケーション技術について学ぶ。さらに、興味のあるさまざまな部署の実務も並行して経験することができる。そのなかで希望の配属先を探し、部署との合意を得ることで配属が決まっていくという流れだ。

N氏はアプリケーション大学の意義について、「アプリケーション大学では、装置の基本を徹底的に学びます。これは単なる研修ではありません。私たちのお客さまは、装置を実際に使用される方々です。そのため、私たちエンジニアも、お客さまと同等以上の知識と技術を持っている必要があるのです」と語る。

さらに、ディスコの特徴的な点として、管理職だけでなく、技術を極めるキャリアパスが確立されていることが挙げられる。「ディスコには、技術を極める『職人』としてのキャリアパスがあります。管理職への昇進だけが評価されるのではなく、専門技術を追求し続けることも正当に評価される。そして、それを評価する仕組みもしっかりと整備されているのです」とT氏は強調する。

求められるのは、主体性と技術への情熱

では、ディスコはどのような人材を求めているのだろうか。関家氏は次のように語る。

「生きていくために仕事は必要ですが、どうせやるなら楽しいほうがいい。人生の大半を占める仕事だからこそ、好きなことを仕事にできる人生のほうが、必ず幸せになれると信じています。ディスコで好きな仕事を見つけられる人、テクノロジーが好きで、仲間と一緒にものづくりをしたい人にぜひ来ていただきたいですね」(関家氏)

T氏は「ディスコは個性の強い会社です。その文化に共感できる人であれば、非常に活躍できると思います」と率直に語り、「入社を決める前に、しっかりと会社の文化を理解してほしい」とアドバイスする。Y氏も「就職活動では、ともすれば入社することだけがゴールになってしまいがちです。しかし、本当に大切なのはその後です。自分と会社の相性をしっかりと見極めることが、後悔のない選択につながります」と経験を踏まえてアドバイスする。

技術の最先端を走り続けるために

「世界でまだ誰も実現していない技術だからこそ、私たちがやり遂げれば、それが世界標準になる。たとえ困難な課題でも、最後までやり抜くことで世界のトップに立てる」——。T氏のこの言葉は、ディスコのエンジニア文化を象徴している。

世界最先端の製造技術を支えるソフトエンジニアたちが、新しい価値を生み出し続けているディスコ。その独自の文化と技術を極める情熱は、これからも半導体産業の発展を支え続けていくだろう。

  • (写真)関家一馬氏

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