組織でデータ活用を進めるには、あらゆる人々にデータを見る習慣を身に着けてもらい、データから生まれるアクションを促す必要がある。前回はデータを見る習慣をつけるための環境づくりや、そこからどのようにアクションつながっていくのかを、ドーモ株式会社 シニアソリューションコンサルタントの後藤祥子氏にお話を聞いてきた。
しかし、それでも残念ながらデータを見ない人は一定数存在し、アクションになかなか結びつかないケースもあるだろう。ドーモが提唱する「データアンバサダー」は、そうした課題を解消し、組織全体でデータにもとづく多様なアクションを活性化させてくための旗振り役だと言う。本連載の最終回となる今回は、データアンバサダーに求められる資質や役割、成功事例を紹介していく。
データ活用の浸透を牽引するデータアンバサダーとは?
──まずはドーモが提唱する「データアンバサダー」について、どのような役回りをする人なのかを教えてください。
後藤氏: データアンバサダーは、データアナリストやデータスチュワードといったデータ処理・分析の専門家ではありません。組織でデータ活用を広げる旗振り役のような存在です。データ活用を全社に広げるには、やるべきことがたくさんあります。データ活用のプラットフォームとなるダッシュボードを作るとことはもちろん、それを活用に結びつける運用面のストーリーも考えなければなりません。また、人や部署によってデータ活用に対する意識は異なります。データへの関心が低い層がいる場合は、他部署の成功事例を伝えて啓発し、モチベーションを上げていくことが重要です。データの民主化、全社的なデータ活用の定着を推進していく人がやはり必要で、それを担う役職を私たちはデータアンバサダーと呼んでいます。
──データアンバサダーに求められる人物像はどういったものでしょうか。
後藤氏: データアンバサダーはデータ活用による利益を享受した経験があることが重要です。例えば、部単位でデータ活用を横展開していくためには社内の成功事例が必要です。なぜならば、他の部署の取り組みであっても同じ会社であれば、用語やデータは共通しているものもあり、他社の取り組みよりも遥かにイメージしやすいからです。データ活用のメリットを社内の共通言語でわかりやすく説明して、興味をもってもらうことから、データ活用の横展開が始まるのです。
データ活用はとにかく「難しい」と思われがちなので、そう思う人に対してわかりやすく説明する役割の人がいないと、他の部門にはなかなか広がりません。「データによってこれだけ楽になったから、あなたたちも取り組んでみたらどうですか」と同じ会社の人が体験をベースに語ると、信頼性が高く心も動かされるでしょう。
加えて、データを日常的に見ることを促すだけでなく、社員がデータ活用した先の成功を具体的にイメージできるようにして、モチベーションを上げ続けることも重要です。つまり単なる啓発にとどまらず、教育まで担って、データ活用を広く普及できる人ですね。例えば社内でセミナーを開き、興味を持った社員がいればトレーニングを実施して、実際にデータ活用を体験させます。結果、その人がデータに興味を持ってデータアンバサダーの一員として活動してもらうようになれば、データ活用の全社展開はよりスピードを増して広がっていくことでしょう。
あとは経営層やIT部門を巻き込めれば、展開のスピードは圧倒的に加速すると思います。その意味では、声の大きな人がいいのではないでしょうか。データアンバサダーがビジネスの現場と向き合いながら、経営層とIT部門も巻き込むことで、データ活用がよりパワフルに進展することでしょう。
──逆に、データアンバサダーがいないままデータ活用を進めるとどうなるのでしょうか。
後藤氏: データアンバサダーがいない場合は、どこかの部署でデータ活用が始まっても、「自分たちの課題は解決したので終わり」と、その部署で閉じてしまう可能性があります。データ活用を行う部署が少なければコスト的な負担が大きく見えますし、なかなか全社での活用推進につながりにくいということも考えられます。
データ活用が他の部門に展開されることで、前後のデータが有意義につながり、活用の可能性もより広がります。前回もお話した通りデータを共通言語とすることで、アクションも生まれやすくなるので、一部のみの活用で閉じてしまうのは非常にもったいないことです。
──データの民主化、全社展開の次のステップとして、データアンバサダーはどのように立ち回っていくのでしょうか。
後藤氏: データが日々動いていく中、ビジネスのスピード感に合わせてダッシュボードを更新し、育て続けなければなりません。データ自体が更新されていくだけでなく、データを見る際の視点、角度もタイミングやニーズによって変わります。データが常に活用できるように、定期的に改善を行っていくことが理想です。データアンバサダーのリードでその環境を実現できれば、全社での真のデータ活用を実現できるはずです。
データアンバサダーに求められる資質を有する人材を見つけ出すヒント
──組織内でデータアンバサダーを設けようとした際にふさわしい人材を見つけ出すには、どういった点に留意すればいいのでしょうか。
後藤氏: データアンバサダーは、データに関する高度な専門スキルは必要なく、自分なりのデータ活用の興味や成功体験があることが重要です。データアナリストよりもハードルは低いと考えています。
当社ではデータアンバサダーという役職の提唱を開始した2022年より毎年、データアンバサダーの表彰をさせていただいております。そこで表彰された方は、とりわけ高度なデータの知識を有しているわけではなく、データやITのバックグラウンドを持っている方は30%程度しかいませんでした。自部門のデータ活用事例を社内で発表したところ「私もやりたい」と興味を持った人たちが手を挙げ、その人たちが適宜必要なスキルを習得し、周りの人々を巻き込みながらデータ活用を広げていったのです。
どこかの部門でデータアンバサダーが1人生まれ、他の部門に啓発していくと、最初は1人でもすぐに2人、3人と「私もデータ活用できました」という人が出てくるはずです。そこからデータ活用できたと実感した人が自分の成功体験を他の人に共有するといった動きが連鎖し、自然と広がるようになります。このフェーズまできたら、データアンバサダーは全体を見て、全社にまんべんなく広げていくための音頭を取れると理想的ですね。
──とはいえ、最初のデータアンバサダーにはそうした役割を理解してもらわなければなりません。部門の管理職や経営側が任命する手続きも必要ということでしょうか。
後藤氏: 現実的にはそうなるケースが多いでしょう。ただこれも理想を言うなら、本当は任命ではなく、ボトムアップで「私がやりたい」という人が名乗り出てくれるほうがいいのかもしれませんね。というのも、上から任命することでプレッシャーや“やらされ感”を覚えてしまうケースもあるからです。先ほど申し上げたようにIT・情報システム部門出身の人材である必要はないので、ビジネス現場でやる気を持った人が自ら動き出し、経営層や管理職はその動きをサポートしてあげるとよいでしょう。
Domo導入企業の好事例に学ぶデータ民主化への取り組み
──データアンバサダーの活動によってデータ環境の継続的改善やデータの民主化にまでつながった事例はありますか。
後藤氏: 何をもってデータの民主化と呼ぶかは企業によって違うと思いますが、例えば、ミーティングで同じダッシュボードを部内全員で見られている状態はデータがオープンになっている証拠ですし、民主化されていると言えます。さらに、データアンバサダーの活動によって部署をまたいでDomoを使うようになったとき、別の部署でもオープンなデータを活用しているので、これも民主化といえるでしょう。
日本サニパック様は、まずマーケティング部門がDomoを活用し、それをカスタマー部門、広報、物流などに展開していった好事例です。Domo導入前はデータが整っていなかったり、データを見る習慣が定着しなかったりといった課題を抱えられていました。マーケティング部の方がデータアンバサダーとなって、Domoによるデータ閲覧を啓発し、Domoを使ってダッシュボードを作る体験ができるワークショップを開催しました。そこから立候補でデータ活用の仲間を募り、全社にデータ活用を広げました。このように社内向けセミナーを開いて啓発を行い、データ民主化への道を開いた企業は多いですね。
──最後に、データ活用を始めたい・定着させたいという企業に向けて、ドーモが支援できることを教えてください。
後藤氏: データ活用の入り口はなんでもいいです。経営側が中期経営計画でDX推進を打ち出したことを契機とするのももちろんいいですし、現場がExcel作業に悩まされているといった課題やネットで記事を見て興味を持ったことをきっかけにするのもいいと思います。
共通してお伝えしたいのは「みなさんはもうすでにデータ活用していますよ」ということ。そこに気づいたうえで、データ活用をよりラクに、より便利にしたいと思うことがあるでしょう。データを民主化し、それを起点としたアクションを活性化させるには、だれでも・いつでも・どこでもデータ閲覧できる環境をスピーディーに立ち上げる必要があります。それを実現できるのがDomoです。
とはいえ、企業によって課題はさまざまです。私たちはお客様特有の課題感やレベル感をしっかりと理解したうえで、誰もがデータを見てアクションを起こす世界へ導いていく構えです。少しでも「データで何かをしたい」という思いがあるのなら、ぜひ私たちドーモに相談してみてください。
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