クラウド時代に取り残されたファイルサーバー
いまやメールや共有カレンダーといった基礎的な情報共有ツールはもちろん、ドキュメント作成やプレゼンテーションに利用するオフィス系アプリまで、クラウドサービスの利用は当たり前になっている。
しかし、オフィスのなかでクラウド化に取り残されているものがある。それがファイルサーバーだ。多くのビジネス向けクラウドサービスには、当然ファイル保存容量も用意されており、同一ドメインユーザー間での共有がしやすい機能も備わっている。またオンラインストレージに特化したサービスも複数ある。それでいて、ファイルサーバーだけは社内に残しているという企業は少なくない。
働き方改革や災害対策に有効な手段としてテレワークが注目されているが、ファイルサーバーが社内に存在している場合、安全性を保ちつつ外部からのアクセスを受け入れる仕組みを用意する必要がある。昔のように、社内ネットワークに接続している端末からのみ利用可能にする、というかたちでデータを守り続けるのは困難な時代だ。こうなってくると、元々多彩な場所からのアクセスを前提としたクラウドサービス活用が俄然魅力的に写るだろう。いまこそ、ファイルサーバーのクラウド化を改めて考える時期だといえる。
オンラインストレージ機能の進化や企業向け機能に注目
オンラインストレージといえば、Dropboxやboxといったストレージ主体サービスがまず思い浮かぶだろう。またOne DriveやGoogleドライブといった特に親和性の高いオフィスアプリを含んだ総合的なサービスの一部として提供されるものもある。いずれも個人ユーザーが無料で利用できる枠を持っていることから、気軽に利用されているものたちだ。
こうした機能を業務で利用するファイルサーバーとして活用できないかと考えたとき、共有機能を利用してどうにかすることは不可能ではないが使い勝手が悪そうだ、と感じる人は少なくないかもしれない。しかし、その印象が間違っていないかどうかの再確認は必要だ。
サービスの進化によってメールなどのクラウド化と同時に検討したときとは使い勝手がかなり変わっているものも多いはずだ。また個人向けや小規模ビジネスユーザー向けの基本プランと、組織的な利用を前提として管理機能等を追加している中級以上のプランでは提供されている機能に差があることも多い。単純に1ユーザーあたりの容量が増える、ファイル利用の権限設定ができる、といったわかりやすい違いだけでなく、根本的な使い勝手が大きく変わっている場合もあるのだ。
たとえばG Suiteでは基本であるBasicプランの上に用意されている、BusinessプランとEnterpriseプランでのみ利用できるストレージ機能として「共有ドライブ」という機能が用意されている。これは「チームドライブ」という名前で近年登場したものだ。チーム単位でファイル共有を行うために作られた機能で、G Suiteユーザーがそれぞれ保有する「マイドライブ」からフォルダ単位で共有するのとは違う使い方になる。同時期にリリースされた、ローカルストレージ容量を必要とせず都度編集ができる「ドライブファイルストリーム」機能と併せて利用すれば、さらに使い勝手がよくなる。
これらは2017年に誕生したもので、メールのクラウド移行が一段落した後の時期だったために機能自体に気づいていないというケースもあるだろう。さらに残念なことに、この機能の存在は公式サイトのG Suiteのプラン比較表ではわかるようになっていない。こうした機能が存在しないのか、過去の検討時に課題となった問題点が解決していないのか、ぜひ再確認して欲しい。
まずは利用中サービスのストレージサービスをチェック!
まず確認すべきは、現在メールやビジネスチャット、オフィスアプリといった部分で頼っているサービスが使い勝手の良いファイルサーバーになる機能を持っていないかどうかだ。もし存在すれば、追加料金なしで利用可能になるかもしれない。またG SuiteをBasicアカウントで使っていたユーザーがBusinessアカウントへアップグレードするなど、基本的な使い勝手を変更せずにわずかな追加コストで親和性の高いクラウドファイルサーバーを入手できるかもしれない。
サテライトオフィスは、多彩なビジネス向けクラウドサービスを扱っている。もちろん、それぞれのサービスに付帯する機能を利用したクラウドファイルサーバー導入のサポートにも対応する。その中で、今回特にお勧めしたいのがG Suiteの活用だ。比較的低コストで十分なクラウドファイルサーバーとして利用可能なG Suiteを、より便利に、コスト負担も少なく利用する方法を次回から紹介して行こう。
監修:原口 豊(はらぐち・ゆたか)
大手証券会社システム部に在籍後、1998年、サテライトオフィス(旧ベイテックシステムズ)を設立。2008年、いち早くクラウドコンピューティングの可能性に注目し、サービスの提供を開始。G Suite(旧名:Google Apps)の導入やアドオンの提供で、これまで実績4万社以上。「サテライトオフィス」ブランドでクラウドサービスの普及に尽力している。
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