ビジネスコラボレーションを推進するためのクラウドサービス

本連載では、単なるコミュニケーションの効率化ではなく、「コラボレーション」への進化が、業務生産性の向上やイノベーションの実現には必要だと説いてきた。しかし、1からコラボレーションシステムを作るには膨大な労力とコストが必要で、複数のシステムを組み合わせることから、運用不可も尋常ではない。

そこで、シスコシステムズが提供するクラウドコラボレーションサービス「Cisco Spark」がおすすめだ。基盤の導入・運用から解放され、コラボレーションの活用に集中することができるためである。コラボレーションに必要となる基本機能をすべて備えていることは、第3回で解説した。

今回は、Cisco Spark向けの特徴的な新しいデバイスと機能を紹介し、単なる効率化を図るものではないということについて解説しよう。

デジタル化で失われた「書(描)く文化」を取り戻す

ITによる「デジタル化」は、業務効率化の向上に大きく貢献してきた。すべての会議で紙の資料を廃止して、大幅なコスト削減に成功した企業も多い。

しかし、ダイワボウ情報システム 販売促進本部 販売推進2部 PH1グループ 次世代プラットフォーム推進グループ 副部長の谷水茂樹氏は、「書(描)かない文化の弊害」を危惧する。デジタル化によって、文字や絵を書けなくなることで、生産性が低下するというのだ。

ダイワボウ情報システム
販売促進本部 販売推進2部 PH1グループ 次世代プラットフォーム推進グループ
副部長 谷水茂樹氏(左)
ディーアイエス サービス&サポート
サービス本部 テクニカルサポート部 テクニカルエンジニア課
係長 中村亮一氏(右)

「例えばビデオ会議では、これまでのホワイトボードは使えません。事前に用意した資料のほかは、ことばのみで議論を進める必要があります。日本人どうしであればともかく、文化の異なる外国人へ、ことばだけで細かなニュアンスを伝えるのは困難です。母国語が異なっても、ホワイトボードに図を描けば一瞬で伝わることは多々ありますよね」(谷水氏)

会議室どうしをビデオ会議システムでつなぐのであれば、カメラの設置状況によってはホワイトボードを映すことも可能だろう。しかし、1つの図を共有することはできないし、PCのみで参加している出張中のメンバーは見ることしかできない。Web会議システムの場合はいっそう困難だ。最近ではタブレットデバイスで図版を共有するアプリなどもあるが、端末が限られてしまうし、その後のコラボレーションに結びつけることも難しい。

そこでCisco Sparkでは、こうしたデジタル化の弊害を解消する機能として「Cisco Spark Board」を提供している。

同製品は、55インチ/75インチサイズのタッチパネル式液晶モニタに、広視野角のカメラとマイクが搭載されたデバイスで、ビデオ会議向けの端末と同時にホワイトボードとしても利用できる。パネルには静電容量方式が採用されているため、タッチペンでも指でも、従来のホワイトボード用のペンと同じように記入できる。

Cisco Spark Boardに描かれた図や文字は、Cisco Sparkを通じて参加者と共有される。最大のポイントは、遠隔地の参加者もソフトウェア型のCisco Spark Boardを用いて入力できるという点だ。

「双方向にコミュニケーションをとるということが、ビジネスコラボレーションには重要なことです。従来の会議と同様に濃度の高いやり取りを、遠隔地で行うことができるようになります。Cisco Spark Boardは、デジタル化で失われた『「書(描)く文化」』を取り戻し、効率化と生産性向上を実現するためのソリューションです」(谷水氏)

Cisco Spark Board(台はオプション)

徹底した自動化で効果を上げるRoom Kit

ビデオ会議においては、会議室にカメラやマイク、スピーカーを搭載したデバイスを用いるのが一般的である。Cisco Sparkにおいても、「Cisco Spark Room Kit」という専門のデバイスが用意されている。

ディーアイエス サービス&サポート サービス本部 テクニカルサポート部 テクニカルエンジニア課 係長の中村亮一氏によれば、「Cisco Spark Room Kitの最大の特徴は、クラウドサービス向けに開発されたデバイスという点にあります。多くの機能がソフトウェアベースで作られており、大部分が自動化されています。そのため、細かなセットアップやチューニングが不要で、設置した直後からスマートなビデオ会議を実現できます」という。

例えば、Cisco Spark Room Kitを設置した会議室に参加者が入室すると、それをカメラで検知して自動的に会議が開始される。着席した参加者は自動的に認識・フレーミングされ、話者が追跡されるようになる。もちろん、参加者の個人端末から設定を変更したり、機能を制御したりすることが可能だ。

「Cisco Spark Room Kitは、会議参加者の人数を数え、使用状況を分析・レポーティングする機能が備わっています。APIも公開されているため、おもしろい機能を追加することが可能です。例えば、設備予約システムと連携すれば、参加者の状況によって、会議室の変更や解放などを自動的に行うことができるのです」(中村氏)

予定よりも早く会議が終了して全員が退室したら、自動的に空き部屋に設定することができる。広い会議室に2人しかいない場合、より小さな会議室を勧めるのもよい。会議室を運営するプラットフォームにもなりうるのが、Cisco Sparkの特異な点と言えよう。

Cisco Spark Room Kit

Web会議とビデオ会議のコラボレーション

シスコシステムズでは、クラウド型のWeb会議システムとして「Cisco WebEX」を提供している。Cisco Sparkとは異なるクラウドサービスとして提供されてはいるが、谷水氏は、これら2つが揃ってこその「コラボレーションクラウド」だと説明する。

そもそもCisco SparkとCisco WebEXは、Cisco Sparkの管理コンソールで一元的に管理することができる。Cisco Sparkのビデオ会議とCisco WebEXのWeb会議は融合し、共存した会議を開催することができる。単機能ではなく、ビジネスコラボレーションソリューションを求めるのであれば、1つのものとして捉えてもよいだろう。

「ネットワーク環境のよい地域とそうではない地域とで会議を行うためには、ビデオ会議とWeb会議を併用する必要があります。しかし、これらの双方を同時に提供できるサービスは、ほかに例がありません。ネットワークとセキュリティの制御を得意とするシスコシステムズだからこそのサービスなのです。メディアパフォーマンスをテストするツールも標準で用意されているため、快適な運用を継続できます」(谷水氏)

ダイワボウ情報システムでは、日本のCisco Sparkディストリビューターとして、シスコシステムズや販売パートナーとともにユーザーが利用しやすい環境の整備に努めている。例えば、グローバルなライセンス体系が適さない日本企業に合わせて、購入しやすい手法を設けるといった具合だ。Cisco Spark BoardやCisco Spark Room Kitのほか、今後に登場してくる新しいデバイスも、「日本最速でお届けする」と谷水氏は力説する。シスコシステムズだけでなく、同社の取り組みも注視したいところだ。

次回は、Cisco Sparkをもちいたケーススタディを紹介する予定だ。

Cisco Spark無償体験版はこちら
https://support.ciscospark.com/customer/ja/portal/topics/580829

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