フィックスポイントが提供する IT 運用の自動化を支援するソフトウェア Kompira enterprise は、多種多様のシステムと連携できる強みの下、これまでに数多くの企業の IT 運用を効率化へと導いてきました。Kompira enterprise では顧客のシステム要件に応じスクラッチで自動化のビジネス ロジックを構築するため、既存の運用フローを踏襲しながら効率化を図ることができます。ただ、今日では自動化と並行して、運用フローの見直しや IT 基盤の標準化を進める動きも少なくありません。"システムに業務を合わせる" という言葉の浸透が、その証左でしょう。

このニーズにも対応するために、フィックスポイントは 2018 年、スクラッチで独自ロジックを構築する既存ソフトウェアとは別に、規定の自動化ロジックをパッケージで提供する Kompira cloud をリリース。構成管理を自動化する Kompira cloud Sonar (以下、Kc Sonar)、インシデントを電話通知する Kompira cloud Pigeon (以下、Kc Pigeon) といったビジネス ロジックを既に提供開始しています。フィックスポイントでは、この Kompira cloud のサービス基盤に Microsoft Azure (以下、Azure) を採用。PaaS を全面的に利用したコンテナ ベースのアーキテクチャを採ることで、顧客の希望に応えるビジネス ロジックを迅速に拡充させていくことが目指されています。

企業の IT 運用を変える

あらゆる企業活動が IT を介して行われています。今ある IT サービスを過不足なく稼働させ続ける。これは、全ての IT 担当者に課せられた責務だと言えるでしょう。ただ、多大な人手を介して稼働監視やバックアップを行うべきかといえば、そうではありません。今日、自動化の技術は飛躍的に発達しています。定常運用と呼ばれる作業は可能な限り自動化し、よりクリエイティビティな業務へと人的リソースを寄せていくべきなのです。

しかし、株式会社フィックスポイント 代表取締役 三角 正樹 氏は、「日本には、保守的な考えが根強く残っています。管理すべきシステムは肥大化していますから、"今の仕組み・人員のまま" という考えでは、どうしても運用でカバーしていかざるを得ません。張り付きでシステムの監視をせねばならず、場合によっては休みの日に出勤することもあるでしょう。こうした環境下において、IT 職の人気は高まるはずがありません。このままでは IT 人材は不足していく一方なのです。」と述べ、国内企業が今置かれている状況に警笛を鳴らします。

フィックスポイントが創業時から提供を続けている Kompira enterprise には、同氏の触れた日本固有の文化を尊重しながら、それでも企業の IT 運用を健全化に導いていきたいという思いが設計に込められています。

サーバー監視、インシデントの可視化、資産情報・構成情報の管理、…… 24 時間 365 日の対応が求められる IT 運用においては、今挙げた以外にも数多くの視点からシステムを管理せねばなりません。それぞれで利用するツールも異なるため、人手で行っていては、人的リソースは枯渇するばかりです。

Kompira enterprise が優れているポイントは、異なるツールの繋ぎ合わせを可能にする高い連携性、スクラッチで自動化のビジネス ロジックを構築する故の優れた柔軟性にあります。同ソフトウェアを利用すれば、従来各種ツールで行ってきた IT 管理を一元化することが可能。閾値を設定すれば、目視・手作業だった業務を自動化していくことが可能なのです。

「Kompira enterprise では、連携処理や一元管理の仕組み、自動化にあたって必要なビジネス ロジックをスクラッチで構築します。自社開発、サード パーティー問わずあらゆるツールを繋ぐことができるため、既存のシステムや運用フローを踏襲しながら自動化を進めることが可能です。提供からかなりの年月が経過していますが、今ある環境にそのまま適用できるという利点を評価頂き、数多くのお客様に採用いただいています」(三角 氏)。

クラウド化の波を見越し、新たに Kompira cloud をリリース

フィックスポイントではこの Kompira enterprise を核にして、これまでに数多くの企業の IT 運用を自動化・効率化に導いてきました。そんな同社は、2018 年、Kompira cloud という、既存のソフトウェアと全く異なるコンセプトを持った自動化ツールをリリースしています。

Kompira cloud は、運用を自動化するためのビジネス ロジックをパッケージ化して提供するクラウド サービスです。業務に合わせた自動化が可能な Kompira enterprise とは対照的に、Kompira cloud では同ツールの提供するビジネス ロジックに業務や IT 基盤側が合わせることとなります。

なぜ相対するコンセプトを持つツールをリリースしたのか。この背景には、クラウド化という社会の大きな変化がありました。

クラウドは、オンプレミスの環境をただ移すだけでは劇的な効果を生みません。スケーラビリティや PaaS などを駆使した "発展性を持つ環境" として環境を構築しなければ、クラウドの持つメリットを最大化できないのです。

三角 氏は、「多くの企業が今後クラウド ネイティブの思考を持つようになるはずです。社会のクラウド化によって、企業の IT に対する優先度も "今のままの環境" から "発展性を持つ環境" へと変わっていくと考えました。」と説明。さらに、高いスピードで IT 基盤を発展させる上では様々なサービスとの連携が欠かせないと続け、今後、企業の多くの IT が、オープンな技術、標準的な技術を駆使した連携性の高い環境へと変わっていくと語ります。こうした標準化の加速を見越して開発されたのが、Kompira cloud なのです。

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    Kompira cloud (上) と Kompira enterprise (下)。三角 氏は、「クラウド化だけでなく、IT 基盤の見直しや標準化等の動きも間違いなく加速しています。システムの中にはどうしても標準化が難しい領域が存在します。そこだけは Kompira enterprise で自動化し、後は Kompira cloud で自動化と共に標準化も進める、こういった提案がサービス リリース後にできるようになりました。」と、Kompira cloud の意義について触れた

株式会社フィックスポイント 開発部 関戸 栄一 氏は、三角 氏とともに、同サービスの詳細を説明します。

「Kompira cloud では、2019 年 4 月段階で、インベントリ収集と構成管理を自動化する Kc Sonar、自動電話通知を自動化する Kc Pigeon を提供しています。Kc Sonar は ksocket という認証・連携プログラムをインストールするだけで、お客様はこれらのビジネス ロジックを自社のオンプレミス、クラウド環境に適用できます。また、Kc Pigeon は API で簡単に利用できます。Kompira cloud もまた Azure をサービス基盤にしたクラウド ネイティブな設計を採っていますから、API を介することでお客様のあらゆる管理ツールと連携することが可能です。例えば Kc Sonar と実行管理ツール、状態監視ツールを連携させれば、性能が一定の閾値を超えた場合に決められた構成を自動適用することができます」(関戸 氏)。

「各ロジックを細かくカスタマイズすることはできません。ただその分だけ、細かな要件定義なしにすぐ利用いただくことが可能です。ksocket の設定作業はものの 3 分で終わりますから、お客様は即座に IT 運用の自動化を試みることができます。クラウド時代にはこういった即効性が強く求められると考えています。今はまだ kc Sonar と kc Pigeon だけですが、半年に一度新たなファミリーを提供することで、Kompira cloud で自動化が可能な領域を広げていく予定です」(三角 氏)。

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    kc Sonar ではネットワーク内の各ノードを自動で検出して情報を一覧化することができる(上)。グループ単位でネットワークが管理でき (左)、キーワードでノードを検索することも可能。単体でみても、インベントリ管理や資産管理などのツールの機能を統合することができる

マイクロソフトのサポート水準に感動を覚える

Kompira cloud は、それ自体もパブリック クラウドをプラットフォームにサービスを提供しています。フィックスポイントは 2016 年にこの開発をスタート。既述の通り、同サービスは 2018 年に無事リリースを果たしています。

クラウドは、オンプレミスと比べると手を入れられる領域がどうしても制限されます。関戸 氏は、フィックスポイントに入社する以前に関わった開発案件を振り返り、「前職、現職ともに、開発では主に OSS を利用しています。Azure に対して "Windows だろう" という先入観があったため、前職では競合にあたるクラウドを利用して開発を進めていました。ただ、スペック上出るはずの性能が出ない、デプロイがうまくいかないといったケースが散見されました。スケール インした際にシステムが停止したこともあります。問題を解消しようにも、私たちが介入できないところにボトル ネックがあるため何もできないのです。商用サービスの本番環境に適用する上で "これでよいのだろうか" と疑問を感じました。」と語り、開発時に存在した不安について明かしました。フィックスポイントにとって、クラウドを利用した開発は本プロジェクトが初の試みです。関戸 氏は、前出の理由から Kompira cloud の開発にあたっては従前利用してきたパブリック クラウドではなく Azure の利用を前提にして設計を進めたと言及。同氏はこの理由を「Kompira cloud の開発をスタートする前よりマイクロソフトはオープン化を強く掲げており、OSS 関連に多大な研究開発を投じはじめていました。Azure でも十分に OSS 開発ができると期待したのです。」と語り、Azure を試用した際にある衝撃を受けたと続けます。

「Azure では今挙げたような問題が全く起こらず、まずそのことに感動しました。また、随所に OSS を用いた開発を円滑化する仕組みが実装されていると感じました。サービス基盤としての実用性があると判断し、設計を具体化するためにサポートへ相談を投げかけました。その時に、クラウドと一括りにしてもベンダーによってサポート水準が全く異なるのだと感じたのを覚えています。いわゆる技術の FAQ に閉じるのではなく、クラウド ネイティブな設計を採るうえで必要な観点、方針まで示してくれるのです」(関戸 氏)。

「ビジネス ロジックをどんどん拡充させていきたいと考えていましたから、マイクロ サービスや PaaS を活用したサーバー レスによって高い柔軟性を確保することを構想していました。ただ、どのように SaaS や PaaS を組み合わせればクラウド上で最適な設計が採れるかは手探りだったのです。マイクロソフトからはこの辺りを具体的かつ明瞭に提示頂きました。おかげでお客様にストレスなく利用いただける、サービスもどんどん発展させてゆける環境を用意できたと確信しています」(三角 氏)。

OSS 関連の PaaS を活用することで、CI/CD が実践できるサービス基盤に

Kompira cloud のサービス基盤には、クラウド ネイティブの思考が随所に施されています。まず挙げられるのが、コンテナの区分けです。

サービス基盤では、ユーザーがアクセスする「Web アプリケーション」、顧客環境と接続するための「ksocket」、kc Sonar や kc Pigeon といった「ビジネス ロジック」、そしてサービスを安定提供するための「全体監視」、大きくこの 4 種にコンテナが分けられています。

関戸 氏は、「ksocket はお客様の環境と常に双方向通信を行いますが、そこでのパケット量はどうしても不明瞭となります。ksocket を Web アプリケーションやビジネス ロジックと別の区画に置くことで、ここでの通信が各機能の性能や改修の容易性に影響を及ぼさないようにしています。クラウド サービスの特徴である PaaS の活用によって処理の分割やスケーラビリティの確保ができました。」と語り、マイクロソフトの助言もありこうした設計が採れたと語ります。

同氏は続けて、「コンテナ環境自体は Docker Swarm でクラスタ化した VM で構築していますが、それ以外は基本的に PaaS を利用したサーバー レスを採っています。コンテナ イメージは Azure Container Registry で一元管理していますし、データベースも Azure Database for PostgreSQL と Azure Cache for Redis を利用しています。OSS 関連の PaaS が豊富なおかげで、サービスを運用しながら改修も行っていく CI/CD (継続的インテグレート/継続的デリバリー) が実践できています。」と述べ、Azure の備える機能性を高く評価しました。

"唯 一 VM で 稼 働している Docker Swarm について、その管理に少し人手がかかっています。ここを Azure Kubernetes Services でフル マネージド化すればより CI/CD を加速できるため、今後検証を進めていきたいですね。"

―関戸 栄一 氏:開発部
株式会社フィックスポイント

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    Kompira cloud のアーキテクチャ。センターにある Docker Swarm クラスタで稼働するコンテナによって主要な機能を用意し、ここへデータベースやストレージ、秘密鍵管理などのPaaS を連携させる形で構成されている

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    サーバー レスで構築した「全体監視」の詳細構成。ロードバランサーを通した Kompiracloud の API、Web ページを外部監視する他、VM や各コンテナの稼働情報については Azure Log Analytics で管理している

IT 運用をあるべき姿へ

関戸 氏の言葉のとおり、Kompira cloud は、半年に一度新たなビジネス ロジックを提供するだけでなく、2 週間に一度という高頻度で細かな改修・機能拡張をリリースしています。

関戸 氏は「ビジネス ロジックを拡充させることも勿論ですが、今後はパートナーシップもより広げていきたいですね。既に市場にあるサービスと連携すれば、構成情報と脆弱性診断、構成情報と CMDB (構成情報のデータベース化) 等を組み合わせれば、社会にあるニーズに対し今すぐにでも対応できますから。私たちだけでなく様々な企業と協働して、お客様の IT 運用を健全なものにしていきます。」と述べます。こうしたクラウド時代を見越したサービス設計が評価され、Kompira cloud は既に既存顧客だけでなく、新規顧客からも多くの引き合いを得ています。

三角 氏は、引き合いを受ける中で、Azure を選択したことが英断だったと感じることがあるとし、このように述べました。

「Kompira cloud はどこで動いているの? ほとんどの商談でこう聞かれますが、Azure だとお伝えするとすぐに納得頂けます。マイクロソフトのコンプライアンスは、世界でも有数の水準です。データセンターの堅牢性も高いため、同社のクラウドを利用することは、当社サービスの信頼性を向上することに繋がっていると感じます」(三角 氏)。

" Kompira enterprise と Kompira cloudのハイブリッド構成で IT 運用の標準化、自動化を同時に進めるお客様も増えています。規模の大きな IT 基盤をお持ちのお客様が多いのですが、高い信頼性を持つ Azure があるおかげで、安心してお客様に利用頂けています。"

―三角 正樹 氏:代表取締役
株式会社フィックスポイント

Kompira enterprise を核に、フィックスポイントはこれまで数々の企業の IT 運用を変えてきました。同社はここに Kompira cloud を加えることで、顧客の抱える課題への対応力をいっそう高めています。クラウド化の波によって IT の在り方が変わろうとも、同社は、顧客の IT 運用をあるべき姿へと導き続けるはずです。

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[PR]提供:日本マイクロソフト