ビジネスニーズの多様化に伴い、独力ではサステナビリティ (持続可能性) を維持することが困難な時代が訪れています。異なる専門性を持つ事業者が有機的に連携することで、社会の変化に応じた価値を生み出し続ける。"共創" と呼ばれるこうした動きを加速すべく、幾多の企業がグループ連携やパートナーシップの強化に着手しています。愛知県豊橋市に本社を置くサーラグループは、エネルギー供給事業を中核にグループ 45 社の力を結集することでこの取り組みを推進する企業グループです
企業文化の異なる各社のニーズを満たしながらサーラ独自のグループシナジーを生み出していく――この目的を実現するため、同グループでは、社員 4,500 名が利用する共通の情報基盤として、2012 年にドリーム・アーツの「INSUITE」と「Sm@rtDB」を導入。文書やデータ、ナレッジなど各社の持つ情報を集め発信することで、グループのシナジー向上に努めてきました。さらに 2018 年には、「ドリーム・アーツ クラウドサービス (DCS)」を採用の下、情報基盤のクラウド化を実施。定常運用に追われていた従来体制から脱却し、ここで生まれたリソースを「攻めの IT」の原資としつつ、保有している情報(データ)の有効活用までを視野に入れる事により、コミュニケーションに留まらないグループ間連携強化と情報活用を狙いとしています。
「DCS」は、これからのサーラグループ共創と情報活用を支援し得る存在と言えます。この「DCS」は、Microsoft Azureが、同サービスの強みである多様な個別システムとの連携性や安定性を支えています。
グループの力を結集するために、情報基盤を統合
都市ガス事業、エネルギー・生活サービス事業、土木・建設・設備事業、住宅建設・販売事業、輸入車販売事業など、社会や地域づくりに欠かすことのできない様々な領域をカバーする多角的ビジネスを展開するサーラグループ。45 社ある関連企業全てで統一している「SALA」というブランドには、グループの想いである "Space Art Living Amenity : 生活空間をより美しく快適に" が込められています。
「私たちは、地域や街づくりと密接に結びついた様々なセグメントでビジネスを展開しています。グループの力を結集することで、ブランドの掲げる "生活空間をより美しく快適に" をさらに高いレベルで提供できると考えています。」こう述べるのは、サーラグループの IT 子会社である株式会社サーラビジネスソリューションズ(以下、SBS) 管理グループ企画チームの小出 輝雄 氏です。
同氏によれば、かつてのサーラグループはネットワークやドメインなどのIT 資産が各社個別に存在しそれぞれ独自の運用を行っていたため、情報発信やグループ内の動向把握がし辛い状況であったと言います。
「グループ一体化を進める上で、第一にコミュニケーションの円滑化を優先しました。グループ各社で事業運営は異なるものの、まず情報伝達や情報発信の在り方を統一しなければ、本質的なグループシナジーへの歩みは進みません。統一されたコミュニケーション環境の下で、トップの想いや会社間の情報共有と理解を高める。この方針を掲げ、私たちは第一次中期経営計画 (2011-2013) の間で、グループ各社が共通で利用する情報系基盤としてグループウェア『INSUITE 』と Web データベース『Sm@rtDB』を導入しました。ここに次ぐ第二次中期経営計画 (2014-2016) では、情報基盤の更なる浸透と活用を推進しました。社達・通達文書や広報アナウンス、キャンペーン告知、グループ内外の活動などの情報をグループ全体で共有可能な仕組みを整備したことにより大きな成果を得ることができました。コミュニケーション環境の確立を背景に、第三次中期経営計画 (2017-2019) からは、より積極的な活用に向けた取り組みに着手しました。具体的には、クラウド化によって利用可能な外部サービスを選択する事で、現場業務の改善提案や情報活用などを推進すると同時に、基盤の運用から解放される人的リソースをこの活動に投入する事により、グループシナジー向上に貢献する『攻めの IT 部門への変革』を目指しています」(小出 氏)。
サーラグループが第一次中期経営計画の中で採用した「INSUITE」「Sm@rtDB」は、従来利用してきた Lotus Notesの移行先として選定~導入作業が進められました。「カスタマイズ性の高さが Lotus Notesの売りですが、却ってこれが情報資産の放置やユーザー権限の複雑化などを引き起こしていたと言えます。柔軟性は維持する必要があるものの、情報基盤に於ける開発権限や掲載情報の管理・統制は当社で一元的に行わなければならない。この強い意志の下、リプレースを実施しました。標準機能の範囲内でも迅速かつ安価にアプリケーションを提供できるなど、使い勝手の良い『INSUITE 』『Sm@rtDB』へ移行し、アプリ開発は全て SBS が行う方針を打ち出す事で、" 前より不自由になった" といったコンフリクトを生むことなく情報基盤を統一できるのではないかと期待したのです。」小出 氏はこう、当時の取り組みを振り返ります。
この期待の通り、2012 年にグループ全社で整備した情報基盤は、約 6 年にわたる利用の中でグループ各社の業務上欠かすことのできないシステムになったといいます。小出 氏は、「2014 年には Lotus Notes 環境を完全に停止して新たな情報基盤へ完全移行しましたが、これを実施した当日には既にグループ全体でのログイン率が 100% に到達しました。ここまでスムーズに情報系基盤のグループ間統合が進められたのは、『INSUITE 』『Sm@rtDB』の優しいインターフェイスと情報発信の容易さ、親しみ易さが理由であることは間違いないでしょう。」と述べました。
一早くクラウド化し、"そこで何ができるのか" に注力
情報基盤の浸透を受け、次のフェーズとしてSBSが目指すのは『情報活用』です。
グループ統一の全社ポータル最上段で常に企業理念を表示する、併せて全社共有すべき代表メッセージや広報リリースなども設置する、こうした取り組みをもって、サーラグループは全社の意識統一を図ってきました。小出 氏は、「実際にこの取り組みで、新しい情報の注目度や情報発信の頻度は飛躍的に高まったと感じています。」と述べます。更に、シナジーを生み出していく上でも 2 つの大きな狙いがあったといいます。
同氏はクラウド化推進の背景を交えながら 2 つの理由を説明します。
「1 つは、クラウド上で提供される豊富な機能・ツール・アプリへの期待です。今日普及が進んでいるクラウドは、その多くのサービスがAPI 等によるサービス間連携を前提として提供されます。情報基盤に続き社内システムのクラウド化が進めば、システム間連携が高められるのではないか、保有しているデータの加工や活用も行い易く、人が本来行うべき " 計画" や "判断" に至る時間が短縮されるのではないか、これが第一のクラウド化の狙いです」(小出 氏)。
第二は、SBS の人的リソースの課題解決です。今後、IT 部門や IT 子会社には、企画や業務改善提案といった " 攻めのIT" 側にリソースを確保することが求められます。
「オンプレミス環境では定常運用作業やトラブル対応にどうしても大半のリソースが割かれてしまいます。新しいアプリやツールを試行する場合でも、見合う時間とコストを確保する事は困難であり、" 攻め" に転じるための原資は確保できません」(小出 氏)。
これらの理由から情報基盤のクラウド化は必然でした。小出 氏は「グループ全社が使う情報基盤をクラウドに移行し、この基盤自体が外部サービスとの高い連携性を提供する事で、今後各社が業務システムをリプレースする場合に先ずクラウドを検討し選定する契機となるのは間違いありません。」と、この理由を説明し、ドリーム・アーツが提供する「DCS」を採用してクラウド化を実施したと述べます。
「DCS」は、「INSUITE」と「Sm@rtDB」を SaaS 形式で利用するサービスです。パブリック クラウドを利用して IaaS・PaaS ベースに環境を用意する案もありますが、同グループが SaaS である「DCS」を採用したことには明確な理由がありました。
「お話したように、クラウド化の 狙いの もう 1 つは人的リソースの確保です。環境を " 所有" するのではなくサービス ベンダーからフルマネージドで提供されるサービスを " 利用" することで、自分達は運用負荷・障害時の切り分けなどから解放される方法がベストだったのです。加えて『DCS』には、クラウド化に期待した API 連携の機能も備わっているため、当社として理想の選択肢でした」(小出 氏)。
Microsoft Azure をサービス基盤とする「DCS」が、社員の働き方改革実現に向けたサーラグループの歩みを支える
カスタマイズ性や他サービスとの連携性を備える情報系基盤をサービスとして " 利用" できる。サーラグループが評価した「DCS」の特徴を、ドリーム・アーツはどのようにして提供しているのでしょうか。
株式会社ドリーム・アーツ クラウドサービスオフィス グループマネージャー 大城 賢勇 氏は、「DCS」のサービス基盤に採用している Microsoft Azure に言及してこのように説明します。
「『DCS 』ではデータベースに Azure SQL Database、API 連携の仕組みに Azure API Management を利用するなど、積極的に PaaS を活用して設計をしています。他 Azure サービス (Azure Media Services や Azure Active Directory Premium など) と連携できるため現行環境からの移行がしやすく、IaaS ベースの設計と比べると容易にお客さまの要望に応じたリソース・機能のカスタマイズを行うことが可能です。私たちにかかる定常運用のリソースも最小化できますから、ソフトウェア ベンダーながら、過不足ない形でフル マネージドのクラウド サービスを提供することができるのです。また、実は世の中のクラウドは SLA を "目標" として定めているサービスが多いのですが、Microsoft Azure はこれを "保証" としてしっかりと担保してくれます。お客さまが安心して『DCS』を利用できる、この点も我々のサービスの強みだと言えるでしょう」(大城 氏)。
これを受けて小出 氏は、「過去の情報基盤はIaaS を利用していたのですが、想像以上に運用負荷がかかると感じていました。例えばアクセス集中によるスローダウンに対応する場合、リソースをスケールすれば問題が解消できるとよく言われますが、そう簡単な話ではなく、基盤サービスベンダ・アプリ提供ベンダー、そして我々ユーザーが調査を行った上で原因を切り分け、対策を決定しない限りスケールに着手できず、トラブルは即座には改善しないということが往々にしてあるのです。実は今回のプロジェクトにあたり、移行切替当日に想定を超えたアクセス集中によるスローダウンが発生するという事態に直面しました。これが IaaS だったなら解消までに数日~週単位の時間がかかったと思いますが、ドリーム・アーツへ連絡することで僅か1 時間足らずで解消した事実を目の当たりにしフルマネージドのメリットを大いに実感しました。サービス稼働からすでに半年ほど経過していますが、ノンストップで稼働を継続しているのは高く評価すべきでしょう。」と笑顔を見せます。
"「INSUITE」「Sm@rtDB」のクラウド化の選択肢として「DCS」を採用した際、その
基盤に Microsoft Azureが採用されていることは伺っていました。我々が評価す
るフルマネージドのメリットが Microsoft Azure で提供されている事は即ち、 Microsoft社とドリーム・アーツ社の強い信頼関係の上で実装されていると判り大変心強く思っています。 "
-小出 輝雄 氏 : 管理グループ 企画チーム リーダー
株式会社サーラビジネスソリューションズ
データの統合と更なる活用を進めることで、お客さまの期待に応えるサーラグループへ
サーラグループでは 2018 年10 月、情報基盤の本番環境を「DCS」へ切り替え同サービスの利用をスタート。小出氏が触れたように、同環境は 2019 年3月現在、計画メンテナンス時間を除き稼働率 100% を実現しています。
「従来、情報基盤だけでも、1 人のスタッフが専任で業務時間の 1 割程を割いていました。『DCS』への移行後はこれが 0 になったほか、障害などのインシデント対応に追われることも無くなりました。1 割と聞くと大したことの無いように感じますが、"自分達で運用監視をしなくて良い" 〝切り分けや復旧指示をしなくて良い〟という解放感は、思いのほか心と身体に好影響をもたらしてくれています。加えて、従来バージョンアップ作業は検証スタッフが徹夜でアプリケーションの動作確認を行っていましたが、今後はこの負担も大幅に軽減されます。攻めのIT 部門へ変革するきっかけとなるのは勿論、IT スタッフの労働環境改善、即ち " 働き方改革" に必然の選択と言えるのではないでしょうか」(小出 氏)。
この言葉の通り、サーラグループでは「DCS」への移行からわずか半年間の間に、経費精算クラウドサービスをグループ複数社で導入し効果を上げています。次の一手としてドリーム・アーツが提供するエンタープライズビジネスチャット「知話輪」の展開を予定しており、このサービスを「INSUITE」「Sm@rtDB」と連携させる事で、意思決定のスピードアップはもとよりシステム連携等、業務側面にまで踏み込んだ新しい形の IT 活用にチャレンジしています。
小出 氏は、「サーラグループにおける SBS の位置づけも、クラウド化の推進とともに変えて行きたいと考えています。従来はどうしても各社からの要望に応じて動き出す受け身の姿勢でした。DCS 移行を契機に、クラウドの持つ拡張性・柔軟性、さらには多様なサービスとの連携等グループ各社に新たな IT の有効活用を提案する姿勢を持った積極的な会社に変革したいと考えています。たとえば、データを集約するアプリケーションをクラウド上で確保し、このデータを社内外のどこからでも安全に利用できる仕組みを作れば、私たちの持つ多様なセグメントのサービスを、ONE-TO-ONE で活用できるはずです。」と、今後の構想を語ります。
そしてこれに応えるように、大城 氏も次のように続けました。
「Microsoft Azure は BI サービスの Power BI などデータ活用のサービスも数多く備えています。私たちのプロダクトだけでなくこうしたサービスも駆使し、サーラグループ様のビジネスを支えて参ります」( 大城 氏)。
グループの持つ力を結集させる。これは、言葉で言うほど容易なことではありません。文化も風土も異なる各社をどのようにして一枚岩にしていくか。ここに頭を悩ませる大企業は数多く存在するでしょう。情報基盤の統合とクラウド化を軸にここへアプローチするサーラグループの取り組みは、こうした悩みを解消し得るモデルケースとなるはずです。
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