極限まで磨かれた "スピード" と "信頼性" を武器に、40年以上もの長きにわたりあらゆる業界、業種の翻訳およびドキュメンテーション(文書作成)を手掛けてきた株式会社サン・フレア。同社ではこれまで、オンプレミスで構築したファイルサーバーですべての作業を進行しており、いわばこのファイルサーバーがビジネスの中核を担う存在となっていました。
しかし、新規で取り扱うデータ容量は年々増え、現在では1日に最大で約80GBに達しており、ファイルサーバーのストレージ容量を逼迫するという問題が発生していました。急増するデータ容量に対応すべく、同社ではファイルサーバー環境の抜本的な見直しを実施します。この取り組みにあたっては、セキュリティや稼働性、さらには顧客ニーズが高まっていたBCP対策の水準を高めることも重視。これらすべての要件を満たすソリューションとして、2013年、マイクロソフトが提供するハイブリッドクラウドストレージ「Microsoft Azure StorSimple」を採用しました。
さらに2017年からは、より高い稼動性の確保に向けて、クラウドベースの統合管理サービス「Operations Management Suite(OMS)」の利用も開始。事業の中核たるファイルサーバー環境の最適化を実現しています。
株式会社サン・フレア |
プロファイル
翻訳およびドキュメンテーション(文書化)を軸とするソリューションで、顧客と世界とのコミュニケーションを支援する株式会社サン・フレア。40年以上もの実績で培われたスピードと信頼性により、あらゆる業界、業種の翻訳およびドキュメンテーションを幅広くサポートしています。
導入の背景とねらい
日々増加するデータ量に対応すべく、事業の中核を担うファイルサーバーのリプレースを検討
「Global Interface & Solutions」を掲げ、翻訳およびドキュメンテーション(文書作成) を軸とするソリューションをもって顧客と世界とのコミュニケーションを支援する、株式会社サン・フレア(以下、サン・フレア)。1971年の設立以後、同社は40年以上もの期間、医薬や半導体、重工業など幅広い業界の翻訳およびドキュメンテーションを支援してきました。この長い歴史を経て磨かれたスピードと品質が高く評価され、年間で同社が取り扱う案件数は26,000件以上にも達しています。
同社が高い水準の「スピード」と「品質」の提供を実現している理由として、翻訳およびドキュメンテーションを進めるユニークな作業環境が挙げられます。サン・フレアではオンプレミスに構築したファイルサーバーで案件の全作業を進行。従業員のローカル環境で作業するのでなく、案件に携わる複数の担当者が同一のファイルサーバー上で作業を進めることによって、高い品質とスピードを担保しているのです。
株式会社サン・フレア 技術部門 情報システム部 システムサポート課 課長 大和田 康博氏 |
株式会社サン・フレア 技術部門 情報システム部 システムサポート課 課長 大和田 康博氏は、同社が請け負う案件の特性上、ファイルサーバーにはきわめて高いセキュリティ水準が求められると語ります。
「当社の取り扱う案件には、製薬会社をはじめとする機密性の高い文書類を取り扱うものが多いため、手順書などを作成し、細心の注意を払ってお客様の文書類を管理する必要があります。当然ながら、こうした作業を行う環境についても高いセキュリティが求められます」(大和田氏)。
サン・フレアが作業環境をファイルサーバーで統一しているのは、セキュリティの担保という目的もあります。従業員のローカル環境で作業を進める場合、全端末のセキュリティを高い水準で標準化せねばなりません。翻訳およびドキュメンテーションはサン・フレア単体で進めるわけではなく、翻訳者をはじめとする多くのパートナーが介在します。仮に従業員の環境が標準化できたとしても、全パートナーの環境まで標準化することは困難だと言えるでしょう。作業環境をファイルサーバーへ統一することは、サービスの提供スピードと品質を高めるとともに、顧客が求めるセキュリティ水準を担保するうえでも有効だったのです。
株式会社サン・フレア ライフサイエンス事業本部 マーケティング部 小玉 亜里沙氏 |
セールスを担当する、株式会社サン・フレア ライフサイエンス事業本部 マーケティング部 小玉 亜里沙氏は、顧客が求めるセキュリティの要求レベルが高まってきていると語ります。
「ある一定のセキュリティ水準を保った事業者でないと契約しない、という取り決めを設けるお客様が増えています。こうした業界特有の要件をクリアして当社サービスをお選びいただくためには、作業環境であるファイルサーバーのセキュリティ水準を絶えず発展させていく必要があります」(小玉氏)。
さらに、小玉氏と同じくセールスを担当する、舩盛 邑氏と滑川 朋香氏は、稼動性やデータ保護の性能についても、高い水準が求められると続けます。
「翻訳およびドキュメンテーションの工程では、文書を翻訳する翻訳者、英訳であれば構文を校閲するネイティブ チェッカー、誤訳や訳抜けを確認する校正者、レイアウト調整を行うDTP担当など、1つの案件だけでも常時複数の担当者が同時並行で作業を進めることになります。その作業のほぼすべてがファイルサーバーで行われるため、お客様へのサービス提供を継続するうえでシステムの安定稼動は不可欠だと言えるでしょう」(舩盛氏)。
株式会社サン・フレア ライフサイエンス事業本部 マーケティング部 舩盛 邑氏 |
株式会社サン・フレア ライフサイエンス事業本部 マーケティング部 滑川 朋香氏 |
「当社では翻訳期間中は修正作業が発生するたびにコピーを作成し、それを工程ごとに保存しています。お客様によっては、データを残しておくことを求められ、プロジェクトが再開した際には数工程前の文書ファイルまで遡って作業を再開せねばならない場合もあります。ファイルサーバーには各案件、各工程の文書をいかに効率よく、確実に保存できるかという点も求められるのです」(滑川氏)。
サン・フレアのサービスが業界から高い評価を得ているという事実から、これまで同社のファイル サーバーが高水準なセキュリティと稼動性のもとで運用されてきたことは、疑う余地がないでしょう。この点については大和田氏も「顧客の要求レベルに沿うべく最善の取り組みを心がけてきた」と胸を張ります。しかし一方で、ファイルサーバーの運用において頭を悩ませることもあったと同氏は続けます。その1つが、データ容量の増大です。
たとえば医薬品の承認申請に必要な文書である「CTD(Common Technical Document)」は、1つの文書であってもページ数が数万にまで及びます。近年は画像や動画を含む文書も増えており、1ファイルの容量が1GBを超える文書も少なくないのです。さらに、各案件で工程ごとにファイルを保存する必要があるため、ファイルサーバーの総容量は急増することとなります。
「現在1日で新規に取り扱うデータ容量は最大で約80GBにまで達しています。これまで3年周期でストレージを拡張してきたものの、日々の増加量が当初の予想を上回ることが多く、周期前に追加ストレージの購入を余儀なくされることもありました。こうした問題は単にコストへの影響だけでなく、運用工数の増加も招くこととなります。本来割り当てられるはずだった定常運用業務が行えなくなり、結果それが、システムの安定稼動に悪影響を及ぼすことにもつながるのです」(大和田氏)。
システム概要と導入の経緯、構築
セキュリティと稼動性、BCP対策の水準も高めるには、性能を担保しながらクラウドを活用する必要があった
急増するデータ容量に対応すべく、サン・フレアは2013年、ファイルサーバーのリプレースを実施します。同リプレースは、顧客の要求レベルの高まりを踏まえて、セキュリティと稼動性も従来以上の水準にまで発展させることを目指した「環境の抜本的な見直し」として進められました。
大和田氏は、抜本的な見直しとして取り組みを進めた理由として、2011年に発生した東日本大震災を背景に挙げます。
「東日本大震災が発生して以降、お客様からBCP対策に関する確認を求められることが増えました。当時、当社でもBCP対策方法について検討していましたが、オンプレミスでの運用に限界を感じていました。容量面の課題も顕在化しており、クラウドの活用も視野に入れて新たな環境を検討しなければ、顧客要求への対応もBCP対策も前に進められないと考え、抜本的な見直しに踏み切ったのです」(大和田氏)。
高いスケーラビリティを持つクラウドの活用は、BCP対策や日々増加するデータ容量に対応するうえで有力な選択肢だと言えるでしょう。しかし、同社のファイルサーバーは、サービスの高い提供スピードを支えるシステムです。すべてをクラウド上に移行する場合、ネットワークをボトルネックとする性能低下が懸念されます。
そこで同社が注目したのが、マイクロソフトが提供するハイブリッドクラウドストレージ「StorSimple」です。株式会社サン・フレア 技術部門 情報システム部 システムサポート課 四戸 充氏と高橋 明氏は、StorSimpleはデータ容量の課題の解消に加えて、稼動性、セキュリティという各要件もすべて満たす理想的なソリューションだったと説明します。
株式会社サン・フレア 技術部門 情報システム部 システムサポート課 四戸 充氏 |
株式会社サン・フレア 技術部門 情報システム部 システムサポート課 高橋 明氏 |
「StorSimpleソリューションはオンプレミスのStorSimple物理アレイとAzure BLOBストレージを連携することで、日々増加するデータ量に対して柔軟に対応することができます。仮にオンプレミス、クラウドのそれぞれで個別にシステムを構築する場合、どうしても運用作業が煩雑となります。StorSimpleはオールインワンアプライアンスですので運用窓口が一本化でき、ヒューマンエラーを軽減し稼動性が高まることに期待しました。また、Azureのデータセンターは世界水準のセキュリティを備えています。Azureを採用することで、お客様の資産をいっそう安全な環境で管理できるようになると考えました」(四戸氏)。
「StorSimpleは自動階層化機能を備えており、ファイルのアクセス頻度によって、オンプレミス側のフラッシュディスクとHDDディスク、Azure側のBLOBストレージのそれぞれに振り分けられます。進行中のデータは遅延のないオンプレミスのストレージに、納品済みのデータは、結果としてAzure上へ、というように自動的に最適なストレージ環境へファイルが格納されるため、従来と同水準の性能を担保しながら、クラウドの利点も享受できると期待しました」(高橋氏)。
以上を理由として、サン・フレアは2013年、StorSimple 5520を導入しました。当初の推測どおり同社がファイル サーバー上で取り扱うデータ容量は増加の一途をたどり、2016年末には500TBまで対応するStorSimple 8600へ環境を移行。さらに翌年からは、稼動性をより高めるべく、クラウドベースの統合管理サービス「Operations Management Suite (OMS)」の利用も開始しています。
OMSではオンプレミスとクラウド、両環境の統合管理が可能。各システムの稼動状況がグラフィカルなユーザーインターフェイスで提示されるため、最小限のリソースで、先手を打った障害対応が可能です。
StorSimpleに加えてOMSも導入した理由について、四戸 充氏と大和田氏は次のように説明します。
「StorSimple 5520時の環境では、過負荷状態が続いたためにフェイルオーバーが発生することがまれにありました。StorSimple 8600へ移行したとはいえ、フェイルオーバーが発生しないとは言い切れません。ファイルサーバーは当社事業の根幹を成すシステムです。同システムの安定稼働は当社サービスの品質向上にもつながるため、より確実な体制でシステムの安定稼動を担保したいと考え、OMSの導入を決定しました」(大和田氏)。
「障害の未然予防においては、稼動状況を可視化することが有効です。しかし、通常そのためにはシステムを監視するためのシステムを別途構築せねばなりません。すると今度は、そのシステムが確実に動作しているかも監視する必要があるのです。ファイルサーバーが停止した際にログを見ようとしたら監視用のサーバーも落ちていた、という状態では意味がありません。OMSはオンプレミスとクラウドの両環境を統合的に管理でき、サービスとして提供されるため先の心配をする必要もありません。必要な際に確実に動いてくれるという利点は、非常に心強いです」(四戸氏)。
StorSimpleとAzureストレージ、OMSのシステム構成イメージ。OMSを利用することで、オンプレミスとAzureの両環境を統合的に管理することが可能 |
導入の効果
フェイルオーバーの発生はゼロに。高い稼動性を持ったシステムが、事業の生産性を支える
サン・フレアが2013年より推し進めてきた、抜本的なファイルサーバー環境の見直しは、OMSの導入で一段落したと言えます。これまでの取り組みが生み出した効果について、大和田氏は次のように説明します。
「StorSimple 5520を導入した当時は、2013年以前の環境と比べるとどうしてもファイルの読み出し性能が遅いと感じることがありました。しかし、StorSimple 上での自動階層化が進むにつれてその差は埋まり、現在、体感的には2013年以前と同水準の性能に到達していると感じています。ファイルサーバーの性能は事業の生産性に直結します。この性能を維持しながら、セキュリティと稼働性を大幅に高め、またデータ容量の課題も解消できたことは、大いに評価すべきでしょう。事実、StorSimple 8600への移行後、安定稼働を継続しています。今後OMSを活用することで、稼働性はさらに高めることができるでしょう」(大和田氏)。
実際にファイルサーバーを利用する立場である小玉氏も、「従来のファイルサーバーと比べても日々の業務でストレスを感じるようなことはありません。過去にファイルサーバーへ格納したドキュメントは実際にはファイルサーバー上にはなく、Azure上に保存されているのだと思いますが、それを利用する場合でも、『クラウドにファイルがある』ということを意識することなく利用できています」と笑みを浮かべます。
また、StorSimpleは標準で1つのスケジュールポリシーで最大64世代までバックアップできるクラウドスナップショット機能を備えています。同じくStorSimpleが実装する重複除去と圧縮技術によって、ストレージの使用量を抑えながら複数世代の文書を管理することが可能です。四戸氏はこの点について、「小玉も触れたとおり、案件によってはお客様からかなり昔の世代文書まで遡って作業することを求められます。世代管理のカバレッジの拡大は、翻訳およびドキュメンテーションにおける柔軟性の向上につながると言えるでしょう。当然、世代数が多くなればデータ量も増えていくため、コストと現場ニーズとのバランスを見ながら最適なバックアップする世代数を考えていきます」と語ります。
今後の展望
社内ITのクラウドシフトを進め、OMSによって全ITの健全な運用を目指す
StorSimpleとOMSでファイルサーバーを整備したことで、事業の中核とも言える作業環境の最適化を実現した、サン・フレア。現在、OMS の適用についてはまだファイルサーバーとAzure上で稼働する一部システムに限定していますが、今後はオンプレミスで稼働する他のシステムにも監視対象を拡大していきたいと、大和田氏は意気込みます。
「OMSについては導入から日が浅いこともあり、これから積極的に活用していくという状況ですが、稼動性だけでなくセキュリティにおいても有効だと考えています。たとえばAzure Log Analyticsを利用すれば、万が一不正アクセスがあった場合にも、即座にそれを検知し、調査や分析を行うことができます。その他にも障害復旧サービスのAzure Site Recoveryなど、OMSは当社にとって有用な機能を数多く備えているため、積極的に使っていきたいですね。当社では今後、クラウド自体の活用も積極化する予定ですので、オンプレミスとクラウドを統合的に管理できる OMS がますます活躍してくれることを期待しています」(大和田氏)。
同社は2016年よりOffice 365の利用を開始しており、従来オンプレミスで運用してきたメールサーバーをExchange Onlineへ移行するなど、社内ITについてもクラウドシフトを進めつつあります。ファイルサーバー環境の抜本的な見直しをきっかけとし、マイクロソフトプラットフォームを積極的に活用したクラウドシフトを推し進めるサン・フレア。クラウドならではの機敏なビジネスへの対応力を取り入れることで、同社の強みであるスピードと品質、および顧客データを守るためのシステムセキュリティは今後、いっそうの発展を遂げていくでしょう。
「StorSimple 5520を導入した当時は、2013年以前の環境と比べるとどうしてもファイルの読み出し性能が遅いと感じることがありました。しかし、StorSimple上での自動階層化が進むにつれてその差は埋まり、現在、体感的には2013年以前と同水準の性能に到達していると感じています。ファイルサーバーの性能は事業の生産性に直結します。この性能を維持しながら、セキュリティと稼働性を大幅に高め、またデータ容量の課題も解消できたことは、大いに評価すべきでしょう。事実、StorSimple 8600への移行後、安定稼働を継続しています。今後OMSを活用することで、稼働性はさらに高めることができるでしょう」
株式会社サン・フレア
技術部門
情報システム部
システムサポート課
課長 大和田 康博氏
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