倉庫・物流業一筋でビジネスを展開する帝国倉庫が、十数年にわたって運用してきたシステムを一気にフルクラウド化しました。活用したのは、AZPower が提供するソリューション「フルクラウドオフィスリファレンス」です。デスクトップ PC を仮想デスクトップに移行し、オンプレミスのコンピュータ室で管理していたラック 20 台のサーバー機器はすべて撤廃しました。これにより、働き方が大きく変わり、従業員満足度( ES )が向上し、さらに顧客満足度( CS )向上やグループ業績も改善するという「三方良し」を実現したといいます。
創業 110 周年を数える倉庫業界の老舗がデスクトップからサーバーまでをフルクラウド化
1907 年の創業以来、「お客様が求めるロジスティクス システムを迅速にご提供する」をモットーに、貨物保管、入出庫管理、流通加工・発送代行、運送など倉庫・物流業一筋でビジネスを展開してきた帝国倉庫。1944 年に十五銀行(現三井住友銀行と合併)の倉庫部から独立した経緯もあり、金融機関・公共組織が取り扱う重要文書や美術品の保管に強みを持っています。
現在は、首都圏および関西エリアの主要な物流拠点に倉庫を配したスピーディな物流・配送サービス機能を駆使し、貨物保管・物流に関するコンサルティングや独自のロジスティクスシステム構築の提案を行なっています。ビジネスのデジタル化が進展するなかで、文書保管・電子化サービス( NetWarehouse サービス)やバックアップ メディア保管サービスなども手がけます。
帝国倉庫のビジネスを成長させていくにあたって、長く運用してきたシステムを現在のビジネスに適したかたちに変革する必要があったといいます。その取り組みをリードしたのが 2023年3月31日まで代表取締役 社長を務めた永元 徹 氏です。
「老朽化したシステムを新しいかたちにしていく取り組みを 2013 年頃から進めてきました。システムは基幹系システムから情報系システムまで多岐にわたり、Windows サーバー、スクラッチ、パッケージなど含めて、すべて社屋内のコンピュータ室で運用管理してきました。情報系システムを中心にクラウド環境を使った新システムへ移行するプロジェクトをいくつか進めてきたのですが、移行は簡単ではありませんでした。プロジェクトの中には途中で頓挫してしまったものもあります。また、移行できずに EOS(サービス終了)を迎えるシステムも残っていました。最大の問題は、こうした古いシステムが将来的なビジネス拡大の支障になり得るということです。顧客から信頼を得て、成長し続けるためのシステムに刷新していく必要がありました。」と、永元 氏は当時を振り返ります。
永元 氏は、これまで取り組んできた複数のシステム刷新プロジェクトをいったんとりやめ、1 つのクラウド プラットフォームにまとめていく決定を下しました。そのプラットフォームとして採用されたのが Microsoft Azure やMicrosoft 365 などの Microsoft 製品をフル活用した AZPower のソリューション「フルクラウドオフィスリファレンス」でした。
情報共有や双方向コミュニケーション、システムの老朽化、運用負担増などが課題に
帝国倉庫が抱えていた課題は多岐にわたります。情報系システムについては、情報共有や双方向コミュニケーションの取りづらさが長年の課題になっていました。システム部 部長 鈴木 昭 氏はこう話します。
「社内コミュニケーション ツールとしてメールやグループウェアを導入していましたが、一方向になりがちで、社員が自分の意見を出しにくい状況にありました。また、在宅勤務などの多様な働き方にもうまく対応できておらず、スマートフォンなども活用できていませんでした。さらに、情報漏えいリスクに対して十分な対応ができておらず、精神論やルールの肥大化から複雑になっていました」(鈴木 氏)
加えて、グループウェアの EOS やメール システムと販促システムが同居していて IT 統制が不十分といったシステム上の課題もあったといいます。
基幹系システムについては、業務処理に多くの手作業が残り、効率性が低いことや事務処理のリスクが高いことが大きな課題でした。システム部三浦 志 氏はこう話します。
「システム面でのお客様からの要請に十分に対応できない懸念がありました。業務系の基幹システムには、文書管理システムや在庫管理システム、配送システムなどがありますが、顧客からの照会や、検索機能、追跡機能、モバイル対応、ブロックチェーン対応などが不十分で商機を逃すリスクがありました」(三浦 氏)
加えて、システム面では、ハードウェアの保守切れが迫っていたうえ、システム自体がレガシー化し保守・改修が困難なケースや運用管理が負担になるケースも増えていました。
「こうした課題を解消するために採用したのが AZPower のフルクラウドオフィスリファレンスです。まずクラウドにするなら Microsoft と考え、簡単に導入し活用できるものを探していたのですが、フルクラウドオフィスリファレンスは、Azure をはじめとした Microsoft 製品を活用しており、当社が求める要件にすべて合致していました。1 つのクラウド プラットフォームでPC からサーバー、情報系システムから基幹系システムのフルクラウド化を進めるのに最適な製品でした」(永元 氏)
生産性向上からレガシーシステムのクラウド移行まで対応したフルクラウドオフィスリファレンス
帝国倉庫がクラウド プラットフォームに求めたのは、社員のコミュニケーション活性化、テレワークの実現、内部統制の徹底、情報漏えい対策、既存基幹システムのクラウド移行、クラウドの新機能の活用などです。
具体的には、公開ホームページ、ファイルサーバ、メール、グループウェア、日報システム、NetWarehouse システム、本社・拠点間の閉域網・WANサービスなどをクラウドに移行する計画でした。そのうえで、すでにクラウド移行していた経理や給与などの SaaS サービスを Azure で構築した社内システムと連携させる必要もありました。
「金融機関・公共組織が取り扱う重要文書をお預かりしていることもあり、セキュリティの要求レベルがたいへん高かった中、「さまざまなクラウドサービスを選定していたのですが、検討を開始した 2020 年の時点で、バックアップサイトが国内にあり、多要素認証が利用できること、データベースの暗号化に対応していること、5 分ごとのバックアップに対応していること、シンクライアント・仮想デスクトップに対応できることといった要件を満た したのは、Azure だけでした」(鈴木 氏)
ただ、限られた社内リソースで Azure を利用していくことは敷居の高さを感じたといいます。そんなとき、シンクライアント・仮想デスクトップからサーバーのクラウド化、ゼロトラストセキュリティまでを 1 つのソリューションで実現できるフルクラウドオフィスリファレンスを知ります。
「グループ 3 社でユーザー数が 160 ユーザーというわれわれのような規模の企業でも利用でき、SharePoint や Power Platform などを使った社員の生産性向上や、レガシー化した基幹システムのクラウド移行まで対応できるソリューションはこれしかありませんでした。一方で、コンピュータ室には 20 ラックに相当するサーバーやネットワーク機器、ストレージが設置されていましたが、これらミッション クリティカルなシステムをクラウド化できることも大きな魅力でした。フルクラウド化により、システム運用管理の負担が大きく削減され、顧客のニーズにすばやく対応できるソリューションだったのです」(三浦 氏)
AZPower 代表取締役 橋口 信平 氏は、こう話します。
「最初のきっかけは仮想デスクトップの導入でした。テレワークや在宅勤務に向けて Azure Virtual Desktop の採用を進め、その後、帝国倉庫様が抱えていた課題は Azure で解決できることから、フルクラウドリファレンスを提案させていただきました」(橋口 氏)
AZPower が Azure のさまざまなサービスを構築から運用管理までをワンストップで支援
フルクラウドオフィスリファレンスは Azure のさまざまなサービスを組み合わせ、AZPower が構築から運用管理までをワンストップで提供するサービスです。構成しているサービスとしては、シンクライアント・仮想デスクトップの Azure Virtual Desktop、本社と拠点・クラウドを安全に接続するための Azure ExpressRoute、Azure Virtual WAN、Azure VPN Gateway、ユーザーのアカウントや認証を管理する Azure AD や Azure AD Connect、コミュニケーションのための Microsoft 365、セキュリティ管理の AzureSentinel、デバイス管理の Intune などがあります。
「安全なインターネット接続環境を構築したいといったニーズに応えるべく、インターネット VPN の構築、リモートアクセス環境の整備、オンプレからクラウドへの移行、社外への持ち出し PC などの管理、セキュリティ インシデントの管理など、クラウド時代のシステム投資を最適化しながら、現場の生産性向上とゼロトラストセキュリティを両立させたソリューションがフルクラウドオフィスリファレンスです」(橋口 氏)
フルクラウドオフィスリファレンスを知ったのが 2020 年 3 月、そこから 6月には採用を決定し、構築作業がスタートします。ホームページやファイルサーバ、拠点ネットワークの構築などを最初に進め、同年 8 月頃からメール、グループウェア、仮想デスクトップ、一部基幹システムのクラウド移行を進めました。すべてのシステムの Azure 移行を実現したのは 2021 年 4月というスピード構築でした。永元 氏はこう振り返ります。
「情報系システムについては、できるだけ作り込みをせず、ノンカスタマイズで Microsoft 365 の標準機能を活用することを意識しました。また、標準にあわせて必要ないシステムの統廃合も進めました。これによりコンピュータ室の 20 ラック分のハードウェア機器はすべてなくなり、全システムがフルクラウドで稼働する環境が実現しました。拠点ごとに設置していたセキュリティ対策用の UTM などの装置も撤去しました。本社を含めた拠点にはルーターとアクセスポイントしかなく、ユーザー認証やセキュリティ対策、デバイス管理はすべてクラウド上で実現しています」(永元 氏)
クラウドのパワーで、従業員満足、顧客満足、グループ業績向上の三方よしを実現
帝国倉庫のフルクラウド環境は 1 年間の運用ですでに大きな効果を生みだしています。まず、コスト面ではシステム構築費用が約 1 億円と従来の想定プロジェクトの約半分になり、運用コストもコンピュータ室の運用管理がなくなったことで、大幅に削減されました。これにより、システム部として新しい取り組みがしやすくなったといいます。
「バックアップなどの作業も東西リージョンを使うことで効果的に行うことができるようになり、災害時のデータ リカバリーも 15 分で可能になるなど、システム環境が劇的に改善しています。また、休日に障害対応するといった負担がなくなり、社員の働きやすさを実現し、顧客要望への対応といった本来の仕事に優先して取り組めるようになりました。需要に応じてシステムの構成を柔軟に変えられることがクラウドのメリットですが、実際にAzure Virtual Desktop も必要に応じて台数を簡単に増やすことができています。また、Azure Information Protection などのセキュリティ機能を活用して、ファイルの暗号化や情報漏えいリスクをすばやく行うなど、最新機能を迅速に適用できるようになりました」(鈴木 氏)
PC などのクライアントも仮想化し、スマートフォンからいつでも基幹システムにアクセスできるようになったことで、働き方も大きく変わったといいます。
「会議では PC や大型ディスプレイを使うなどペーパーレス化が進み、印刷などの作業が減りました。自宅に持ち帰って作業することも簡単にできます。また、SharePoint や Power Platform などを使って、さまざまなアプリケーションやシステムを簡単に作ることもできます。例えば、SharePoint で構築しているグループウェアでは、日報・作業計画書や新提案制度など、新しい機能を随時追加しています。また、社員ひとりひとりが、自分の意見をグループウェア上で公開するケースも増えてきました。いまでは、経営幹部と現場の社員が直接双方向でコミュニケーションしています」(三浦 氏)
これまで一方向の伝達が中心だった社内コミュニケーションのあり方が、社員起点での自然発生的なコミュニケーションに変わったのです。そのうえで永元 氏は、中堅中小企業こそクラウドを活用すべきと訴えます。
「クラウドのほうが安全で、いろいろなサービスを楽しんで活用することができます。実際、Azure と AZPower のフルクラウドリファレンスによって、従業員満足度向上・顧客満足度向上・グループ業績向上の三方良しが実現できたと思っています」(永元 氏)
マイクロソフトは AZPower をはじめとするパートナーとともに、企業のクラウド活用を支援していきます。
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