Webサイトやカタログ、チラシなどで利用するイメージファイルは、企業活動を継続するうえで欠かすことのできないデータといえます。このイメージファイルに特化した管理、共有サービスとして、2006年の提供開始から高い評価を受け続けるサービスが、富士フイルムソフトウエア株式会社が開発、運用を手掛け、富士フイルムイメージングシステムズ株式会社が提供する「IMAGEWORKS(イメージワークス)」です。

同サービスは、2016年4月開催の「G7広島外相会合」や同年5月に開催された「G7伊勢志摩サミット」で採用されるなど、多くの実績を有しています。しかし、クラウドコンピューティングの黎明期から長期にかけてサービスを提供してきたことを背景に、IT基盤側には課題も生じていたといいます。2006年当時の技術を踏襲した領域をいまだ多く残す提供基盤では、年々高まる顧客要求へ迅速に対応することが難しくなっていたのです。

この課題を改善すべく、同社はこれまでオンプレミスで運用してきた提供基盤について、パブリッククラウドを活用したモダナイゼーションを計画。Microsoft AzureのPaaSを最大限に活用することで、提供基盤を刷新しました。Azure Functionsを利用したサーバーレスの設計をとることで、サービス提供の安定化とアジリティの向上を実現。さらに、NoSQLである AzureDocumentDBをシステム上に組み込むことで、利用時の応答性を飛躍的に向上させています。

IMAGE WORKS のトップ画面

プロファイル

先端、独自技術と組織力を活かした SI事業を展開する富士フイルムソフトウエア株式会社。同社は、フォトイメージングやメディカルシステムなど、富士フイルムグループが展開する多岐にわたる事業において、その中核となるソフトウェアの開発と運用を担っています。

導入の背景とねらい
高まる顧客要件への対応を継続すべく、サービス提供基盤のモダナイゼーションを検討

富士フイルムソフトウエア株式会社 サービス本部 アドバンストソリューショングループ イメージワークスチーム チーム長 佐藤 力氏

富士フイルムグループの一員として、グループにおけるソフトウェア開発の中核を担う、富士フイルムソフトウエア株式会社(以下、富士フイルムソフトウエア)。同社が持つ強みは、グループ会社が保有する多種多様のコア技術とソフトウェア技術とを融合した開発力を有する点にあります。この強みをもって、富士フイルムソフトウエアでは、富士フイルムイメージングシステムズ株式会社が提供する「IMAGE WORKS(イメージワークス)」をはじめ、多くのサービスを世に生み出しています。クラウド型ファイル管理、共有サービスの IMAGE WORKSは、多くの上場企業や官公庁で採用されるなど、業務用途での活用において好評を得ているサービスです。富士フイルムソフトウエア サービス本部 アドバンストソリューショングループ イメージワークスチーム チーム長 佐藤 力氏は、このIMAGE WORKSの特長について、次のように説明します。

「IMAGE WORKSは、開発当初から個人ではなく企業へ向けたサービスとして、いかに安全かつ効率的にイメージ ファイルを共有するか、という点を追求してきました。企業向けというコンセプトから、データの所有者を『共有するユーザー』とするのでなく、あくまで『(契約いただいている)企業、組織』と定義し、それを前提とした機能を豊富に備えています。詳細な権限設定が可能な点はもちろん、共有する画像ファイルの1つひとつに『タイトル』『利用目的』『コメント』といった付帯情報をつけることができるため、制作や開発、回覧といった業務の工程にIMAGE WORKS自体を組み込むことが可能です」(佐藤氏)。

富士フイルムソフトウエア株式会社 サービス本部 アドバンストソリューショングループ イメージワークスチーム 渡壁 佑也氏

IMAGE WORKSは、クラウドコンピューティングの黎明期である2006年よりサービス提供を開始。その有用性の高さは、10年以上もの歴史の中で築いてきた多くの採用実績が証明しています。しかし一方で、長期にかけてサービスを提供してきたことを背景に、IT基盤側では課題も生じていたといいます。佐藤氏が語るとおり、業務フローの中にIMAGE WORKSを組込む企業は年々増加しています。顧客における同サービスの重要度合いが高まるにつれ、稼動率や機能拡張といった顧客から求められる要求も高度化することとなります。しかし、サービスの提供基盤には2006年当時の技術を踏襲した領域がいまだ多く残っており、こうした顧客要求へ迅速に対応することが難しくなっていたのです。この点について、富士フイルムソフトウエア サービス本部 アドバンストソリューショングループ イメージワークスチーム 渡壁 佑也氏は次のように説明します。

「サービスを提供する中で細かな改修、改良は進めてきたものの、基本的なアーキテクチャは 2006年に設計した構成を踏襲していました。従来技術への過度な依存は、特定の人に開発や保守作業が集中し、かえって生産性の低下を引き起こします。こうした環境では、作業を進めるために幅広いスキルが必要となり、結果それが新規開発者にとって、大きなハードルとなってしまうのです。また、決してアジリティが高い環境とはいえなかったため、機能拡張にあたっては『現在の基盤でそれが実現できるのか』という要素検討からスタートしなければなりません。これでは、お客様が求めるスピード感で機能実装することが困難となります」(渡壁氏)。

さらに、サービスの応答性についても問題になっていました。イメージファイルに紐づくさまざまな付帯情報は、業務フローへの組み込みという IMAGE WORKS特有のサービス価値を生み出しています。しかし、その柔軟さをRDB形式で実現していたために処理が複雑になり、サービスの応答性を落とすことにもつながっていたのです。富士フイルムソフトウエアでは従来の提供基盤が内包していた課題について、「開発生産性」と「機能拡張の効率化」、「サービスの応答性」の3つに分類。これらの課題を改善すべく、2016年2月より、提供基盤のモダナイゼーションを進めることに決定しました。

モダナイゼーションで改善を目指した課題
開発生産性 ・従来技術への依存が、新規に加入したエンジニアへのハードルを上げていた
・特定の人に集中する環境ゆえに、開発業務が分担できる体制を構築できなかった。そのため、1人のエンジニアに求められるスキルが多岐にわたっていた
機能拡張の効率化 ・「現在の基盤で実現できるのか」という要素検討から開発作業を開始せねばならず、顧客が求めるスピード感で機能拡張を進めることが難しかった
・不測の事態が発生した際にノウハウ不足で対応できないといった運用面の課題も存在した
サービスの応答性 ・ファイルの付帯情報が膨大にあるために、それがDBへのI/O 時に性能低下を引き起こし、応答性を下げていた

システム概要と導入の経緯、構築
Azureであれば、ファイル、ユーザーに付帯する膨大な二次情報も安心して預けることができた

富士フイルムソフトウエアではこれまで、データセンターに設置したオンプレミス環境のもとで IMAGE WORKSを提供してきました。しかし、データセンターを拡張していく従来手法のままでは、数年後、再び今回と同様の課題が発生することが予想されます。また、業務フローに組み込んで活用する企業が増加する中で、サポートに対する要求も高まっていました。24時間 365日のサポート レベルが求められつつあり、そこへの対応という観点でも、オンプレミスの運用には限界があったのです。サービスの稼動率を維持しながら、顧客ニーズへ迅速に対応する"攻めのIT"も実現するには、日々の定常業務をいかにシンプルかつ低負荷に行うかが重要となります。こうした理由から、同社はモダナイゼーションを進めるプラットフォームにおいてパブリッククラウドの採用を計画し、複数サービスの比較検討を進めました。この検討における比較項目として、佐藤氏はセキュリティと信頼性を挙げます。

「お客様のファイルを安全に取り扱うべく、高水準なセキュリティと信頼性を有することを条件にパブリッククラウドの検討を進めました。また、定常運用の業務負荷が削減できれば、その分のリソースを機能拡張やサポートへ割り当てることができます。そこでは、IaaSではなくPaaSを最大限に活用することが有効だと考え、『PaaSの豊富さ』も重要な比較項目に据えました」(佐藤氏)。

以上の比較項目のもと、富士フイルムソフトウエアはパブリッククラウドの選定を実施。マイクロソフトが提供するAzureともう1社のパブリッククラウドの2つのサービスで比較検証を進めた結果、2016年4月にAzureの採用を決定します。両サービスともに、各比較項目については高い水準のものを備えていたといいます。佐藤氏はそのような中でAzureを採用した理由として、データの保護性を挙げます。

IMAGE WORKSのシステム構成図。PaaSで構築した個々のサービスは、Azure Functions を利用しAPIベースで連携している

「IMAGE WORKS上のデータは、お客様の重要な資産です。当然、当社としては厳格に保護する義務がありますが、パブリック クラウドの場合、データセンターでの運用とは違ってこのデータの所有者が不明瞭になりがちです。この点について Azureは、『お客様のデータはお客様が所有』することを明記していたため、安心してデータを預けることができたのです」(佐藤氏)。

株式会社ゼンアーキテクツ代表取締役CEO 岡 大勝氏

ところで、長年オンプレミスの物理環境で運用を行ってきた富士フイルムソフトウエアにとって、PaaSを最大限に活用したプラットフォームの構築は大きなチャレンジといえました。そこで同社では、マイクロソフトのテクニカルパートナーであり、PaaSへの深い知見を有する株式会社ゼンアーキテクツ(以下、ゼンアーキテクツ)へ支援を依頼し、システムの設計を開始。同年7月より構築作業をスタートしています。ゼンアーキテクツは、エンタープライズ ソリューションに特化したアーキテクチャ設計事務所です。ゼンアーキテクツ 代表取締役CEO 岡 大勝氏は、新たに構築したシステムのポイントについて、次のように説明します。

「Web アプリケーションの実行基盤にWeb Appsを採用するなど、IMAGE WORKSの提供基盤にはPaaSを最大限に活用しています。特にポイントとして挙げられるのは、NoSQLデータベースのAzureDocumentDBとフルテキスト検索エンジンのAzure Searchを利用し、性能向上を図っている点です。性能向上において、RDB形式の場合はどうしても限界があります。思い切ってNoSQLの構成へ舵を切ることが、ボトルネックの解消には有効だと考えたのです。また、今回、オンプレミス サーバーとの連動といったAzure上のバック グラウンド処理をともなうイベントは、Azure Functionsで実行する設計をとっています。サーバーレスの利点である高い弾力性と運用負荷の削減が期待できました。さらにこれはマイクロ サービス化を進めることにもつながるため、アジリティの向上という面でも有効です」(岡氏)。

導入の効果
Azure Functions、Azure DocumentDB といったPaaS を最大限に活用することで、サービス提供の安定性と利便性の向上を実現

富士フイルムソフトウエア株式会社 サービス本部 アドバンストソリューショングループ イメージワークスチーム 千葉 勇輝氏

佐藤氏がチャレンジと表現したPaaSの本格活用ですが、同社ではその構築作業をわずか半年で完了しています。設計と構築作業をメインで担当した、富士フイルムソフトウエア サービス本部 アドバンストソリューショングループ イメージワークスチーム 千葉 勇輝氏と早田 大地氏は、早期の構築を実現できた理由として、APIベースでサービス間を連携する設計にした点と、マイクロソフトが整備する豊富なドキュメントの存在を挙げます。

「当社の開発形態はこれまでウォーターフォール型を標準としてきましたが、今回はアジャイル型を採用して開発を進めました。これは、Azureでの基盤構築について当社内にまだ具体的な開発方法が確立されておらず、未知な課題の存在を前提に、柔軟性をもって開発を進めるべきだと判断したからです。実際、構築においては当初構想しなかった問題もいくつか発生しました。ですが、PaaSはサービス単位でシンプルかつ省リソースに開発を進めることができ、Azure Functionsを利用することでこれらのサービス間を簡単に接続できました。当社にとって PaaSの本格活用は初の取り組みでしたが、結果として、ふだん慣れているオンプレミス開発と比べても遜色ないほどスムーズに作業を進めることができました」(千葉氏)。

「当初想定していなかった問題として、テスト用の小規模データから本番を想定した大規模データへ切り替えた際にそれがうまく動作しないということがありました。ですが、そうした場合でもマイクロソフトの開発者ネットワーク『MSDN (Microsoft Developer Network)』を参照することで、大半は自力で解決できました。Webサービス業界はトレンドの変化が非常に激しいため、構築の長期化はビジネス チャンスを逃すことにつながります。この観点からも、各種検証も含めて約半年という短期間でリリースまで到達したことは高く評価すべきだと思います」 (早田氏)。

モダナイゼーションを経た新たな提供基盤は、構築を完了した翌月よりモバイル サイトでの本番稼動を開始。2017年4月には適用範囲をサービスの全領域へ拡大し、正式稼動を開始しました。稼動開始からまだ間もないながら、佐藤 氏は今回のマイグレーションが、運用工数の削減やサービス提供の安定化といった面で、既に大きな効果を生み出していると笑顔で語ります。

富士フイルムソフトウエア株式会社 サービス本部 アドバンストソリューショングループイメージワークスチーム 早田 大地氏

「新たな提供基盤は、従来の環境と比較しシンプルになっているため、これまで特定の人に集中していた開発、保守作業の多くを標準化することができます。また、Azure Functionsを利用してAPIで各サービスをつなぐ設計をとったことで、現在注目されているマイクロサービス化を進めることもできました。仮にPaaSで構築したサービス単位でトラブルが発生した場合でも、サービス全体が止まるような事態を避けることができます。トラブル時だけでなく、停止せずに定期メンテナンスを進めることもできるため、稼動率やサービス提供の安定性は大幅に向上したといえるでしょう」(佐藤氏)。

Azure Functionsを採用した設計は、こうしたサービス提供の安定化にくわえて、リソースや機能拡張の迅速化という面でも有効です。PaaS上で新たなサービスを構築すれば、後は既存システムとAPIで連携するだけで実装できるため、そこでの作業に要するリードタイムを飛躍的に短縮できるのです。また、千葉氏は、イメージファイルのデータソースに Azure DocumentDBを採用したことで、サービスの応答性も大幅に改善できたと語ります。

「これまで10数秒を要することもあった応答時間は、約2秒にまで短縮することができています。応答時間の長短は、お客様の業務生産性に直結するため、これはサービス品質を高めるうえで非常に効果的だったと感じます」 (千葉氏)。

今後の展望APIエコノミーの方針のもと、顧客がメディア コンテンツを最適に活用できる世界を目指す既述のとおり、IMAGE WORKSへの顧客要求は年々高まりをみせています。今回のモダナイゼーションは、富士フイルムソフトウエアが今後この要求へ対応し続けるための基盤整備を実現したといえるでしょう。実際に同社では、顧客要求への先手の対応を行うべく、近々で動画や静止画の画像解析機能の実装を検討しています。また、富士フイルムソフトウエアでは、顧客側のシステムとAPIで連携するしくみをIMAGE WORKSで提供することも構想しています。佐藤氏はこの構想をもって、近年注目を集める「APIエコノミー」というテーマへもアプローチしていきたいと語ります。

「IMAGE WORKS内に保存したデータが、必要に応じて各種アプリケーションから活用いただけるような世界を構想しています。IMAGEWORKSは、企業のメイン業務に組み込むことでその効果が高まります。APIで他のアプリケーションとも連携できれば、そこでの効果はさらに向上するでしょう。こうしたサービスの進化を推し進めるべく、マイクロソフトやテクニカル パートナーには今後も、アイデアや技術面から支援を期待したいですね」(佐藤氏)。

メディア コンテンツ活用の目的は、企業ごと種々さまざまです。それゆえに、APIエコノミーをテーマに掲げたIMAGE WORKSのビジョンは、あらゆる企業のメディア コンテンツの最適な活用を支援するに違いありません。そこへ向けた富士フイルムソフトウエアの活動に、今後期待されます。

ユーザー コメント
「新たな提供基盤は、従来の環境と比較しシンプルになっているため、これまで特定の人に集中していた開発、保守作業の多くを標準化することができます。また、Azure Functionsを利用してAPIで各サービスをつなぐ設計をとったことで、現在注目されているマイクロ サービス化を進めることもできました。仮にPaaSで構築したサービス単位でトラブルが発生した場合でも、サービス全体が止まるような事態を避けることができます。トラブル時だけでなく、停止せずに定期メンテナンスを進めることもできるため、稼動率やサービス提供の安定性は大幅に向上したといえるでしょう」

富士フイルムソフトウエア株式会社
サービス本部
アドバンストソリューショングループ
イメージワークスチーム
チーム長
佐藤 力氏

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