沖縄を地盤に半世紀にわたって銀行業を展開する沖縄銀行。2021 年にはグループ 10 社でおきなわフィナンシャルグループを構成し、地域 DX に向けた取り組みを加速させています。社内 DX の推進で生まれたアイデアやノウハウ、さまざまなサービスを地域事業者の課題解決のため存分に活用し支援していく考えです。かねてより Microsoft 365 や Microsoft Surface などのマイクロソフト製品を活用してきたおきなわフィナンシャルグループでは、マイクロソフトと提携し、本店1階に「Microsoft Base Naha」を設立しました。さらに、社内業務効率化と顧客サービスの向上を目指した新デジタルサービス「more シリーズ」の内製開発に取り組みます。more シリーズは、Microsoft Teams と Azure Communication Services を連携させた顧客向け金融サービスの日本初事例となります。Azure PaaS によるローコード開発と Microsoft 365 を活用したノーコード開発の組み合わせにより 4 カ月でスピード開発しました。more シリーズがどのような効果を生み、沖縄地域にどう貢献するのか、取り組みの経緯と今後の展望を聞きました。
【導入パートナー】
株式会社おきぎんエス・ピー・オー
株式会社みらいおきなわ(株式会社おきなわフィナンシャルグループ)
「Microsoft Base Naha」を活用し、地域 DX を目指した新たな業務アプリを内製開発
おきなわフィナンシャルグループ(以下、おきなわFG)は、銀行業の沖縄銀行をコアに、総合リース業のおきぎんリース、クレジットカード業務のおきぎんジェーシービー、証券業務のおきぎん証券、IT 業務のおきぎんエス・ピー・オー(以下、おきぎんSPO)、コンサルティング業務のみらいおきなわなど、グループ 10 社で、金融と非金融の領域で横断的に事業を展開しています。
2021 年 10 月にはブランドスローガン「Create Value & Innovation ~おきなわの“新しい”をともに創る。~」を掲げ、お客さま、地域に対して“新しい”を共創し、より視野を拡げながら地域の皆さま、企業の未来を拓く存在になることを目指すことを宣言しました。沖縄銀行 総合企画部 部長代理 兼 おきなわ FG 総合企画部 部長代理 山城 斉一 氏は、こう話します。
「銀行を中心とした総合金融サービスグループから、金融をコアとする総合サービスグループへの進化のため、事業領域を拡大し、地域社会の価値向上と持続的な成長を目指します。その際には、デジタルを活用しながら地域の生産性向上を図っていく DX の取り組みが重要です。その一環として、2022 年 4 月にマイクロソフトとパートナーシップを結び『Microsoft Base Naha』を開設しました。マイクロソフトの技術を活用し、DX ロードマップに基づいた取り組みを進めることで、金融と非金融の融合、対面と非対面サービスを最適化した DX を加速させていく狙いがあります」(山城 氏)。
新サービス「more シリーズ」の開発を企画した、沖縄銀行 システム部 部長代理 兼 おきなわFG ICT統括部 部長代理 高宮 修二 氏は背景についてこう話します。
「Microsoft Base Naha の開設もあり、ビジネスへのクラウド活用を地域社会に伝え、地域 DX へ貢献することがおきなわFG の役割であると考えます。そのためには単に Microsoft 365 をお客さまへ紹介するだけでなく、よりビジネスを拡げる価値をプラスし、クラウドのスピード感や利便性を体験いただくことが大事と考え『more シリーズ』の開発に着手しました。開発フェーズでは、おきなわFG の強みである“グループ力”が存分に発揮できたと思います。グループ内のIT企業である『おきぎんSPO』が主に開発を担当し、『沖縄銀行』が技術支援、『みらいおきなわ』が情報支援といったグループ一体となって開発を進めることができました。現在は、沖縄銀行内で本格利用を進め、業務部門から出た改善要望をシステムへ反映することでノウハウを蓄積しています。今後は地域 DX を支援するツールとしてお客さまへご案内したいと考えています」(高宮 氏)。
Microsoft 365 と Azure を活用した新デジタルサービス「more シリーズ」を開発
「more シリーズ」は、Microsoft 365、Microsoft Azure(以下、Azure)などのマイクロソフト製品と連携し拡張することで「より柔軟」に「より速く」、“ビジネスのデジタル化”を支援するクラウドサービスです。これまでに面談予約システム「more Bookings」、Web 面談システム「more Teams」、ファイル授受サービス「more ShareFiles」の 3 つのサービスを開発しました。面談予約システムと Web 面談システムの 2 つは沖縄銀行での本番利用がスタートしており、大きな成果を上げています。
more Bookings | 面談予約システム (来店・Web 面談) |
Microsoft 365 のBookings と API 及びサービス連携した予約システム |
more Teams | Web 面談システム | Microsoft 365 の Bookings と Azure Communication Services を連携したビデオ通話及びチャットシステム |
more ShareFiles | ファイル授受サービス | AzureFiles を利用して安全なファイルの授受を実現するクラウドストレージシステム |
ローコードプラットフォームを活用しわずか 4 ヵ月でサービスをスピード開発したおきぎんSPO の山城 氏はこう説明します。
「お客さまはスマホや PC の Web ブラウザを使ってインターネット経由で予約を行うことができます。予約サイトは Azure App Service で構築されていて、登録された予約は Microsoft 365 の Microsoft Bookings(以下、Bookings)で管理され、職員はその予約状況を自分のスケジュールから見ることができます。予約の登録、変更、キャンセルは Microsoft Power Automate(以下、Power Automate)で自動的に検知する仕組みで、検知した変更は Microsoft Teams(以下、Teams)の指定チャネルに自動投稿されます。これにより職員はリアルタイムで通知を受け取ることができます。一方、Web 面談は、お客さまがスマホや PC の Web ブラウザから Teams を使って職員と面談できるサービスです。Azure Communication Services という Azure の通話サービス機能と Teams を連携させることで、お客さまは Web ブラウザだけで面談に参加でき、職員は普段から使っている Teams で面談を行うことができます」(山城 氏)。
サービス開発のポイントの 1 つは、マイクソロフトの PaaS をフル活用していることです。Microsoft 365 が提供する Bookings や Teams、Microsoft Power Platform のほか、Azure のサービスを組み合わせてサービスを効率良く開発しています。おきぎんSPO インフラ開発チーフ 謝敷 宗一郎 氏、おきぎんSPO 開発チーフ 森本 一生 氏はこう話します。
「PaaS をメインで開発することやハブアンドスポーク型ネットワークの活用を利用することで効率良く開発できることができました。PaaS はセキュリティや品質管理など非機能要件を満たす上でもとても有効でした」(謝敷 氏)。
「Power Automate などの活用で、職員は面談予約と Web 面談を自分の Teams 上に集約できます。Bookings のスケジュールと Teams のスケジュールの連携、Microsoft Office 製品との連携など、UI / UX を一から開発せずに機能を組み合わせるだけでサービスを構築できることはとても優れたところだと実感しました」(森本 氏)。
こうして開発された more シリーズは、TeamsとAzure Communication Services を連携させた顧客向け金融サービスの日本初事例となります。
新デジタルサービスへのチャレンジが組織改革とリスキリングを促進
more シリーズは社内業務の効率化にとどまらず、クラウドを活用した新しい業務のあり方の提案につながるデジタルサービスとなっています。おきぎんSPO 代表取締役社長 永田 真 氏はこう話します。
「おきぎんSPO は沖縄銀行向けシステムや社外向けソリューションを提供してきましたが、業務アプリや社内システムの開発はオンプレミスが基本でした。そのため、クラウド技術を使い新しい収益源の確保や地域 DX を視野に入れたサービスを開発することは大きなチャレンジでした。人材、スキル、知見やノウハウ獲得などの面でこれまでにない経験となりました」(永田 氏)。
新たなチャレンジということで、サービス開発にあたってはさまざまな課題に直面したといいます。おきぎんSPO 総合企画部 部長代理 山城 司 氏はこう話します。
「最初に困ったのは、Azure サービス開発のノウハウを持っている社員がほとんどいなかったことです。おきぎんSPO としても Azure でサービスを開発・提供した実績はありませんでした。沖縄銀行とタッグを組んで開発を進める際にどうスキルを獲得していければよいか、手探りの状態から始めなければなりませんでした」(山城 氏)。
また、取り組みの狙いや意図をどう社内に浸透させ、グループとしての一体感を醸成していくかも課題だったといいます。おきぎんSPO 永田 氏はこう話します。
「おきぎん SPO として新しいサービスを立ち上げるためにエース級の人材を集めたいという思いがありました。ただ、社内の各部署からすると優れた人材を引き抜かれることは戦力ダウンにつながります。人材の確保や育成、将来的なビジョンを含めて、グループとして喧々諤々の議論をしながら、熱意と覚悟を持って取り組む必要がありました」(永田 氏)。
そうしたなかでカギになったのが Microsoft Base Naha の存在でした。おきぎんSPO では組織変革に取り組む一方、みらいおきなわが運営する Microsoft Base Naha との連携を強化しており、マイクロソフトの技術を習得するためのハンズオンも Microsoft Base Nahaで行いました。Microsoft Base Naha が、トップから現場までが、DX ビジョン、スキル習得、ナレッジの共有までを行う場になっていたのです。
実際、ハンズオンの参加者が変革の現場リーダーのような存在になり、自分の上司やマネジメントにビジョンや施策を伝えることで、地に足のついた取り組みが進んだといいます。
沖縄銀行が「moreシリーズ」を活用した業務改革を実践
沖縄銀行でのサービス導入は沖縄銀行の業務革新部がリードし、実際に利用している部署は、営業推進部と法人事業部の 2 部署となります。沖縄銀行での導入を先導した業務革新部 上席 糸村 昌史 氏はこう話します。
「業務革新部は、ICT 機器を活用した業務効率化や BPR、社内 DX を推進している部署となります。システム部と連携しながら、Microsoft 365 や Surface などの製品やサービスの活用推進に取り組んでいます。世の中が大きく変わるなかで、銀行の店舗業務もこれまでとは異なるあり方が求められています。店頭に来られないお客さまがリモートで専門家に相談したり、そうした非対面のお客さまのニーズに銀行としてすばやく対応したりすることが重要になってきました。一歩先のサービスを提供することで、お客さまの要望に応えていこうとしています」(糸村 氏)。
また、業務革新部 調査役 安里 勝徳 氏は、今回のサービスの狙いの 1 つに、非対面と対面の融合があったとし、こう話します。
「お客さまもスマホに慣れてきていて予約などはできるだけ効率的に行いたいと思っています。一方で、悩みごとを相談したいというシーンでは対面でのコミュニケーションが重要です。デジタル技術を使った予約と Web 面談はそうしたお客さまのニーズに応えるサービスです。サービスの導入にあたっては、利用部門を募り、お客さま向けに新しい取り組みを希望している 2 つの部署に先行導入というかたちで協力いただきました。今回の取組みを通じて社内 DX を体感してもらいたいと考えています」(安里 氏)。
実際の利用シーンと効果について、法人事業部 調査役 東恩納 寛亮 氏、法人事業部 大城 麻衣 氏はこう話します。
「法人事業部での Web 面談の利用シーンの 1 つに税理士への税務相談があります。これまで税務相談はお客さまと税理士の先生に那覇の沖縄銀行本館に集まっていただき実施していました。税務相談のニーズはご高齢の方や遠方にいる方も多いのですが、そうした方はどうしても本館に集まることが難しいという事情がありました。そこで Web 面談を活用して、遠方から来ていただくことなく、税務相談や事業継承、M & A、相続などの相談ができるようにしたのです」(東恩納 氏)。
「お客さまだけでなく、行員自らがシステムを利用することもあります。M & A の税務など高度な知識が必要な場合、行員だけで対応することが難しい場合があります。そうしたときに、Web 面談システムを用いて、税理士などさまざまな専門家からアドバイスをもらい、業務に生かしています。また、今回予約のデジタル化により属人化や税理士とのスケジュール調整が合理化され全体で相談件数が約 2 倍にアップしています」(大城 氏)。
一方、営業推進部での利用における大きなポイントは、新しい顧客アプローチの方法が得られたことにあるといいます。預り資産統括グループ 調査役 渡嘉敷 涼子 氏はこう話します。
「これまではお客さまに提案したい内容を銀行側から発信するというかたちがどうしても多くなっていました。今回の新サービスでは、スマホアプリなどを通してお客さまが相談したい内容を予約します。そのため、お客さまのニーズに直接応えるかたちでサービスの案内が可能です。たとえば、資産運用、投資信託、NISA 、相続相談などに関して、お客さまとつながるための新しいチャネルとして利用することでお客さまのニーズに応えています。投資信託などの案内を行う場合も、ご予約いただいた内容や取引内容、ニーズなどから的確な提案ができるようになっています。お客さまの反応も良く、情報提供の幅が広がったことで、ビジネス面からもチャンスが広がっていると感じます」(渡嘉敷 氏)。
社内 DX によるノウハウを more シリーズとして地域の事業者に提供
今後は、予約・ Web 面談サービスの利用部門や対象業務を増やす計画で、それに向けて、県内 2 店舗において店舗への来店予約サービスとしての利用を開始しました。また、開発中のファイル授受サービス more ShareFiles の利用開始も準備が進んでいます。
さらに、地域 DX に向けたソリューションとしての提供も視野に入ってきています。
「新サービス開発にあたっては、おきなわFG 内のみで利用するのではなく、県内の事業者が社内 DX を推進するためのツールとして利用していただく目的としています。沖縄銀行での社内 DX を進める過程でノウハウをサービスへ蓄積し、more シリーズとして県内の事業者様に利用していただくことで、地域 DX をお客さまと一緒に推進していきたいと考えています」(高宮 氏)。
これは、おきなわFG が実践してきた組織変革や意識変革、Microsoft Base Nahaを活用した DX の取り組みを追体験し、さらに高められるという意味でもあります。マイクロソフトは、おきなわFG と沖縄地域の成長のスパイラルを今後も支えていきます。
[PR]提供:日本マイクロソフト