花王が DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みを加速させています。2018 年に、戦略的 DX の推進と先端技術を活用したビジネス変革を目指し先端技術戦略室を設立。DX のさまざまな取り組みを軌道に乗せ、2023 年からは DX戦略部門を設立して、事業部門とデジタル部門が一体となった新たな DX の取り組み体制を整えました。DX は、中期経営計画「K25」においても重要テーマに位置づけられています。そうした花王の DX のなかで中核的な取り組みとなっているのがシチズンディベロッパーの育成です。社員一人ひとりが変革のマインドと熱意を持ち、顧客視点での DX を推進する姿は、創業 135 年の歴史を持つ花王の DNA でもあると言います。DX の考え方からアプリ開発の現場まで、花王の変革の取り組みの今を聞きました。
DX を推進し循環型社会に貢献する「ESG 視点でのよきモノづくり」を
DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みは、ビジネスや企業のあり方そのものを変革する取り組みです。ただ、ツールやテクノロジーを導入しただけで取り組みが成功するわけではなく、社員の熱意やモチベーションが大きな推進力になるケースは少なくありません。1887 年の創業以来、消費者起点の「よきモノづくり」を通じて「人々の豊かな生活文化の実現に貢献する」ことを使命に活動を続けてきた花王も、そうした「企業としての心」を重視した DX を推進しています。
花王が循環型社会に貢献する「ESG 視点でのよきモノづくり」を目指し、DX の取り組みを本格化したのは 2018 年からです。2018 年に戦略的 DX の推進と先端技術を活用したビジネス変革を目指して「先端技術戦略室(以下、SIT)」を設立。ターゲット領域として、経営、事業、販売、研究、サプライチェーンマネジメント(SCM)、ロジスティクス、財務、人材、コーポレートアイデンティティ(CI)の 9 領域で取り組みを進めてきました。
この部署で培った知見を土台として、2021 年からは事業系の DX 推進に本格的に乗り出し、既存事業の変革を目的とした「コンシューマプロダクツ事業統括部門 DX戦略推進センター(DXCC)」と、新規事業創造を目的とした「コーポレート戦略部門 デジタル事業創造部」を立ち上げました.
さらに 2023 年 1 月には、それぞれの取り組みが軌道に乗りつつあることを踏まえ 、全社横断の DX戦略部門を設立しました。DX戦略部門は全社 DX デザインや全社横串で機能 DX を推進する DX戦略デザインセンターと、事業部と連携して事業 DX を推進する事業DX推進センターで構成されています。
DX戦略デザインセンター長の桑原 裕史 氏は、花王の DX における一連の取り組みについて、こう説明します。
「我々は、3 つのキーワードを意識しています。『能率と効率(Update and Efficiency)』『分母と分子(Maximum Value with Minimum Waste)』『もったいないを、ほっとけない。(Wastefulness-Mottainai. Never today, nor tomorrow.)』です。DX にはお客様やパートナー向けの External DX と社内向けの Internal DX の領域がありますが、特に SIT を中心に取り組んできた Internal DX は、この 3 つを重視して取り組みを進めています」(桑原 氏)。
こうした花王の全社 DX をツールやテクノロジー面でサポートしているのが Microsoft Power Platform(以下、Power Platform)を中心としたマイクロソフトのクラウドサービス群です。
DX の 3 つのキーワード「能率と効率」「分母と分子」「もったいないを、ほっとけない。」
花王のよきモノづくりの精神は、全社 DX 推進の 3 つのキーワードに含まれています。桑原 氏は 1 つめのキーワードである「能率と効率」についてこう話します。
「DX を最初に立ち上げた時は効率を良くすることを目指していました。アプリを入れて労働時間を年 1000 時間削減するといった取り組みです。しかしこれだけでは十分ではないとわかり、能率を上げることを目指しました。労力・コストあたりの成果(効果)だけでなく、一定時間あたりの成果(能力)を上げるものです。能率を上げるためには、社員にワクワク感を持って仕事に取り組んでもらうことや、現場を理解して伴走型で支援することがポイントになってきます。ムダワークやルーティンワークをカチ(価値)ワークやワクワークに変えていくといった訴え方をしています」(桑原 氏)。
2 つめの「分母と分子」は、非効率的な活動を分母に、創造的な活動を分子になぞらえ、企業としての力を高めていくことを示したものです。
「能率化で非効率的な活動のムダを削減しながら、創造的な活動に取り組むことで社員の生産性を上げていきます。例えば、非効率的活動を 10 分の 1 にし、創造的活動を 10 倍にすれば、単純計算で 100 倍の力を持つ企業に成長できます。ここで課題になるのは、分母と分子の取り組みをどう橋渡しするかです。全社 DX として社内 DX を行う部門と事業 DX を行う部門を統合した狙いもそこにあります。非効率的活動の削減と創造的活動の向上を同時に並行して進めることがポイントです」(桑原 氏)。
3 つめの「もったいないを、ほっとけない。」は、循環型社会に貢献する「ESG 視点でのよきモノづくり」に根差したイノベーションや企業姿勢を表すメッセージですが、DX やデジタル部門にもぴったりとあてはまるものだと言います。
「例えば、データが散在したり、埋もれたままになっていることに対して『もったいないね』、そんなにいいデータがあるなら『ほっとけないね』などと使います。Power Platform の利用についても Microsoft 365 に標準で付いている機能があるのに使わないのは『もったいない』、使える人がいるのに知らないままなのは『ほっとけない』となります。持続可能な社会の実現に貢献する企業姿勢を示したものですが、データ、デジタル、アプリ、人材を含めて全社 DX のキーワードにふさわしいものです。 3 つのキーワードは、OKR(Objectives and Key Results)に落とし込まれ、具体的な施策として実施されています。そのなかで最重要の取り組みの 1 つとして推進しているのが、Power Platform を活用したシチズンディベロップメント(市民開発)です。人材育成により、シチズンディベロッパーを 2025 年までに 1000 人育成することが我々の OKR の 1 つになります」(桑原 氏)。
Power Apps との出会い――「挑戦する花王の DNA × 先端技術の Power Platform」が可能性を開く
ここまで見てきたように全社 DX の取り組みは、組織改編やビジョンの提示といったトップのコミットメントのもと推進されてきた取り組みです。その一方で、花王の基本となる価値観の 1 つである「絶えざる革新」のもとで社員一人ひとりが自発的に実践してきた取り組みであることも重要です。現場起点のデジタル化やシチズンディベロップメントの取り組みが自然発生した背景について、DX戦略部門 先端技術戦略企画部 戦略コーディネーターの松下 芳 氏はこう話します。
「変革のマインドは花王が 130 年以上にわたって培ってきた DNA のようなものです。『花王石鹸』を発売した時から、花王は常に変化しながら、新しいことへの挑戦を続けてきました。それを花王では、『絶えざる革新』と呼んでいます。私が若い頃、先輩方から『会社も従業員一人ひとりも成長を続けるには、連続する変革の S 字カーブをどんどん飛び移っていくことが必要だ』と教わりました。私は、現在の社会における DX の取り組みは、DX という 大きな S 字カーブを駆け上がっているのだと思っています」(松下 氏)。
松下 氏は花王の主力工場である和歌山工場の工場長を経て、SIT のメンバーになりました。さまざまな先端技術を導入しながらデジタル化、DX を進めるなかで出会ったのが Microsoft Power Apps(以下、Power Apps)でした。
「和歌山工場長の時に、安全や訓練に関する技術をどう進化させていくかというテーマを検討していました。その時、国際宇宙ステーション(ISS)にある日本の宇宙実験棟『きぼう』のトレーニングでは、訓練した内容がきちんと理解されているか、身に付いているかを確認する手法としてスマートフォンの利用を検討していることを教えてもらいました。それ以来、スマートフォンに搭載できるアプリに注目していました。その後、SIT に異動してきてマイクロソフトさんに研究所で利用できる防災確認アプリの開発を相談したところ、Microsoft 365 に備わる Power Apps を使えば、自分達でアプリが作成できることを教わり、すぐ本を購入し、2 週間後には簡単なアプリを、そして数カ月後には防災確認アプリを完成させました。そのアプリは、現在も和歌山研究所で日々使ってもらっています。自分でスマートフォンにインストールできるアプリが作れたこと、そのアプリが、社内で使われ、業務改善に繋がり、とてもワクワクしたことを今でも鮮明に覚えています」(松下 氏)。
Microsoft 365 は花王の標準コミュニケーション基盤として採用されているため、Power Apps や Microsoft Power Automate(以下、Power Automate)などの Power Platform 製品は、誰でも手軽に利用を開始できます。松下 氏は、和歌山研究所の防災確認アプリを皮切りに、デジタル勤務表示板や感染症の報告アプリなどのさまざまな視点でアプリ開発に取り組んできました。そのなかで、松下 氏は、マイクロソフトの Power Apps についてこう語ります。
「Power Apps は、アプリ作成のエキスパートでなくても、ロ―コードについて勉強をすれば、スマートフォンやタブレット、パソコンで使うアプリを自分達で作成できるツールです。また、Power Automate で作成した RPA と連携させることもできます。これらを活用することによって、日々行っている業務の効率を上げたり、課題の解決を自分達でできます。またアイデア次第では、業務革新にまでつなげることもできると思いました。私は、このPower Apps に出会った時、花王のグローバルテクノスクールの教育理念である『心と技』という言葉を思い出しました。我々が脈々と受け継いできている『絶えざる革新』という花王の DNA(心)に、マイクロソフトの Power Platform という先端技術(技)を掛け合わせることで、いろいろなことが創造できると真剣に思いました」(松下 氏)。
現場起点で「感染症報告アプリ」「通勤回数確認アプリ」を開発、全社規模で利用
松下 氏が開発したアプリには、コロナ禍で社内の感染状況や社員の健康状況を確認するために全社規模で活用されている「感染症報告アプリ」があります。Power Apps を使いアプリを作ることができるようになった松下 氏が、感染症の報告やフォローで苦労している現場の課題をなんとかしたいという熱い思いを持っていた健康開発推進部の人達とつながり、お互いの知恵を出し合ったことにより完成したアプリです。現在、アプリは、花王の全国 12 の拠点で約 1 万 6000 名の社員のスマートフォンやタブレットにインストールされていて、体調不良時の報告や産業医と看護師、職場の上司、人事部などがオンラインで社員をフォローアップするのに活用されています。従来は、濃厚接触者や陽性判定者になった場合、120 項目の情報を Microsoft Excel(以下、Excel)の報告書に入力し、その情報をメールなどで共有しながら、社員が職場に復帰するまで人事担当や看護師がフォローを行ってきました。これを、スマホを使って社員一人ひとりが自分や家族の体調・状況を報告できるようにしたことで、大幅な時間削減を実現したのです。
「入力から対策本部による確認、職場復帰までのフォローは社員一人あたり平均して約 180 分かかっていましたが、報告アプリを活用することで、情報の入力や上司の確認、看護師の対応、対策本部の確認が大幅に減り、約 40 分で済むようになりました。また、看護師や人事担当は、情報を一元管理し、最新情報をリアルタイムで共有できるようになったことで、1 件あたりの作業時間は約 80 %削減しました。さらに、事業所別の陽性者数や、社員一人ひとりがどんなフォロー状況にあるかを把握したりすることで、会社として感染症の全体的な状況の把握が可能になり、社員の安全を守りながら事業を継続できるようになりました」(松下 氏)。
松下 氏の取り組みと時を同じくして人財戦略部門でも Power Apps を使った「通勤回数確認アプリ」の開発が進みます。興味深いのは、当初はそれぞれがどのような開発の取り組みを行っているかを知らなかったことです。人財戦略部門でアプリ開発を推進した人財戦略部門DX推進担当 齋藤 大輔 氏はこう話します。
「コロナ禍で出社や勤務の形態が大きく変わり、通勤費の精算業務が課題となりました。それまで、電車通勤の場合は定期代を通勤費として毎月定額給与支給していましたが、コロナ後は出社回数に応じて金額計算・給与支給する制度への変更が求められていました。そのため社員一人ひとりの出社状況を確認する必要があったのですが、制度の切り替えまで時間がなく外部にシステムを発注することも難しい状況でした。2 万人規模のデータを Excel 表を使って日本中から回収することも現実的ではありません。そんななか、Power Apps を使えば Excel を介さずに情報を収集できると考え、まずは自分なりに作ってみたのです」(齋藤 氏)。
Power Apps を利用すると簡単にアプリを作れることは知識としてはあったと言います。外部委託形式でのシステム開発にかかわった経験はありましたが、自分でプログラムを組んだ経験はゼロでした。それでも実際に手を動かしてみると、「(Power Apps は)Microsoft PowerPoint と Excel 関数を組み合わせたもの(齋藤 氏)」に近く、インターネット上の情報だけで思い描いたアプリが簡単に作成できたと言います。
開発を下支えした花王の変革マインド「走りながら考える(アジャイルに行動する)」
松下 氏と齋藤 氏が開発したアプリが全社に広がった理由の 1 つは、花王が変革のマインドを企業カルチャーとして持っていたことです。花王には、「走りながら考える」といったカルチャーがあります。松下 氏はこう話します。
「実際、齋藤はインターネットで情報を集め、基本機能のみの簡単なモックを作ってしまいました。それを上司が見て『これなら使えそうだ』と判断して、そのまま正式に開発がスタートしています。開発するためにディスカッションするより、まずは自分でできる範囲で作ってしまおうというスタイルです。もちろん、アプリを作っても必ず利用されるというわけではありませんから、ユーザーに利用してもらうための工夫や仕組み作りも併せて進めています。例えば、感染症アプリの場合、アプリをインストールしてもらうために、興味をひくような仕掛けも組み込んでいます。インストールしたことを報告する際に好きな花を併せて入力してもらい、花言葉を返すといったささいな仕掛けです。アプリ操作に慣れていないユーザーにとってもアプリに触れられるきっかけになり、心もほっこりします。アプリを導入するチームの立場からしても、アプリのインストール者数を把握でき、社員全員にアプリをインストールしてもらうという目標を管理できるメリットがあります」(松下 氏)。
通勤回数確認アプリにも利用を促す仕掛けがあります。齋藤 氏は人事業務の経験から、この通勤回数の確認作業自体がこれまで社員は行っていなかったものであり、アプリを利用したとしてもそれは社員の負担になることを懸念していました。
「そこで勤怠管理システムのデータをアプリに利用することで、アプリ上には日々の入退場データ、始終業申告時刻、さらに一定のロジックで算出したその日の通勤回数を表示することにしました。ユーザーは勤怠管理システムを開かなくても、アプリに表示されている数字を見て通勤回数の修正が必要な日のみを操作するだけで作業を終えることができます。実際、この機能はとても好評でした。また、アプリのパフォーマンスが悪いことで、ユーザーが入力したくなくなるケースも多いです。扱うデータ量が非常に多いため、ストレスなくアプリを利用できるようにデータの持ち方に工夫をすることで、ストレスのないアプリ操作を実現しました。これは過去に他部署にて外部ベンダーに依頼して開発した Power Apps アプリを精査したことで、その方法を発見することができました」(齋藤 氏)。
こうした社員による Power Apps を使ったアプリや Power Automate を使った RPA の作成などのシチズンディベロップメントの取り組みは、全国のさまざまな事業所で同時多発的に湧き起こっていたと言います。それを受けて花王は、会社としてシチズンディベロッパーを支援し、育成していく体制を整えています。
シチズンディベロッパーを「オープンバッジ」「交流アプリ」「FAQ アプリ」で支援
シチズンディベロップメントを支援するうえで最大限に活用したのも、Power Apps をはじめとしたマイクロソフト製品でした。取り組みをリードした DX戦略部門 全社DXデザイン部 主任の山崎 大輔 氏はこう話します。
「2022 年から、花王としてのシチズンディベロッパー像や支援のあり方について、マイクロソフトの担当の方と議論を重ねました。プロジェクト憲章の作成やプロジェクトメンバーの決定、支援体制の考案・構築に取り組み、そこで Microsoft SharePoint を使った情報の共有や Power Apps、Power Automate を使った共有アプリを開発していきます。当初のメンバーは 12 名で、SIT、情報システム部門、SCM部門などから人材を募りました。現在は、シチズンディベロップメントを企業文化として広げ根付かせるために、大きく 3 つのテーマを設け、施策を実施しています」(山崎 氏)。
3 つのテーマとは、自分の成長を可視化して確認でき、周りに伝えることができるという「自己の成長実感」、チャレンジする人がいてチャレンジが称賛されるという「心理的安全性」、自分の報酬や評価に直結することを明確にする「インセンティブ」です。
1 つめの自己の成長実感に関する施策では「Citizen Developerオープンバッジ」があります。一定のスキルレベルや開発への貢献度を持つ開発者を SIT が認定し、デジタル的なバッジを付与します。バッジは社内メールや情報共有サイトなどに表示して、自己の成長を実感したり対外的にアピールしたりできます。
「バッジのデザインや仕組みも自分たちで試行錯誤しながら作成しています。組織のロゴ画像は AI を使った自動生成の仕組みを活用しつつ、さまざま意見を交わして仕上げました」(山崎 氏)。
2 つめは心理的安全性に関する施策である「Citizen Developer交流アプリ」「Citizen Developer FAQアプリ」があります。交流アプリは「自分の身の回りの課題を解決する」ことをテーマに、シチズンディベロッパーとなる社員と実際の開発事例を検索できるアプリです。一方、FAQ アプリは、アプリ開発でつまずく点などを FAQ サイトに情報としてまとめ、それをすばやく検索できるようにしたアプリです。いずれも Power Apps や Power Automate を用いて開発しています。
「交流アプリも、FAQ アプリも、アイデアができてから数日でリリースできました。既存のデータを活用することがポイントで、例えば、FAQ アプリは、Microsoft Teams などで実際に交わされているコミュニケーションやデータのなかから関連する項目を Power Apps や Power Automate で自動的に抽出して、データの加工や整形といった工程を削減しています」(山崎 氏)。
まさに、能率化・効率化の取り組みを実践しつつ、新しい価値を提供しているわけです。
シチズンディベロッパーとしてすでに 700 名以上が登録、改革の担い手を育成していく
自分の報酬や評価に直結するインセンティブというテーマでは、新しい制度の導入を含めて、今後の実施を計画しています。例えば、改善活動への貢献や開発スキルの獲得に特別報酬を与えるなどです。スキル獲得が進むなかで、タレントマネジメントシステムなどとも連携しながら、人材の発掘やプロジェクトへの最適配置に活用するといった取り組みも視野に入ってきます。
こうしたシチズンディベロッパー支援の取り組みによって、人材の育成や社員の成長につながった事例も急速に増えていると言います。特徴的なことは、システム開発やアプリ開発にほとんど興味のなかった社員が、自らの担当業務のなかでのアプリ開発に携わることで、仕事の本質を考えるようになったり、自らアイデアを考えるようになり、アプリの改善を進める意識や態度が変わってきたことです。松下 氏はこう話します。
「ある関係会社では、チャレンジ活動を発表する会において、活動に関するポイントやコメントなどを Excel で集計する代わりに業務の効率化を図るため Power Apps を使ってアプリ化しました。私が原型を作って、2 年目からは開発未経験の相談に来た若手社員に引き継いだところ、本人は集計業務を実行するだけでなく、本質的な部分にも興味を持って『重要なのはコメントなので、コメントを入力しやすいような仕組みにしたい、将来はコメントなどを解析できるような仕組みを組み込みたい』など、どんどん自分の意見を出してきました。そのコミュニケーションの勢いのままで自らアプリのデザイン、改良を進め、非常に使いやすい UI に仕上げました。最終的にその若手社員の取り組みそのものが、大きなチャレンジだったということで表彰を受けました。イノベーションの源泉は、心であり、熱意であると実感しました」(松下 氏)。
DX が、ビジネスや企業のあり方そのものを変革する取り組みである以上、プロジェクトを成功させることは決して容易ではありません。取り組みを成功に導くポイントとして花王が特に重視しているのは「Speed」「Connected」「Motivated」という 3 つの要素だと言います。桑原 氏はこう話します。
「『Speed』 とは、挑戦をアジャイルに高速で行っていくこと。『Connected』とは、その為に、人とデータ、データとデータ、人と人とをどんどんつないでいくこと。『Motivated』 とは、挑戦する勇気を持った社員をどんどん増やしていくことです。DX は、花王の中期経営計画『K25』でも重要な取り組みに位置づけられます。DX を推進する体制をさらに強化し、トップによる強いリーダーシップとシチズンディベロップメントを中心としたボトムアップ、さらには課題を解決したいという熱い思いを持った人達とシチズンディベロッパーとをつなげて掛け合わせるといいたようなさまざまな方向からのアプローチで、花王らしい DX を進め、持続可能な社会の実現に貢献していきます」(桑原 氏)。
シチズンディベロッパーの登録者数は 700 名を超え、社内外での注目度も増すばかりです。現場起点で変革を続ける花王をマイクロソフトがサポートしていきます。
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