中小企業の活性化を目指し、経営コンサルティング事業並びに IT コンサルティング事業を展開するフォーバル。DX(デジタルトランスフォーメーション)の取り組みにも積極的で、自社で推進した DX の成果をデジタル技術の効果的な活用を模索する中小企業の DX 支援に活用しています。その一環として 2021 年 10 月 10 日(デジタルの日)に公開されたのが経営情報分析プラットフォーム「きづなPARK」であり、中小企業の経営状態を“見える化”し、DX 推進の足がかりとして機能するだけでなく、蓄積された企業の情報を“つなぎ”、共創による新たなビジネスを生み出すことを目標としています。中小企業の統合データベース基盤というコンセプトを持つ「きづなPARK」の構築にあたっては、Microsoft Azure の PaaS サービスである Azure Active Directory B2C(Azure AD B2C)と Microsoft Power BI Embedded が活用されています。なお「きづなPARK」は、フォーバルにとって、攻めの DX。つまり、ビジネスを変革し続け、価値提供の方法を抜本的に変える挑戦と位置付けられています。

DX 推進に苦心する中小企業に向け、データドリブンな経営を浸透させるためのプロジェクトを始動

常に新しいことに挑戦し続ける「革新」を理念に掲げビジネスを展開するフォーバルでは、自社の DX(デジタルトランスフォーメーション)で培った知見を活かし、中小企業の DX 推進を強力に支援しています。現代のビジネスで競争力を維持するためには IT の活用はもはや不可欠であり、業種や規模を問わず、あらゆる企業にデジタル技術を用いたビジネスモデル変革が求められています。とはいえ中小企業では、IT に関する知見や DX 推進のための人的リソースも十分でないケースが多く、その結果、ビジネスの競争力低下により経営状況に影響が出ている企業も少なくありません。こうした中小企業の課題を解決するため、フォーバルが着目したのが「データの利活用」でした。フォーバル アイコン事業本部 きづなPARK推進室 室長の今西 了一 氏は、こう語ります。

  • 株式会社フォーバル アイコン事業本部 きづなPARK推進室 室長 今西 了一 氏

    株式会社フォーバル アイコン事業本部 きづなPARK推進室 室長 今西 了一 氏

「フォーバルでは、約 45,000 社の中小企業向けに、経営コンサルティング、情報通信コンサルティング事業を展開してきましたが、中小企業の多くが IT や DX に対して漠然としたイメージしか持てていないのが現状です。当社の情報通信コンサルティングサービスには、IT 活用により確かなメリットを提供してきたという自負がありますが、その裏側では決算書類などの紙の情報をシステムに入力してデータ化するといった作業がかなりのウェイトを占めています。このノウハウを中小企業のお客様と共有し、データの利活用が容易に行える環境を作りたいという思いから、『きづなPARK』のプロジェクトはスタートしました」(今西 氏)。

現代の企業経営では、単なる収支だけでなく DX や ESG などの推進状況も重要になってきていると今西 氏。自社が他社と比較してどの程度取り組めているかという立ち位置を把握するためには、企業の経営状態を見える化することが重要であると語り、その起点として中小企業経営のための情報分析プラットフォーム「きづなPARK」を企画したと振り返ります。

「中小企業にデータドリブンな経営を浸透させるためには、わかりやすいレポートを作成できる仕組みが必要になると考えました。当社では経営リソースをヒト・モノ・カネ・情報・時間という 5 つに定義してコンサルティングを行っています。最終的には、これらのリソースすべてをデジタル化して効果的なデータ利活用によるデータドリブン経営を実現することが目的となりますが、クラウド会計などのシステムを導入して一気にデジタル化を進めるのは、中小企業にとってはハードルが高いのも事実です。このため、アナログな業務は残しながら、まずは紙の書類をアップロードしてデータとして蓄積するためのプラットフォームの構築を検討しました」(今西 氏)。

  • “攻めのDX”を体現する、経営情報分析プラットフォーム「きづなPARK」のトップページ

    “攻めのDX”を体現する、経営情報分析プラットフォーム「きづなPARK」のトップページ

データ利活用やプラットフォーム構築の経験が豊富な NSSOL が参画し、システム設計を推進

このような経緯で始動したフォーバルの「きづなPARK」プロジェクトでは、まずきづなPARK推進室を設立し、同社の社内システム構築・運用を担っている情報システム室と連携。最初のステップとして、企業の経営状況を“見える化”するためのプラットフォーム構築を検討しました。情報システム室にとって外部向けのシステム開発は初の取り組みであったため、データ利活用やプラットフォーム構築の実績があるパートナーの選定に着手したと、フォーバル 情報システム室の長井 英之 氏は語ります。

  • 株式会社フォーバル 情報システム室 ITサービス部 システム二課 課長 長井 英之 氏

    株式会社フォーバル 情報システム室 ITサービス部 システム二課 課長 長井 英之 氏

「きづなPARK推進室から話を聞いて、情報システム室の経験や知見だけでは対応が難しいと判断し、データ利活用やプラットフォーム構築のノウハウが豊富な外部パートナーの選定を進めました。中小企業のデータ利活用促進というビジョン在りきではあったものの、具体的な内容はまだ定めていなかったため、まずはきづなPARK推進室と RFP(提案依頼書)を作成し、複数の SI 事業者に提案してもらいました」(長井 氏)。

そして、複数の SI 事業者からの提案を吟味したフォーバルが、パートナーとして選んだのが日鉄ソリューションズ(以下、NSSOL)でした。提案段階から本プロジェクトに携わっている NSSOL IoXソリューション事業推進部 事業企画ユニット 部長の本堂 直浩 氏は、提案内容について次のように語ります。

  • 日鉄ソリューションズ株式会社 IoXソリューション事業推進部 事業企画ユニット 部長 本堂 直浩 氏

    日鉄ソリューションズ株式会社 IoXソリューション事業推進部 事業企画ユニット 部長 本堂 直浩 氏

「当社のデータ利活用やプラットフォーム構築における実績が評価され、2019 年秋にお声がけをいただきました。フォーバル様のビジョンを伺いビジネスの内容を検討していくなかで、システムを構築していくには、アジャイル型の開発が最適と判断。加えてビジネス展開に合わせたシステムを提供するため、クラウドサービスで完結できる形で提案させていただきました。ツールや開発もすべてクラウド上で展開できるものを選択し、柔軟にスケールできるシステムにすることで、コストの最適化も図れると考えました」(本堂 氏)。

フォーバルの長井 氏も「提案内容が優れていたのはもちろんですが、小さくスタートして大きく成長させていくという展開イメージが、当社のビジョンにマッチすると考えました」と、NSSOL をパートナーに選定した要因を語ります。

IT 環境の整備という“守りの DX”ではなく、「データ利活用」に着目した“攻めの DX”として推進

こうして NSSOL がパートナーとして参画し、2020 年春から「きづなPARK」プロジェクトは本格的に動き出しました。今回のプロジェクトでは事業デザイン自体が明確化されていなかったこともあり、両社交えたデザインシンキングによるデータ利活用のアイデア出しから携わったといいます。NSSOL IoXソリューション事業推進部 データソリューションアーキテクティングユニット 専門部長の畠山 康博 氏は、事業とデータ基盤の関わり方のブレインストーミングから関わることで、貴重な経験が得られたと本プロジェクトへの参画を高く評価しています。

  • 日鉄ソリューションズ株式会社 IoXソリューション事業推進部 データソリューションアーキテクティングユニット 専門部長 畠山 康博 氏

    日鉄ソリューションズ株式会社 IoXソリューション事業推進部 データソリューションアーキテクティングユニット 専門部長 畠山 康博 氏

「今回のプロジェクトでは事業デザインが明確化されていなかったことに加え、私たちも経営コンサルティングがどのようなデータ収集・整形・分析を日々現場で行っているのかを十分に理解できていませんでした。そこで、どのようなデータ基盤があればコンサルティングの業務に役立つのか、お客様にメリットを提供できるのか、というアイデア出しのところから参加させていただきました。SI 事業者としての領域を超えた形でプロジェクトに関与することができたことは、私たちとしても大きな経験になったと考えています」(畠山 氏)。

今回のプロジェクトでは、IT 環境の整備という“守りの DX”ではなく、「データ利活用」に着目した“攻めの DX”の観点で進められたと畠山 氏。「アイデア出しの段階から、データをどう活かすかをコンセプトとして話し合いを進めました」と語り、その実現にあたって Microsoft Azure(以下、Azure)で PaaS の活用を検討したと当時を振り返ります。

「クラウドの PaaS を活用し、サーバーレスでプラットフォームを構築するというのは最初の段階から検討しており、Azure の採用をベースとして考えていました。データをセキュアな状態で蓄積していけることを軸に、アジャイルでいけるところはアジャイルで、しっかりと要件定義して作り込むべき部分は時間をかけて構築するという形で設計を進めていきました」(畠山 氏)。

「きづなPARK」のシステム設計は、このように Azure の活用を前提として進められました。そのなかでは、Microsoft Power BI(以下、Power BI)の機能をシステムに埋め込んで顧客向けに提供する Microsoft Power BI Embedded(以下、Power BI Embedded)や、外部向けサービスの認証基盤を容易に構築可能な Azure Active Directory B2C(以下、Azure AD B2C)といった最新のソリューションが採用されました、開発チームの責任者を務めた NSSOL IoXソリューション事業推進部 データソリューションアーキテクティングユニット 第1グループ グループリーダーの髙橋 信太朗 氏は、Azure の機能を活用したシステム構成についてこう解説します。

  • 日鉄ソリューションズ株式会社 IoXソリューション事業推進部 データソリューションアーキテクティングユニット 第1グループ グループリーダー 髙橋 信太朗 氏

    日鉄ソリューションズ株式会社 IoXソリューション事業推進部 データソリューションアーキテクティングユニット 第1グループ グループリーダー 髙橋 信太朗 氏

  • Power BI Embedded によって作成される「きづなPARK」のレポートのサンプル

    Power BI Embedded によって作成される「きづなPARK」のレポートのサンプル

  • 経営診断レポートのサンプル画面

    経営診断レポートのサンプル画面

  • 中小企業版 ESG 判定レポートのサンプル画面

    中小企業版 ESG 判定レポートのサンプル画面

  • SaaS、PaaS、IaaSの比較

    SaaS、PaaS、IaaSの比較

「『きづなPARK』で最初に目指していた、『データを集めてレポートを作成し、中小企業の経営者に提供する』ことを実現するためのツールセットが揃っており、さらに今後やりたいことが増えても短期間で実装できることが、Azure を採用した決め手です。今回のプロジェクトでは、IaaS ではなく PaaS を利用することで構築・運用の負荷を軽減し、社内向けに使われる事の多い Power BI Embedded や Azure AD B2C を外部向けのサービスとして活用。さらに数多くの企業がデータ利活用を行うプラットフォームにするため、Azure SQL Database や Azure Data Factory を利用してマルチテナント環境を構築するなど、さまざまなチャレンジを行っています。なかでも挑戦的なプラットフォームを構築できた大きな要因は、フォーバル様との信頼関係だと感じています」(髙橋 氏)。

フォーバルは NSSOL のチャレンジングな提案内容を評価し、積極的に採用しています。長井 氏は Azure の PaaS のサービスを利用することのメリットについてこう語ります。

「短期間かつ少ないリソースでシステムを構築するためには、PaaS の採用は有効な一手でした。特にリリースした後の運用負荷軽減が見込めることは魅力的でした。実際 IaaS 上で構築していたとしたら、運用はかなり大変だったと思います。また、システムを止めたり、お客様に負荷をかけたりすることなくスケールを調整できることも、PaaS を採用したことによるメリットだと感じています」(長井 氏)。

また今回のプロジェクトでは、開発のコミュニケーションツール、開発基盤がそろった Azure DevOps を利用することで、情報共有とコミュニケーションを密接に進めることができたといいます。本堂 氏は「コロナ禍への対応もあり、システム構築だけでなく、プロジェクトの進め方そのものが新しいチャレンジでした」と振り返ります。

こうした最先端のサービスや機能の活用にあたっては、マイクロソフトのサポートが重要だったと髙橋 氏。「今回のプロジェクトでは GA 前の機能も積極的に採用しており、試行錯誤していくなかで、かなり深いところまで一緒に調べてくれたマイクロソフトのサポートには助けられました。その意味でも Azure の選択は正しかったと実感しています」と評価しています。

  • 「きづなPARK」のシステム構成図

    「きづなPARK」のシステム構成図

データの利活用を軸に、中小企業の“変革”を促すプラットフォームを目指していく

こうしてフォーバル・ NSSOL ・マイクロソフトの密接な連携により「きづなPARK」の構築はスムーズに進み、フォーバル内での運用を経て、2021 年 10 月に外部向けとして稼働を開始します。現在(2022 年 12 月時点)では、経済産業省の管轄する法人データベース gBizINFO と連携することで 500 万法人を超える企業の基本情報が蓄積されています。当初はビッグデータ集計による情報を発信する場としての機能のみを実装していましたが、2022 年 4 月には Azure AD B2C を活用して顧客向けにアカウントを発行してログインできるようになりました。現在、約 3,000 社の中小企業が利用しており、可視化された経営状況を使ってビジネスの拡大や DX 推進に取り組んでいます。さらに同年 10 月には他の企業とつながるための「共創エリア」をオープンしています。

自社だけではデータ分析・活用が難しい中小企業に対しては、コンサルティングサービスと連携し、フォーバルが GDX アドバイザーとして伴走することで効果的なデータ利活用を促進していると今西 氏は語り、ご利用いただいている企業からは喜びの声がすでに聞こえてきていると力を込めます。

「分析したデータを提示することで、社長とアドバイザーが同じ方向を向いて経営について話し合えるといった評価をいただいており、コンサルティングサービスを提供する担当の GDX アドバイザーにも大きなメリットが生まれています。また、経営データを見える化していることで、ご利用いただいている企業の大手取引先からきづなPARK の「中小企業版ESG判定」が高く評価されたという声も頂戴しており、経営情報の可視化、データ利活用の重要性を中小企業の経営者に認識していただくきっかけになっているという手応えを感じています」(今西 氏)。

現状はコンサルティングサービスと組み合わせた活用が主流ですが、今後は企業が自らデータを登録して分析・活用していけるようにしていければと今西 氏。さらに、立ち上げたばかりの共創エリアを充実させ、企業同士がつながることによる新しいビジネスの創出を目指していきたいと展望を語ります。

「『きづなPARK』は、中小企業経営の情報分析プラットフォームとしてだけでなく、複数の企業がビジネスの共創を考えていく場としての役割を持つことも見据えて開発・運用しています。共創エリアに関しては、社会や地域に貢献している中小企業で働きたいという学生と、IT リテラシーの高い社員を求める中小企業をマッチングする場を提供するなど、さまざまな取り組みを検討しており、今後も中小企業の“変革”を促す施策を展開していく予定です」(今西 氏)。

情報システム室の長井 氏は、「Power BI のマンパワーによる運用は効率化の余地があると考えており、NSSOL さんに相談しながら効率化を図り機能拡充に向けた開発に充てていければと考えています」と、システム周りにおける展望を口にします。これを受けて NSSOL の本堂 氏も「マイクロソフトの提供するサービス・機能を使ってどのような打ち手があるのかを確認し、フォーバル様の要望に対応していきたいと考えています」と語り、マイクロソフトの更なるサポートを期待しています。

「中小企業におけるデータ利活用」をコンセプトに、Azure の PaaS のサービスを活用して構築された「きづなPARK」は、フォーバルが積み重ねてきた経営コンサルティング、IT コンサルティングの実績を十二分に活用した“攻めの DX”の 1 つの解となります。SI 事業者である NSSOL が事業デザインの策定から関わり、Azure が提供する最新機能・サービスを積極的に活用したという観点でも注目すべきプロジェクトといえるでしょう。

フォーバル・ NSSOL ・マイクロソフトの共創により生まれた「きづなPARK」が、どのように中小企業の共創を実現していくのか、今後の展開にも注視していく必要がありそうです。マイクロソフトは、今後も支援を続けていきます。

[PR]提供:日本マイクロソフト