現在のようにグローバル化が加速する以前から、企業の競争力を高めるための「グローバルに通用する人材開発」というテーマについて 50 年以上にわたり事業を展開してきた、ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社。同社は、「行動変革」に強みを持つ、人と組織に関する課題解決の専門企業です。

行動変革を実践するうえで、学習環境の整備は不可欠だといえます。同社ではこれを支援するツールとして 2010 年より、学習効果を最大化するための「人材育成ポータル サイト」の提供を開始しています。2015 年にはクラウド環境 Microsoft Azure への提供基盤の移行を実施。安定したサービス稼動を省リソースで提供できるうえに、人材育成ポータル サイトの導入スピードも向上したことで、同サービスは、今では大手企業を中心に 33 社、70 万人ものユーザーが利用するソリューションへと成長しています。2016 年 12 月からは、次世代型クラウド・ラーニングサービス「Engagement Portal One (EP1)」として、より多くの顧客へ向けた提供を開始しています。

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社

プロファイル

「人や組織が、そのもてる力を最大限に発揮できるようお手伝いします ~充実感を伴ったパフォーマンス~」というミッションを掲げるウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社。同社では、最新の人間工学や産業心理学に基づくテクノロジと、そこへの積極的な ICT 活用をもって、全世界の組織、人の成長を支援しています。

導入の背景とねらい
70 万人ものユーザーが利用するサービス基盤を運用するうえで、従来の IT 基盤には限界があった

「人と組織の成長のパートナー」として、50 年以上にわたり人材開発のコンサルティングに携わってきた、ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 (以下、ウィルソン・ラーニング)。豊富な実績の中で培った技術とノウハウに基づき世界 40 数か国で人材教育サービスを提供する同社は、人と組織の課題解決の専門企業といえます。

行動科学や産業心理学などに基づいた独自のメソッドによる同社のソリューションは、「行動の変革」という点を大きな強みとしています。

長年、人材開発を専門として事業を展開してきた同社ですが、ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 取締役執行役員 児島 研介 氏は、近年、ソリューションを提供するうえで ICT の担う役割が高まってきていると語ります。

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
取締役執行役員
児島 研介 氏

「当社ソリューションは、学習を構造化、体系化した独自メソッド『ラーニングオブジェクト』とそれをインストラクターが伝えるための教則『リーダーズガイド』により、インストラクションの標準化を実現しています。メソッドは綿密にオブジェクト化されているので、必ずしも対面型の研修である必要はありません。そのため、対面に限らない教育提供の可能性を探るべく、マルチメディアを活用した研修をレーザー ディスクの普及期から開始したり、そこに双方向性を持たせるべく e ラーニングの提供も早い段階から進めたりと、ICT 活用を積極的に行ってきました。近年はネットワークや各種技術の進化により、この可能性をより高度に実現可能なフェーズとなっています」(児島 氏)。

ネットワークや各種技術が大きく発展したことを受け、同社では 2010 年より「人材育成ポータル」というサービスを開始しました。単に e ラーニングの受講管理や、集合研修の申込管理という目的のラーニング システムは既に市場に存在するものの、そのようなラーニング システムでは、学ぶことに義務感、やらされ感が生じてしまい、結果、学習効果が定着しないという課題を多くの企業が抱えていたといいます。

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
iCT&クラウドサービス本部
シニアソリューションコンサルタント
岡 憲明 氏

当社の「人材育成ポータル サイト」では、企業のトップから「こんな人材に育ってほしい」というメッセージを発信するほか、社員が学んだ経験とその効果を文字や動画で共有する機能、それに対して共感を示す機能などを備えることで、登録した社員が「自発的に学びたい」と感じる環境づくりを優先しています。さらに、実際に同社が提供する多くのサイトでは、企業側が用意する学びの機会に関する情報を、集合研修、外部のセミナー、e ラーニングといった形態の垣根を超えて検索できるようになっており、受講者は場所と時間の制約を感じずに学習ができるのです。

提供開始から 6 年を経た今、クラウド環境でポータル サイトを構築した企業は金融事業者やメーカー、飲食業など大手企業を中心に 33 社に達し、その登録者を合計すると 70 万もの人が、アクセスしています。

多くのユーザーに利用される「人材育成ポータル サイト」ですが、その成長過程では、運用面における大きな課題を乗り越える必要があったといいます。ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 iCT&クラウドサービス本部 シニアソリューションコンサルタント 岡 憲明 氏は、次のように語ります。

「2014 年時点で 10 数社、数 10 万人というユーザーに利用いただける規模にまで成長しました。しかし、ここで大きな壁に直面したのです。お客様が抱える人材面の課題は各社で異なるため、基本的には実装する機能やコンテンツの設計をゼロから行い、カスタマイズで開発する形となります。さらに大規模組織での利用や、大人数での同時利用など、サービスの提供基盤をスクラッチで開発する必要性も顕在化してきました。しかしながら、当時はクラウドではなくホスティング サービスを利用していたため、柔軟なシステム リソース管理や、大規模利用のお客様への専用サーバー環境でサービスを提供することが難しく、多様化するお客様のご要望へ対応するのに苦慮している状況でした」(岡 氏)。

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
iCT&クラウドサービス本部
シニアテクノロジーコンサルタント
小島 正義 氏

これまで提供基盤には高いセキュリティと信頼性を有する国産ホスティング サービスを利用していましたが、同環境が抱えていた課題について、ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社 iCT&クラウドサービス本部 シニアテクノロジーコンサルタント 小島 正義 氏は、次のように説明します。

「たとえば月初めに社員向け研修プログラムを実施するお客様の場合、当然ですが月初にアクセスが急増します。こうしたピーク タイムは各社で異なるため、高負荷時でもリソース不足にならないよう運用するには相当の工数を要しました。またホスティングの場合、リソースの増強に多くの時間がかかるため、トラブル時における対応速度にも課題がありました。お客様の要望に沿って新たな機能を拡張する際にもかなりの時間と工数が求められます。サイジングも綿密に行う必要があるため、結果としてサービス提供や拡張までのリード タイムが長期化したり、最大レベルのサイズを想定することで提供コストが高くなったりということが発生していました。そこで、より多くのお客様へ安定したサービスを提供するには、提供基盤自体を見直す必要があると考え、2014 年より検討を開始しました」(小島 氏)。

システム概要と導入の経緯、構築
信頼性、セキュリティ レベル、従来環境との親和性という観点で、Azure 以外の選択肢はなかった

運用工数の削減と柔軟なリソース増減に対応できる基盤として、ウィルソン・ラーニングではクラウド サービスの採用を前提に、Azure を含む複数サービスで比較検討を実施。そこで注視されたのは、「セキュリティ レベル」と「データ センターの所在地」の 2 点です。

人材育成ポータル サイトを利用する顧客の中には、従業員規模が 1 万人を超える大手企業もあります。中でも金融事業者の顧客からは、サービス基盤に求められるセキュリティ レベルが非常に高かったのです。加えて金融事業者特有の要件として、データの所在が国内にあること、万が一の場合に備え国内にデータ バックアップ拠点があること、という要件も存在しました。

この点について、岡 氏は「Azure はグローバル レベルのセキュリティを有するだけでなく、ディザスター リカバリ拠点も含めて東西 2 か所にある国内データ センターで情報が管理されます。他社サービスと比較し、当社が求める要件に適していました」と、Azure を評価します。

また、小島 氏は移行や運用面においても Azure には大きなメリットがあったと続けます。

「当社ではもともとデータベースに SQL Server を利用していました。同じマイクロソフトが提供する Azure は当然これらとの親和性が高く、既存のお客様向けに運用しているシステムのスムーズな移行や、従来の運用フローを踏襲しつつ、クラウドの利点である柔軟なリソース調整、その自動化に伴う運用工数の最適化が図れるという期待が大きかったです。また、Azure が数多く提供する PaaS を活用すれば、運用工数の最適化に加えお客様の要望に沿った拡張性も持った基盤が獲得できると考えました」(小島 氏)。

高いセキュリティ レベルと国内データ センターによる情報管理、さらに運用面や拡張性の利点を評価し、同社は 2014 年 7 月に、提供基盤を Azure へ移行することを決定。2015 年 1 月には既存顧客の全システムについて、旧ホスティング サービスから Azure への移行を完了しています。

Azure 上で運用する人材育成ポータル サイトのシステム イメージ。基本的にはマルチ テナントでの提供となるが、お客様の要望によってはシングル テナントで提供する場合もある

導入製品とサービス

  • Microsoft Azure

  • Microsoft SQL Server

導入メリット

  • Azure が備えるスケーラビリティと優れた操作性、豊富なドキュメントにより、属人化しつつあった業務を標準化。開発と運用に要する工数が削減されたことで、人的リソース量は変えず、従来の 2 倍以上のユーザーが利用するサービスの安定稼動を実現

  • 温存できた人的リソースを新規案件への対応やこれまで取り組むことができなかった「攻めの ICT 活用に割り当てることで、顧客と市場の拡大を行うことができた

  • 豊富な PaaS/SaaS を備える Azure をプラットフォームに採用したことで、AI をはじめとする最新テクノロジをもった機能拡張が目指せるようになった

導入の効果
70 万人以上が利用する環境の安定稼動を実現。市場拡大を目指す「攻めの ICT 活用」の取り組みも開始

ホスティング サービスから Azure へ提供基盤を移行したことで、リソース管理の柔軟性が向上。これは、サービス提供の安定化と運用リソースの最適化に大きく貢献しています。

「ピーク タイムを常に意識する必要があった旧環境と比較し、リソースを柔軟に増減できる Azure では、運用側の工数を大幅に抑えることができています。サービス提供を安定化できたことも大きな効果ですが、これまで管理に要していた工数を開発面へ割り当てられるようなったことが一番のメリットだと感じます。サイジングをはじめとする設計フェーズの工程も短縮できるため、より多くの新たなお客様に当サービスを利用いただけるようになりました」(岡 氏)。

こうした顧客数の増大は Azure への移行を行ったからこそ実現できたと、小島 氏も続けます。

「当部門の人数は基盤移行の前後で変化していません。同じ人的リソースで従来と比べ 2 倍以上ものユーザーが利用する環境を運用できるようになり、これは以前の環境では不可能だったといえるでしょう。Azure ゆえのスケーラビリティももちろん起因していますが、何よりも運用業務を標準化できたことが大きいです。Azure の場合、利便性の高い管理画面を備え、Web サイト上にはドキュメントも充実しているため、運用の知見をスムーズに部内で共有、均一化できます。これはサービスの安定提供や運用負荷の最適化に大きく貢献しています。ここで温存できた人的リソースを、新規案件への対応だけでなく、これまで取り組むことができなかった『攻めの ICT 活用』へも投じています」(小島 氏)。

この「攻めの ICT 活用」は、既に具体的な形として現れています。ウィルソン・ラーニングでは、2016 年 2 月、従来の顧客層からさらに間口を広げたサービスを提供すべく、新たなプロジェクトを開始。同年 12 月より、「Engagement Portal One (EP1)」と銘打った新サービスを提供しています。

EP1 の概要と特長について、児島 氏は次のように説明します。

「従来お取り引きのある規模のお客様以外にも人材育成ポータル サイトを利用いただけるよう、EP1 を開発しました。EP1 はこれまでの人材育成ポータル サイト導入経験のなかから、多くの企業に共通して必要な機能とサービスを集約しパッケージ化し提供することで、開発費、利用料をミニマムにしています。3 年間で 100 社への導入を目標にしていますが、こうした市場拡大へ向けた取り組みは、提供基盤を Azure へ移行したからこそ構想し、そして具体化できたといえるでしょう」(児島 氏)。

EP1 は、従来のカスタマイズ開発に比べ、初年度費用で約 1/2、運用開始までのリード タイムは約 1/3 の 1 か月半で利用できる

今後の展望
PaaS/SaaS を積極的に活用することで、ソリューション価値のさらなる向上を目指す

提供基盤を Azure へ移行したことで、これまで以上に多くの、そして多岐にわたる顧客に人材育成ポータル サイトを利用いただけるようになったウィルソン・ラーニング。小島 氏が語った「攻めの ICT 活用」は、こうした市場拡大の方向だけでなく、既存顧客へ提供するソリューション価値の向上という点でも、さまざまな構想が練られています。

児島 氏は、Azure が提供する PaaS を活用することで、これまで実装できなかった機能を拡充していきたいと意気込みます。

「人材育成ポータル サイトの効果を高めるには、ユーザーが『ここへアクセスすれば有用な情報が得られる』と実感し、能動的に利用されることが重要です。そこへ至るには『困っていたことを解決するのに役に立った』というユーザー体験を生み出さねばなりません。たとえば AI の機能を提供する Azure Cognitive Services にある Recommendations API を活用すれば、パーソナライズ化したアシスタント機能の精度をより高めることができ、先の「役に立った」体験の創出に大きく貢献するでしょう。また、Face API や Emotion API は、教育効果の見える化や、ユーザーを教育する研修者側の教育へ活かすことができます。こうした新たな価値を現ソリューション内に実装すべく、現在、定期的に当社のお客様同士の交流会を実施しており、先日はマイクロソフトから人材育成における AI の活用可能性について説明がありました。お客様にご意見をいただきながらカスタマイズで機能開発し、そのなかから EP1 で標準化すべき機能を検討し、搭載するというサイクルをもって、ソリューションの価値をより高めていきたいと考えています」(児島 氏)。

このようなサービス拡張を通じ、顧客企業とユーザーの数はますます増加することが予想されます。そうした状況を見通し、小島 氏は運用面においても、PaaS や Azure 上の機能を積極的に利用し、運用の最適化を目指していくと続けます。

「現在は Azure Virtual Machines をベースとして、Web サーバーとアプリケーション サーバー、データベースを構築していますが、これらを PaaS 化すれば、運用工数はまだまだ削減できます。近い将来、Web 周辺は Azure Web Apps へ、データベースは Azure SQL Database へ移行していきたいですね。当社が持つ行動科学や産業心理学のノウハウをより多くの企業へ、最適な形で提供し続けられるよう、マイクロソフトには今後も、テクノロジ面からの支援を期待しています」(小島 氏)。

ウィルソン・ラーニングが持つ、人と組織の課題解決に関する専門性は、今後「社員を学習に惹きつけ成果を共有するためのツール」「一人ひとりに適したコンテンツを提供するためのツール」として ICT が機能していくことで、これまで以上に高い価値をもって顧客へ提供されていきます。

ユーザー コメント
「従来お取引がある規模のお客様以外にも人材育成ポータル サイトを利用いただけるよう、EP1 を開発しました。EP1 はこれまでの人材育成ポータル サイト導入経験のなかから、多くの企業に共通して必要な機能を集約しパッケージ化し提供することで、開発費、利用料をミニマムにしています。3 年間で 100 社への導入を目標にしていますが、こうした市場拡大へ向けた取り組みは、提供基盤を Azure へ移行したからこそ構想し、そして具体化できたといえるでしょう」

ウィルソン・ラーニング ワールドワイド株式会社
取締役執行役員
児島 研介 氏

(マイナビニュース広告企画:提供 日本マイクロソフト)

マイクロソフト法人導入事例サイトはこちら

[PR]提供: