中堅中小企業向け ERP ・基幹業務システムを 40 年超にわたって累計 6000 社に提供してきた FutureOne が、基幹業務パッケージ「InfiniOne®」シリーズのクラウド対応を加速させています。VB.NET や C#、Azure DevOpsといったマイクロソフトの開発技術を活用してアプリケーションを開発してきた同社は、マイクロソフト製品に限らず、他社データベースやオープンソースの活用にも積極的に取り組んできました。そんな同社がクラウド移行を進めるにあたって抱えた課題の 1 つが、データベースのライセンスと運用コストです。クラウド化でポイントになった Azure Database for PostgreSQL の採用経緯を中心に、FutureOne が Microsoft Azure をどう活用し、顧客にどんな価値を提供しようとしているのか聞きました。

6000 社が採用する中堅中小企業向け ERP ソリューションで、企業価値の向上を支援

「社会の礎を担っている中堅中小企業向けに高品質な ITソリューションを構築/提供し、企業価値の向上を実現していただくために全力を尽くす」を企業理念に、ERP ・基幹業務システムや販売管理システムをソリューションとして展開する FutureOne。1990 年代から自社開発の ERP パッケージ製品の開発・提供を手がけ、パートナー導入事例も含めると累計 6000 社以上に採用されています。

取締役 研究開発管掌 松下 聖彦 氏は、同社のビジネスの特徴と現在の主力製品である基幹業務パッケージ「InfiniOne®」が提供する価値についてこう話します。

  • FutureOne株式会社 取締役 研究開発管掌 松下 聖彦 氏

    FutureOne株式会社 取締役 研究開発管掌 松下 聖彦 氏

「提供するソリューションの強みは、これまで多くのお客様の業務要望にカスタマイズ対応し、そこで経営効果や価値提供してきた知見や工夫が自社開発しているパッケージに蓄積されており、それらを武器に新たな価値をお客様に提供していける点にあります。その価値の連鎖の実現を支える仕組みとして、InfiniOne® の中核となっている InfiniOne Core があります。InfiniOne Core では、部品化合成法という画一的な開発規則に則ってカスタマイズ対応できるため、属人性を排除し、保守性が高く、変化に柔軟に対応できる基幹システムを提供・運営することができます」(松下 氏)。

ビジネス環境が大きく変化し、人手不足も深刻化するなかで、多くの中堅中小企業は限られたリソースを駆使して逆境に立ち向かわざるを得ない状況です。そんな企業を支援していくため、FutureOne では、さらなる企業価値の向上に向けて新しい取り組みをスタートさせます。それが InfiniOne® のクラウド対応と提供コストの低減です。テクノロジー本部 製品開発グループの清水 省吾 氏はこう話します。

  • FutureOne株式会社 テクノロジー本部 製品開発グループ 清水 省吾 氏

    FutureOne株式会社 テクノロジー本部 製品開発グループ 清水 省吾 氏

「InfiniOne® になる前の旧製品はもともとクライアントサーバシステムとして開発され、Windows OS や Visual Basic といったマイクロソフト技術の環境で発展してきました。現在はアーキテクチャ部分の開発言語に C#、業務アプリケーション部分の開発言語に VB.NET を活用しています。また、データベースはこれまで Oracle Database を主に利用してきました。そんななか、ここ数年でクラウドの普及が進み、当社のお客様からもクラウドへの対応要望が高まるなかで、新しいシステム環境が必要になってきました。そこで注目したのが Microsoft Azure(以下、Azure)です。当社製品を支えるマイクロソフトの技術と Azure の親和性に加え、オフィス製品としてもお客様の身近に存在するマイクロソフトの技術や Azure のさまざまな機能を活用することで、お客様が新しい時代に対応できる新しいサービスが提供できるようになると考えました。その後、Azure への対応を段階的に進め、現在では、InfiniOne® の標準環境として Azure を選択できるようになっています」(清水 氏)。

Azure を活用する InfiniOne® は、荒波のなかで難しい舵取りを迫られている中堅中小企業にとって大きな助けになろうとしています。

自社パッケージ「InfiniOne®」のクラウド対応にあたり、Azure のマネジメントサービスを積極的に活用

InfiniOne® が標準環境として Azure を採用した大きな背景には、InfiniOne® の特徴である、機能性、生産性、保守性をさらに高める狙いがあったといいます。

機能性とは、カスタマイズした部分に対して標準機能が自動的に展開されること、生産性とは、再利用可能な形に整理されたアプリパーツを使用して品質を保ちつつ高生産性を実現すること、保守性とは、開発ルールの徹底・標準化によりシステム保守の課題である属人化を排除することをそれぞれ指しています。テクノロジー本部 インフラデザイングループ 小山 大進 氏は、こう話します。

  • FutureOne株式会社 テクノロジー本部 インフラデザイングループ 小山 大進 氏

    FutureOne株式会社 テクノロジー本部 インフラデザイングループ 小山 大進 氏

「InfiniOne® はマイクロソフトの技術を全面的に採用したサービスです。そのためクラウド選定では、当社製品の技術要素やサポートとの親和性が高いことが重要でした。特に、お客様の多くは中堅中小企業ですから、Windows や Microsoft Excel と同じ操作性でアプリケーションを利用できることは大きなポイントです。他のクラウドで Windows Server を動作させることはできますが、やはり Windows OS と同じ企業のクラウドであることは、顧客に安心感を与えることにつながります。加えて、開発から運用までさまざまな PaaS サービスが提供されていることも大きな魅力でした」(小山 氏)。

PaaS サービスというのは、例えば、アカウント管理のための Azure Active Directory(Azure AD)や運用のための Azure Monitor、バックアップや BCP 対策のための Azure Backup、開発と運用を効率化する Azure DevOps といったサービス群です。Windows の資産を活かしながら、安定した信頼できる環境に移行することで、機能性、生産性、保守性がさらに高めることができるというわけです。

もちろん、InfiniOne® 自体は、.NET Framework が稼働するサーバーと商用データベースサーバーを用意することで、オンプレミスだけでなく、Azure 以外のさまざまなパブリッククラウドで利用できるサービスです。ただ、その場合、データベースを中心に、コストや運用の負担が増えていく懸念があったといいます。テクノロジー本部 製品開発グループ 志村 空 氏はこう説明します。

  • FutureOne株式会社 テクノロジー本部 製品開発グループ 志村 空 氏

    FutureOne株式会社 テクノロジー本部 製品開発グループ 志村 空 氏

「1990 年代に Oracle Database を当社製品の標準データベースとして採用しました。その後、IBM DB2 Database や Microsoft SQL Server といったデータベース製品にもお客様によっては個別に対応してきたことはありますが、既存資産を有効活用して価値を提供しやすい形として Oracle Database を積極的に提供してきました。ただ、クラウド環境でより柔軟にサービスを提供しようとすると、お客様が負担するデータベースのライセンスや運用の費用は課題につながります。データベースを中心にコストの課題をどうスムーズに解決するかが今後クラウドを活用していく際の大きなポイントでした」(志村 氏)。

クラウド移行に伴いデータベースサーバーを Azure Database for PostgreSQL に標準対応

クラウド対応自体は、InfiniOne® のシステム全体を Azure の IaaS 上に移行することで比較的容易に実現することができます。実際、FutureOne では 2015 年から Azure Virtual Machines の利用を開始し、2017 年には、Azure Virtual Machines を利用した InfiniOne® の提供を開始しています。

ただ、データベースを中心にしたコスト課題を解消するためには、さまざまなアプローチの検討が必要になったといいます。例えば、オープンソースソフトウェアのデータベースサーバーを IaaS 上に構築するものから、データベースのクラウドサービスである DBaaS を利用するものなどです。

それらのなかで最終的に FutureOne が選択したのは、Oracle Database で実装された既存アプリケーションとの互換性が高く、特定ベンダーの技術要素に依存しないコミュニティエディション版の PostgreSQL が Azure 上で DBaaS として提供されている Azure Database for PostgreSQL でした。

Azure ネイティブの環境で他のサービスを組み合わせながら管理することで、ライセンスコスト、運用・メンテナンスの負担、堅牢性・高信頼性といった課題やニーズをまとめて解決したのです。志村 氏は、Azure Database for PostgreSQL を採用した理由をこう解説します。

「Azure Database for PostgreSQL を利用すると、これまで利用していた Oracle Database と同等の信頼性や堅牢性を確保しつつ、さまざまなコストを削減することができます。基盤の保守メンテナンスをマイクロソフトが行ってくれるマネージド型サービスであるため、データベースサーバーの構築や維持の負担を大きく軽減できます。また、サーバースペックの増加時にもライセンスの購入の必要性はなく、柔軟なデータベースの性能拡張が可能になります」(志村 氏)。

もちろん、Oracle Database を利用する顧客は、引き続き Oracle Database の魅力である高パフォーマンスや高信頼性といった特徴を継続して提供していく形となります。一方で、新たにクラウド環境で InfiniOne® を利用し始める顧客や、オンプレミスからクラウドへ移行する顧客は、Azure と Azure Database for PostgreSQL の環境を選択することでデータベースを含めてサブスクリプション(従量課金)でサービスを利用できるようになりました。

Azure Database for PostgreSQL は、2022 年 6 月から提供された InfiniOne® バージョン 1.5から利用できるようになっています。

マイクロソフトの PaaS サービスを活用することで、機能性、生産性、保守性が向上

InfiniOne® バージョン 1.5 では、新しいデータベースの採用以外にも、さまざまなアップデートが施されています。まず、より直観的に利用できるユーザーインタフェースへの刷新が行われました。業務画面を一目で情報把握しやすいフラットデザインに刷新するとともに、多用する機能のショートカットキー表示や、検索ボックスによるメニュー検索など、画面操作のユーザビリティが向上しています。

  • InfiniOne®バージョン 1.5 の画面イメージ

    InfiniOne®バージョン 1.5 の画面イメージ

また、Azure を標準基盤として採用したことにより、マイクロソフトのさまざまな PaaS サービスをフル活用できるようになったことも注目できます。

「開発と運用では、Azure DevOps を利用しています。従来からオンプレミス環境でアジャイル開発や CI / CD(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)が推進できる Azure DevOps Server を活用してきましたが、現在は、SaaS 版の Azure DevOps Service へと移行し、より高速にリリースサイクルを回せるようになりました」(小山 氏)。

ほかにも、各種サービスの監視ツールとしては Azure Monitor を、バックアップや DR 対策ツールとしては Azure Backup を、ネットワーク管理やセキュリティ運用には Azure VPN Gateway や Azure Active Directory などを活用しています。

  • InfiniOne ERP サーバーを支える Azure サービスイメージ

    InfiniOne ERP サーバーを支える Azure サービスイメージ

新サービスの開発基盤としての活用も始まっています。新サービスの 1 つに、モバイルアプリケーションの開発があり、清水 氏は、こう説明します。

「リモートワークや働き方が多様化を受けて、ERP に蓄積したデータをスマートフォンやタブレットから参照できるようにするモバイルアプリケーションを開発中です。モバイルからのアクセスを受け付けるフロントの仕組みには Azure App Service を利用し、Azure Database for PostgreSQL やストレージサービスの Azure Storage に蓄積したデータを参照します。仮想マシンを必要とせず、PaaS ベースでサービスを提供できる環境が整ったことで、よりクイックに新しいサービス提供ができるようになりました」(清水 氏)。

顧客向けサービスだけでなく、社内 IT の取り組みでも Azure の活用が本格化しています。例えば、新入社員の IT 教育やより高度なクラウド技術の習得などでは、Azure の無料アカウントを活用しています。Azure の無料アカウントは、無料で一定のサービス利用ができることはもちろん、有料アカウントへの移行も必須ではなく、利用の制限も少ないなど、学習に最適だといいます。

Teams と Power BI の連携や基幹システムへの AI の組み込みなどにも取り組む

さらに、開発チームだけでなく、人事・総務・経理といった一般社員のスキル教育でもマイクロソフトの各種教育プログラムや認定資格プログラムを活用しています。コーポレートサービス本部 人財グループ 進藤 匠悟 氏は、こう話します。

  • FutureOne株式会社 コーポレートサービス本部 人財グループ 進藤 匠悟 氏

    FutureOne株式会社 コーポレートサービス本部 人財グループ 進藤 匠悟 氏

「特に注力しているのが Microsoft Power BI(以下、Power BI)の活用です。マイクロソフトが提供する各種プログラムを活用して、基本的な操作方法の習得から、データ活用の考え方や実際の分析の方法までを学んでいます。Power BI を基点にして人事におけるデータ活用など新しいアイデアが生まれてきている状況です」(進藤 氏)。

このように開発基盤からサービス提供基盤、社内の IT 教育やデータ活用まで、Azure をフル活用するなかで、マイクロソフトとのパートナーシップも強化してきました。ビジネスプロデュース事業部 ビジネス開発部 担当マネージャー 渕﨑 寿夫 氏は、こう説明します。

「2018 年には、Azure 上で提供するソリューションの構築・導入・保守を一貫してサポートするなかで、実績や高度な専門性、技術力が評価され、マイクロソフトパートナープログラムの認定制度『Gold Cloud Platform コンピテンシー』認定を取得することができました。また、日本マイクロソフトが展開するクラウドソリューションの販売パートナー向けプログラム『Cloud Solution Provider(CSP)』にも参画し、クラウドインフラ構築に関するコンサルティングからライセンス販売、構築・導入、保守までを一貫して提供できる体制も整えました。InfiniOne® としてお客様にサービスを提供する一方、マイクロソフトとの協力のもとで培ってきた実績やノウハウ、社内での取り組み事例をお客様に提供できます」(渕崎 氏)。

マイクロソフトからはクラウドの専門知識を備えたクラウドソリューションアーキテクトなどが必要に応じてサポートし、新機能や新サービスのアイデアにつながるケースもあるといいます。松下 氏は、マイクロソフトとの関係性を次のように話します。

「つい先日もマイクロソフトの担当者の方から、InfiniOne® の UI と Microsoft Teams との連携や、InfiniOne® への Azure マシンラーニングの活用といったアイデアをいただき、『それを使うとお客様の業務としてはこんな効果に繋がるのではないか』とメンバーで話しあったところです。昨今のマイクロソフトはオープンソースやクラウドへの関わり方など、テクノロジーにオープンさを備え、未来に向かって夢のあるワクワクするサービスを次々と創出しているのを感じています。FutureOne がサービス開発で大事にしているのも、皆が集まってワイワイガヤガヤしながら、新しいことにチャレンジする楽しさとワクワク感です。今後も『いいものをつくろう』という気持ちを持ってお客様の企業価値の向上に邁進していきます」(松下 氏)。

中堅中小企業を 40 年以上にわたって支えてきた FutureOne の新しいチャレンジを、マイクロソフトがこれからも支援していきます。

[PR]提供:日本マイクロソフト