株式会社ゲオホールディングス

ビッグ データという言葉の存在感が増す中、多くの企業ではその収集と蓄積が取り組まれています。しかし、蓄積したビッグ データは、実際にそれを分析し、そして活用しなければ大きな効果を生み出しません。この「蓄積」から、「活用」という段階へいち早く移行し、企業としての競争力を大きく高めているのが、株式会社ゲオホールディングス(以下、ゲオホールディングス)です。

同社では、映像作品やゲームの買取販売、レンタルを提供する「ゲオショップ」をはじめとし、さまざまな会員制サービスを展開。こうした会員制サービスを提供するがゆえに収集可能な顧客データは、同社が持つ大きな資産だといえます。この資産を全社的に活用すべく、ゲオホールディングスは提供されたばかりのOracle Exadataをいち早く導入するなど、環境整備へ積極的に取り組んできました。データの蓄積が十分になされたことを受け、2016年からは全社的なデータ活用を本格的に推進。「蓄積」ではなく「活用」するためのデータ分析基盤を新たに構築しました。そこで採用されたのが、Microsoft Azure SQL Data Warehouseです。

プロファイル

小さなレンタルビデオ店からのスタートながら、今では全国に1,800を超える店舗ネットワークを構築したゲオホールディングス。メディアショップ、リユースショップ、オンラインサービス、アミューズメントセンターなど多数の会員制サービスを展開する同社では、豊かで楽しい日常の暮らしを提供するべく、資産たるビッグ データを活用し、今後もより高品質なサービスを提供していきます。

導入の背景とねらい
全社的なデータ活用を推し進めるうえで、オンプレミス環境のデータ分析基盤では性能と利便性の面で課題があった

ゲオホールディングス 業務システム部
データシステム課 吉村 公胤氏

全国に1,800以上のメディア ショップ、リユース ショップを展開するゲオホールディングス。同社は実店舗の運営だけでなく、オンライン サービス、アミューズメント センターなど多岐にわたるサービスを提供しています。会員制サービスを提供するがゆえに収集できる顧客データの数々は、同社が持つ大きな資産だといえるでしょう。ゲオホールディングスでは、創業時に掲げられたスローガン「Change as CHANCE (変化こそが成功の原動力)」のもと、早い段階からこのデータの有効活用を推進。サービス品質の向上に役立ててきました。

同社でデータ活用の基盤構築を担当する、ゲオホールディングス 業務システム部 データシステム課 吉村 公胤氏は、データ活用の重要性について、次のように説明します。

「当社が保有するデータでは、店舗売上や Webサービスのログ データなどから、会員属性ごと多角的にその利用傾向を分析することが可能です。こうしたデータは、事業戦略や店舗ごとのキャンペーンを検討するうえで非常に有用なものであり、当社の資産ともいえるでしょう。この資産を有効に機能させるためには、特定の部門だけでなく全社的なデータ活用を推し進める必要があります。そこへ向けて、当社では 2011年、まだ提供されたばかりのOracle Exadataを導入し、グループ全体が保有するデータの統合管理を開始しました」(吉村 氏)。

ゲオホールディングス業務システム部データシステム課 土谷 浩司氏

2011年におけるOracle Exadataの導入は、全社的なデータ活用に向け、まず「データの統合管理と蓄積」を行う段階として取り組まれました。これまで同社では、部門ごと個別でデータの管理と活用がされてきました。しかしデータの所在が分散した状態では、ユーザーにとって一体どこへ依頼すれば自身が必要とするデータが得られるのか不明瞭であり、結果としてそれを有効に活用する人間も限られてしまいます。これらの課題を解消すべく、Oracle Exadataの導入と並行し、データの統合管理を行う部署(現データシステム課)も新設。2011年のこの取り組みにより、ねらいとするデータの統合管理と蓄積が実現されたのです。

しかし、今後このデータを「蓄積」から「全社活用」という段階へ移行していくうえで、オンプレミスで稼動するOracle Exadataのままでは課題があったと、ゲオホールディングス 業務システム部 データシステム課 土谷 浩司氏は語ります。

「『蓄積』から『全社活用』への移行を目指すうえで、Oracle Exadataには利便性と性能の 2面で課題がありました。活用を広げようとするとスマートフォンアプリやネット サービスのデータも投入することになりデータ量が増加するため、データベース環境をすばやく拡張できる必要がありました。また、これまで蓄積してきたデータの総量は優に 16TBを超えており、性能低下の要因となっていました。性能は利便性を大きく左右するため、次期リプレースにおいては Oracle Exadataの継続利用以外の可能性も含め検討する必要があったのです」(土谷氏)。

土谷氏が語った利便性と性能に加え、コストの課題も深刻化していたといいます。オンプレミスの場合、相応の性能を担保するためにはハードウェアの増強が欠かせません。また、不具合への対応など定期開発も必要であり、これらに要するコストが看過できないレベルにまで膨れ上がっていたのです。さらに同環境を今後も利用する場合、リプレースのタイミングで再度ハードウェアも調達する必要がありました。

システム概要と導入の経緯、構築
Azure SQL Data Warehouseはコストと性能の要件を満たし、マルチバイト文字へも対応する唯一のクラウド型DWHだった

ゲオホールディングスはこれらの懸案を踏まえ、2017年に控えたリプレースにおいてはOracle Exadata の継続利用を行わないことを決定。パブリッククラウドの活用を前提とし、2014年6月より次代のデータ分析基盤について検討を開始しました。 土谷氏はこの決定のきっかけとなった出来事として、同時期にデータ ウェアハウス(DWH)機能を実装したクラウド サービスが登場したことを挙げます。

「コストを抑え、かつこれまでと同水準の性能を担保するためには、オンプレミス環境では限界がありました。2013 年にAWSが提供を開始したクラウドDWH サービス『Amazon Redshift』は、こうした課題を抱える当社へ『分析基盤のクラウド移行』という新たな選択肢を生み出したといえるでしょう。今後、他の事業者からも同様のサービスが提供されることが予測できたため、比較検討を進めれば当社に最適なサービスが選定できると期待し、パブリック クラウドの活用を前提に分析基盤を刷新することを決めました。実際に翌月からは、AWSとAzureの2サービスを対象とした比較検証を開始しています」(土谷氏)。

2014年7月からおよそ6か月の期間をかけて進められた検証では、PaaSであるAmazon Redshift環境と、AzureのIaaS上でのSQLServer環境で比較を実施。性能とコストの2点を比較項目とし検証が進められましたが、2014年12月の段階では、Amazon Redshiftが両観点で優勢という結果となりました。

しかし、Amazon Redshiftの採用を決定するうえでは、マルチバイト文字への対応という点で大きな問題があったといいます。この問題について、吉村氏は次のように説明します。

「当社のデータベースでは、日本語をはじめとした2バイト文字をほぼすべてのテーブル名、カラム名に使用しています。当時、Amazon RedshiftとAzureはともにこのマルチバイト文字へ正式対応しておらず、テーブル定義からバッチ処理の改修となり多大な工数が必要になります。このままでは移行時も当然ですが、移行後の運用においても大きなボトル ネックを抱えることが推測されました。この問題を抱えたままプラットフォームの決定を行うことはできず、しばらく当プロジェクトは保留状態となったのです」(吉村氏)。

マルチバイト文字の問題は、移行、運用工数の増加に加え、その作業が属人化するというリスクも内包します。2017年に控えるOracle Exadataの保守サービス切れまでに移行を完了しなければならない一方、吉村氏が語るようにこの問題の解消がないままでは移行先の決定自体が行えず、プロジェクトをめぐる会議は平行線をたどっていました。しかし、この状態はマイクロソフトがAzure SQL Data Warehouse(以下、Azure SQL DW)の提供を開始したことを機に好転します。

Amazon Redshiftと同様PaaSサービスとして提供されるAzure SQL DWは、ストレージとコンピューティングのリソースを分離して運用できるため、コスト面で大きなメリットが期待できました。同サービスの発表当時、懸案事項であるマルチバイト文字へはまだ未対応だったものの、リクエストに対するマイクロソフトのエスカレーション速度へ期待し、同社では改めてAzure SQL DWの検証を実施。そこでの結果と、2016年6月にAzure SQL DWがマルチバイト文字へ正式対応したことを受け、データ分析基盤への採用を決定します。

吉村氏は、Azure SQL DW を採用した決め手について次のように説明します。

「ストレージの仕様がSSDを採用するPremier Storageへ変更されたことで、Azure SQL DWの性能はAmazon Redshiftと遜色のない水準に引き上げられました。また、Azure SQL DWではコンピューティングとストレージのリソースを分離して管理でき、運用コストはむしろ Azure SQL DWの方が優勢となったのです。何よりも、両社に対して行っていたマルチバイト文字対応のリクエストについて、マイクロソフトの対応が迅速だったことが最大の決め手だといえるでしょう。こうした細かなリクエストは移行後にも数多く発生することが予測されるため、柔軟な対応が期待できる Azure SQL DWには安心感を抱きました」(吉村氏)。

導入の効果
コンピューティングとストレージのリソースが分離されていることで、構築期間を短縮。年間約2,000万円ものコスト削減も実現

Azure SQL DWの採用を決定後、ゲオホールディングスは 2016年7月より構築、検証作業をスタート。翌年の1月からは、Azure SQL DWをもったデータ分析基盤の運用を開始しています。

土谷氏は、Azure SQL DWがマルチバイト文字に対応し、コンピューティングとストレージのリソース分離を備えることが、短期での構築に大きく貢献したと評価します。

「Oracle Exadata の環境からデータを移行する中で1バイト文字へ変換していた場合、とてもではありませんが6か月という期間では移行を終えられなかったでしょう。また、検証時に行うデータのアップロード、ダウンロードやリストアの作業時間を大きく短縮することができたこともAzure SQL DWの利点です。通常はスナップショットを作成後に再起動、その後スナップ ショットから環境を復元するという作業となりますが、ストレージとコンピューティングのリソースが分離されていることで、スナップショットを作成せず再起動のみで同様の作業が可能です。旧環境の保守サービスが切れるまでに移行を完了させる必要があったため、それをスムーズに進めるための機能や仕様が整備されていたことは、大きく評価すべきでしょう」(土谷氏)。

新たなデータ分析基盤のシステム イメージ図。レポート閲覧者はSQL Serverから定形レポートの閲覧ができ、自由分析を行うユーザーは直接Azure SQL DWへアクセスしデータを活用する。Azureへ接続する専用線にはExpressRouteを利用

また、2017年1月より運用を開始した新たなデータ分析基盤は、コストと性能、利便性の面でも大きな効果を生み出していると、吉村氏と土谷氏は続けます。

「従来のオンプレミス環境と比較すると、金額にして年間で約2,000万円ものコストが削減できる見通しです。そのうえで、性能は以前よりも向上できています。たとえば仮に1日システムが停止したと仮定する場合、これまでは停止期間に処理すべきだった差分に処理が追いつくためには丸2日を要していました。Azure SQL DWの環境では、性能向上によりその期間をわずか1日にまで短縮できる計算となります。止まっては困るシステムですのでもちろん仮定ではありますが、仮に止まったとしてもすぐに差分へと追いつくことができるため、サービスの安定性は飛躍的に向上できたと感じています」(吉村氏)。

「全社的なデータ活用を行うべく、レポートの閲覧者へ向けては、BI用に切り出したデータマートをSQL Server上から提供しています。SQL ServerはExcelに近いUIで利用でき、専門的な知識を必要とする範囲も少ないため、現場における利便性を高めることができました。また、オンプレミスからクラウドの PaaSへ移行したことは、運用負荷の削減にもつながっています。当課ではこの削減されたリソースを活用し、SQL Serverのデータマート作成や新システムの企画立案などに割り当てています。こういった、ユーザーの利便性をより向上させるための『攻めの体制』がとれるようになった点も、Azure SQL DWを採用した大きな効果だといえるでしょう」(土谷氏)。

今後の展望
社内だけでなく店舗でのデータ活用も見据え、Azure が備える PaaS の採用を検討

データ分析基盤をAzure SQL DWへ移行したことで、これまで以上の性能、利便性をもった環境を獲得すると同時に、運用コストと工数の削減も実現したゲオホールディングス。この基盤をもって同社では今後、資産たるデータの「全社活用」を本格的に進めていくと、吉村氏は意気込みます。

「現時点では、データベースを直接さわるので利用ユーザーは少なく活用範囲が限られているのですが、今後はその範囲を店頭まで広げ、ビジネスの現場でもデータが活用されるようにしていきたいと考えています。たとえば、店頭買い取りにおいて最適な価格をすばやく提示できれば、当社のサービス価値はさらに高まるでしょう。そこへ向け、Azureが提供する ML(機械学習)やAIのAPI群であるAzure Cognitive Servicesの採用も視野に入れています。また、社内の意思決定においてもより有効にデータを活用すべく、今後SQL Server Analysis Servicesの採用を計画しています。BIサービスについても整備予定で、そこでは Power BIも検討候補に挙がっています」(吉村氏)。

こうした全社的なデータ活用が加速することにより、ユーザー数やそこからのリクエスト数は増加の一途をたどることが推測されます。土谷氏はそうした将来を見通し、今後PaaSを利用することで、運用面もより最適な形にしていきたいと続けます。

「SQL Serverの環境は現在、基幹系システムを置いているAWS上にIaaSで構築しています。これをAzureのPaaSであるSQL Databaseへ移行することで、運用負荷の削減とサービス提供の安定化が図れると考えています。一方で、Azure SQL DWに課題がないというわけではありません。たとえばDBの速度をより高めるためには、1つのテーブルを分割せず同一の場所へ置いておくことが有効です。そのため、レプリケート テーブルを実装してほしいと感じています。マルチバイト文字への対応から、マイクロソフトのエスカレーション速度には大きな期待を寄せています。今後も当社のデータ活用を支援いただけるよう、こうした要望に応え続けてほしいですね」(土谷氏)。

多岐にわたる会員制サービスを提供することで、唯一無二の貴重なデータを保有するゲオホールディングス。企業としての資産ともいえるこの膨大なデータを全社で活用すべく採用したAzure SQL DWは、同社のサービス品質をいっそう発展させることでしょう。さらなる飛躍を遂げるであろう同社の動向に、今後も期待されます。

ユーザー コメント
「従来のオンプレミス環境と比較すると、金額にして年間で約2,000万円ものコストが削減できる見通しです。そのうえで、性能は以前よりも向上できています。たとえば仮に1日システムが停止したと仮定する場合、これまでは停止期間に処理すべきだった差分に処理が追いつくためには丸2日を要していました。Azure SQL DWの環境では、性能向上によりその期間をわずか1日にまで短縮できる計算となります。止まっては困るシステムですのでもちろん仮定ではありますが、仮に止まったとしてもすぐに差分へと追いつくことができるため、サービスの安定性は飛躍的に向上できたと感じています」

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