福岡県を拠点に歯科医院向けのクラウドサービス「ジニー」「myDental」を提供するDentaLight(デンタライト)。同社は「コンビニの店舗数より多い」「紙や手作業などアナログな手続きが多い」とされる歯科業界に"新しい風"を吹き込もうとしています。2022 年には、受付の自動化と無人化をテーマに、Web 問診表やキャッシュレス決済、サブカルテのデジタル化といった新しい機能を追加しました。サービス提供基盤には Microsoft Azure の PaaSサービスをフル活用、さらに、マイクロソフトが提供するスタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」も活用しています。
口腔内の健康を支える歯科医院を支えることで、世界の人々の健康を守る
Web 予約やキャッシュレス決済、セルフレジなど、クラウドやスマホアプリを活用したサービスが広がっています。
こうしたサービスのメリットは、対面作業や手作業の負担が大幅に減り、顧客にスピーディーなサービス提供が可能になることです。また、サービスを利用するユーザーも時間を有効に使ったり、利用履歴をクラウド上で一元管理したりといったように利便性が大きく向上することもメリットです。
その一方で、サービスを提供するためにはシステム構築が必要になることや、運用にあたって IT スキルが求められるといった課題もあります。使いやすさはもちろん、利用者とサービス提供者双方にとってメリットを持たすことができるかが重要です。
そんななか、歯科医院向けに、誰でも簡単に利用でき、利用者の利便性も大きく向上させることができるサービスを展開している企業が DentaLight(デンタライト)です。2013 年に創業した同社は、福岡県を拠点に、歯科医院向けの予約管理・顧客管理サービス「ジニー」と、患者向け診察券アプリ「myDental」の 2 つのサービスを提供しています。
DentaLight の CTO 三木 聖隆 氏は、歯科業界の現状について、こう説明します。
「口腔内の健康は、全身の健康につながるといわれています。口腔内の健康を支える歯科医院を支えることで、世界の人々の健康を守る。そうした『健康をもっと相互依存できる社会をつくる』ことがわれわれのミッションです。患者さん一人ひとりと歯科医院が共存し、お互いに健康を守り、その輪が社会に広がることをサポートします」(三木 氏)。
歯科業界では、虫歯の治療から口腔ケアなどの予防医療にシフトするなかで、いかに患者とのコミュニケーションや情報共有を図っていくかが重要になってきています。病院経営という観点からも業務を効率化しながら、なおかつ患者との長期的な関係を築くことの両立が求められています。
そこで役立つのが、ジニーと myDental です。インフラエンジニアの櫻場 稔夫 氏は、こう説明します。
「ジニーは、歯科医院向けに提供される予約・CRM(顧客管理)システムです。Web 予約から Web 問診表、キャッシュレス決済、診察券アプリの提供までをワンストップで提供しながら、歯科医院の業務効率化と患者数アップを実現します。myDental は、スマホアプリを診察券の代わりに利用しながら、患者のパーソナルヘルスレコード(PHR)を管理できるようにするサービスです。定期検診のお知らせや予約通知をメッセージとして送ったり、QR コードを使ったチェックイン機能で自動受付を行ったりできます」(櫻場 氏)。
DentaLight の 2 つのサービスを支えているのが Microsoft Azure(以下、Azure)です。
予約・CRM(顧客管理)システム「ジニー」と診察券アプリ「myDental」を提供
DentaLight がジニーや myDental の開発に至った経緯には、創業時から行なっていた歯科医院向けコンサルティングやマーケティング支援サービスを提供する際に直面していた課題の解決があったといいます。三木 氏はこう解説します。
「歯科業界は『コンビニよりも数が多い』といわれるように、たくさんの小さな歯科医院やクリニックで構成されています。古くからの診療スタイルや商慣習、業界構造など多くの非効率な面があるのが現状で、そのことを課題に感じた代表取締役の藤久保 元希が、多くの方の QOL(Quality of Life)の向上を目指して、クラウドやアプリを活用したサービスの開発に取り組み始めたのです。複数の歯科医師にシステム開発のためのパートナーになってもらい、必要になる機能を少しずつ開発しながら、患者向け予約サービスや歯科医院向けの CRM システムとして発展させてきました」(三木 氏)。
ジニーが正式サービスとしてリリースされたのは 2017 年 9 月です。正式リリース以降も、ユーザーである歯科医師や患者の意見を反映させながら、新機能の追加や機能の改善に取り組んできました。サービス提供基盤には開発当初から Azure を採用しています。櫻場 氏は、スタートアップとして Azure を採用するメリットをこう解説します。
「Azure は、PaaS として提供されるサービスや機能を組み合わせることで、メンテナンス業務を最小限にでき、環境に合わせて基盤を簡単に拡張していくことができる点がメリットです。当社でも、最初に Azure 上でサービスを構築してから、環境の変化に合わせて、基本となるアーキテクチャやインフラの構成、アプリ開発言語、提供する機能などを更新し続けてきました」(櫻場 氏)。
特に大きなアップデートとなったのは、2020 年に行われたアーキテクチャの全面的な見直しと、2022 年に行われた多数の新機能の追加です。
「2020 年のアーキテクチャの見直しでは、開発言語を PHP から Python に移行したうえで、より柔軟な管理を実現するために Docker コンテナ環境に対応したフル PaaS 構成に刷新しました。また、2022 年の機能追加では、受付の自動化と無人化をテーマに、Web 問診表やキャッシュレス決済、サブカルテのデジタル化といった新しい機能を追加しました」(櫻場 氏)。
このように、インフラ基盤や提供サービスをビジネスの変化に合わせて柔軟に変更したり、拡張したりできる点は、スタートアップにとって力強い味方になると櫻場 氏は強調します。
スタートアップ支援プログラム「Microsoft for Startups」を活用してビジネスを拡大
DentaLight が Azure を活用している背景には、マイクロソフトが提供するスタートアップ支援プログラムの効果も大きいといいます。Azure をサービス提供基盤に選定した際にはスタートアップ向けに提供される無償利用枠を最大限に活用しました。
また、2020 年のアーキテクチャ刷新にあたっては、日本マイクロソフトが日本市場向けに取り組みを強化していた「Microsoft for Startups」プログラムに採択され、日本マイクロソフトの全面的なサポートを受けました。
「Microsoft for Startups では、Azure サービスの無償利用枠の提供に加え、技術面、営業面、事業面からさまざまな支援を受けることができます。2020 年のアーキテクチャ刷新では、日本マイクロソフトのエンジニアからのアドバイスを受け、App Service for python への移行や、PaaS サービス連携基盤の構築などをスムーズに実施することができました。アーキテクチャのレビューなど丁寧にサポートいただけたことで、安心して新しいアーキテクチャに移行することができました」(櫻場 氏)。
DentaLight が Azure で利用しているサービスは日々変化していますが、2022 年時点では、アプリをホストするための Azure App Service、ロードバランサ Azure Application Gateway、API 管理ツール Azure API Management、安全なコンテンツ配信のための Azure Front Door、データ管理のための Azure SQL Database、インメモリキャッシュの Azure Cache for Redis、リアルタイム通信のための Azure SignalR Service、バッチ処理のための Azure Functions などを利用しています。
Microsoft for Startups は、こうした技術面でのサポートだけでなく、セキュリティやガバナンス面での課題解消にもつながっているといいます。
「2022 年の機能アップデートでは、サブカルテという医師と患者でノートを共有する機能を実装するにあたって、医療情報の取り扱いに関する『3省ガイドライン』への対応が必要になりました。セキュリティやガバナンスに知見を持つメンバーが対応しているのですが、どうしてもカバーしきれないところは出てきます。そんなとき、マイクロソフトはより専門的な知見を持つマイクロソフト内の有識者を紹介してくれたり、医療情報の取り扱いに関して必要になる具体的な要件や機能を紹介してくれました。スタートアップの事情を踏まえてかなり真剣に考えて、業界知識が豊富な方が真摯にサポートしてくれたことで、効率良くサービスを開発することができています」(三木 氏)。
マイクロソフトが提供するハッカソンやワークショップを活用し短納期でサービスを開発
2022 年の機能アップデートでは、新機能開発までに実質 3 カ月間しか猶予がなく、インフラ構築だけでなく、アプリ開発からプロジェクト管理担当者までが密接に連携して取り組むことが求められました。
新機能として開発したのは、Web 問診表、キャッシュレス決済、サブカルテのデジタル化という 3 つですが、これらを実現するためには、複数ユーザーに対応したアカウント ID の発行、多要素認証に対応した画像やドキュメントの管理、契約書や同意書へのフリーハンドでの署名機能などの開発が必要になっていました。
そこで、より効率良く、スピーディーにサービスを開発するため、開発環境の自動化にも取り組みました。これまで手作業で行なっていたデプロイやリリース作業を効率化するため、Azure DevOps を使って、CI/CD 環境(継続的インテグレーション/継続的デリバリー)への移行を部分的に進めました。アプリ開発を担当するエンジニアの今井 伸也 氏はこう振り返ります。
「アプリエンジニアとして何を開発するかはその都度変わっていきますが、土台となる Azure という環境は変わらないことがポイントです。開発する機能が変わったり、開発する環境が変わったりすることは、エンジニアとして働く以上ある意味当たり前のことであり、自分の成長を実感できる楽しみでもあります。ただ、そうしたことが実感できるのも、Azure のような変わらない土台があるからです。Azure の場合、勉強会やハッカソン、研修など、エンジニアが新しい知識やノウハウを習得するためのサポートも熱心に行なっていただけます。今回、短い納期のなかでスムーズな開発ができたのもそうしたサポートのおかげでスムーズに仕様が確定し、アプリ開発に集中できたからだと感じています」(今井 氏)。
2020 年のアーキテクチャ変更時に行ったハッカソンはマイクロソフトのオフィスで行われ、講師 2 名と担当エンジニア 5 名が膝を詰めるように、ジニーと myDental の改善に必要な技術やスキルを学んでいきました。短納期での開発を実現するため、プロジェクト管理にも注力しましたが、そこでもマイクロソフトのサポートが役立ったといいます。プロジェクト管理を担当した松井 佑樹 氏はこう振り返ります。
「カットオーバー日はパートナーとなっている歯科医院様のビジネスと密接に関係していました。機能を詰め込みすぎてコップから水が溢れてしまうような事態は絶対に避けなければなりません。リリースまでに必ず実装すべき機能と、あとから追加できる機能をある程度強引に切り分けていきました。そうした作業にも、マイクロソフトと行なったさまざまなワークショップが活きました」(松井 氏)。
スタートアップにとって力強いサービスであり、Azure とともに成長していきたい
受付の無人化をテーマにしたジニーと myDental の大型アップデートは、これまでにない大きな反響を呼びました。
開発パートナーとしてテスト導入から、実際の運用まで行なっている医院からは「サブカルテの機能で業務日誌や検査の記録などが電子管理されているので、紙と違って患者とのコミュニケーションができ、いつでもどこでも院内での情報共有がしやすくなった」「その場で決済がすぐにでき、電子データで領収証が送ることができるため、患者からも便利だという声を頂いている」「同意書の内容をタブレット端末を使って説明し、署名をもらってすぐに患者と共有できる」「同意書を紙で保管しておく必要がなく、患者はアプリでいつでも確認できる」といった声が寄せられているといいます。
また、新しい歯科医院からも新規に問い合わせを受けたり、実際に商談に繋がったりするケースが増えているといいます。
「ジニーを導入いただくことで、従来は医院受付に必要だった人員を、カウンセリングや積極的な医院運営のための業務に充てるといったことができるようになります。それにより患者にさらに充実した医療を提供することができるようになるのです。また、患者側でも、myDentalのWeb問診やキャッシュレス決済、サブカルテなどの機能を利用することで、歯科医とのコミュケーションが図りやすくなり、よりよい予防医療が受けられるようになります」(三木 氏)。
DentaLight では、今後も Azure を活用しながら、新サービスの追加や機能強化に取り組んでいきます。
「Azure には使いやすいサービスが揃っており、そのうえ、すごいスピードで進化を遂げて、改善されていきます。サポートも手厚く、技術的な面だけでなく、ビジネス面での支援もしていただけます。スタートアップにとって力強いサービスであり、今後も、Azure とともに成長していきたいと考えています」(櫻場 氏)。
歯科業界を取り巻く環境が大きく変化するなか、マイクロソフトは、DentaLight の取り組みを力強く支援していきます。
[PR]提供:日本マイクロソフト