1907 年に設立(設立時の社名は横浜生命保険株式会社)され、2018 年 5 月に日本生命グループの一員となり、2019 年 1 月より「ニッセイ・ウェルス生命保険株式会社」として新たにスタート。現在は日本生命グループの一員として金融機関窓販領域に特化したビジネスを展開しており、外貨建ての一時払定額年金を中心とした商品・サービスを提供しています。同社が現在推進中の中期経営計画では、IT 領域のテーマとして「持続的・安定的な発展のための整備」を掲げており、その実現に向けた取り組みとして IT インフラの整備に着手。以前より検討を進めていたクラウドへの移行を決断します。そこで数ある選択肢のなかから、オンプレミス環境で運用してきた IT インフラが抱える課題を解決できるソリューションとして同社が採用したのは、Microsoft Azure(Azure)上で VMware 環境を提供するマイクロソフトのフルマネージドサービス「Azure VMware Solution(AVS)」でした。
リソースのひっ迫や老朽化といった既存システムの課題解決に向けクラウド移行を決断
他の業界と同じく、保険業界においても IT の重要性は高まり続けています。ニッセイ・ウェルス生命保険も同様で、業務の拡大にともない IT インフラが複雑化。サーバー数の増加に伴うリソースのひっ迫やハードウェアの保守・運用コストの増大、サポート終了(End Of Support:EOS)を迎えた Windows Server 2008 をはじめとするレガシー OS のセキュリティ対策といった課題が顕在化してきました。また近年では、働き方改革の実現に向けた VDI 環境の整備も求められており、同社の IT インフラ構築・運用を担う IT本部 システム管理部では、こうした課題を解決するためクラウドへの移行を検討。プロジェクトマネージャとして今回のクラウド移行プロジェクトに携わったニッセイ・ウェルス生命保険 IT本部 システム管理部 専門課長 上級インフラアーキテクト 兼 システム企画部 IT戦略企画チームの髙田 恭雅 氏はこう振り返ります。
「システムのクラウド移行は以前より検討されていましたが、ほとんど進んでいない状況でした。そこで 2018 年に、オンプレミス環境のシステムすべてをクラウドに移行する際にかかるコストのシミュレーションを行い、オンプレミス環境を維持するよりクラウド化した方が、コストメリットがあることを確認。その結果を踏まえてクラウド移行のプロジェクトを本格的にスタートさせました」(髙田 氏)。
今回のプロジェクトは、単に IT インフラの老朽化への対策ではなく、同社の今後のビジネスに向けた「持続的安定的な発展のための整備」として進められました。「ビジネスの持続的な安定・成長を支えるためには IT インフラの整備が不可欠です。増大し続ける保守・運用コストを抑制するという側面でも、既存システムのクラウド移行が効果的であると考えました」と、システム管理部を統括するニッセイ・ウェルス生命保険 システム管理部 部長の山本 和重 氏は語ります。
既存システムとの親和性が高い AVS を採用し、段階的なクラウド移行に着手
プロジェクトを推進するにあたり、より精緻化した試算結果をもとにコストメリットを確認したいと考えたニッセイ・ウェルス生命保険は、コンサル(検討)フェーズからベンダーの選定を開始します。その際、年間を通して複数の保険商品の開発プロジェクトを稼働している同社が重視したのは、「既存のアプリケーションを変更することなくクラウド化を推進できること」でした。結果として、この条件をクリアするナレッジを持ち、オンプレミスとクラウドの併用期間を設け、将来的なネイティブクラウド環境(IaaS や PaaS)への移行を見据えたロードマップを提示した TIS株式会社がパートナーとして選ばれました。そこでTISが提案したソリューションは、Microsoft Azure(以下、Azure)上で VMware vSphere 環境を簡単に利用できるマイクロソフトのフルマネージドサービス「Azure VMware Solution(以下、AVS)」だったのです。
本プロジェクトにプロジェクトマネージャ兼全体のアーキテクトとして参画した TIS IT基盤技術事業本部 IT基盤技術事業部 IT基盤サービス第2部 エキスパートの笹村 俊之 氏は、AVS を提案した経緯をこう語ります。
「どの企業にとってもクラウド化の推進は重要な経営課題であるといえます。ただクラウド化と一口にいっても、そのアプローチはさまざまです。今回のプロジェクトでは、システムすべてをクラウドネイティブ環境に移行する方法と、一部のシステムをオンプレミス環境に残しながら段階的にクラウドに移行する方法でそれぞれ具体的な試算を行い、ニッセイ・ウェルス生命保険様の既存システムと親和性の高い AVS を使った段階的なクラウド移行を提案しました」(笹村 氏)。
提案当時AVS は日本国内ではリリースされたばかりで、競合クラウドベンダーも同様にサービスを提供している状況でした。ニッセイ・ウェルス生命保険では Windows Server やSQL Server、Office 365 などマイクロソフト製品を数多く利用しており、Azure のサービスである AVS との親和性が高いことに加え、他社製のクラウドと比較してコストメリットが高いことを評価。さらに Windows Server 2008 の拡張セキュリティ更新プログラムが Azure 上だと無償で提供されることにより、コストを抑えてレガシー OS のセキュリティを強化できるといったメリットも踏まえ、AVS の採用を決定しました。髙田 氏は採用にあたって、クラウド(Azure)・仮想化(VMware vSphere 環境)・ネットワークのすべてに豊富な知見を持つ TIS の提案であったことが決め手になったと話します。
「当初は既存のネットワークを拡張して使うことを想定していたのですが、TIS からは、ニッセイ・ウェルス生命保険の既存のネットワーク環境の場合、それでは懸念があると新規回線の敷設を提案されました。このように、プロアクティブに過去のナレッジや最新の技術動向を踏まえた提案をいただけたことで、信頼できるベンダーであると判断しました。またクラウドサービスは頻繁なアップデートが特徴で、AVS も検討時にアップデートされ仕様が変更されましたが、その仕様変更を押さえていたのは TIS だけで、他のベンダーは把握できていませんでした。こうした技術面での安心感も大きなポイントになったといえます」(髙田 氏)。
今回のプロジェクトでネットワーク周りの分析、要件の洗い出し、設計、構成検討などを担当した TIS IT基盤技術事業本部 IT基盤技術事業部 IT基盤コンサルティング部 エキスパートの野口 敏久 氏は、AVS 導入におけるネットワーク関連の提案についてこう解説します。
「単に AVS を動かすだけなら既存のネットワークでも対応できました。ただ長期的な運用を考えると、既存ネットワークにはさまざまな機器が間に入っていて、スケールを上げようとすると複数機器の見直しが必要となりコストが増加してしまいます。そこで最初の段階からネットワークも分離、ただし変更する箇所は最小限で、といった提案をさせていただきました」(野口 氏)。
既存システムのアプリケーションを無停止・無障害でクラウド(AVS)に移行
AVS の導入にあたっては、TIS が Azure(クラウド)、VMware vSphere 環境、ネットワークのそれぞれに知見を持つ担当者を揃えて体制を構築。ニッセイ・ウェルス生命保険の既存システムを精査し、リスクの少ないシステム構成を提示しました。前述したネットワークに関しては、ニッセイ・ウェルス生命保険と TIS との間で議論が重ねられ、L2 延伸を使って AVS と既存システムをつなぐ手法が採用されました。
「ニッセイ・ウェルス生命保険様のビジネスに影響を与えない、すなわち『業務を止めず』『サーバーを止めず』にシステムのクラウド移行を行うことに注力しました。AVS と L2 延伸を組み合わせたことで、オンプレミス環境にあるサーバーの IP アドレスを変えずに移行できたことが大きなポイントです。サーバー内のアプリケーションを入れ替えたりバージョンアップしたりといった作業も必要なく、スムーズに移行が進められました」(笹村 氏)。
移行作業は段階的に実施されました。まずは 2021 年の 2 月~3 月に、インフラ部門が保持するテストサーバー約 20 台を AVS へと移行し動作を確認。続いて同年 4月~8 月にかけて実際に業務で使用している開発・検証環境の移行に着手し、大きなトラブルは一切ないままクラウドへの移行を実現しています。この成功を受け、同年 9 月~10 月には本番環境の移行を実施。「週末に移行作業を実行できる体制を構築したことで、データ量の多いサーバーも業務を止めることなく AVS へと移行させることができました」と、髙田 氏はスムーズに移行できたことを評価します。
現在は約 100 台の VM(サーバー)が AVS 上で稼働している状況で、移行したあとの運用フェーズにおいても、AVS への移行を原因とする不具合は起きていません。ユーザーはオンプレミスから AVS に移行したことをまったく意識することなく、通常通りに業務を行っているといいます。
「アプリケーションを無停止・無障害で移行できたことが最大の成果と考えています。ESXi ホストの追加(拡張)も、30 分程度でシステムに影響を与えることなく行えることが確認でき、既存システムの課題となっていたリソース不足も解消できています。オンプレミス環境に残ったサーバーについても移行やリプレースを進めており、データセンターのコスト削減にもつなげていきたいと考えています」(髙田 氏)。
AVS では、Azure 上に構築した仮想基盤の運用・保守(VMware 製品のソフトウェアバージョンアップも含む)をマイクロソフト側で行うため、仮想基盤の維持に費やす人的リソースの削減にも成功していると髙田 氏。今回のクラウド移行プロジェクトで得られた成果に大きな手応えを感じています。
ニッセイ・ウェルス生命保険のクラウドジャーニーは、クラウド化の本質と可能性を追求する
他社の事例がまったくない日本国内でのリリース初期段階から AVS 導入を決断し、TIS とマイクロソフトのサポートによりクラウド移行を成功させたニッセイ・ウェルス生命保険では、今後も積極的にクラウド化を推進していく予定です。そこでは、マイクロソフトや TIS のサポートがより重要になると髙田 氏は語ります。
「我々としては AVS の導入をゴールと捉えてはおらず、その先にある Azure の活用も見据えています。今後もクラウドの活用を積極的に推進し、環境変化に俊敏に対応し事業戦略を支える最適化されたシステム基盤の構築により事業拡大に貢献していきたいと考えています。その実現に向けて、マイクロソフトのサービス拡充や TIS のプロアクティブな提案に期待しています」(髙田 氏)。
同社では、AVS への移行と併行して Azure のネイティブクラウド環境構築も進めており、すでに一部の業務システムを Azure の IaaS 上で稼働させています。また、同じく TIS をパートナーとしてAzure Virtual Desktop(AVD)導入も検討中で、現在は PoC を行っている段階にあり(2021 年 12 月現在)、IaaSと DaaS での Azure 活用が進められています。笹村 氏も今回のプロジェクトを踏まえ、ニッセイ・ウェルス生命保険のクラウド化を全方位で支援していきたいと力を込めます。
「クラウド移行、クラウド化といった言葉が叫ばれる昨今ですが、オンプレミス環境のサーバーや PC も簡単にはなくなりません。そこで重要となるのは、既存の環境にクラウドのメリットや新しい技術をいかに組み合わせていくのかということです。ネイティブクラウドの使い方を提案することも大切ですが、長期間に渡り、多数のエンジニアによって築き上げられてきた既存システムをしっかり理解し、最適なクラウド化を提案できるパートナーでありたいと思っています」(笹村 氏)。
ニッセイ・ウェルス生命保険と TIS、マイクロソフトが描く“クラウドジャーニー”からは、クラウド化の本質と可能性が見えてくるはずです。
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