デジタル社会の進展を背景に、訴訟に必要な電子データを保全・調査・分析する e ディスカバリ(電子証拠開示)やデジタルフォレンジック作業における AI 活用が一般化しています。そんななか、クロスボーダー案件を得意とし、リーガルテック領域をリードする日本企業が FRONTEO です。同社はクラウドインテグレーターである SoftwareONE の協力を得ながら、オンプレミスで運用していたシステム基盤を Microsoft Azure に集約・統合しました。北米市場を中心としたグローバルでのサービスを提供している同社が狙うのは、本来平等であるはずの裁判や調査が公平に行われる「情報社会のフェアネスの実現」です。
e ディスカバリを中心とした「リーガルテック AI」領域でアジア市場をリードする日本企業
2003 年に創業し、国際訴訟で必要な証拠となる電子データの保全と調査・分析を行う e ディスカバリ(電子証拠開示)や、デジタルフォレンジック調査といったリーガルテック領域を中心に事業を展開する FRONTEO。「データ解析技術を利用できないことにより、訴訟に必要な情報が見つからず窮地に立たされる企業を守りたい」という信念のもと、自然言語処理に特化した独自開発の AI エンジン「KIBIT(キビット)」と「conceptencoder(コンセプトエンコーダー)」、「Looca Cross(ルーカクロス)」を活用したデータ解析ソリューションによって、国内外の企業のビジネスを支援しています。
FRONTEO 取締役 CTO 武田 秀樹 氏はこう話します。
「アジアにおける e ディスカバリ総合支援企業のパイオニアとして、保全からデータの処理、ドキュメントレビューにいたるまでワンストップサービスを提供しています。また、フォレンジック調査のリーディングカンパニーとして、お客様のもとで起きているインシデントを把握し、効果的でコストパフォーマンスの高い調査提案を行なっています。単なる技術やアプリケーションの提供ではなく、ビジネスドメインに入り込み、AI で人の判断を代替しながら、意思決定と業務の効率化を高いクオリティで維持できるよう支援しています」(武田 氏)。
リーガルテック領域においては、データ解析技術の重要度が年々高まっています。企業が取り扱うデータ量が飛躍的に増加し、訴訟で必要となる電子データの量も膨大になっているためです。ドキュメント、メールや SNS などあらゆる電子データを解析し、訴訟や調査などで、必要な情報として揃える必要があります。そういったデータの解析作業は人間の手作業では処理しきれないほどに増えており、AI などの技術を使っていかに高い精度・網羅性・スピードを兼ね備えた効率的な解析作業をできるかが問われています。この分野において、日本やアジアの市場をリードしてきたのが FRONTEO です。
FRONTEO でリーガルテック AI ソリューション開発をリードする行動情報科学研究所 製品開発チーム 部長の板脇 基文 氏はこう話します。
「リーガルテック市場は、北米を中心に今後大きく拡大することが見込まれています。今後 FRONTEO が国内やアジアはもちろん、グローバル市場向けに事業を拡大するためには、新しいアプリケーションを開発する一方、アプリケーションを提供するインフラ基盤をよりフレキシブルな構成にする必要がありました。そこで採用したのがMicrosoft Azure(以下、Azure)でした」(板脇 氏)。
北米を中心としたグローバル市場でのビジネス成長を目指し、システム基盤に Azure を採用
FRONTEO には、e ディスカバリ領域での国際訴訟(米国・欧州訴訟、反トラスト訴訟、IP 訴訟、集団訴訟、PL 訴訟)などの対応件数 8400件(2021 年 9 月末時点)以上、デジタルフォレンジックによる不正調査(技術情報や営業情報の漏えい、不正会計、横領、キックバック、不就労など)の受注件数 1800 件以上など、グローバル市場で 1 万件以上の案件に携わってきた実績があります。
製品としては、e ディスカバリプラットフォーム製品「Lit i View E-DISCOVERY」を提供してきましたが、今後のデータ量の増大を見越して、AIの学習や評価に必要なワークフローやシミュレーション機能を搭載した、KIBIT を中心とする新しいアプリケーションの開発も加速させてきました。2019 年には、次世代のAI レビューツール「KIBIT Automator」をリリースし、継続的に機能拡張を行っています。
「北米を中心としたグローバル市場でのサービス強化を図っていくためには、従来のシステム基盤を見直す必要性があると感じていました。これまでは北米にある 3 カ所のデータセンターでシステム基盤を自社運営しており、サーバの調達や運用保守などの工数がかかっていました。お客様のニーズに合わせて、スピーディーに基盤を拡張することに限界を感じていました」(武田 氏)。
「お客様から『特定の期間にこの処理をしてほしい』と依頼されたとき、オンプレミスの場合はリソース不足に陥らないようにするために、事前にハードウェアを用意しておく必要があります。一方クラウドの場合は、必要なときにリソースを追加すればいいので、フレキシビリティが格段に高まり、圧倒的に早くお客様のニーズを満たすことができます。そこで、ハードウェアの EOL が近づいていたことをきっかけにして、クラウドへの全面移行を決めました。Azureを採用した理由は、弊社のビジネスで必要な北米を中心に韓国や台湾などアジア圏を含めたグローバル市場で強みを持つこと、世界最大規模のバックボーンネットワークを所有し運営していること、米国政府調達基準である FedRAMP(Federal Risk and Authorization Management Program)への対応が早かったことなどです。特に北米のお客様は、システム基盤として Azure を採用することに安心感を抱く方が多く、主戦場である北米でのプレゼンスを高めることができました」(板脇 氏)。
米国 3 拠点のデータセンターを Azureに統合、英語でのコミュニケーションが必須に
Azure へ移行したシステムは、FRONTEO の AI アプリケーションを稼働させている中核システムというべきものです。e ディスカバリのワークフローには「EDRM(The Electronic Discovery Reference Model)」と呼ばれる標準的な作業プロセスが定められており、FRONTEO の リーガルテック AI サービスは EDRM に沿ったワンストップサービスとして提供することが 1つの特徴です。
「ワンストップサービスとして提供するために、北米のデータセンターに 1PB を超えるデータと 500 台を超える仮想マシンからなる大規模システムを運用していました。調査や分析が用途の中心であるため、長い時間をかけて集中的に処理する関係上、一般的な Web リクエストとは異なる負荷に耐える必要があります」(板脇 氏)。
システムのクラウド移行で課題になったのは、リーガルテック AI 特有の大規模なシステムとデータを短時間で効率よく Azure に移行することでした。
「データセンターのサーバハードウェアが EOL を迎えるため、キックオフから 1 年弱ですべてのシステムを Azure に移行することが求められました。限られた時間のなかで、500 台を超える仮想マシンを抱える大規模なシステムと 1PB を超える巨大なデータを、短時間で効率よく Azure に移行する必要がありました。さらに重要視した点は、米国と東南アジアにまたがるデータセンター管理者とサービス運用担当者、われわれ日本の担当者との間のコミュニケーションです。コミュニケーションには英語が必須で、そのうえで、Azure のスキルやノウハウを持っていること、実際に大規模なシステムと 1PB を超えるデータを移行した実績があることが必要でした」(板脇 氏)。
こうした要件に合致するパートナーを日本国内で探すことは困難だったといいます。そこで、マイクロソフトに相談して紹介を受けたのが SoftwareONE でした。SoftwareONE Japan テクノロジーサービス部 部長 長谷川 憲司 氏はこう振り返ります。
「SoftwareONE はグローバルで事業を展開しているため、時差を気にせずさまざまな国のリソースを活用した支援が可能です。今回のプロジェクトでも、SoftwareONE Japanを中心に APAC のメンバーとプロジェクトチームを構成し、密接に連携しながら、米国 3 拠点のデータセンターのクラウド移行と、仮想マシンの集約・統合を進めることができました」(長谷川 氏)。
仮想マシン 500 台超を 200 台へ半減、パフォーマンスとセキュリティを大幅に向上
SoftwareONE は、ソフトウェアとクラウドのテクノロジーをエンドツーエンドのソリューションとして提供する企業です。グローバルでは 30 年以上にわたるソリューション提供実績があり、日本でも 11 年にわたって顧客を支援してきた実績があります。
「マイクロソフトのライセンスを取り扱う LSP(Licensing Solution Partner)であると同時に、クラウドソリューションを扱う CSP(Cloud Solution Provider)でもあります。Azure Expert MSP を取得しており、オンプレミスからの Azure 移行では、コンサルティングからシステム移行、ライセンスに関するアドバイザリー、導入支援、運用サポートなど、グローバルレベルで一貫したソリューションを提供できることが強みです。近年力をいれているのは、コマーシャルとテクノロジーの 2 つのトランスフォーメーションによって、お客様の DX を実現することです。今回のプロジェクトでも、SoftwareONE の持つリソースやスキル、ノウハウ、実績をもとに、Azure 移行をご支援しました」(長谷川 氏)。
Azure 移行で大きな課題になった英語でのコミュニケーションについて、板脇 氏はこう話します。
「長谷川さんを中心に、FRONTEO の米国の担当者と SoftwareONE のインドとマレーシアの運用担当者が Web 会議で密接に連携して、移行計画と移行作業を進めました。コミュニケーションに問題がないことはもちろん、当社のシステムの特徴を理解して、仮想マシンを効率良く集約してくれたり、パフォーマンスやセキュリティを維持するための構成を提案してくれたりと、お互いが信頼し合いながらプロジェクトを進めることができました。個人的に強く感じたのは、SoftwareONE の仕事のスタイルや企業文化が FRONTEO と似ているということです。スタートアップやベンチャーの気風を持ち、グローバルでさらに成長していこうという点で親近感を持って取り組みを進めることができました」(板脇 氏)。
500 台以上あった仮想マシンは約 200 台へと半減し、Azure ExpressRoute などのネットワークサービスをうまく活用することで、巨大なデータを短時間で移行することができました。
長谷川 氏は「カスタマーフォーカスをこころがけながら、単なる御用聞きにならず、FRONTEO の一員として、できることとできないことを明確にして取り組みました」と振り返ります。
板脇 氏も「コストのことを考えて使えるストレージに制限がある VM を選択しようとしたときに『パフォーマンスを考慮して絶対にこのスペック以上の VM にしてください』と強く主張されたことが印象に残っています。パートナーとして緊密な信頼関係を作り、意見をぶつけ合いながら、プロジェクトをスムーズに進めることができたと思っています」と、SoftwareONE の姿勢を高く評価します。
また、今回の移行において選択したマイクロソフトのサポートプログラム「Azure Migration and Modernization Program(AMMP)」についても、確かな手応えを口にします。
「コスト面でのメリットがあることに加え、技術面で充実したサポートを受けることができます。データセンター移行では、既存データセンターの維持コストと、Azure のサービス利用料が二重でかかります。このプログラムはそのコストの一部を負担してもらえます。また、技術面では専任担当者にサポートいただけます。マイクロソフトでなかったらこの短期間でこのコスト感での移行は実現できなかったはずです」(板脇 氏)。
窮地に立たされた企業を救い、公平な競争を実現するために、AI の機能をさらに強化していく
FRONTEO の中核システムを Azure に移行したことによる効果について、板脇 氏はこう話します。
「リーガルテックのサービスでは、お客様の要望にいかに早く応えるかという対応時間が重要です。Azure 移行は、この対応時間の短縮に大きく貢献します。データ処理を行うときに短時間でスケールアウトしてリソースを増やせるので、処理の高速化が可能なためです。また、新しい案件のために環境を構築する速度も速くなります。オンプレの場合は、サーバやストレージのリソース割振りから設計し設定が完了するまで 3 日かかることがありましたが、Azure なら数時間で済む見込みです。さらに、コスト管理がしやすくなったこともメリットです。サーバやストレージをハードウェアで購入し、それらのリソースを分解して管理・運用していくと全体のコストが見えにくくなります。一方、クラウドサービスでは各仮想マシンやストレージのコストが明確になり、サービス内のどの部分にどれだけのコストがかかっているかが一目瞭然になります。これにより、コスト管理が容易になり、利益を出すために改善サイクルを回すことが可能になります」(板脇 氏)。
武田 氏は、ビジネスの視点から顧客の要望に素早く応えることの重要性をこう説明します。
「リーガルテックは、常に"企業活動の最前線"にあります。お客様の多くが、期日までに証拠を発見できなければ訴訟上不利になったり、期日までにレポートを作成しなければ決算が締まらなかったりするといった緊急事態に置かれています。できるだけ時間をかけずに対応することが重要なのです。そのためには、サービスを支えるシステム基盤もフレキシビリティに富み、必要なリソースを追加したり、不要になったら停止したりといったことが簡単にできることが求められます。Azure への移行によって、こうした仕組みを実現できたことは、今後ビジネス面で大きな効果をもたらすと考えています」(武田 氏)。
今後のリーガルテック領域における FRONTEOのビジネス展開として、武田 氏は、KIBIT Automator を北米市場を中心に強化し、グローバルでシェア No.1 を目指していくことを挙げます。
「そのために、AI の精度と機能性の向上、リーガルのドメインに適した使い方の機能改善に取り組んでいきます。企業において ESGのような価値観が浸透していくなかで、不正や訴訟のための証拠の発見はますます重要になります。AI を使いながらどのようなメカニズムで不正が行われるかを深く理解し、自動的に判断することで発見の精度を上げていく。Azure 移行は、そのような AI 提供の支えになる取り組みだと思っています」(武田 氏)。
オンプレミスの仮想マシンを Azure の IaaS へと移行した FRONTEO ですが、Azure の仕組みを使用して運用を効率化することで、よりアプリケーションの価値を高める活動に集中していくことを検討中です。FRONTEO がリーガルテック AI で目指す、窮地に立たされた企業を救い、公平な競争社会を実現するための取り組みを、SoftwareONE と Azure が支えていきます。
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