NTTデータグループの一員として、基盤ソリューション、セキュリティソリューション、ソフトウェアソリューションを展開する NTTデータ先端技術株式会社。同社は、長く利用してきた基幹システムと最新の SaaS を組み合わせた事業を展開していますが、事業の成長とともに、データマネジメントに課題を抱えるようになりました。そのことにより業務負担が増加し、予実管理が難しくなるなど、ビジネスにも影響が出始めていたのです。そんななか、状況を改善すべく業務部門主導で導入したのはクラウド統合データ分析プラットフォームである Azure Synapse Analytics でした。2 カ月という短期導入を実現し、現在ではさまざまな成果を上げています。その詳細を担当者に聞きました。
データマネジメントの課題をAzure Synapse Analyticsで解決する
1999 年の創立以来、NTTデータグループの一員として最新の技術を活用した情報システム基盤の提供を中心として、顧客のビジネスに貢献すべく事業を展開してきた NTTデータ先端技術。事業の領域は、基盤ソリューション、セキュリティソリューション、ソフトウェアソリューションにわたり、売上高は585億円(2021年3月期)、従業員数は1,401名(グループ全体、2021 年 4 月 1 日現在)に及んでいます。
高度な技術者による高い付加価値を提供することを目指している同社のソリューションは、1 つの製品・サービスを提供するだけでなく、顧客のニーズに応じてさまざまな製品・サービスを組み合わせ、導入から運用管理までをトータルで扱うことが特徴です。
例えば、基盤ソリューションでは、サーバー、ストレージ、ネットワークなど多種多様なメーカーの製品を豊富に取り揃え、IT インフラの設計から構築、技術支援、運用までを提供します。また、ハードウェアだけでなく、さまざまなベンダーのクラウド基盤やクラウドサービスを組み合わせた提供も行っています。
こうしたビジネスの特徴もあり、同社の基幹システムには、顧客ごとに異なる要件を考慮した案件管理機能や、提供するさまざまなソリューションの IT 資産や IT サービスを管理する機能など、同社のノウハウともいうべき機能がさまざまなかたちで実装されてきました。その一方で、事業の成長とともに、営業管理や販売管理をより効率的に行ないたいといったニーズが増えたこともあり、クラウドベースの営業支援サービスや承認ワークフローサービスなどの採用にも積極的に取り組んできました。
そうしたなかで課題になってきたのが、営業や販売に関わるデータが各所に散在し、データマネジメントが難しくなったことでした。基盤ソリューション事業本部 プラットフォーム事業部長 高岡 将 氏はこのように話します。
「営業部門では、顧客データや販売データ、案件データなどをクラウドサービスの Salesforce を用いて管理しています。一方で、これまで蓄積してきたノウハウや顧客や案件に関するデータなどは、独自に構築した基幹システム上で管理されています。データが複数システムにまたがって存在し、それぞれを連携させることも難しいため、売上の把握や予実管理が大きな負担になっていました。また、データを分析して施策に生かすこともほとんどできない状況でした」(高岡 氏)。
そこで採用したのが、Azure Synapse AnalyticsとMicrosoft Power BI(以下、Power BI)です。日々のビジネスに欠かせないデータを Azure クラウド上に集約し、クラウド DWH 上で分析を行ない、担当者が直接 Power BI を使って日々の売上管理やデータ分析を実施できるようにしたのです。
データの可視化、業務負担の増加、組織間のカベが大きな課題
NTTデータ先端技術が当時抱えていた課題は、大きく 3 つに分けることができます。
1つめは、データが整理されておらず、可視化が困難だったことです。営業部で Salesforce を利用したデータ処理や財務処理を担当していた営業担当 担当課長 加藤 迪子 氏はこう説明します。
「Salesforce 上には営業担当者が扱うさまざまなデータが日々登録されています。Salesforce に登録されたデータ項目は 400 項目、アクティブなデータだけでも 3 万 2,000 件以上のレコードがありました。ただ、同じデータが部署によって違う項目名で登録されていたり、ある部署にとって必要なデータでも他の部署には必要のないデータだったりして、自分が必要なデータを探し出すことが難しい状況でした」(加藤 氏)。
そのため、例えば、経営陣から必要なデータ分析のレポートを求められたときも、要望に沿ってデータ項目を絞りその都度分析を行い、結果を提出するといった作業を行なっていたといいます。つまり要望が発生するたびに整理や分析が必要となるため、回答までには長い時間を要していました。
2 つめは、データがシステムごとに散在し、連携のための作業が負担になっていたことです。
「受注したデータは、Salesforce のほかに基幹システムにも登録されています。そのため、Salesforce だけでなく、基幹システムに登録されたデータも CSV に出力してから、それらを組み合わせて分析作業を行なう必要がありました。必要な項目を案件ごとにトラッキングするなど、Microsoft Excel(以下、Excel)を使って人手で行なっていたため、データの統合や整理だけで丸 1 日かかっていました」(加藤 氏)。
基幹システムは、創業以来 20 年近く受け継がれてきたシステムで、さまざまな機能が統合された一枚岩的なシステムだったといいます。案件管理、ワークフロー、受発注などの機能が 5~6 の基盤に分散して構築されており、Salesforce との API 連携なども難しい状況でした。そのため、基幹システムから出力された 5~6 個の CSV を統合し、Excel で 400 列×3 万 2,000行から成るデータとしてその都度処理する必要があったのです。
3 つめは、データ活用にあたっての組織面における課題です。データを収集する際に部門・部署間で申請や承認が必要なため、その分の時間がかかっていました。また、IT部門の業務量が多いこともあり、現場の分析ニーズに応じたIT部門の臨機応変な対応も難しかったといいます。
レガシーシステムが足かせになり、予実管理やDXの推進にも課題が発生
こうした課題は、ビジネスにも大きな影響を与えていました。特に課題になっていたのが、予実管理とそれをもとにした綿密な施策の実施です。予実管理は、Salesforce と基幹システムから抽出したデータを使って Excel 上で行なっていましたが、データの整理と可視化に時間がかかり、施策に素早く落とし込むことが困難になっていました。
「予実管理には、期末までに予算を実行して、最終的に概ねプラスマイナス 20%などといった指標の範囲内に収めるという目標値が設定されています。しかし、データの分析に時間がかかるため、『いまどのくらいの数字が出ていて、どのくらいで着地しそうか』がすぐには分かりません。そのため経験と勘に頼るシーンも増え、施策を効果的に講じることが難しくなっていました。例えば『コロナ禍でハードウェアの納品が間に合わず売上が立つのが来期になりそうなので、その分を研修や支援サービスで埋めていこう』といった判断がしにくくなっていたのです」(高岡 氏)。
また、販売している製品のライセンス数や付随するサービスなどもすぐには分からないため、クロスセルやアップセルの提案につなげる施策も難しくなっていたといいます。例えば、顧客が利用している製品をクラウドサービスに移行したときに「どのライセンスをどう持ち込めるか」と問い合わせを受けた場合でも、早急な回答が難しかったり、それに代わる提案も出せないという状況がありました。
さらに、システム的な課題が足かせになり、業務部門のデジタルトランスフォーメーション(DX)への取り組みも進みにくくなっていました。例えば営業事務の作業では、データの収集や分析、レポートなどをマニュアル作業で行なっていたことで、本来の営業施策にかけるべきリソースが、データ項目の整理や入力作業などの非効率的な業務に費やされていたのです。
そんななか、クラウドベースの統合データ分析プラットフォームを構築するプロジェクトを立ち上げ、最終的に採用を決めたのが Azure Synapse Analytics と Power BI でした。クラウドビジネス担当 担当課長 煤田 弘法 氏は、選定の理由について、こう説明します。
「現場のニーズに沿って柔軟に分析でき、現場での施策につなげられるようにすることを目指しました。システムとしては、複数のデータソースからデータを自動的に抽出、統合し、クラウド上の DWH 基盤に集約。さらに、エンドユーザーが Power BI を通じて手軽にデータを分析できるようにすることでした。その観点から、複数のクラウド統合データ分析プラットフォームを、機能面、パフォーマンス面、価格面から比較し、総合評価の高かった Azure Synapse Analytics の採用を決めました」(煤田 氏)。
「ETL 処理」「コネクター数」「BI」から Azure Synapse Analytics を評価
全体のシステム構成は、DWH としての Azure Synapse Analytics と、BI ツールとしての Power BI を中核として、Azure Data Factory の機能に基づく ETL ツールの Synapse パイプライン、データの前処理を行なうためのストレージである Azure Data Lake Storage、バッチ処理のための Azure Batch などで構成されています。これらは、Azure Synapse Analytics の管理画面で、Synapse ワークスペースを作成することで、自動的に Azure クラウド上に環境を構築することができます。
また、NTTデータ先端技術が Azure Synapse Analytics を機能面で評価したポイントは、大きく 3 つ存在しています。
1 つめは、ETL 機能の使い勝手です。Azure Data Factory で、データのパイプライン処理を作成する場合、パーツをドラッグ&ドロップしてつなぎあわせていくだけで簡単に処理を書くことができます。
「これまで ETL については、スクリプトなどを使いながら書く必要があると考えていたのですが、そうした必要は一切ありませんでした。データのパイプライン処理を GUI だけでほとんどコードを書かずに直感的に操作でき、すばやく運用できる状態に持っていけたことにとにかく驚きました」(煤田 氏)。
2つめは、コネクターの多さです。Azure Synapse Analytics は、Azure Data Factory が提供するコネクターを使って、Azure が提供しているさまざまなサービスに加え、データベース、DWH、ストレージ、アプリケーションなど多種多様なデータソースにアクセスすることが可能となっています。
「今回は Salesforce のデータと基幹システムのデータを CSV で連携させていますが、将来的なデータ活用を考慮した場合、さまざまなデータソースにアクセスして分析することが必要になってきます。そのため、できるだけ幅広いサービスやデータソースと連携できる点を評価しました」(煤田 氏)。
3つめは、Power BI を使って、ユーザーが直感的にデータを分析できることです。
「Excel のように利用することもできますし、Excel にはない機能を使って、より高度な分析も可能です。アクセス権設定なども、既存の Active Directory と連携することで、所属や役職などに応じてスムーズに設定することができます。元データに触ることなく分析でき、バックエンドからフロントエンドまで一貫したシステムを組めることは大きなメリットです」(煤田 氏)。
加えて、マネージドサービスであり運用管理の負担がないこと、マイクロソフトのサービスであるため既存のマイクロソフト製品との親和性が高いこと、Azure のサービスの可用性や信頼性が高いことなどもポイントになったといいます。
営業部門のDXを進め、攻めのデータ活用を推進していきたい
Azure Synapse Analytics の導入から運用開始までは、すでに Azure アカウントを運用していたこともあり、わずか 2 カ月で完了しました。2021年6月現在では本格的な利用を開始してから数カ月ですが、これまでに大きく 3 つの効果を確認しています。
1 つめは、分析にともなう前処理や手作業の負担が劇的に削減され、データの可視化が実現したことです。
「これまで丸一日かかることもあったデータの取込みやデータの前処理が、わずか数分で済むようになりました。CSV を統合して、Excel をマニュアルで処理する作業が自動化されたことで、その時間を他のさまざまな業務にあてることができるようになっています。また、データが可視化できるようになったことで、製品カテゴリや案件ごとに、売上を正確に把握できるようになりました。また、経営陣などから求められるデータも、正しくスピーディーに回答できるようになりました」(加藤 氏)。
2 つめは、現場主導での分析ができるようになり、組織的な問題を解消するきっかけになりつつあることです。
「データ分析基盤を構築できたことで、今まで簡単にはできなかった分析も実施できるめどがたってきました。例えば、稼働実績の把握などです。売上を予測する場合、製品やサービスの単価や販売実績だけでなく、エンジニアの稼働時間や単価なども必要になります。現在は、部署ごとに勤務表や単価などを確認してもらい、Excel などでデータを共有してもらっていますが、今後は、今回構築した基盤を用いることで、こうした作業の自動化も可能になると考えています」(煤田 氏)。
3 つめは、予実管理の正確性の向上です。NTTデータ先端技術では、Azure Synapse Analytics の運用を開始してから期末決算を向かえましたが、計画値との誤差は、許容範囲内は概ね 20%であるところ 0.05%未満だったといいます。
「予算の消化具合がこれだけ正確にわかるようになると、着地点を見越したさまざまな施策が可能になります。実際、決算までの数カ月にわたって週単位での実績値を見ながら、サービスの売上の凹みを物販でカバーするといった、さまざまな施策を講じていくことができました」(高岡 氏)。
今後は、データの更新頻度を現在の週次から日次にすることで、より高頻度に施策を実施することを検討しています。また、IT サービス管理で採用している ServiceNow のデータと連携し、ワークフローで部門間の共有を行ないやすくすることや、市場データやオープンデータなどと連携した新しい販売施策の実施にも取り組んでいくといいます。社内的にも、RPA と連携させた自動化の推進や、ユーザー自身がいつでも分析できるセルフサービス BI への進化などに取り組んでいく予定です。
高岡 氏は最後に「営業部門の DX を進め、攻めのデータ活用を推進していきたいと考えています」と、今後を力強く見据えました。
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