人材サービスを軸に IT を活用したビジネスを幅広く展開しているテクノプロ・グループ。日本国内をはじめ中国、東南アジア、インド、英国などの拠点に 2 万名以上のエンジニア・研究者を擁する、日本最大規模の技術系人材サービス企業グループ*となっています。昨今の DX 推進・働き方改革の流れや、新型コロナウイルス感染症拡大の影響などもあり、同グループでは所属エンジニアのトレーニングをオンラインで行う環境の構築に着手。そのプラットフォームとして選択されたのは、マイクロソフトが提供するクラウド型のデスクトップ仮想化サービス「Windows Virtual Desktop」(以下、WVD)でした。
*出所:株式会社矢野経済研究所「人材ビジネスの現状と展望2020年版」
エンジニアのスキル向上を図るトレーニングがコロナ禍の影響で困難に
人材サービス業界では、DX 推進やリモートワークなど新しい働き方に対応するためのシステム構築の需要が高まっています。国内最大規模の技術者集団であるテクノプロ・グループ(以下、テクノプロ)では、人材サービスのみならず、 IT の活用をグループの成長を実現するための重要なミッションと捉え、積極的な取り組みを進めています。
少子高齢化による就労人口の減少などの社会的問題もあり、エンジニア(技術者)不足はあらゆる分野において喫緊の課題となっています。テクノプロの人材サービスに期待を寄せる企業も増加する一方という状況において、昨今のコロナ禍では、エンジニアのトレーニング(研修)がスムーズに行えないという課題が表面化していました。テクノプロ・ホールディングス株式会社 ITインフラ部 部長のサルマ ビナヤ 氏は、当時の状況をこう振り返ります。
「テクノプロ・グループのエンジニアに最先端のテクノロジーを学ばせる人材開発部では、東京や大阪をはじめ複数の研修場所を用意してトレーニングを行ってきました。2020 年に最初の緊急事態宣言が発令されてからは、これまでのように多くのエンジニアを同じ場所に集めることが困難になり、効率的なトレーニングが行えないという相談が ITインフラ部に届くようになりました」(ビナヤ 氏)。
こうした状況に対処するため、エンジニアの在宅環境からトレーニングを行う方法を模索し始めたとビナヤ 氏は語ります。テクノプロでは LMS(ラーニングマネジメントシステム)を運用しており、リモートでのトレーニング自体はそれほど難しいものではありませんでしたが、CAD やプログラミング学習といったトレーニングは実際にシステムを使いながら学習しなければ大きな効果は期待できません。そこで ITインフラ部が注目したのが、クラウド型のデスクトップ仮想化サービス、いわゆる DaaS と呼ばれるソリューションでした。
「リモートのトレーニング環境を実現する考え方の 1 つとして、トレーニング用のデバイスを 1 人 1 台配付するという選択肢もありましたが、トレーニングを希望するすべてのエンジニアの自宅にデバイスを送り、セキュリティを担保しながら運用するのは現実的な方法とはいえませんでした。こうしたセキュリティ面、運用面の課題をクラウドによって解決できないかと考え、Microsoft Azure(以下、Azure)の東西日本リージョンで利用可能な WVD が最適なソリューションだと判断しました」(ビナヤ 氏)。
テクノプロでは以前より一部の業務で他社のデスクトップ仮想化サービスを活用していましたが、実際にソフトを動かすトレーニング環境には Windows 10 のプラットフォームがベストと考え、WVD の導入を決定。マルチセッションを利用することで運用コストを削減できることもポイントとなりました。
ExpressRoute での閉域網接続で社内システムとのセキュアな連携を実現
リモートのトレーニング環境で大きな課題となるセキュリティ面も、マイクロソフトのセキュリティ対策機能を使うことで解決できたとビナヤ 氏。閉域網接続で遅延の少ない ExpressRoute で社内システムと接続することで、社内のコンテンツやライセンスサーバーともセキュアに連携できるようになったと語ります。
2020 年 9 月に人材開発部から相談を受けた ITインフラ部は、2020 年 10 月からプロジェクトを始動。同年 12 月にはテスト稼働を行い、12 月 25 日には本番のトレーニングを実施するなど、約 2 カ月半でリリースすることに成功したといいます。実際のシステム構築に携わった ITインフラ部 ITインフラ課の金原 厚作 氏は、大きなトラブルなく WVD を活用したトレーニング環境を構築できたことを喜びます。
「エンジニアのトレーニングに使うということで共有型の方式を採用しました。この際、ログイン時のユーザープロファイルの読み込みなどが課題となるケースが多いのですが、今回は『FSLogix』の仕組みを使うことで解消。十分業務に耐えうるスピードでプロファイルローミングが実現できました。マイクロソフトの手厚いサポートもあり、システム構築はスムーズに行えました」(金原 氏)。
オンプレミスで VDI を構築したときと比べ、DaaS 型の WVD は構築スピードが早いという印象を受けたと金原 氏。ExpressRoute の接続も問題なく進めることができ、本番稼働までのスピード感は非常に満足できるものだったと振り返ります。
クラウドサービスのメリットを最大限に活かしたトレーニング環境を構築
エンジニアのトレーニング用途で DaaS(WVD)環境を構築する際には、クラウドサービスの持つメリットを十二分に活かすことを考えたと金原 氏は語ります。
「トレーニングは毎日行うものではないので、『使わないときは停止させる』という考え方を運用に取り込んでいます。ただし、起動・停止を IT インフラ部門だけで管理するのは効率的とはいえないため、実際に利用する研修部門にコントロールを委譲して起動・停止を行えるようにしました。必要最低限の稼働時間での運用が可能となり、コストメリットのある運用体制を実現することができました」(金原 氏)。
トレーニングごとの受講人数、ソフトウェア利用の有無といった条件に合わせて柔軟にリソースを変えられることも、オンプレミスの仮想デスクトップにはないメリットと金原 氏。「Windows 10 をマルチセッションで手軽に利用できる」という WVD のメリットを最大限に活かし、研修部門にとっても運用しやすい環境が構築できたと手応えを口にします。
ビナヤ 氏も、クラウドサービスのスケーラビリティが、今回のプロジェクトにおいて重要な役割を果たしていることを実感しています。
「オンプレミスでハードウェアを調達する場合は、余裕を持ってサイジングを行うため、オーバースペックになるケースも多いのですが、クラウド型の WVD ではそういった問題は起こりません。実際、CAD のトレーニングを実施した際にリソースが足りないケースも出てきたのですが、とても簡単にリソースを増やして対処することができました」(ビナヤ 氏)。
BCP 対策やバックアップ、テレワーク環境構築に Azure や WVDを検討
今回のプロジェクトで構築した環境では、トレーニングを受けるエンジニア(受講者)は自宅から、トレーナー(講師)はテクノプロラーニングのオフィスからアクセスしています。個人デバイス内のビデオ会議ツールでコミュニケーションを取りながら、講師側は画面共有ツールで受講者全員の WVD 画面を共有。WVD 上で実際にアプリケーションを動かしながらトレーニングを実施するというわけです。テクノプロのデータセンターにあるライセンスサーバーには ExpressRoute でアクセスし、セキュアな環境を実現しました。現在は 1 回のトレーニングで最大 9 人の受講者が参加することが可能。本格稼働した 2021 年 1 月からは毎週土曜日に 9 人でのトレーニングが実施され、1 カ月で約 50 名がリモートでのトレーニングを受けたといいます。
テクノプロは、今回のプロジェクトの成果に大きな手応えを感じており、エンジニアのトレーニングでの利用を拡大していくだけでなく、より広範囲に活用していくことを検討しています。
さらに、トレーニング以外にも WVD や Azure のメリットを活かしていきたいとビナヤ 氏。クラウドの特性を活かした BCP 対策やバックアップ、ポストコロナ時代のテレワーク環境構築にも活用できるのではないかと期待を寄せています。
「これまで、システムをバックアップする際には、東日本のデータセンターにバックアップを取り、西日本のデータセンターにレプリケーションするといった方法を採用していましたが、今後はクラウドシフトを進め、Azure のバックアップ機能を利用するのが効率的だと考えています。Azure や DaaS(WVD)ソリューションがテクノプロのビジネスにどれほどのメリットを生み出すのかは、これから見えてくると思います」(ビナヤ 氏)。
リモートに対応したトレーニング環境構築で WVD を効果的に活用したテクノプロが取り組む、マイクロソフトのソリューション活用には今後も目が離せません。
[PR]提供:日本マイクロソフト