大阪府吹田市に本社を構える株式会社 SNK は、対戦格闘ゲームを中心に、数々の人気ゲームタイトルの IP(知的財産)を保有するゲームメーカーであり、さまざまなプラットフォーム向けのゲーム開発とライセンス事業を展開しています。

2019 年 6 月には同社が誇る人気シリーズの最新作『SAMURAI SPIRITS(サムライスピリッツ)』を PS4 と Xbox ONE 向けに同時発売し、その後もアーケードや Google Stadia、Nintendo Switch などマルチプラットフォームでリリース。さらに多くのユーザーに楽しんでもらうため Windows への移植を決定し、約 3 カ月という短期間で開発、2020 年 6 月には Epic Games ストアで販売を開始するに至りました。この PC 版『SAMURAI SPIRITS』のバックエンドプラットフォームとして採用されたのが、マイクロソフトが提供している「Azure PlayFab」です。Azure PlayFab の導入は、ユーザーがゲームタイトルをより楽しむための環境構築を強力に支援したほか、開発時間の短縮にも大きく寄与したといいます。

PC 版のリーダーボード(スコアランキング)機能の導入に Azure PlayFab を採用

株式会社 SNK ゲーム開発本部 スタジオ プログラマー 山本 武明 氏

株式会社 SNK ゲーム開発本部 スタジオ プログラマー 山本 武明 氏

PS4、Xbox ONE、Nintendo Switch 向けにリリースした『SAMURAI SPIRITS』を Windows PC向けに移植するにあたり、ネットワークを介した対戦プレイに関連する環境構築を担うバックエンドプラットフォームとして選択されたのは「Azure PlayFab」でした。Azure PlayFab にはマルチプレイ環境の構築やゲームデータの分析など、ゲーム開発者の課題を解決するための機能が盛り込まれており、ゲームエクスペリエンスの向上を実現してくれます。

コンシューマ版『SAMURAI SPIRITS』でネットワーク周りのプログラミングを担当し、PC 版の開発で Azure PlayFab を活用したという株式会社 SNK ゲーム開発本部スタジオ プログラマーの山本 武明 氏は、導入の目的と経緯をこう語ります。

「リーダーボード(スコアランキング)機能を備えたバックエンドプラットフォームを探していたところ、以前に別のプロジェクトで検証していた Azure PlayFab が、プラグインを使える段階にまで準備できていたこともあり、コスト面などを考えても導入する価値が高いと判断しました」(山本 氏)

SNK の開発チームが Azure PlayFab に関心を持ったのは、Xbox 関連のイベントがきっかけだったといいます。「マイクロソフトのプロダクトチームに、Xbox でクロスプレイをするにはどうすればよいのかを聞いたことで、Azure PlayFab というサービスがあることを知りました」と、今回の PC 版『SAMURAI SPIRITS』でメインの開発担当者を務めたゲーム開発本部 スタジオ プログラマーの中田 久也 氏は振り返ります。

2019 年末には、クロスプレイ実現のため Azure PlayFab を含むさまざまなサービスがテストされました。そのなかで多様な機能を備え、各種開発ツールとの連携も可能な Azure PlayFab の優位性が確認されていったといいます。調査を担当したゲーム開発本部 スタジオ プログラマーの森本 孝太郎 氏は、他のゲーム開発ツールやサービス用のアドオンが豊富に用意されていることも、今回のプロジェクトに Azure PlayFab を採用した要因のひとつと語ります。

「今回のプロジェクトでは、複数のアドオンが用意されていることで、今後別のサービスを使う場合に導入がしやすくなるであろうという理由で Azure PlayFab が選ばれたという側面もあります」(森本 氏)

  • 株式会社 SNK ゲーム開発本部 スタジオ プログラマー 中田 久也 氏

    株式会社 SNK ゲーム開発本部 スタジオ プログラマー
    中田 久也 氏

  • 株式会社 SNK ゲーム開発本部 スタジオ プログラマー 森本 孝太郎 氏

    株式会社 SNK ゲーム開発本部 スタジオ プログラマー
    森本 孝太郎 氏

Azure Blob Storage や PlayFab CloudScript で、ゲームデータをセキュアに活用

こうして Azure PlayFab の機能を使い、PC 版『SAMURAI SPIRITS』のリーダーボード機能が実装されましたが、今回の移植では、そのほかにも Azure PlayFab が対応する豊富な機能が活用されていました。そのひとつが、クラウド型のオブジェクトストレージサービス「Azure Blob Storage」との連携です。

「『SAMURAI SPIRITS』では、プレイヤーの対戦情報を分析・学習した『ゴースト』というプレイヤーの分身を作成できるのですが、このゴーストデータを Azure Blob Storage にアップロードしてほかのプレイヤーと共有しています。情報の書き込みや読み出しを PC で直に実行すると、ユーザーに解析されてしまう可能性があったので、PC ではなくサーバー側で実行するために『PlayFab CloudScript』という機能を使用しています」(山本 氏)

このほか、オンライン対戦の勝敗情報も、ユーザーのセーブデータではなく Azure PlayFab 側に保存されています。「ランクマッチの勝敗データをユーザーの側に持たせてしまうと、データを書き換えられてしまう可能性があります」と山本 氏。こうしたデータの解析・書き換えはコンシューマゲーム機では起こりづらく、PC 版ならではの問題と語ります。Azure PlayFab の機能を活用したことで、このような PC 版への移植にともなう課題が解消され、スピーディな開発が可能になったといいます。

株式会社 SNK ゲーム開発本部 スタジオ リードプログラマー 兼 R&D リードプログラマー 辻 正規 氏

株式会社 SNK ゲーム開発本部 スタジオ リードプログラマー 兼 R&D リードプログラマー 辻 正規 氏

マネジメントを中心に今回のプロジェクトに携わった、ゲーム開発本部 スタジオ リードプログラマー 兼 R&D リードプログラマーの辻 正規 氏は、「実際、コンシューマ版の開発を含めて Azure PlayFab ほどの機能を持つバックエンドプラットフォームはほとんどありません」と語り、Azure PlayFab の導入が今回の移植プロジェクトで大きな役割を果たしたことを実感しています。

山本 氏も「Web 系のプログラムはほぼ経験がなかったので不安もあったのですが、実際に使ってみたところ、スムーズに作業を進めることができました」と、Azure PlayFab の使いやすさを口にします。利用していくなかでの疑問点は、英語版のフォーラムを翻訳して確認することで解決したといい、サポートに頼ることなく Azure PlayFab を効果的に活用していったことがわかります。

プラットフォームを問わず対戦できる環境を構築し、ユーザーに付加価値を提供

Azure PlayFab を活用することで、ネットワーク対戦関連の課題を解決し、短期間での開発に成功した PC 版『SAMURAI SPIRITS』は、多くのプレイヤーにすばらしいゲーム体験を提供し続けています。さらに、Azure PlayFab はリリース後も効果的に活用されていると辻 氏は語ります。

「2020 年 6 月にリリースし、多くのプレイヤーから不具合情報も含めて、さまざまな意見をいただきました。いまもアップデートで反映し、より楽しくプレイしていただけるように改善を続けています。また、Azure PlayFab には各種の分析機能が備わっており、毎日分析データが送られてきます。本来自分たちで計測してチェックしなくてはならない数値も、ある程度フォローしてくれるので助かっています」(辻 氏)。

今回のプロジェクトの成功で、SNK は Azure PlayFab の導入に手応えを感じています。今後も Azure PlayFab が効果的に活用できるプロジェクトがあれば、当然導入を検討していくと辻 氏。プロジェクトの要件に合わせて、そのときベストのツールやサービスを選んでいきたいと展望を語ります。

機会があれば使ってみたい Azure PlayFab の気になる機能を開発担当者に伺ったところ、中田 氏は「ボイスチャットや P2P(Peer to Peer) のサービスを提供する『PlayFab Party』機能に注目しています」と話し、森本 氏は「クロスプレイの検証をしていたときに、マッチメイキング機能を活用したゲームを作ってみたいと思いました」と語ってくれました。

将来的にはクロスプレイを充実させ、プラットフォームを問わず誰もが自由に対戦できるサービスを提供していきたいと辻 氏。「今回の移植プロジェクトで利用した Azure PlayFab の機能はごく一部で、サービスを使いこなせているとはいえない面もあります。もう少し時間をかけて検証し、ユーザーの付加価値を高め、開発効率を向上させる活用方法を模索していきたいと思います」と語り、Azure PlayFab が自由なプレイ環境の実現を後押しすることを期待していました。

マイクロソフトではドキュメントの日本語化や、導入事例の公開、カスタマーサポートの Blog 開設、コミュニティ支援など、日本におけるサポート体制を強化しており、Azure PlayFab を快適に活用できる環境が構築されてきています。SNK が今回のプロジェクトで実践した Azure PlayFab 活用のノウハウは、日本のゲームメーカーにとって価値のある情報となるはずです。同社の今後の展開と、Azure PlayFab をはじめとしたマイクロソフトのソリューションの活用には、これからも注目していく必要があるでしょう。

[PR]提供:日本マイクロソフト