こんにちは。NTTデータ システム技術本部 クラウド技術部です。 パブリッククラウドの最大手AWSの世界最大イベント「AWS re:Invent」が11月28日から5日間にわたってアメリカのラスベガスで開催されました。今回で11回目となる同イベントに参加したメンバーがイベントの様子と主なセッション内容を連載でレポートします。第一回はKeynote(基調講演)の内容について紹介します。

AWS re:Inventとは

AWS re:Inventとは、AWSが年1回開催するAWSイベントです。世界中から50,000人以上が参加し、日本からも約1,000人が参加しました。
期間中はラスベガスのメイン通りにある多くのホテルが本イベントのために確保されるほど大きなイベントです。
re:Inventは、新しいサービスや既存サービスのアップデートを発表する場でもあり、今回も数多くの新しいサービスが発表されていました。セッションや展示会だけでなく、開発者やパートナー向けの様々なイベントも多く用意されていました。

Keynoteについて

re:Inventでは多くのセッションがありますが、その中のひとつにKeynoteがあります。KeynoteではCEOをはじめとするAWSの顔が新サービスの紹介やAWSの裏側を紹介してくれます。re:Invent 2022では以下の5つのKeynoteがありました。

  • AWS Utility Computing SVPであるPeter DeSantis 氏による特にコンピューティングについて語られるMonday Night Live
  • AWS CEOのAdam Selipsky氏によるAWS全体にわたる新サービスが発表されたKeynote
  • AWS Data and Machine Learning担当でVice PresidentであるSwami Sivasubramanian 氏によるデータやAIに関するKeynote
  • Amazon CTO兼Vice PresidentであるDr. Werner Vogelsによるアプリケーション開発者向けのKeynote
  • AWS Worldwide Channels and Alliances担当でVice PresidentであるRuba Borno 氏によるパートナー向けKeynote

その中から今回は、Adam氏、Swami氏、Dr. Wernerにより説明されたKeynoteを振り返り、特に印象に残った内容をご紹介します。Keynoteはオンデマンド配信もされているので興味を持った方はぜひ実物も見てみてください。

全体として、今年のKeynoteはこれまでのようなITプラットフォーム提供者として、技術の拡充によるIT効率化ではなく、サステナビリティの強化や産業界や業務特化のサービス強化によるビジネスの価値向上へシフトした印象を受けました。

Adam Selipsky 氏のKeynote: サステナビリティの取り組みと産業界に特化した新サービスを発表

現地時間の火曜日の朝に行われたAWSのCEOであるAdam Selipsky 氏によるKeynoteでは、まずAWSのサステナビリティへの取り組みについて説明がありました。AWSは今後2025年までに再生利用可能エネルギーの使用を100%にすること、2030年までにウォーターポジティブ(消費する水よりも多くの水を供給すること)を達成すると宣言がありました。

そしてその後、データ分析やコンピューティング、パフォーマンスなど各カテゴリについて、これまでの取り組みや新サービスについて紹介がありました。
特に「zero-ETL」と題したメッセージとともにDBサービスであるAmazon AuroraとDWHサービスであるAmazon Redshiftのシームレスな連携機能が発表されるなど、データ分析に関するアップデートが多く発表されました。データ分析については水曜日のKeynoteでもさらにアップデートが発表されています。

これらのAWSのインフラ部分に関するアップデートの他、新サービスとしては空間シミュレーションを行えるAWS SimSpace Weaverや外部組織と安全にデータの連携を行うAWS Clean Rooms、これまでAmazonで培ってきたサプライチェーン管理のノウハウが集約されたAWS Supply Chain、ゲノム情報の分析に利用できるAmazon Omicsなどが発表されました。これまではシステム基盤の開発に役立つサービスが発表されてきたのに対して、今年のre:Inventでは産業界がそのまま利用できるようなSaaSサービスに近いものが多く発表されたという印象を筆者は持ちました。

Swami Sivasubramanian 氏によるKeynote: 企業の新規ビジネス創出に不可欠なデータ利活用を容易とする新サービスを発表

Adam 氏に続いて、Data and Machine Learning担当でVice PresidentであるSwami 氏のKeynoteが開催され、主にデータベースやデータ分析、機械学習サービスに関するアップデートが多数発表されました。

Swami 氏の講演の中でも言及がありましたが、企業における新規ビジネスの創出や発展にデータ利活用は欠かせないものです。本講演では、Amazon RDSやAmazon Athena, Amazon SageMakerなどのAWSマネージドサービスを紹介しつつ、データ利活用のキモとなる技術戦略や各企業のユースケースを説明しています。AWSサービスのアップデート情報だけでなく、データ活用に関してAWSが持つ知見も参考になると思いますので、ぜひ確認してみてください。

筆者にとって興味深かったのは、データ活用における信頼性とセキュリティの観点です。ミッションクリティカルなシステムを取り扱う機会の多いNTTデータのエンジニアとしては、Amazon Redshift Multi-AZやAmazon GuardDuty RDS Protectionといった新機能の発表に驚かされました。どのようなユースケースに適するのかは技術検証が必要ですが、選択肢が増えたことは喜ばしいことです。

Swami 氏の講演では、Amazon RedshiftやAmazon GuardDutyの他にも、Amazon Athena、Amazon SageMaker、AWS Glueに関するアップデートが発表されています。サービスアップデートに関しては、より詳細なAWSブログが公開されています(例えば、Amazon Redshift Multi-AZに関してはコチラ)ので、詳細な仕様や設定方法を知りたい方はそちらをご確認ください。

Dr. Werner Vogel によるKeynote: 非同期・イベント駆動型を前提としたアーキテクチャの重要性とそれを支える新サービスを発表

Keynote最終回となるAmazon CTO兼Vice PresidentのDr. Werner Vogels による講演では、これまでのAmazon S3の設計原則をもとに、スケーラビリティとレジリエンスを持たせてシステムを発展させていくアーキテクチャの指針や、新サービスの紹介が行われました。

マトリックスを思わせる「赤いピルを飲んで目覚めたすべてが同期的に逐次実行される世界」のコメディムービーから始まる本講演では、現実世界は非同期・並列にイベント駆動で成り立っているとして、S3やECサイトでもコンポーネント同士を非同期かつ疎結合にすることで、故障を分離して他コンポーネントに依存せずにシステムを発展させていけることの重要性が紹介されました。

これまで紹介してきた設計原則と関連して、今回の新サービス紹介でも私たちのシステムの非同期性・並列処理やイベント駆動アーキテクチャを支えるための新サービスが発表されました。従来のStep Functionsと比べて大規模並列なワークロードを実現するAWS Step Functions Distributed Mapや、サーバレスなワークロードをGUI上でドラッグアンドドロップにより構築できるAWS Application Composer、イベント駆動アーキテクチャのサービス間の連携を容易にするAmazon EventBridge Pipesが発表されました。また、その他開発立ち上げ段階で必要となる開発環境からCI/CDパイプライン、コラボレーションツールまで一気通貫で、ワンクリックで構築できるAmazon CodeCatalystなどの新サービスが発表されました。GUIベースの自動生成系のサービスはメンテナンスやアップデートが難しい印象も持ちますが、今回のサービスではどのように解消されているか検証が楽しみです。

おわりに

第一回目はKeynoteを紹介しました。本稿では説明しきれませんでしたが、今回も数多くのアップデートと新サービスの発表がありました。AWSのエコシステムは非常に大きく、今後も拡大していくものと考えられます。そのため本イベントの注目度は高く、イベント期間中は空港から街まで関連広告や関係者であふれていました。

次回はクラウド技術部エンジニアが参加したセッションについて報告します。

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