無線ハンディターミナルや業務用無線LAN機器を提供するメーカーとして、物流や公共・教育現場におけるワイヤレスソリューションを提供するフルノシステムズ。同社は、「快適無線」を指針に掲げ、創業以来40年にわたって無線通信技術を培ってきました。本稿では、代表取締役の中谷 聡志社長を迎え、創業35周年の際に行ったインタビューの内容も踏まえ、これまでのあゆみとこれからの展望、また中谷社長のものづくりに対する想いまで――創業40周年の特別インタビューとしてお届けします。

なお、インタビュアーは、新潟総合テレビのアナウンサーとして活動後、テレビやラジオに加えWeb番組での司会やリポーターなどをしているフリーアナウンサーの村山 千代さんに務めていただきました。

  • 写真)中谷社長、村山氏

コロナ禍もきっかけに“つながること”が当たり前に

村山:
まずは創業40周年、おめでとうございます。35周年の際に行わせていただいたインタビューから5年、この間には私たちの生活を一変させたコロナ禍もありました。当時社長が想像されていた無線通信を取り巻く状況と、実際にいまお感じになっていることで、違いはあるのでしょうか?

中谷:
ありがとうございます。たしか前回のインタビューは5Gの提供開始を翌年(2020年)の春に控えているときだったと思うのですが、5Gをはじめとする移動通信システムが発展しても、無線通信、つまりWi-Fiがなくなるようなことはなく、双方が適材適所で使われるようになり、むしろWi-Fiが求められる環境も増えていくのでは……、といった話をさせてもらった記憶があります。

もちろん、コロナ禍は私たちにとっても非常に大きなことではありましたが、これも一つのきっかけとなり、会社ではリモートワークが、学校ではICTの活用が一気に進みました。そういう意味では、5年前に想像していた未来と、実際のいまとではそう変わりない、むしろWi-Fiが使われるシーンはコロナ禍を経て増えているという状況です。

  • 写真)中谷社長

村山:
たしかに、病院では診察や面会のオンライン化が進みましたし、就職活動でオンライン面接が始まったのもこの時期でしたね。でも、ネットワークを通じて人と情報がつながることが当たり前になったからこそ、つながりにくさに以前よりストレスを感じたり、安全性が気になったりということも実感しています。

中谷:
そうですね。それぞれの使われ方によってそれぞれの課題はあると思います。こうした課題を見つけ、一つひとつ解消していくことが私たちメーカーの役割だととらえています。

ハイライトはGIGAスクール構想

村山:
フルノシステムズは無線通信業界において、教育現場に強いメーカーとして定着しています。この分野での5年間の取り組みにはどんなことがあったのでしょうか?

中谷:
2019年末に文科省から掲げられた「GIGAスクール構想」は外せません。世の中ではデジタル端末を1人1台配ることと捉えられがちなのですが、本質は生徒児童一人ひとり個別に最適化された教育や創造性を育むといったものです。

村山:
GIGAスクール構想において、フルノシステムズの役割は、端末をインターネットに接続するための通信基盤となるWi-Fiを提供するということで、とても大きなものだと思います。学校現場へWi-Fiを届けるにあたって、当時のエピソードなども教えていただけますか?

中谷:
そうですね。おかげさまで現在、全国約1800の教育委員会のおよそ4分の1は弊社の商品を使っていただいています。そして、我々のなかで大きかったのは、当初複数年で行う計画だったWi-Fiの導入をコロナ禍で、社をあげて急きょ1年で学校現場へと届けなければならいということでした。全社一丸となって教育分野、とくに学校現場へのWi-Fi導入に総力を結集して取り組んだことは、この5年間のハイライトといえるでしょう。

創業40周年を迎え、フルノシステムズが見据える先は

  • 写真)村山氏

村山:
少しさかのぼりますが、35周年の際には、Wi-Fiを含む通信業界全体が拡大し、無線LANなしでは仕事や生活が成り立たなくなるとおっしゃっていて、実際に無線通信はいままで以上になくてはならないものとなりました。一方で、コロナ禍の影響を受け、GIGAスクール構想への対応に注力された予測が難しい5年間だったと思います。

これを踏まえ、40周年の節目に中谷社長が描くビジョンを教えていただけますでしょうか?

中谷:
当社の強みである無線ハンディ―ターミナルの事業と業務用無線LAN製品の事業、この二つに加えてもう一本、新しいビジネスの柱を立てようということです。これは35周年のときにも掲げていたことですが、GIGAスクール構想への注力が一段落したいま、改めて新しいマーケットへの挑戦を掲げているところです。

  • 写真)中谷社長と村山氏が話している様子

村山:
新しい市場の開拓を見据えるうえで、大切にされていることはありますか?

中谷:
弊社には現場主義の風土があり、営業の社員はもちろん、技術の人間もお客さまのところへ足を運び、どういうことで困っているかというのを自分で感じ取り、これをヒントに新たなチャレンジを探そうということは意識してもらっています。

村山:
中谷社長は現場の皆さんや技術職の方に日ごろからどのようなことを期待されているのでしょうか?

中谷:
私自身もともと技術の人間なので、技術職の社員にはやっぱり何事にもこだわって、自分の考えを持ってものを作って欲しいなと思っています。なぜ自分はこんなものを作ったのか、あるいはお客さまに対して私はこういう考えでこれを作ったんだ、ここが特徴ですよ、という風に自分でアピールできるようなエンジニアになってほしいと思います。

村山:
会社のDNAともいえる部分かもしれませんが、その思いを受けて、営業の皆さんも頑張っていらっしゃるわけですよね。

中谷:
そうですね。私も20年技術職をやった後にお客様サポート部隊の責任者を経て、社長に就任する前は営業の責任者をしていました。いまでもよく現場の営業担当者とは話をしますし、技術者がどういう思いで製品開発をしたのか知ったうえで、それをお客さまに伝えてほしいと話させてもらっています。

なぜかというと、我々が取り扱うWi-Fiというのは、通信速度などの機能が進化する形で新たな規格がリリースされるのですが、今年から来年にかけてWi-Fi 7という新規格が弊社も含めて各社から出されています。でも、Wi-Fi 8という次の規格化も進んでいて、また数年すれば次の規格が出てきます。ただWi-Fiの技術は規格ものなので、どこの会社の製品も大半の機能は同じなんですね。なかに使っている部品も何種類かしかなく、どれをチョイスするかという話になってくるなかで、各社がちょっとしたところにこだわって競争しているわけです。

ネットワークが増強されると快適に使えるのでさらに別の使い方を模索する。だからこそ、技術者が想いをもって製品を開発し、そのこだわりを営業担当がお客さまに伝えるということは、引き続き大切にしていってほしいですね。

  • 写真)中谷社長

「快適無線」のこれからについて

村山:
コロナ禍に一層注力された文教市場や、35周年時に思い描いていた新たな事業の柱のなかで今後注力していきたい分野や市場はありますか?

中谷:
ネットワークと組み合わせて、例えばICTの機器を使って問題解決ができる分野がほかにもいろいろあると思います。我々の価値をご提供できるところがないかとマーケットを探して活動しているところです。例えばこの2、3年で始めているのは介護の現場ですね。2040年には高齢化のピークが到来し、その頃には介護職員が約57万人不足すると言われています。解決するにはICTで省力化していくしかなく、国も旗振りをしています。建設現場や物流現場でも人手不足が課題とされているので、ICTや無線LANがお役に立てるのではないだろうかと考えていて、今後注力し開拓していきたいと考えています。

村山:
少人数で済むように効率化の推進が求められるような分野ですね。この5年の間にもコロナ禍や地震をはじめとする災害がありました。自然災害の対策においても通信技術の存在意義がますます増しそうですよね。

中谷:
そうですね。先ほども触れましたが、35周年の時から構想を温めていた、新たな事業が始動しています。それがIoT分野への挑戦です。例えばゲリラ豪雨によって河川が氾濫するとか、あるいは都市部ですと“アンダーパス”と呼ばれる鉄道の高架などの下を通る道路に、水が溜まって冠水して車が動けなくなるといった事象があります。カメラやセンサーで監視するのに我々の技術を使えないだろうかということで、実証実験に取り組んでいます。ほかには農業や工場などの領域でも、スマート化の実現に向けた検証が進んでいます。

村山:
次の節目である45周年、その次は50周年ですね。将来に対して、どのような展望をお持ちですか?

中谷:
一つは、我々だけでなくパートナー企業とエコシステムを確たるものにし、新たな価値を生み出すことです。いままでは自分たちの持っている技術を中心に製品やサービスを提供してきましたが、技術革新のスピードが早く、知恵や技術の範囲も広くなってきています。パートナー企業などとの協力を一層深め、さらなる価値をお客様に提供することが今後は重要になると思います。

もう一つはやはり、無線通信技術に磨きをかけてやっていくことですね。以前に比べると無線というのは非常に安定してきたと思いますが、やはりまだ不安定な部分もあります。何かあった時にどこに問題があるかというのは一般の方ではなかなかわからないと思います。どのような状況下においても不便なく使える、空気のような存在を目指し、社会のお役に立てるよう「快適無線」をコンセプトに我々の製品やサービスをご提供していきたいですね。

  • 中谷社長と村山氏の集合写真

フルノシステムズのご紹介

フルノシステムズは、1984年に、船舶用電子機器では世界最大手の古野電気株式会社のグループ会社として設立。あらゆる産業や公共施設の無線通信の進展を、40年以上にわたり支え続けている。

◇株式会社フルノシステムズ
  http://www.furunosystems.co.jp/

◇フルノシステムズ40周年サイト
  https://www.furunosystems.co.jp/special/40th/

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