ドラッグストア業界大手のマツモトキヨシホールディングスとココカラファインの経営統合を受け、各社の商品仕入・企画・開発や販売促進、店舗開発・運営支援などを集約した機能会社として設立されたのがMCCマネジメントだ。グループのマーチャンダイジング戦略の策定・実行を担い、IT基盤の整備や活用においてもグループ全体を牽引する。同社はさらなる価値創造を目指してマツモトキヨシ、ココカラファイン両社の会員基盤を統合する新たな仕組みを導入した。そして、その構築を担ったのがNTTデータビジネスシステムズである。
顧客ファーストの価値創造に必須となる情報一元化の仕組み
マツモトキヨシホールディングスとココカラファインは2021年10月に経営統合を果たした。MCCマネジメントは、統合により期待できるグループシナジーの最大化に向けて設立された企業である。グループの重点戦略として「利便性の追求」「独自性の追求」「専門性の追求」「グローバル事業の更なる拡大」の4つを掲げ、顧客ファーストの視点から、顧客体験(以下、CX)を高める価値の提供を目指している。その戦略を支えるのがリアル(店舗)とデジタル(ECサイト・アプリ等)の掛け合わせであり、そこから得られるデータの活用だ。
こうした取り組みを打ち出す背景にあるのは、消費者ニーズの変化や人手不足の課題だ。IT・ロジスティクス推進本部IT部次長の勝見亮氏が、DX(デジタルトランスフォーメーション)の文脈と絡めて次のように語る。
「ただ単に店舗へ商品を置いてもなかなか売れない時代。デジタルを駆使して商品のメリットを訴求し、お客様を店舗などに誘導する仕掛けがなければ購買につながりません。加えて、薬剤師も含め人手不足は深刻化する一方なので、ITによる業務効率化・生産性向上が必須となっています」
勝見氏と同じIT部の富岡賢氏もこう話す。
「以前はとにかくファンを増やし、会員になっていただくことがメインでした。それがいまはお客様のライフタイムバリュー(以下、LTV)向上を考え、より良いCXを創出していくために、お客様から得られる情報の活用がきわめて重要になってきたと感じています」
経営統合以前、顧客に関する情報は両社それぞれで会員基盤を築き、蓄積していた。この状態ではせっかく経営統合しても、各々が保有する情報を横断して活用することはできない。顧客目線で見ても、利便性が低く、経営統合の認知もなかなか進まない。そこで必要になったのが、情報の一元化だった。
膨大な顧客データ統合に向けた案件が始動
MCCマネジメントとして事業をスタートして早々に、会員基盤統合の方針が決定されたという。しかし、両社で使っているシステムは異なり、カバーする機能の範囲にも違いがあったうえ、データ量が膨大で、属性なども一致していなかった。その一方では両社で重複する会員情報も存在するため、基盤統合が一筋縄にいかないことは見えていたという。
加えて、同社が始動して最初に打ち出された大型案件でもあり、その点でもリスクを感じていたとプロジェクトマネージャーを務めた勝見氏は振り返る。
「会員基盤は、店舗のPOSや公式アプリ、ECサイトも含めさまざまなチャネルのデータが集約されるところなので、この基盤が稼働しないとグループとしてお客様へのアプローチは何もできません。システム自体が問題なく稼働するだけでなく、両社の意識も合わせながら、ビジネスでしっかり活用できるものにしていくことが求められました」
基盤統合のリリース時期は2023年6月に決まり、構築すべき規模の大きさを前提に逆算すると、まずは委託する事業者を早急に選定しなければならない。複数のベンダーにRFPを依頼するなかで、提案内容やそれまでの同業界におけるシステム構築経験、それに基づく業務ノウハウ、さらには多様な企業のビジネス課題解決に貢献してきた実績を評価し、選んだのがNTTデータビジネスシステムズだった。
業務に熟知し“その先”もイメージできる提案内容を評価
NTTデータビジネスシステムズ側のプロジェクトリーダーを務めた山本孝範氏は、MCCマネジメントの要望や課題を聞いてこう考えたという。
「基盤の統合といっても、単に1つのシステムにすればいいわけではありません。両社にはそれぞれのビジネスや業務スタイルがありましたから、基盤統合に合わせてそれらも1つの形にするのか、双方を併用するのか、あるいは部分的に採用しつつ新しい形を作るのか、といった選択肢があります。そこで一つひとつの業務について話を聞いたうえで、とにかくシステムの安心・安全に重きを置き、提案を行いました」
実はNTTデータビジネスシステムズは、統合前のココカラファインの会員基盤にベンダーとして関わっており、同社の業務も把握していた。勝見氏が振り返る。
「提案内容自体が、当社が実現したい機能をすべて網羅していました。M&Aが多い業界ですので、共通部品システムを利用して拡張性の高いシステムを実現できる点もプラス材料でした。現行の基盤は信頼性が高く、NTTデータビジネスシステムズとならこの案件をやりきれると総合的に判断しました」
また、勝見氏のもとでプロジェクトリーダー役となった富岡氏も「提案が明瞭で、何をするためにどうあるべきかがはっきりと提示され、その先にいるお客様の姿やリリース後の展開のイメージも伝わってきたので、検討に参加したビジネス部門にもわかりやすい内容でした。」と語る。
両社のいいとこ取りで構築した新たな基盤が稼働を開始
開発自体は2022年4月にスタート。新たな会員基盤は上述のように従来の両社基盤を単純統合するのではなく、両社のシステムの良い部分を融合するという“どちらも活かす”形で構築された。
新しいビジネスにフィットする機能を元のシステムに盛り込まなければならないうえ、連携システムは両社のものを残した状態であり、そもそもシステム規模や情報量が大きいことから「開発量が必然的に多くなり、かつ、その都度出てくる課題に対応して変更も頻繁に入るので、開発は苦労が多かったと思います。ですがNTTデータビジネスシステムズは案件管理にも精通し、とくに混乱なくリリースまでコントロールしてくれました」と勝見氏は回顧する。
山本氏は「当社としても、開発チームに加えて、MCCマネジメントの声を身近で聞き、課題への対応を考える“架け橋”のようなチームを用意し、案件全体がスムーズに回るよう心がけました」と話す。
2023年6月のリリース後、まずはこの会員基盤のうえで両社の顧客を統合し、続いてECサイトや公式アプリについても統合を果たした。これにより顧客の利便性向上が促進され、実際に会員数も伸びてきているという。
一方、IT部門の立場から見ると、「この会員基盤は連携しているフロントシステムとのやり取りがAPIで簡単に行えるため、開発の生産性が高まったほか、障害が起きた際の原因切り分けや迅速な対応にもつながりました」と勝見氏。とくに開発については「統合を機に機能配置を見直し、システム自体も簡素化されたので、営業部門や事業部門から次々にあがってくる要求にタイムリーに対応できるようになり、サービス開発のスピードが目に見えて上がりました」と評価する。
加えて、セキュリティが強固になった点も重要な成果で、より安心して運用できると勝見氏、富岡氏は声を揃える。実は今回、会員基盤から本人認証の仕組みを別システムに切り出し開発しており、認証と会員情報管理を分離することでより高い安全性を実現している。
さらに、会員基盤で扱わないクーポンやDMの配信履歴などさらに細かい属性を管理するデータベースを開発し、顧客のLTV向上に活かしている。“顧客ファースト”の施策には欠かせない仕組みだ。これらの履歴管理はマツモトキヨシのみの仕組みで、「これも経営統合で生まれたシナジーの1つです」と富岡氏は語る。
ビジネス視点で課題解決をサポートする姿勢に今後も期待
会員基盤は、フロントシステム運用や新規サービス開発の基盤としてはもちろん、プロモーション、DM、あるいはデータ分析などあらゆる業務に関わる重要な位置づけの仕組みとして「ビジネスになくてはならない」(勝見氏)ものとなっている。そのため、「可用性をさらに高めていくことが現時点の課題だ」と勝見氏は語る。
最後に富岡氏は、NTTデータビジネスシステムズを次のように評価した。
「言われたものを作るだけならそれほど難しいことではないかもしれません。NTTデータビジネスシステムズはビジネス視点を持ち、そのシステムの先に広がるビジネスを描いたうえで提案してくれるので、まさに社名のとおり“ビジネスのシステム”を実現する会社として今後も期待しています」
「NTTデータビジネスシステムズとしてこうした声に応える価値を引き続き提供し、さまざまな企業の課題解決を支えていく」と山本氏も力強く応じた。
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