企業はいま、ITシステムの老朽化や人材不足、デジタルトランスフォーメーション(DX)の遅れといった問題に直面しており、経費精算を典型とする全社員がかかわるバックオフィス業務においても課題を感じている企業が多い。そうしたなか、2024年12月10日に、経費精算領域でデファクトスタンダード製品を展開するコンカーが共催するセミナー「『2025年の崖』を乗り越えるために!経費精算システムの乗り換え事例から学ぶ、システム見直しの重要性とその効果」が開催された。本稿では、セミナーの模様をレポートする。
DXレポート生みの親が明かす「レガシー刷新とDX推進の両立」の重要性
「2025年の崖」を乗り越えるためにDXの取り組みが加速している。ただ、多くの企業が課題に直面し、具体的な成果を得られていないのが現実のようだ。最初に登壇したAIST Solutions・Vice CTO(デジタル庁 シニアエキスパート)の和泉憲明氏は「DX推進の成功パターンはバックキャスティング思考による可視化」だと強調し、DXで成果を上げるために、企業がどのような考え方やアプローチで臨むべきかを解説した。
「DXレポートの生みの親」として知られる和泉氏は、DXレポートの狙いと真意について「DXとはデジタルによる完全なる変化です。顧客や社会のニーズをもとに、データとデジタル技術を活用して、競争優位性の確立を目指します。『2025年の崖』問題を解決するためには、IT投資を現行システムの維持管理から、競争力強化のための投資にシフトさせることが重要です」と述べた。
DXレポートにより、多くの企業に課題意識は広がったが、根本的な問題が先送りされた面もあったという。たとえば、既存システムのブラックボックス化が解決されないままであったり、「小さく始める、とにかく挑戦する」ことが目的化してしまったり、結果、DX推進の成果につながらないのだ。
そこで求められるのがバックキャスティング思考となる。
「現状を見て足元の改善を積み重ねていくようなフォアキャスティングでは、現状の維持と大差がありません。そこで重要な思考が、達成すべきゴールを定義し、そこから逆算する形で何を変革すべきかを明確にするバックキャスティングです。自社がどうなりたいのか、そのためにどうビジネスモデルを変えなければならないかを考え、直近で着手すべきアクションとしての変革イメージを具体化することが重要です」(和泉氏)
和泉氏は次のようにDXの考え方とアプローチを説明した。
「DXのポイントは、個社の強みを活かしたさらなる競争優位の確立であり、既存ビジネスの否定ではありません。「デジタル×経営」としてデータ活用をどう具体化するかという観点から、レガシー刷新とDX推進を両立させることがポイントです」(和泉氏)
経理業務からDXをスタートさせた三菱化工機とユニバレオ
続いて、和泉氏、三菱化工機の齋藤光洋氏、ユニバレオの吉本忠則氏の3名がパネリストとして参加した事例講演 & トークセッションが行われた。モデレーターはコンカーの越智佑馬氏が務めた。
三菱化工機はエンジニアリング事業と産業機械事業を2本柱にビジネスを展開し、創業90周年を迎える企業だ。齋藤氏は経理部財務課課長として、経費精算をはじめとする間接費業務を長く担当してきた。
ユニバレオは、創業65年の血液検査・臨床検査を行う企業だ。グループで介護や検診などにも取り組んでおり、吉本氏はグループの持ち株会社の経理部部長として、コンカーを活用したDX推進に携わっている。
まず和泉氏がDX推進のポイントとして「創業後、長く続く企業には必ず強みがあります。変革にあたって強みを投げ出すのではなく、ITシステムや導入製品によって自社の価値がどう増幅できるのかという視点を持つことが大切です」と述べた。
実際、三菱化工機では20年ちかく稼働する基幹システムがあり、会計システムも基幹システムと連動するため、どう変革していくかは難しい課題であるという。そこで注目したのが経費精算などの全社員が携わる業務からの改革だった。
「さまざまなDXの取り組みを進めていますが、DXという言葉だけ先行し、ITリテラシーが不足して取り組みが進まないといったこともありました。私の立場から提案したのが最も身近な経費精算システムを変えることで、ゆくゆくは組織や風土までを改革していくことでした」(齋藤氏)
また、ユニバレオでは、それぞれの歴史のあるグループ会社毎で業務が異なっており、コンカーの経費精算システムの導入により業務環境をまず統一した。苦労したのは、現場起点での改革をどう進めるかだったという。
「現場では古いPCも残り、ITリテラシーも決して高いわけではありません。営業や医療機関を回る集配センター、介護現場など、グループ全体の各現場を俯瞰する視点を持った取り組みが必要でした」(吉本氏)
DX定着のきっかけ創出と、同一プラットフォームでグループ統合が可能に
コンカーの経費精算システムを採用した背景として、三菱化工機では、紙のハンコ文化と部分的なシステム採用によって"ハイブリッド化"した経費精算業務を、完全に電子化する狙いがあった。
「電子化で入力する手間は減ってもデータ化するという新たな手間が増え、電子化しても効率化されない課題がありました。社員全員が使う経費精算システムは、広範囲に利用されるため、ここを抜本的にDX推進することで、新たなDXが波紋のように広がっていきます。その最初のきっかけがコンカーでした」(齋藤氏)
機能面では、電子化に向けてユーザーが簡単に操作できる点や、ガバナンスを担保するためのチェック機能が充実している点を評価した。システムを手間なく利用できるようにすることで工数を削減し、そのリソースを本来の業務に向けて再配置できることは大きなメリットだったという。
また、ユニバレオがコンカーの経費精算システムを採用した一番の理由は、グループの業務を統一化しつつ、経費精算と請求書の業務を同一プラットフォームで実現できることにあった。
「ひと月に経費精算は500〜600件、請求書は2,000件、金額でいうと10億円を超える規模です。現場への導線が同じこれらの業務を同じプラットフォームに統一することでより効果が高まると考えました。高度な活用にはERPなどとの連携も必要になってきますが、そのためにはデータの一覧化や活用に向けた分析ができるプラットフォームを作ることが重要です。コンカーの経費精算システムはこれからの活用に向けた第一歩となるサービスでした」(吉本氏)
また、電帳法やインボイス制度などへの対応も追い風となった。コンカーの経費精算システムを導入することで、ガバナンスや予算管理、クラウド活用といった時代のトレンドに合わせた取り組みを推進できることも評価したという。
導入後の効果について齋藤氏は、「大きく変わったのは、今まで溜めていた人がすごいスピードで精算するようになったことです」と話す。また、吉本氏は「グループ統合という点ではデータを取得してマネジメントに提出できるようになったことは大きいです。また、精算自体もしやすくなり、若い社員からも『便利ですよ』と反響の声をいただくようになりました」と語る。
今後、両社では、経理業務のDXで得られた知見やノウハウをさまざまな業務に拡大していく構えだ。
コンカーが目指す「経費精算のない未来」
続いて越智氏が「全社員に共通する業務のデジタルトランスフォーメーション -間接費業務から始める低付加価値業務の極小化-」と題して、経費領域における抜本的な変革を成功させるポイントについて解説した。
コンカーは出張管理、経費精算、請求書支払の領域でNo.1の実績を持つ、デファクトスタンダードのソリューションを展開する企業だ。全世界のユーザー数は9,300万人を超え、国内では経費精算システムとして10年連続で売上シェアNo.1を誇る。1,850企業グループ以上に採用され、サービス継続率は97%以上を記録している。
「多くの企業がコア事業のDXに取り組んでいますが、成功に至っている企業は少数です。一方で、『コーポレート機能の高度化』に関するDXは突出して成功率が高いことがわかっています。デジタル化に本気で取り組む企業ほど、コーポレート機能の高度化を徹底的に推し進めています」(越智氏)
コーポレート機能のなかでも、注目できるのが経費などの間接費領域だ。越智氏によると、会社の本業である直接費の領域は、優先的にシステムの進化が図られ、コストの最適化も進んでいる。その一方で間接費は、全社員にとって最も身近な会社のカネであるにも関わらず、投資優先度が低い傾向にあるという。
「しかし、間接費は全社員が携わるため改善効果が大きいです。また、標準化によりリスクなく短期に効果を出しやすく、管理が分断されているため統合管理による変化の幅も大きいです。間接費に対する意識の差で企業の地力に大きく差がつく領域なのです」(越智氏)
そうしたなかコンカーは「経費精算のない世界をつくる」ことをビジョンとして掲げる。具体的にはキャッシュレス、入力レス、ペーパーレス、承認レスという4つの観点から、さまざまなソリューションを提供している。その1つである「Concur Expense」を利用すると、PayPayやSuica、タクシーアプリなどによるキャッシュレス決済とのデータ連携やスマホを使った経費申請や承認、経費精算レポートの自動作成などが可能になる。
最後に越智氏は次のように「経費精算のない未来」を展望して、講演を締めくくった。
「コンカーが日本のお客様と共に実現したいのは、経費精算をなくすことで無駄な業務をお客様のもとから徹底的に排除し、将来にわたり持続可能な全社経営基盤をお届けすることです。経費領域を取り巻く環境は毎年のように変化が発生しており、いまでは経費精算というプロセス自体をなくそうという動きすらでてきています。『経費精算のない未来』を弊社とともに歩んでいただきたいです」(越智氏)
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