日進月歩で大きな進化を遂げる生成AIだが、一方で企業への導入はまだあまり進んでいるとはいえない。そこにはどんな事情があるのだろうか。

企業における生成AI導入支援を行っている日本ビジネスシステムズで執行役員 Data&AI本部担当を務める中山高史氏は、「企業は今から生成AI活用を進めなければ、3年後には生き残れなくなる」と警鐘を鳴らす。

それはどういうことなのか。企業の生成AI活用について誰よりも実情を知る中山氏は、現在の日本企業の状況をどう見ているのか。企業が今から取り組むべき生成AI活用のポイントについて聞いた。

  • (写真)日本ビジネスシステムズ 執行役員 Data&AI本部担当 中山高史氏

    日本ビジネスシステムズ 執行役員 Data&AI本部担当 中山高史氏

プロフィール

中山高史
日本ビジネスシステムズ 執行役員 Data&AI本部担当


大阪大学大学院情報工学科修士課程修了。新卒で三菱商事株式会社に入社。IT部門にてグローバルシステム導入展開プロジェクトを実施後、ECベンチャー設立、経営、バイアウト、会社設立・上場等を経験。大手小売業で常務執行役兼CIOとして全社デジタル改革を推進。2024年4月より日本ビジネスシステムズ(株)に入社し、2024年10月からData&AI本部担当執行役員に就任。

生成AIの知能はすでに人間を超えている

―まず、日本ビジネスシステムズ(以下、JBS)の事業について教えてください。

中山氏:JBS はMicrosoftをはじめとするクラウドソリューションに強みを持つシステムインテグレーターです。主な事業としては、クラウドインテグレーション、クラウドサービス、ライセンス&プロダクツの3つがあり、コンサルティングからソリューション導入・運用・利活用に至るワンストップでの支援を通じて、お客さまのクラウド活用力向上と社会のデジタル変革に貢献しています。

―現在、執行役員としてData&AI本部を担当されている中山さんですが、現在の生成AIをどのようにご覧になっているでしょうか。

中山氏:生成AIが大きな話題になったのは2022年11月末のChatGPT登場がきっかけでした。僕も初日にさわって衝撃を受けたことを覚えています。その衝撃に突き動かされるようにして、プライベートで自分のAIクローンである「AI中山」を開発したりもしました。

なぜそれをやろうと思ったかというと、ChatGPT登場以前までは、AGI(汎用人工知能)の登場はおそらく2045年くらいになるだろうと言われていたのですね。

ところが生成AIの登場により、それがもっと早まると予感したからです。生成AIの進化スピードを毎日感じている今となっては、2030年を待たずにAGIが生まれると、その予感が確信に変わりつつあります。

そのAGIによって世の中や働き方はどう変わるのか。それを検証しようと思って開発したのが、自分の分身である「AI中山」だったわけです。その結果、何がわかったかというと、これから我々は「AIにできないこと」をやるしかないということ。たとえば、人と会うことや、リレーションをつなぐこと。これはAIにはできません。

逆に言うと、論理的に物事を考えて実行することは、生成AIが人の能力を超え始めています。というのも現在のAIは人間で計算するとIQ120を超えていて、人のトップクラス同等かそれ以上の知能をすでに持ち始めているからです。

正直、僕の難しいことでの相談相手はすでに生成AIになっています。加えて、AIの進化スピードは凄く速く、AIに関する情報収集について人力だと毎日10時間はかかることを1時間程度で実現できています。

それゆえ、僕はもう生成AIなしには生きていけなくなっています。

今からAIを活用している企業としていない企業では、3年後の差が大きく開いている

―手足のように生成AIを使いこなす中山さんのような方がいる一方で、多くの企業は生成AIの導入がまだそれほど進んでいない現状があります。

中山氏:そうですね。「別に生成AIを使わなくても仕事は回っているし、本当に必要なのですか?」とおっしゃる方はとても多いです。そういった方はたいていChatGPTが出た当初にさわって、プロンプトを入力してみたもののあまりいい感じの回答が返ってこなかったというパターンです。

しかし生成AIは驚異的なスピードで進化しています。以前の生成AIはインターネットにある情報しか参照できませんでした。だから無難な回答ばかりになって、企業では「使えない」と判断されたわけです。

ですが、現在の生成AIはRAGという技術により、社内情報を参照しての回答が可能になりました。仮に社員が結婚した場合、生成AIに「結婚したのですが、どの部署にどう報告すればいいですか?」と聞いたとします。それに対して、今の生成AIからは「総務部にXXを、人事部にXXを連絡してください」と役立つ回答がすぐに得られます。こういった生成AIの進化を知らなかったり、効果を感じられるような仕組みづくりができていなかったりして、企業の生成AI活用が停滞しているのが実情ではないでしょうか。

たしかに今はまだ生成AIを使わなくても業務やビジネスは回るかもしれません。でも、3年後を考えてみてください。AIをうまく使える会社と使えない会社はかなりの差が開いているはずで、AIを活用できる人はAIと共存できる一方、そうでない人は「AIが出した回答に従って動く」だけの仕事しかできなくなってしまうでしょう。僕はそこに強い危機感を覚えています。

効果が見えやすい領域に生成AIを導入し、人は人にしかできない仕事に集中すべき

―そのように具体的にお聞きすると納得できるのですが、多くの企業ではそこまでの発想に至らないことも多いのではないでしょうか。

中山氏:そういったお客様に対して、生成AI活用のビジョンを提案するのが私たちの仕事です。たとえば人事や総務、経理といったバックオフィスに生成AIを導入してみても、売上につながるわけではないので経営者側からは効果が見えにくい。しかも現場に聞いてみると、2割くらいの社員しか使っていないという。じゃあやめようかとなってしまうのです。

それに対して僕が言うのは、「人は人がやるべき仕事に集中して、効果が見えやすい領域で生成AIを使ってください」ということ。

たとえば昨今、コールセンターではカスタマーハラスメントが大きな問題になっています。こうしたじわじわと精神が削られてしまうような仕事にもっと生成AIを活用すべきだと思うのです。それで社員のメンタルを良好に保てて離職が減るなら、プライスレスの価値がありますよね。

もうひとつは、売上や利益が上がる領域に導入することです。たとえばセールス活動全般、つまり、営業能力を最大化するための戦略と実行を生成AIでサポートする提案をお客様にしています。

それにより、仮に4,000億円あった売上が10%増加したなら、生成AIの導入に1億円を投資しても費用対効果は十分なはずです。このように、効果がわかりやすくシンプルな領域にフォーカスして生成AIの導入を検討すべきだと思います。

―そこまでのサポートが現在の生成AIには可能になっているということですね。

中山氏:はい。生成AIはもう次のステップに進んでいます。今ブームになっているのが「AIエージェント」です。Microsoftも先日、Ignite 2024で「Copilotがあなたのエージェントになります」と宣言しました。AIエージェントとは、質問に回答するだけではなく、その回答を要約してメールで他の人に送ってくれたり、人に代わって会議のスケジュールを調整してくれたりできる存在です。このAIエージェントによって、人がやりたくない業務をAIに任せられたり、売上を大きく伸ばしたりといった恩恵を享受できるようになると思います。

  • (写真)お話をされる中山氏

Copilot、AOAI、Snowflakeなどあらゆる技術に対応できるのがJBSの強み

―生成AI支援事業を行っている企業は多いですが、JBSならではの強みはどんなところにあるでしょうか。

中山氏:生成AIのソリューションは、Microsoft Copilotはもちろんのこと、AOAI(Azure OpenAI Service)や、他の生成AIモデル含めて、幅広く対応できます。これは当社がMicrosoftとの強いリレーションを持っているからできることです。

たとえばIgnite 2024で発表されたCopilotの機能拡張やCopilot Studioなどについても知見を持っています。最新機能を生かして、「こんな業務に使えますよ」とか「こんな業務をAIエージェントを使って自動化してみてはいかがですか」といった、最新の技術を駆使した、迅速かつ深い提案が可能です。

そのうえで注目いただきたいのが、私たちが「AI本部」ではなく「Data&AI本部」を標榜していることです。AIだけでなくデータの重要性も認識しているからこそ、このような名称にしています。社内のデータが統合されていなかったり、きれいな状態になっていなかったりすると、AIに活用しようとしてもうまくいきません。生成AI活用で最も重要なのはデータなのです。

また、実際にAIを活用するうえではAIを動かすアプリケーションが大事です。プロンプトを手で入力してやりたいことをAIにやらせるのは大変ですから。社員がAIを使いこなせるようにするためには、どんな業務にAIを活用するのかをきちんと考えて、アプリケーションを開発して、必要なデータを統合する必要があります。データ、AI、アプリケーション、この3つのどれが欠けても生成AI活用はうまくいかないのです。

当社はこのデータの部分にも強みを持っています。データ基盤の整備については、Microsoftに限らずSnowflakeなども活用してあらゆるプラットフォームで対応が可能です。

生成AIは産業革命に匹敵するイノベーション

―生成AI導入で、よりよい未来が描けるイメージがわきました。

中山氏:僕は、生成AIというのは産業革命と同等かそれ以上のイノベーションだと捉えています。産業革命で人は蒸気機関を発明して経済と会社の形を変えました。そして今、人は生成AIで人間を超える知能を生み出しました。人を超える存在を人類は初めて社会に迎えるわけです。そういう意味では産業革命を超えているわけですね。

複雑な計算をするときに電卓を使うように、生成AIは人間の能力を拡張してくれる存在です。生成AIを使わない人が、使いこなす人と勝負しようとするのは、いわば生身の人がパワードスーツを着た人と戦うようなもの。大事なのはパワードスーツの否定ではなく、その使い方を知ることです。そして、その上で“パワードスーツを着てもできないこと”を知ること。それこそが、その人自身の価値なのですから。

―JBSとして、今後どのように企業の支援をしていきたいですか。

中山氏:JBSはインフラに強い会社で、「Data&AI本部」は新しい部署でもあります。ともすると、当社だけでなく他社と協力したほうがより良いものができる可能性もあります。必要な技術がJBSにない場合は、それを一番得意とする企業と共同で提案を行います。

当社は日本のトップクラスのAIベンチャーとの付き合いが数多くあるため、どのAIベンチャーにどのような強みがあるかは概ね把握できています。かつ、協業する関係が既に築けていますので、お客様にとって最適なソリューションが提案できると自負しています。

もっとも重要なのはお客様の課題を解決することです。そのために最高のソリューションを提供し、お客様との信頼関係をより一層深く築いていきたい。お客様の企業価値向上のため、お客様のよき伴走パートナーであり続けたいと思います。

  • (写真)JBS本社内の「Lucy’s Tokyo」での中山氏

    JBS本社内の「Lucy’s Tokyo」にて

セミナー開催情報

生成 AI の活用に向けて、企業内に散在するデータの統合環境構築を、日本マイクロソフト、Snowflake 、JBS 、3社のリーダーが紹介します。
課題をお持ちの方の参加をお待ちしております。

Snowflake on Azure で実現する最先端の AI 活用


会  期:2025年1月30日(木)14:00~15:15
開催形式:オンライン/無料
申込締切:2025年1月24日(金)17:00
主  催:日本ビジネスシステムズ株式会社
問合せ先:日本ビジネスシステムズ株式会社(PartnerPromotion@jbs.com

関連リンク

日本ビジネスシステムズ

[PR]提供:日本ビジネスシステムズ