顧客ニーズの多様化、競争の激化、デジタル技術の進歩など、激動の時代を生き抜くためには、ビジネスアジリティ、つまり変化に迅速かつ柔軟に対応する組織能力が不可欠である。これは、単に開発部門だけでなく、エグゼクティブも含めた組織全体で求められる能力であり、トップダウンで変革を牽引して組織全体の環境を整備する必要がある。本稿ではエグゼクティブがビジネスアジリティの重要性を深く理解し、変革をリードしていく必要性について解説する。
企業を取り巻く環境の変化と、ビジネスアジリティの重要性
デジタル技術の急速な発展によってビジネス環境が大きく変化しています。新しい技術やサービスが次々と生まれ、市場は常に変化し続けています。このような状況下で、企業が生き残っていくためには、変化に迅速に対応できる能力、つまり「ビジネスアジリティ」が不可欠です。
しかし、多くの企業、特に日本企業は、従来の組織構造や働き方に固執しており、変化に対応するのが難しい状態にあります。従来の日本企業が築き上げてきた階層組織は、信頼性と効率性を重視する一方で、変化に迅速に対応できる「ビジネスアジリティ」を阻害しているのです。イノベーションを生み出す力やスピード感が失われ、企業の成長は鈍化の一途を辿っています。
しかし、直ちに倒産や業績悪化に繋がるわけではありません。ブランド力や財務基盤が強固であれば、組織の硬直化を放置してもある程度は成長を続けられます。ただ、それにより、企業は自ら変化への対応力の低下に気づかず、結果として、より柔軟なスタートアップ企業に市場シェアを奪われてしまうのです。
そのため、企業が生き残るためには変化の必要性にできるだけ早い段階で気が付き、転換点に到達することが重要といえます。とはいえ、強い動機がない限り古い習慣を維持しようとする動きが一般的です。
下図は、シフトレフトを表す図です。学習がずっと早い段階で行われると、つまり左にシフトされると、問題がより早く明らかになるため、最小限の影響で是正措置を講じられることを示しています。つまり、企業をリードしていくエグゼクティブが、早い段階で変化の必要性に気づき、受け入れること。そして古い慣習への依存から脱却し、転換点へ到達することが組織変革を成功させる鍵と言えるのです。
出典:Scaled Agile, Inc. 「品質のシフトレフトによる、問題の早期発見」
SAFeによる組織の変化と、変化を実現するアプローチ
Scaled Agile Framework®(SAFe®)は、変化に対応し、競争力を維持するために有効な手段の1つです。
SAFeとは、大規模な組織でアジャイル開発を成功させるための、最もポピュラーなフレームワークの1つであり、このフレームワークを開発したScaled Agile, Inc.(SAI社)により、企業全体へのリーン、アジャイル、DevOpsの展開が実証されています。
また、ビジネスアジリティを高めるためには、組織のあり方が重要となりますが、SAFeは従来の階層組織と、社員同士が自由に連携して新しいアイデアを出し合いやすいネットワーク組織の2つを効果的に連携させるための方法論となっています。
これにより、企業は安定性と柔軟性の両方を兼ね備えられます。 また、SAI社が行った調査結果から、SAFe導入が多角的にインパクトのある価値を生み出すことが分かります。
エグゼクティブ自らのSAFe習得が重要
SAFe導入による変革を成功させるためには、エグゼクティブがトップダウンでリードしていくことが重要です。そのために、まずはSAFeを知り、学ぶところから始めましょう。
SAFeには開発元であるSAI社が提供する、体系的なトレーニングプログラムが多数存在します(※1)。 NTTデータでは、SAI社が認定する全てのSAFe研修に対応しており、お客さまのニーズに合わせて最適な研修を提供しています。
上記の公式研修のなかには「Leading SAFe®研修」というものがあります。この研修は、組織変革をリードする立場の方々を対象としたもので、SAFe導入の第一歩に最適なプログラムです。 SAFeによる変革を成功させるためには、まずエグゼクティブの理解とコミットメントが不可欠であり、エグゼクティブがSAFeのビジョンを共有し、組織全体を巻き込むことで、スムーズな変革を実現できます。
研修概要
この研修では、組織を改革するためにリーダーに求められる知見を学べます。SAFeを導入する変革エージェントとして、変革推進チーム(LACE:Lean-Agile Center of Excellence)を立上げる方法、開発チーム(ART:Agile Release Train)の定義方法、初回ARTの発車(PIプランニング開始)までに実施すべき活動を学ぶことを目的として、変革推進チームの構成や教育手順、SAFe適用対象の定義方法を知り、初回のPIプランニングまでに必要となる手順を学びます。
想定受講者
変革をリードする立場の方(CEO、エグゼクティブ、マネージャーなど)
受講後に期待できること
・SAFeの原則が持つ意義について他人に説明できる
・SAFe特有の開発チームのロールやイベントについて他人に説明できる
・顧客中心主義とデザイン思考の重要性や実践方法を理解できている
・DevOps文化を組織に浸透させることの重要性を理解できている
・SAFe流の予算・戦略管理(Lean Portfolio Management)の概要を理解できている
また、NTTデータではSAFeの提案が適切と思われるお客さまのエグゼクティブにSAFe説明とヒアリングを実施しています。直ちに研修を実施するのではなく、必要性を理解したうえで研修を導入することが可能です。お問い合わせいただいたお客さまにも、ご要望に応じて説明・ヒアリングを実施いたします。ぜひお気軽に問い合わせください。
NTTデータのSAFe支援と導入事例
実際にSAFeを導入されるお客さまに向けたNTTデータの支援をご紹介します。 お客さまの組織変革・ビジネスアジリティ向上という課題に対し、お客さまの意思決定者層とともに変革推進チームを組成し、トップダウンで変革を主導します。導入からサポート、また、伴走型支援も実施しています。
また、デジタル技術による変化のスピード加速と変化の予測困難性は、多くの産業に様々な影響を与えており、求められる変化は産業によって異なります。
NTTデータでは、それぞれの変化への対応を深く理解し、顧客企業様の状況やご要望に合わせた最適な支援を実施しています。 製造、金融におけるNTTデータのSAFe導入支援の事例をご紹介します。
大手自動車メーカー(製造)の事例
先進技術の活用により、迅速に製品の顧客体験を向上させていくため、「変革のビジョンの明示による動機づけ」「顧客中心主義の下での機能横断的な協働」などを実施し、顧客の運転技術を向上させるアプリケーションを開発することで顧客満足度の向上を実現しました。
大手カード会社(金融)の事例
顧客ニーズを捉えた早期のプロダクト提供を実現するために、「分散型意思決定構造の構築」「SAFe/スクラム思想・方法論の定着化」「プラットフォームアーキテクチャの構築」などに取り組み、ビジネス着想からプロダクトリリースまでの期間の50%短縮を実現しました。
研修にご興味のある方や、SAFe支援のご要望、まずは具体的な導入事例を知りたいといったご要望など、柔軟に対応しています。
おわりに
この記事では、激化する競争環境の中で企業が生き残るために、SAFeを導入し、ビジネスアジリティを向上させることの重要性について解説しました。SAFeは、大規模な組織でもアジャイル開発を成功させるためのフレームワークです。
特に、エグゼクティブがSAFeの重要性を理解し、組織全体を巻き込むことが成功の鍵となります。その第一歩として、まずはエグゼクティブご自身がSAFe研修を受講し、体系的な知識を習得することを推奨します。研修を通じて貴社の組織に最適な導入計画を立てられスムーズな変革を実現できるでしょう。
研修だけでなく、ご状況やご要望に応じたSAFe支援も実施しています。研修にご興味のある方、SAFeの導入をご検討されている方はお気軽にお問い合わせください。 この記事が、組織変革の第一歩となることを願っています。
著者紹介
谷口 智彦
NTTデータグループ 技術革新統括本部 Apps & Data技術部
NTTデータ入社後、金融、製造業等のシステム開発・運用、アプリケーション基盤設計リスク可視化の研究開発、組織運営の経験を経て現職。デジタル技術の活用を前提とした組織変革、DX人財育成に関わる企画営業、社内外向け研修の企画開発、運営に従事。
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