「データを活用する行為そのものの再定義が必要だ」と語るのは、ドーモ株式会社 プレジデント ジャパンカントリーマネージャー 川崎友和氏だ。企業がデータの価値を発揮するためにプラットフォームはどうあるべきか、10月9日に行われた年次カンファレンス「Domopalooza Japan2024」のため来日したDomo, Inc. セールスおよびフィールドオペレーション担当プレジデント ジェフ スカウゼン氏をお招きし、ドーモ創業時から国内外のデータ活用の変遷を見てきたお二方に話を伺った。
プロフィール
(左) 川崎 友和氏
ドーモ株式会社 プレジデント ジャパンカントリーマネージャー
2016年にドーモジャパンカントリーマネージャーに就任。その後、Elasticでの日本ビジネス責任者としての経験を経て、2021年6月より現職。IT業界に20年以上携わった知見を活かし、主にデータ活用を通じた日本企業のデジタル変革の成功に尽力する。
(右)ジェフ スカウゼン(Jeff Skousen)氏
Domo, Inc. セールスおよびフィールドオペレーション担当プレジデント
25年以上にわたる営業とリーダーシップの経験を持ち、CROとしてDomoの営業部門を一から構築する上で重要な役割を果たす。Domo以前は、IBM、Omnitureに在籍し、6年以上にわたって金融サービス企業の創業者兼営業部長を務めた。
Domoが「データを活用する行為そのもの」を再定義していく
──お二人ともドーモ創業期からのメンバーでいらっしゃいますが、ドーモに参画しようと思ったきっかけはなんですか?
川崎氏:私は創業者であるジャシュ ジェイムズの才能に惹かれたことが大きいです。もともと彼が共同創設したOmniture(現Adobe)に在籍していたのですが、「オンライン上のデータだけでなく、これからはリアルなビジネスデータの活用に踏み込んでいくことが重要になっていく」と、強く感じていました。BIを導入している企業でもデータの価値を最大化できていない状況の中、ジャシュが新しい事業を立ち上げると聞き、Domoのコンセプトに感銘を受け、Domoで日本を変えていきたいと思い、ジョインしました。ジャシュはまだこの世にないアイディアを次々と生み出すので、常に刺激的な存在です。
スカウゼン氏:私とジャシュは大学時代からの仲で、Omnitureに誘われてから共にビジネスを創造する関係になりました。2010年にドーモに入ったのも「Webの分析データだけでなく、会社すべての情報を統合し可視化する」というジャシュのビジョンに共感したからです。彼が築いた事業なら、企業に画期的な変革をもたらすことができると思いました。ジャシュは優れたマーケターであり、小さなアイディアも大きく育て、グローバルに広げていく推進力があります。
川崎氏:既存の価値観を壊した後に新しいものを創造していくという点で、まさにDomoは「ディスラプター(※)」と呼ぶべき存在ですね。BIと呼ばれるツールは昔から普及していますが、データの価値を最大限引き出せていたという企業は多くなかったと思います。Domoが「データを活用する行為そのもの」を再定義していくことで、保有しているデータが本来持っている価値を引き出していけると考えています。
(※)…デジタルテクノロジーを活用して、既存の業界の秩序やビジネスモデルなどを破壊する存在のこと
──「データを活用する行為を再定義する」とは、どういうことでしょう。
スカウゼン氏:BIは情報を可視化できる点で非常に優れていますが、BIで可視化するところまで持っていくためにはデータ収集のほか、分析や加工といった準備工程を踏む必要があります。従来のツールだと、こうした準備は社内に10%程度しかいない一部の専門グループによって開発され、残る90%の社員は可視化できる環境ごとデータが提供されるのを待っていることしかできない状態にありました。一方、私たちが提供するDomoは、すべての社員が自由にデータへアクセスし、活用できることを前提としています。
そもそも、データは本来、さまざまな人が活用するものです。たとえば、海外へ行くとき、飛行機の状況や現地の天気をチェックするために、わざわざIT部門に問い合わせたりしませんよね。アプリで簡単に確認して、すぐさま行動に移すことができる環境を、ビジネスでも実現したいのです。
川崎氏:ビジネスデータは本来ビジネスサイドで活用するもののはずが、ツールを活用するにもある一定のスキルが求められてきたため、IT部門の管轄とされがちでした。IT部門はデータの管理、ガバナンス、セキュリティといった領域はミッションとなるものの、ビジネスシーンでのデータ活用はメインミッションではありません。ビジネスユーザーが自らの意志でデータを活用できるようにするためにも、ローコード・ノーコードで、技術的な障壁を下げることが第一歩となります。
もう一つ、ビジネスデータの価値が企業で発揮されてこなかった要因として「データの鮮度」が挙げられます。ビジネスユーザーなら誰でも、1週間かけて収集・分析されたレポートを会議で報告されるより、今この瞬間の状況を知って、直ちにアクションを起こしたいと思うものです。様々な部門を介在することで失われてしまうデータの「リアルタイム性」を、Domoは重視しています。
スカウゼン氏:過去の情報だけを見てアクションを起こそうとするのは、バックミラーだけ見ながら車を運転するようなものですからね。
生成AIの出現で、データ活用への意識が変化
──日本のデータ活用に関する変化については、どのように感じていますか?
川崎氏:日本でDomoの提供が始まったのは13年前になりますが、当時はマーケティングや営業、HR領域など、局所的な部署におけるデータ活用に留まっていました。ところが、ここ2~3年は「全社データ活用」の機運が急激に高まったと感じます。また、生成AIやCDW(クラウドデータウェアハウス)の活用に積極的な企業も増えています。
しかしながら、DXに精通した人材が社内に少ないため、データ活用のノウハウが全社に根付いていかないという課題も同時に見えてきました。そこで私たちは、「データアンバサダー」という役割を提唱し、さまざまな教育・研修プログラムを用意することで、社内の人材育成を支援しています。
ツールを導入するだけでは、データ活用の文化が浸透し、企業に良い変革をもたらすことはできません。長い旅路をお客様と一緒に伴走し、データドリブンが実現して「どうもありがとう」とおっしゃっていただきたい。ドーモの社名には、そんな思いが込められています。
──日本と比べ、海外でのデータ活用はどのような状況でしょうか?
スカウゼン氏:国によってそれほど違いがあるとは思いません。どの国でもデータの数は幾何級数的に増え続けており、ビジネスでの活用が求められています。
近年、最も大きなインパクトとなったのは、やはり生成AIでしょう。生成AIの出現によって、人々のデータへの意識やデータ活用の行動自体が変容してきたと思います。Domoは柔軟性の高いAIサービスレイヤーを用意していますから、特定のAIモデルに縛られることなく、さまざまな大規模言語モデル(LLM)や学習モデルなどを組み込むことができます。そのため、ユーザーの望む方法で、自由度の高いデータ活用が望めるでしょう。
川崎氏:データを活用する行為を再定義していきたいと長年考えてきましたが、これからはAIに聞くだけでデータを分析し、ビジュアライズしてくれるようになります。経営層からフロントラインの従業員まで、データに基づいてビジネスの現状を把握し、各自がリアルタイムアクションを取れる時代がようやく到来します。Domoにおいても「Domo GPT」によって「過去1年の売上動向は?」と聞けば最適なチャートやグラフを自動で生成してくれます。こうしたことが日常化すれば、現在使われている意味での"BI"という言葉自体が使われなくなるのでは?と思ってしまいますね。
スカウゼン氏:同感です。使われなくなるというより、BIという定義自体が変わっていくでしょうね。十分なデータ基盤と優秀なAIモデルをアプリ一つの中に搭載していれば、これまでよりずっと簡単にデータにアクセスすることが可能です。ローコード・ノーコードで設計できるアプリであれば、誰でも簡単に、自分たちのビジネスにふさわしいデータ活用プラットフォームが作れますし、それが将来的に「BI」と呼ばれているかもしれませんね。
Domoが各所に点在したデータを繋ぎ、企業のデータ価値を向上させる
──今後、ドーモとしてどんなことを目指していきたいですか?
川崎氏:これからは日本のお客様にも「Domo.AI」を本格的に提供できるようになります。素朴な疑問もチャットが答えてくれますから、ビジネススピードが向上し、データ活用の可能性は無限大になると思います。
こうしたAIの価値を最大限発揮するためには、データ基盤の拡充がより重要になってくるでしょう。データを分析するという行為において一番難しいのは、「データが点在していること」です。日本企業のSaaSアプリの導入数は平均35、米国の平均は100種以上といわれていますが、Domoは何千ものコネクターを有しているため、それぞれのアプリにアクセスすることが可能です。つまり、企業の中に点在するさまざまなデータをDWH(データウェアハウス)に取り込むことができ、かつAIの判断もより正確になるということです。
スカウゼン氏:例えば、特定のリードソースからの売上についてAIに尋ねるとき、市場データや売上データなどが必要になります。しかし、これらのデータがDWH上に存在しない場合、AIモデルはそれらを引き出すことができません。Domo.AIは断片的なデータではなく、社内全体のデータから必要な情報を引き出すことができるのです。
このように、企業のDWHを充実させることは、企業のデータ価値を最大化することに繋がります。また、CDWを提供する企業にとっても有益といえるでしょう。DWHにあるデータは全社の5割程度で、残りは各アプリ上に点在しているという調査結果もあります。我々は「彼らの倉庫を潤す」とも呼んでいますが、隠れていたデータや利用機会を提供できることから、さまざまな企業が当社とのパートナーシップに意欲的です。
今後はSnowflakeやDatabricksなどのCDWとパートナーエコシステムをさらに強化していきます。Domoは常に充実した環境を提供し、時代に即したテクノロジーを取り込みながら、データが持つ価値を最大限引き出せるツールでありつづけたいです。
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