キャッシュレス決済が生活の中に浸透している状況のなか、個人向けはもちろん、法人向けのクレジットカードの需要も拡大の一途をたどっている。経費精算・経理業務の効率化をはじめ、キャッシュフローの安定化や経費関連のガバナンス強化など、多くのメリットが得られるためだ。りそなグループの中核カード会社としてビジネスを展開するりそなカード株式会社も法人カード事業に注力しており、法人や個人事業主のお客さまにキャッシュレス決済の提案を強化している。こうした背景もあり、同社では法人営業のリソースを確保するために営業プロセスの改善に着手。クラウド型のCRM/SFAツール「Salesforce Sales Cloud」を導入することで営業活動の効率化や平準化を行い、交渉履歴を含めた顧客情報の利活用により、営業活動の質的向上を進めている。
顧客情報や案件情報、交渉記録の一元管理を目指しプロジェクトを始動
りそなカードの営業部門では、顧客管理と交渉記録をグループウェア、案件管理はExcelと、それぞれ個別のツールを用いて営業活動の管理を行ってきた。部署ごと、担当者ごとに業務プロセスは異なり、顧客情報のデータベースも点在している状況で、活動内容が共有・継承されない、いわゆる属人化が進行していた。そして、営業担当者は、顧客とのコミュニケーションに割くべき時間の多くを、情報整理とデータ加工に費やさなければいけない課題を抱えていた。
そこで同社は、営業プロセスの効率化と一元的な管理体制の確立を目的としたプロジェクトチームを組成。営業企画部とオペレーション改革部を中心に、CRM/SFAツールの導入、及びグループウェア刷新のプロジェクトをスタートさせた。プロジェクトリーダーを務めた営業企画部 マネージャーの黒須 秀行氏は、その経緯について次のように語る。
「近年のクレジットカード業界では法人向けキャッシュレス決済のニーズが高まっており、当社も法人カード事業の強化を図っています。その一環として、営業活動の効率化と平準化、ステータスの可視化、営業活動の質的向上などを目的にCRM/SFAツールの導入・運用を目指すプロジェクトが始動しました。また導入の検討を始めた2022年は、コロナ禍の影響もあり、テレワークの導入は進んでいましたが、当時の環境では、社外から社内データにアクセスすることができませんでした。このため製品選定にあたり、場所を問わず情報にアクセスできるクラウド型の製品であることを必須要件としました。」(黒須氏)
黒須氏と同じく、発足当初から本プロジェクトに参画しているオペレーション改革部 マネージャーの椿下 宗一郎氏も「営業活動を充実させるためには、お客さまの情報を一元管理ができる仕組みが不可欠でした。」と語り、当時の営業部門が直面していた課題について言及する。
「私と黒須は、営業部門に在籍していた経験があり、顧客や案件の情報が点在している状況のなかで営業活動を行う大変さは身をもって感じていました。社内の情報を効果的に活用ができなければ、お客さまによりよい提案を行うことは困難です。そこで営業担当者に負担を強いることなく、顧客情報や案件情報、交渉記録などを集約・可視化できるツールの導入に着手しました。」(椿下氏)
現場の営業担当者との協働で、課題の洗い出しと業務要件の定義を進める
2022年度から各部へのヒアリングなどを行って課題を洗い出し、経営層の承認を経て、2023年4月から本格的な導入検討を開始。前述したクラウド型であることをはじめ、多様なシステム・ツール・ファイルに点在するデータを効率的に集約・管理できる拡張性の高さやシステム間における連携機能のしやすさ、ITスキルに依存しない使い勝手の良さなどを重視して製品選定が進められた。
こうした要件を満たしたCRM/SFAツールとして採用されたのが、金融業界においても多くの導入実績を誇る「Salesforce Sales Cloud」だ。りそなのグループ各銀行がすでに導入・運用しており、標準的な仕様を理解しやすかったことが決め手の1つであると黒須氏。導入パートナーの選定にあたっても、りそなグループ各銀行での開発実績を持つ、テラスカイを選定したと当時を振り返る。
「金融業界での導入実績が豊富で、りそなグループ各銀行のSalesforce Sales Cloudの導入も支援されているテラスカイさまには安心感がありました。また本プロジェクトではCRM/SFAツールの導入と合わせて、スケジュール管理のシステム、いわゆるグループウェアの刷新も行いたいと考えており、テラスカイさまが開発・提供している、Salesforceプラットフォームで構築されたグループウェア「mitoco」の採用も同時に決定しました。」(黒須氏)
テラスカイをパートナーに選定し、Salesforce Sales Cloudとmitocoの導入を決定した同社は、「営業プロセス革新プロジェクト」を発足。東京・大阪拠点の法人営業部門に所属する主要メンバーが参画し、具体的な課題の洗い出しと業務要件の整理に着手した。
「どれだけ優れたツールでも、既存の業務が劇的に変わってしまうと結局使われなくなる可能性があります。現状の業務をそのまま移行できることを目指して、現場のメンバーとともに要件定義を進めていきました。」と黒須氏は語る。椿下氏も、営業部門の担当者と意思統一を図りながら、事前に要件を定めたことで、スムーズに導入を進めることができたと手応えを口にする。
「たとえば案件管理1つでも、各部署や担当者・管理者ごとで管理手法が異なっており、データの一元化は簡単なものではありません。データの保存場所やフォーマットもバラバラ、営業手法も千差万別の状態です。それらをSalesforce Sales Cloudに集約し、一元管理するには、担当者・管理者の考え方にまで寄り添って、意識の統一を図る必要がある中で、営業プロセス革新プロジェクトで現場の声を吸い上げられたことは大きな意味があったと感じています。」(椿下氏)
顧客接点数の増加や営業活動の見える化など、売上向上につながる成果を得る
現場の担当者がプロジェクトに参画したことや、数多くの導入実績を持つテラスカイさまからのアドバイスもあり、2023年9月から約4カ月という短期間で環境を構築。2024年1月から運用を開始している。
テラスカイからは、初期開発時の優先順位や、移行する業務の順番について助言いただいたことが有意義であったと黒須氏は話す。「すべての営業活動をいきなり刷新しても、現場が使いこなすことは難しく、ツールの定着が妨げられる事態を招きかねません。まずは交渉履歴の入力から移行し、利用者に慣れてもらったうえで発展させていくという段階的な導入を目指しました。」(黒須氏)
スケジュール管理機能の刷新を目指して導入されたmitocoについても同様で、1月は営業部門、2月と3月が企画部門と段階的に導入を進め、2024年4月に全社導入を達成している。
「既存のグループウェアが使いづらいという声があがっていたこともあり、mitocoの導入で業務が効率化されたと喜ぶユーザーは多く、導入から一年経たずに確かな運用効果を実感しています。mitocoのカレンダー機能では、スケジュールの入力と同時に会議室予約も行えるため、営業部門だけでなく全社的に効率化が図れています。」(椿下氏)
Salesforce Sales Cloudの導入による効果もすでに現れている。営業活動の効率化と情報の一元管理を実現したことにより、営業担当者1人あたりの顧客接点数(顧客への訪問や電話、ビデオ会議ツールを使ったウェブ交渉などの総数)は、平均で毎月2.2倍に増えている計算になるという。「まだ具体的な成約数までは集計できていませんが、営業担当者の顧客接点数が増加したことは、売上増加につながると期待しています。」と黒須氏。さらに営業活動の“見える化”が進み、PDCAサイクルを回せるようになったことも大きな成果と捉えている。
さらに、外出先からの情報確認とスケジュール管理が行えるようになったことも、見逃せない効果であると椿下氏は語る。
「社内に戻って行う業務が減ったことも高い評価につながっていると思います。これまで営業担当者の予定について社内のホワイトボード等でしか確認できなかったものが、業務用スマートフォンなどで外出先から瞬時にチェックできるようになり、かなり便利になったという現場からの声が出てきています。また、スケジュールと顧客情報や交渉履歴などの情報が連携されることにより、次にすべきタスクの整理など若手の営業担当者にとって有用な“気付き”を与えてくれます。帯同訪問して先輩から引き継ぐしかなかったノウハウも、情報を確認すれば得られるようになり、属人化の解消にもつながっています。」(椿下氏)
また、運用を定着化させるため、本プロジェクトでは研修会・勉強会を開催している。東京・大阪の各拠点で、現場の担当者と管理者(経営層)を対象に定期的に実施しているという。
「試行運用を開始した1月には、社内のSFAを使った営業プロセス革新の目的と目指すべき体制を説明し、まずは使ってみてくださいと営業担当者に話しました。その後は、案件管理など追加した機能の使い方や、成約数増加といった具体的な目標について説明し、段階的に研修を実施しています。マニュアルを作成して配付するだけでは使われない可能性を考え、担当者と管理者それぞれに対し、定期的に研修会を開催したことが定着化につながっていると感じています。」(黒須氏)
関係部署全体が一人ひとりの営業担当者をフォローする体制の構築を目指す
本プロジェクトの成果を踏まえ、今後も営業活動の効率化と平準化、さらには見える化を推進。営業担当者が顧客を理解し、より良い提案が行える環境を整備し続けていくという。「Salesforce Sales Cloudの活用を拡大することで、お客さまとのコミュニケーションが活性化し、それが案件化されて契約につながり、最終的には収益アップにつながっていくことを期待しています。」と黒須氏。営業情報の一元管理を進めることで、管理者・経営層・コンプライアンス管理部門など、多様な社内関係者が一人ひとりの営業担当者をフォローできる体制を構築できると強調する。
椿下氏は、Salesforce Sales Cloudとmitocoの導入・運用におけるテラスカイの支援を高く評価し、今後の取り組みにおいても、密接かつ迅速なサポートを期待していると語る。
「開発の初期段階から事前に決めておくべき項目を提示していただき、開発時には週次のミーティングで、我々のやりたいこと、思いを最大限に汲み取った対応をしてくれたことに感謝しています。現在は保守面でのサポートもお願いしており、安心して運用できています。今後も我々が持っていない目線や考え方をもとに、適切なアドバイスをいただければと考えています。」(椿下氏)
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