行政手続のデジタル化や行政内部のデータ連携などを通じて、業務効率化と住民の利便性向上を図る「自治体DX」。同取り組みは全国で推進されており、人口100万人以上を擁する東北最大の都市「仙台市」においても、行政サービスのデジタル化が進められている。
そんな仙台市の健康福祉局介護保険課(以下、介護保険課)では、要介護認定および要支援認定に関する審査判定業務のデジタル化に着手。介護認定審査会の効率的な運用を目指し、ペーパーレス会議システム「スマートセッション」の導入を決定した。本稿ではその導入の経緯と効果について紐解いていく。
介護認定審査会の効率化に向けペーパーレスシステム導入を検討
仙台市の介護保険課では、各区における介護保険課業務の総括や介護認定審査会委員の任命などを行っている。同市の介護認定審査会は、仙台市の附属機関として設置され、医療・介護・福祉等の専門家によって構成される合議体で審査判定を実施している。
介護保険課で、デジタル庁主導で推進されている介護保険のシステム標準化など、自治体DXの取り組みにも携わっているT氏は、合議体を構成する委員について次のように説明する。
「委員は医師をはじめ、歯科医師や薬剤師、作業療法士、理学療法士、介護福祉士といった方々で構成されています。当然ですが、それぞれ本来の仕事に従事しているため、介護認定審査にかかる労力の軽減は急務となっていました」(T氏)
これまで仙台市の介護認定審査会においては、A3用紙に印刷した資料を送付し、各委員が事前に確認するという手法が採用されていた。しかし、紙資料の場合、どうしてもその持ち運びの不便さと紛失のリスクがつきまとう。一部の委員からはどこでも資料を見られるよう閲覧性を改善してほしいという要望があがっていたという。また、各区介護保険課においても紙資料の送付、廃棄の業務が負荷となっていた。
「審査会1回につき70~80ページを7部(委員5名・事務局2名分)印刷しており、各区で週2~4回程度の頻度で開催しているため月間の使用枚数はおよそ5万強に上っていました。また、印刷した資料は委員の方々に送付していたので、印刷と郵送に相当の工数とコストが発生していました。加えて、開催後には資料を廃棄する必要があり、その作業負荷も問題となっていました」(S氏)
そこで同課は、介護認定審査会委員と区職員の業務効率化を目的にペーパーレスシステムの導入を検討。合わせて印刷・郵送コストの削減と資料閲覧性の向上を図るべくシステムの選定を進めていった。
クラウド・閲覧権限の付与・メモ機能を重視しシステムを選定
こうして2022年4月にペーパーレスシステムの導入の検討がスタート。導入にあたり重視したのは、「クラウド上での審査会資料閲覧が可能であること」。さらに、個人情報保護の観点から「閲覧権限を付与できること」、委員の利便性向上の観点から「メモ機能が付帯していること」などをポイントに加え要件を定義していった。
その後、2023年5月の指名競争入札を経て導入が決定されたのが、日本インフォメーションのペーパーレス会議システム「スマートセッション」だ。同年7月~8月にかけて操作研修を実施し、研修が終了した区から順次運用を開始。企業や地方自治体への豊富な導入実績を持ち、タブレットを用いて直感的に操作できる「スマートセッション」を採用したこともあり、導入はスムーズに進んだという。
「委員の方ごとにITの習熟度が違ってくるため、研修時は区の職員が何名か参加しフォローする形で行ったのですが、日本インフォメーションさんにも密接にサポートいただき大変助かりました」(S氏)
審査会委員の負荷軽減と審査会運用のコスト・時間・工数の削減に成功
「スマートセッション」の導入効果はすでに現れているという。ペーパーレス化により従来印刷・配布にかかっていたコストと工数が大幅に削減。また、電子配付によってタイムリーな資料送付が可能となったことで、資料が審査会委員の手元に届くまでの時間も短縮。事前の資料チェックの期間を長めに確保できるようになり、審査会委員の負荷軽減にもつながっているとT氏は導入の手応えを口にする。
「オンラインでの審査会参加も容易になり、委員の方の介護認定審査にかかる労力の軽減という当初のミッションは達成できたと考えています。委員の方からは『手軽にメモを記載でき、紙資料と比べて閲覧場所を選ばないので便利になった』という声もいただいています。今後は、より運用を効率化していくことで、開催までのリードタイム短縮、市民の皆様に対する行政サービスの品質向上も図れるのではないかと期待をしています」(T氏)
S氏は、審査判定業務に携わる区職員の業務効率化とコスト削減においても、「スマートセッション」の貢献度は大きいと語り、資料廃棄の手間を削減するための機能も活用できたと話を続ける。
「完全に紙の資料による運用がなくなったわけではありませんが、導入前と比べると約6割程度は紙の利用量を削減できていると思います。また設定した日時で資料を自動削除する機能も重宝しており、審査会の開催後に手作業で資料を廃棄する手間を大幅に削減することができています。日本インフォメーションさんには、導入後もサポートいただいており、委員の方からのシステムに関する質問にも迅速に対応することができ非常に助かっています」(S氏)
タブレット・システムの導入を進め、介護保険事業のデジタル化を加速
今回の取り組みで得られた成果を踏まえ、仙台市では今後も介護保険事業のデジタル化を推進していく予定だ。「介護認定の判定をするため、申請者の方々のご自宅に伺って行う認定調査にもタブレットの導入を検討します」とT氏は語り、将来的には電子申請サービスを拡充できればと今後の展望を口にする。ペーパーレス化をフックに同市が取り組む「自治体DX」が、市民と職員の双方に大きな恩恵をもたらしてくれることを願う。
[PR]提供:日本インフォメーション