ビジネスにスピードと柔軟性が求められるようになった近年、短期間でのシステム構築・運用が可能なパブリッククラウドは、インフラ基盤として標準の選択肢となっている。DX推進という流れもあり、オンプレミス環境に構築した既存システムをクラウド上にリフトアップする取り組みが加速しており、リプレイスのタイミングに合わせてインフラ基盤のクラウド移行を図る企業もめずらしくないのが現状だ。
とはいえ、オンプレミスがインフラ基盤の選択肢から排除されたのかというと、決してそうではない。先進的なデジタルテクノロジーが続々と登場し、データ活用が叫ばれるなか、企業に蓄積されるデータは増加の一途をたどっている。特に昨今では生成AIをはじめとするAI技術の活用がビジネストレンドであり、AI・ビッグデータ活用を推進しなくては競争力を維持することは困難な時代と言えるだろう。こうした状況下におけるインフラ基盤については、必ずしもクラウドの選択が正しいわけではなく、企業の状況やニーズによっては、オンプレミスが最適解となるケースも少なくない。
本稿では、日本のITリーディングカンパニーとして、数多くの企業のシステム基盤構築・運用を支えてきたTISの深渡瀬 康博 氏と宮原 大介 氏に話を伺い、ITインフラ市場の最新動向と、インフラ基盤構築においてTIS株式会社が提供する価値について確認。クラウドとオンプレミスのメリットを併せ持つ「HPE GreenLake」が、AI基盤としても最適解になり得る理由や、HPE GreenLake導入におけるTISの強みを紐解いていく。
クラウドの利活用を考えるようになったいま、オンプレミス回帰の流れも
――まずは、昨今のパブリッククラウド市場について、数多くの企業に対してITインフラ構築を支援されてきたTIS様の所感をお聞かせください。
深渡瀬氏:
そうですね、最近ではクラウドへのリフトアップから、クラウド上でのシフトへと企業のニーズが変わりつつあると感じています。オンプレミス環境に最後まで残っている汎用機のメインフレームなどにもオープン化の流れが出ており、その際にオンプレミスとクラウド、どちらを選ぶのかという議論が活発化している印象です。ITインフラに求められる、“確実に動き続けてほしい”というニーズは多くの場合、パブリッククラウドのSLAで十分に満たされてきています。その意味では、もはや稼働率99.999%といった数字を追うのではなく、パブリッククラウドのレベル感で問題ないものなのか、それともより100%に近いミッションクリティカルなシステムなのか、その2択でインフラを選ぶ時代になったといえます。
――なるほど。ということはクラウドを選択するのが当たり前という風潮から、最近はまたオンプレミスという選択肢も増えてきたということでしょうか。
深渡瀬氏:
オンプレミスへの回帰というか、“必ずしもクラウドを選ぶのが正解ではない”という流れは出てきていると思います。その理由としては可用性やパフォーマンスもそうですが、特にコスト面での問題が大きいでしょう。昨今では、AI活用がビジネストレンドとなっており、企業の扱うデータ量や計算量は右肩上がりです。これをすべてパブリッククラウドに置くとなると、膨大なコストがかかるだけでなく、見通しより上振れするリスクもあります。AI活用に取り組んでいく場合、プロジェクトが数カ月で終わりということはあり得ず、最低でも3年、5年といったスパンで考えなければなりません。ハードウェアを購入することはコストをあらかじめ確定できるため、オンプレミス環境の構築という選択肢が有効なケースも増えてきています。
――適材適所でオンプレミスとクラウドを使い分ける、というアプローチが重要ということですね。実践していくうえで、企業が課題と感じるのはどういった部分になるのでしょうか。
深渡瀬氏:
人材の部分が大きいでしょう。社内リソースがクラウド側に寄っていくなか、オンプレミスのシステムを扱えるエンジニアが足りないという企業が増えています。そのなかでも、オンプレミスで構築したい領域をどうカバーするのかは大きな課題で、私たちのお客様からも、どうにか省力化できないかといった相談が寄せられています。確かに私たちのようなSIerが常駐して穴を埋めるという方法もあるのですが、とはいえ私たちの人的リソースにも限りがあります。そのためHPEが提供している「HPE GreenLake」のような、オンプレミスをサービスとして利用するというアプローチが注目され始めています。
コスト面での「見通しの良さ」こそ、オンプレミスの大きな強み
――ITインフラにおいてオンプレミスという選択肢の妥当性についてお聞かせください。
宮原氏:
少し前までは、データのコントロールという側面で、一度データをクラウドに上げてしまうと戻す先がなくなってしまうことが危惧される傾向にありました。しかし、現在は計算リソースを確保できるのかが課題となっており、パブリッククラウド市場では、AI時代の到来によってリソースの奪い合いが始まっています。自社のAI活用に必要なGPUリソースをタイムリーに確保できないケースも見られ、それならば、コスト面も含めて必要なリソースを購入してオンプレミスで運用したほうがよいと考える企業も増加しました。
深渡瀬氏:
そのため、確実に使えるリソースを確保できるということがオンプレミスの強みとなります。インフラとしてのプロジェクトではなく、ビジネスのプロジェクトとして見た場合、100%使えるという安心感は非常に大きい。ビジネスから見たコスト面での見通しの良さも、近年のパブリッククラウドと比べて大きな優位点といえます。ただ、コストの見通しが立つといっても、サービスとして利用できるクラウドと比べて、オンプレミスでのインフラ構築は初期投資額が大きいので、企業の経営層にとって抵抗感はあるでしょう。
宮原氏:
求められる計算リソースが増えているなかで、長期間使いたい場合、さらに必要な規模を想定できるような場合には、収益モデルを計算するとオンプレミスに利があるケースも多いです。現在のITインフラ市場はクラウドに寄っている傾向が見られますが、AIやビッグデータ活用が推進されていくなかで、クラウドとオンプレミスの比率は変わってくると考えています。
――ではオンプレミスという選択肢に対するTISの強みを教えてください。
宮原氏:
弊社ではメーカーやシステムベンダーとは異なり、特定の製品やサービスに縛られていません。オンプレミスだけにこだわっているわけでもなく、フラットな立場でお客様のニーズに合わせて最適な選択肢をご提案することが可能です。
深渡瀬氏:
我々はお客様がRFIを振り出す前の段階からRFPを固められている段階まで、さまざまなステータスでの相談をいただいており、製品選定だけでなく、要件定義や基礎検討といった段階からお手伝いをさせていただいています。オンプレミスでやりたいという要望に対して、パブリッククラウドのほうが最適であると回答をすることもありますし、その逆もあります。主要パブリッククラウドの再販もできるので、ワンストップで全部比較したうえで、最適な製品を選択、もしくは複数のサービスを組み合わせることも可能です。
宮原氏:
弊社は50年以上にわたってビジネスを展開しており、自前のデータセンターを持ち、24/365のアウトソーシングで培ってきたシステム運用のノウハウがあります。ただ運用するだけでなく、その仕組みに関しての知見も持っており、運用を自動化するソリューションも提供できるのが、特にオンプレミスを選択するうえでの“Why TIS”、すなわち我々TISの強みと考えています。
オンプレミス環境にAI基盤を構築する際の最適解は、従量課金制で利用できる
「HPE GreenLake」
――AIの活用がビジネストレンドとなっている昨今ですが、AI基盤としてのオンプレミスの優位性についてお考えをお聞かせください。
深渡瀬氏:
まずは先ほど話したとおり、リソースの奪い合いが起きず、確実に必要なリソースが使えることが大きなメリットです。またデータに対する安全性、データのコントロールといった面でも優位性があり、データを社外に出したくないお客様とっては唯一の選択肢となります。AI活用には膨大なデータが必要で、そのなかには企業の機密データやお客様の個人情報が含まれることもあり得ます。クラウドで運用する際には安全性の担保など、さまざまな条件をクリアする必要があり、オンプレミスのほうがより安心・安全・確実という話になってきます。
――先ほど話に出てきた「HPE GreenLake」は、オンプレミスでAI基盤を構築する際にも有効な選択肢となり得るのでしょうか。
深渡瀬氏:
そうですね。HPE GreenLakeには数多くの利点がありますが、従量課金制で利用できることがファイナンス面でのメリットといえます。前述したとおり、初期投資が高額なことがオンプレミスの選択を阻む障壁となりますが、HPE GreenLakeならば延べの期間で支払いを毎月均等化できるわけです。コストを均せるのはAI基盤に限らず、オンプレミスでインフラを構築するにあたっての大きな強みですし、さらに、円建てでの契約となり、契約期間中に為替の影響を受けないこともファイナンス面でのメリットといえます。
宮原氏:
AI基盤として考えると、AI対応のデータセンターと連携しているのもうれしいポイントです。AI基盤は消費電力が膨大なため、データセンターの選択も重要になります。HPE GreenLakeならばデータセンターの費用込みで契約を一本化できるので、導入にかかる手間を大幅に低減することができます。オンプレ・クラウドの両方で検討しているのであれば、クラウドライクにオンプレ環境を利用できるHPE GreenLakeは極めて魅力的な選択肢になると思います。
またHPE GreenLakeではAI用のパッケージングが用意されており、GPUのリソースやデータ保存領域のサイズなどから選択できます。セットアップを含めてサービスに入っていますので、非常に導入しやすく、簡単に使い始めることが可能です。
フラットな視点で最適解を提示するTISがインフラ構築・運用の課題を解決
――HPE GreenLakeの導入を検討する企業に対して、TISを通して導入するメリットについてお話しいただけませんでしょうか。
宮原氏:
私たちとしては、お客様のニーズに対して最適な選択肢と判断した場合にHPE GreenLakeを提案しており、他のソリューションと同様に、提案から構築、運用までをサポートしています。そのため弊社がこれまで培ってきたインフラ構築・運用のノウハウを活かして、お客様の要望に応えていくといった当たり前のことを、当たり前のようにやっていることが私たちの強み、「Why TIS」なのだと思います。
深渡瀬氏:
基本的に、HPE GreenLake在りきで検討を開始するのではなく、ファイナンス面も含めてさまざまな選択肢を比較検討し、最終的にHPE GreenLakeを選択するのがあるべき姿だと考えています。冒頭でも話しましたが、我々は常にフラットな視点で提案できることが最大の強みであり、納得感を持って導入したいのならば、ぜひ弊社にご相談いただければと思います。もちろん、お客様の状況や要望によってはパブリッククラウドを提案するケースもあると思います。その意味では、HPE GreenLakeを選択肢として持っていること自体が、我々の強み、「Why TIS(GreenLake)」だと捉えています。
――ここまでの話を踏まえて、 ITインフラ市場における今後の動向と、それに対するTISの取り組み、展望についてお聞かせください。
宮原氏:
SaaS、PaaS、IaaSとさまざまなクラウドサービスが提供され、オンプレミスへの回帰も見られる現在、ITインフラの選択肢は多様化しています。こうした流れのなかで、弊社もお客様にとって最適なものを提供できるSIerになっていかなければばらないと考えています。押売りではなく、本当の意味での最適解を売れるIT企業になっていくことが今後の目標といえます。
深渡瀬氏:
宮原が話したとおり、ITインフラの選択肢は増える一方で、軸が多過ぎて何を比較検討すればよいのか悩んでいる企業も多いと思います。自社で比較する煩雑さはもちろん、複数のベンダーにRFIを振りだした結果、提出された案の方向性がバラバラで、どの案も妥当性はあるが比較軸が定まらず、比較検討ができないといったケースも出てくるはずです。こうした課題を払拭するのも、SIerである弊社の使命と考えていますので、ぜひプロジェクトとして具現化する前の状態からでも、お声がけいただければと思います。
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