日本におけるパッケージソフトウェアの普及に貢献し、現在も「パッケージインテグレーター」として、パッケージに技術支援を組み合わせたソリューションに注力するアシスト。同社では、これまで利用してきた営業系、カスタマーサポート系業務システムの「Salesforce」への移行を完了。内製での運用保守体制を構築し、新規の機能開発や改善を行っている。同社では、この体制を円滑に進めるためのツールとして、テラスカイが国内販売する「Flosum」および「Data Migrator」を導入した。

「パッケージ」を軸に日本企業のIT活用をリードするアシスト

日本におけるビジネスコンピューティングの黎明期から「パッケージソフトウェア」の普及に注力してきたアシスト。“業務用ITシステムは、自社に合うものをオーダーメードでゼロから作り込む”ことが王道とされていた時代から、パッケージと技術支援を組み合わせ「ソリューション」として提供することに特化した「パッケージインテグレーター」を標ぼうし、設立から52年、顧客企業へITソリューションを提供してきた実績を誇る。

アシストでは、これまで個別のパッケージやスクラッチ開発のアプリケーションが混在していたが、見積を含む営業関連のシステムと顧客管理システムについて、2018年から「Salesforce」への移行に取り組んできた。現在ではアシストの業務に不可欠なアプリケーションとなっているSalesforceだが、同社では内製での運用保守を行っており、その環境管理にテラスカイが国内で販売するリリース管理ツール「Flosum」およびデータ移行ツール「Data Migrator」を導入している。これらのツールの導入背景や活用状況について、アシストの経営企画本部で、ITサービス企画部部長を務める石川俊朗氏に話を聞いた。

チームによるリリース作業の効率向上を目的に「Flosum」を導入

石川氏が統括しているITサービス企画部がアシストに設置されたのは、2017年のことだ。同部の設置をきっかけに、それまで各事業部門で個別管理をしていた業務システムの開発運用体制を集約していく動きがスタートした。

「Salesforceは、主にCXの強化を目的として“Sales Cloud”から導入を始めました。2018年に契約し、2020年には商談管理や見積を移行しSFA/CRM基盤として社内での全面的な利用を開始しています。2022年からは“Service Cloud”および“Experience Cloud”によるお客様からの製品問い合わせの管理システムを構築し、顧客とのコミュニケーション基盤としての活用も開始しています」(石川氏)

同社では、Salesforceの導入にあたり、初期の大規模な構築はSIパートナーと共同で取り組んだ。一方で、運用開始後の小規模な機能追加や改善、不具合修正などは自社で内製する体制をとっている。

「できるだけ早くユーザーにシステムの価値を届けていくうえでは、利用ユーザーからの問い合わせ内容を分析して、機能追加や修正を自社のリソースで行える体制が必要だと考えました。社内のSalesforceユーザーからITサービス企画部への問い合わせは、主にChatterを利用しており、問い合わせ管理をSalesforce で実施しています。その中から、システム面での改修が必要なものも要求管理としてSalesforce の中で管理しています。要求管理の内、優先度が高いものから順に、社内の開発担当者がシステム改修を行い、テストを経て本番環境へリリースするというサイクルをスクラムの手法を取り入れて実施しています」(石川氏)

  • アシストでは問い合わせからリリースまでをSalesforce上で管理している。(上記はフローのイメージ)

ユーザー要求に対して迅速に対応していくためには、開発からリリースまでのプロセスを標準化することと、テスト・リリース環境の整備がSalesforceの運用を回していくためには欠かせない。アシストでは、課題が大きかったリリース作業の標準ツールに「Flosum」、テスト環境のデータ準備ツールに「Data Migrator」を採用し、リリースサイクルのスピード向上に成功した。

「Flosum」によるリリース管理でテスト環境への手戻りが激減

Salesforceの導入初期は、社内に開発者が少なく、アプリケーションの活用範囲も小さかったことから、リリース管理はSalesforce標準の「変更セット」を使って行っていた。ただ、Salesforceの活用範囲拡大や開発者数の増加に伴い、課題が浮上したという。

株式会社アシスト 経営企画本部 ITサービス企画部 部長 石川 俊朗 氏

「Salesforceは、開発環境、ステージング(テスト)環境、本番環境の3つに分けて運用しています。初期には、環境移行に標準の変更セットを使い、リリース記録はスプレッドシートに記載して管理していました。ただ、その運用を徹底するのが困難で、急ぎのものは本番環境を修正し、各環境への反映を実施しないケースや、検証目的で作成し本番リリースしなかったものを放置するケースが発生していました。結果として、本番環境とステージング環境の差が大きくなり、ステージング環境が本番と同等環境でテストを行えない環境という、本来のテスト環境の意味を成さない状況が起こっていました」(石川氏)

この問題を解消するにあたり、変更セットよりも容易に環境間のアセット移送ができる方法を検討したところ、国内の販売元であるテラスカイから「Flosum」を紹介され、導入を決めたという。

Flosumでは、リリース管理にあたり、標準の変更セットでは不可能な「項目をキーにしたアセット検索」が可能だ。また、変更前の状態をスナップショットとして記録しておき、変更後との差分を一覧で確認できる。アセット移送が効率的になったことに加え、特にステージング環境と本番環境との差異を明確に管理できるようになった。これは、同社のリリースサイクルを健全に保つうえでメリットが大きかったという。

「Flosumを導入し、まずは移送については必ずFlosumで行うことをルール化しました。Flosumを利用することで、移送対象を抽出する業務が以前と比べると効率化され、移送対象の抽出漏れで移送作業を何度も繰り返す、ということが減少しました」(石川氏)

開発環境構築に伴うデータ移行を“感動的”に容易にした「Data Migrator」

「Data Migrator」は、Salesforce組織間でのデータ移行を効率化するアドオンツールのAppExchangeだ。同社では、Flosumによる環境整備が軌道に乗った2023年2月にData Migratorの導入を行った。

「Salesforceのシステム規模が大きくなるにつれて、運用保守の環境整備は不可欠なものになりつつありました。Data Migratorは以前から利用したいと思っていましたが、まずはステージング環境の整備を進めながら、導入タイミングを図っていました」(石川氏)

開発テストは、基本的に本番環境と同じデータを利用した環境で行うのが望ましい。しかし、そのデータ移行に手間や時間が掛かる場合、本番環境と同期せずに作業が進められてしまいがちになる。結果として「テストでは発生しなかった不具合が本番環境で起こり、その原因は不明」という事象が起こる。

Salesforce標準のデータ移行機能「Data Loader」を使っていた石川氏は、Data Migratorで運用した際の印象を「感動的だった」と表現した。

「Data Loaderでは、オブジェクトに参照関係があるとき、作業者側でのID指定が必要で、特に本番環境から移行する場合にエラーが出やすくなります。例えば、当社の場合、見積系のマスタが5つあるのですが、そのすべてに参照関係を意識しながら移行作業を行うのは非常に手間でした。Data Migratorでは、自動で参照関係を抽出してリレーションを張り直し、親子関係も考慮した順序でデータを一括移行してくれます」(石川氏)

Data Migratorの導入でデータ移行が容易になったことは、Flosumで整備したリリース環境を健全な状態に維持するうえで重要なポイントになるという。SalesforceのSandboxは、リフレッシュを行うと保持しているデータも消滅してしまう。データ移行に手間がかかると、開発環境構築に時間を取られ、最新でないデータを元に開発を行ってしまうリスクが増える。

「Data Migratorを使えば、これまで毎回数時間かけていたデータ移行を含む開発環境構築が、数分で終わります。すぐに最新のデータをコピーできるため、Sandboxを作り直すことへの精神的な負担がなくなりました。これによって、せっかく整備したステージング環境を、引き続き健全に保とうという意識が、担当者間でさらに高まっています」(石川氏)

  • Flosum・DataMigratorを活用する運用保守環境(イメージ)

内製によるSalesforce運用保守の「あるべき姿」を追求したい

現在は、基幹系システムについては「SAP S/4HANA」への統合を進めており、2024年中はS/4HANAの導入に合わせたSalesforceの改修を行い業務の効率化を図り、将来的にはCX(顧客体験)向上を目指したシステム拡張を行う計画だという。この計画が完了すれば、基幹系システムから業務系フロントエンドまでが連携可能なシステム基盤をベースに、さらなる業務プロセスの効率化やCX向上の実現に向けた取り組みが動き出す。同社がこれまでに構築してきたSalesforce環境とアジャイルな運用保守体制も、さらに大きな価値を生み出していくことになるだろう。

「SAP S/4HANAが入り、本格的に稼働を開始すると、それに合わせたSalesforce側の再編も必要になります。作り直しになる部分も多いと思いますが、今後は、基幹系を含めて設計からSIパートナーにお願いするのではなく、業務を知っている自分たちが設計を行い、リソースが足りない部分をパートナーに支援してもらうという形をとっていきたいと考えています。これまでの取り組みの中で、そのためのスキルと環境は整いつつあると思っています」(石川氏)

内製による運用保守体制を整えてきた石川氏は、Salesforce開発の内製支援を得意とするテラスカイに対する期待をこう話す。

「多数の企業でSalesforce導入を支援してきたテラスカイであれば、アシストのビジネスやシステム環境に応じた、より良い運用管理の“To-Be(あるべき姿)”を示すことができるのではないでしょうか。Salesforce運用全体についての良い相談相手になってもらえることを期待しています」(石川氏)

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