芙蓉総合リース株式会社は、設立から半世紀以上にわたって提供しているリース事業を中核に、そこで培われたノウハウを生かした幅広い事業を展開している企業だ。
同社が2022年度に発表した中期経営計画「Fuyo Shared Value 2026」では、CSV(Creating Shared Value:共有価値の創造)経営の実践による、社会課題の解決と企業価値の向上を同時に実現することを目指している。従来型のリースビジネスに留まらず、再生可能エネルギー、モビリティ物流、BPO/ICT、ヘルスケアなど、さまざまな事業間のシナジーを通じて新たな価値創造を目指している。
このビジョンの実現に不可欠な要素の一つとして、DXが挙げられている。DX戦略には、大きく4つのテーマが設定されており、その一つに「営業活動のデジタルサポート」がある。同社ではこの戦略の実行の一環として「Salesforce Sales Cloud」を用いた新しい営業管理システムの構築を行った。
経営ビジョン実現の基盤として、変化に適応可能な営業管理システムを構築
「事業環境やテクノロジーが目まぐるしく変化するなか、お客様の課題を解決するためには、従来のビジネススキームだけでは不十分です。多くの事業部門が連携し、新しい価値を生み出せる企業文化の構築が必要です。その第一歩として、営業活動やお客様の状況に関する正確なデータを蓄積し、それに基づいて営業や経営が意思決定できるようなシステム基盤の整備が必要でした。『Salesforce Sales Cloud』は、その中核となります」
そう話すのは、同社で営業管理システム刷新プロジェクトチーム長を務める市川 博之氏だ。同社は10年以上前に、営業活動と顧客情報を管理する目的でCRM(顧客関係管理)システムを導入していた。導入時には業務プロセスに合わせてカスタマイズを行っていたが、長期間の運用を経て、営業スタイルの変化に対応することが難しくなり、利用率も低下していたという。
今回のプロジェクトに参画した、同チーム 担当課長の柴田 光氏は「旧システムは、開発当時のリース事業の営業スタイルに特化していました。その後、当社の事業や商品は多角化していきましたが、システムが新規事業や追加した商品群にうまく対応できず、追加開発やメンテナンスが困難でしたし、入力されたデータの二次利用価値が低い状況でした」と話す。
「以前は、営業担当のチームが単独で動いて、受注をとってくるスタイルが主流でしたが、近年では複数の部署が情報を共有しながら動いて、受注を目指すようなケースが増えています。旧システムでは、そのような営業の仕方を想定していなかったため課題がありました。たとえば、複数の部署が、同じ案件をそれぞれに見込み案件としてシステムへ入力すると、データが重複してしまう問題が起こっていました。結果として、各部署が把握している数字と、経営視点で見る数値にズレが生じます。そのズレを解消するためにシステムに入れたデータを表計算ソフトに取り込み、手作業で調整するという無駄な作業が発生していました」(市川氏)
今回の営業管理システム刷新プロジェクトの目的は、老朽化が進み利用率が低下した旧システムのリプレースにとどまらなかった。CSVの実践およびさまざまな事業間のシナジーを通じて新たな価値創造という経営ビジョンの実現に向けて、現場の社員から経営陣まで、また部門間においても隔たりなく一貫性のある情報を効率的に共有し、迅速に意思決定や行動決定に生かせるデータ基盤を再構築するという重要な意味も持っていたという。
「やりたいこと」を高いレベルで実現できるSalesforceを選定
新営業管理システムの検討は、「まず、自分たちが何をしたいのかを徹底的に明確化したうえで、それを最も実現しやすいシステムを選択する」という方針に基づき進められた。実務者や管理職、役員を含む多くの社員へのヒアリングを通じて見えてきた「やりたいこと」とは、「顧客に関する充実したデータの一元管理」と「これまで各部で蓄積してきた顧客情報やナレッジといった暗黙知を、必要に応じて共有し、形式知化、組織知化していく」というものだった。
これらを不可欠な要件として、複数の製品を比較検討し、最終的に選択したのが「Salesforce Sales Cloud」と導入パートナーとしてのテラスカイだった。
Salesforceの選定理由について、DX・マーケティング戦略部 次長の上草 光洋氏は「システム基盤としての拡張性や保守性、他システムとの連携性、コストといったさまざまな観点から検討した結果、われわれの目指すべき姿を最も高いレベルで実現できるのはSalesforceだと判断しました」と語る。
「Salesforceは、国内で多くの導入実績があり、製品の情報も豊富です。他の製品の場合、導入や保守をベンダー任せにせざるを得ず、結果的に特定のベンダーに縛られるリスクが高まります。Salesforceは、そのリスクが低いという点もポイントでした」(柴田氏)
また、パートナーとしてテラスカイを選定した理由について、上草氏は「Salesforceの導入支援実績が豊富であったこと、Salesforceの認定資格を持つ技術者数が国内トップクラスであったこと、そして提案内容がよかったことなどを合わせて総合的に評価しました」と話す。
ユーザーの要望をアジャイルに取り入れながら、“使ってもらえる”システムに
Salesforceによる営業管理システム構築プロジェクトは、2023年1月にスタートした。同年の前半を要件定義、後半を実際の開発に費やし、2024年1月に本稼働を開始した。
基本的には、Salesforceの標準機能をベースにしているが、いくつかのポイントで同社の強みを生かすための小規模なカスタマイズを行っている。
「弊社の場合、営業担当者がお客様と面会した際のやり取りは、議事録に近いボリュームで記録しておくことが定例であり、それが会社にとって重要なナレッジにもなっています。新システムでは入力できるボリュームを担保しつつ、ポイントを要約した項目を設け、役員や上席が手早く内容を把握できるようにするなど、より高度な使い方ができるようになりました」(柴田氏)
そのほか、顧客企業の情報を、その企業の担当者情報と紐付けて、より細かい粒度で管理できるようにするため、名刺情報管理システムとの連携も行っている。
さらに、既存のカレンダーシステムとSalesforceとの連携も実施。各部門間でのスケジュール共有や協業がスムーズにできるようになった。
市川氏は、Salesforceの特性を生かした、アジャイル的な要素を取り入れた開発プロセスについては、ユーザーの要望をシステムに反映しやすい点で高く評価しているという。
「開発スタート後の早い段階で、実際のユーザーである営業部門にプロトタイプを見せ、追加のニーズをヒアリングし、それを反映できた点は良かったと思います。その後も、新システムの利用に関する研修で出てきたフィードバックを取り入れたり、稼働開始後も月に2回ほどのペースで細かい改善を続けたりしながら、現時点で要件定義時に予定していなかった機能が多数追加されています。こうしたアジャイルな対応が可能なのは、Salesforceならではのメリットだと思います」(市川氏)
また、柴田氏は「新システムの定着に関わっている立場で言えば、良い意味で以前よりもユーザーが“不満を言いやすい”システムになっていると思います。『もっとこうしてほしい』というフィードバックは、ユーザーがシステムを使ってくれていなければ出てきません。そうした意見を吟味し、修正や改善を行うことでユーザーの満足度が上がれば、さらにシステムが使われ、新たな『不満』が出てくるようになります。結果的にそれが、システムの利用率を高め、ビジネス環境の変化に適応していくことにもつながると考えています」と語る。
人手による会議前の準備作業を廃止、捻出した時間をより質の高い提案に活用
こうした開発過程を経て、本番稼働を開始した「Salesforce Sales Cloud」は、既にいくつかの目に見える成果を生んでいる。最大のポイントは、現場、管理職、経営陣といったさまざまな立場の人々が、システムを通じて同一かつ最新のデータを参照できるようになったことだ。以前行っていた、報告や会議の下準備としての手作業によるデータの取りまとめやドキュメント作成は廃止された。
「お客様への対応を経営陣に報告する際や、月次の営業部長会などでは、これまで個別にドキュメントを取りまとめ、PDF化してファイル共有するという作業を行っていましたが、現在はすべてSalesforce上にあるデータを直接参照してもらうスタイルに変わりました」(市川氏)
作業時間の削減効果に対する定量的な評価はこれから行われる予定だが、従来は1回の報告や会議につき、マネージャークラスだけで平均3~4時間程度をかけて準備作業を行っていたと算出されるため、資料作成のコストだけ見積もっても削減効果はかなりの規模になるだろう。
「会議の準備に割いていた時間が不要になったことで、営業本来の業務であるお客様のことをしっかりと考え、より質の高い提案をするという部分に、多くの時間を充てられるようになると考えています」(上草氏)
営業の効率向上から、事業部連携による「新たな価値創造」への転換を目指す
同社では、運用開始以降Salesforceの活用レベルを着実に高めている。そして各事業部で個別導入しているシステムとの連携による新たな価値創造を視野に入れている。
「Salesforceを営業のプラットフォームとして考えたとき、他のシステムやツールとの連携性の高さには注目しています。たとえば、不動産事業やBPO事業などには、既に稼働している別のシステムがありますが、これらはSalesforceとの連携が可能だと聞いています。そうすることで、今以上に作業が効率化され、互いの営業活動がプラスになり、さらに付加価値が高まると考えています」(上草氏)
また、全社レベルでの経営判断やマーケティング領域などでの活用を目指して、データ分析基盤の構築も進めている。今後蓄積されるSalesforce上のデータを、こうした基盤上で高度に分析することで、新たな知見を導き出すことも検討しているそうだ。
「われわれとしては、使い始めたばかりのSalesforceを、まだ十分に使いこなせていないと感じています。これからいろいろなデータがSalesforceに蓄積されていくと思いますが、実践的なデータ活用の方法についても、多くの企業にSalesforceを導入してきたテラスカイの知見と合わせて一緒に考えていきたいと思っています。また、新システムが稼働したことで、現場や役員の中にも、それぞれの立場で『こんなことはできないか』と考え、意見を言ってくれる人が増えてきています。そうした意見に応えられるよう、われわれも改善のサイクルを早めていきたいと考えていますので、引き続き、スピード感を意識しつつ伴走してもらえることを期待しています」(市川氏)
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