ビジネスPCの選定において、「業務上で使用するソフトが快適に動けば良い」そういった感覚が近年大きく変化してきた。ハイブリッドワークへの移行、生成AIの登場などを受けて、ビジネスPCに求められるハードルは上がり続けており、現在では可搬性、生産性・業務効率、AI時代に対応したパフォーマンスなど、その要件は多岐にわたる。そこで本稿では高性能かつ低消費電力のプロセッサを提供するAMDと、同社製プロセッサを採用したモバイルPCの販売に注力する日本HPの担当者に話を聞いた。

シェアを拡大し続けるAMD

高い技術力により、多くの半導体分野においてシェアを拡大し続けているAMDは、2017年に投入したZenマイクロアーキテクチャを用いたプロセッサを主軸に各種製品を展開している。

「現在はx86サーバープロセッサ市場において3台に1台がAMD搭載機という状況であり、いま最も勢いがあるのがAMD EPYCだと自負しています」と、コマーシャル営業本部セールスエンジニアリング担当の関根正人氏は力を込めて話す。

関根氏は、AMD製プロセッサ搭載サーバー/クライアントPCの拡販を技術面でサポートする役割を担っている。現在では今後を見据え、AI処理に特化したNPUを搭載する“AI PC”や、データセンター向けGPUなどAIにフォーカスした活動を強めているそうだ。

AIに関してAMDは2023年、初のAI専用エンジン、AMD Ryzen™ AIを搭載したAMD Ryzen 7040シリーズをリリース。「多大な反応があり、お客様からの問い合わせも一気に増えて、大手企業からもご指名をいただくケースが多くなっています」と、ハイタッチでアカウント営業の責任者を務めるコマーシャル営業本部長の楊博光氏は手応えを語る。続けて、ローカルで処理を行うAI PCについては「徐々に出始めてはいますが、ようやく準備が整った形でしょうか。本当にこれからの領域であり、ここ数年にかけて、必要とされるお客様から需要は、増えていくと思います」と、その感覚を話してくれた。

  • 日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 部長 楊博光氏

    日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 部長 楊博光氏

Zenアーキテクチャの投入からAMDはビジネスPC業界においても圧倒的な存在感を示してきた。現在のビジネスPCに求められるのは、高性能と低消費電力の両立であると関根氏は説明する。例えば、ビジネスで必須となったWeb会議を他のソフトと同時にマルチタスクで快適に使用するには、高い性能を有しながら、バッテリーでも長時間駆動するPCが必要になる。ビジネスパーソンであれば、社外はもちろん社内の会議室でも、電源を探して慌てたケースが何度かあるはずだ。

その点、AMD Ryzenシリーズは、高性能と低消費電力を両立しているのが強みであり、特長だ。これはいうまでもなくAMDの高い技術力があってこそ実現されたものだろう。

「AMD RyzenはノートPCで最大8コアのハイパフォーマンスでありながら、省電力・低発熱を実現しています。イメージとしていうと、CPUのコアサイズが他社製の半分の面積なので、同じ作業に対するコンピューティングリソースの提供を半分の電力で済ませられるということです。その結果、熱くならず、ファン音も静かになり、バッテリーライフも長くなります」(関根氏)

関根氏の言葉を受けて、楊氏は「膝の上にPCを載せて仕事をするケースもあると思いますが、そうした場合でもほとんど熱くならず、快適ですよ。バッテリー駆動時間も、Web会議を長時間行っても充電の必要を感じず、私は日帰り出張なら電源アダプターを持っていきません」と強調した。

AMD Ryzen™ プロセッサがビジネスPCにおけるCPUの最適解となる

AMD Ryzenシリーズにおけるハイパフォーマンス×低消費電力の魅力について関根氏は、「実際に評価していただくと、“あ、これ全然ちがうね”とAMD搭載PCを導入していただけるお客様が増えています」と話す。

加えて、ハイブリッドワークの浸透により社外でPCを用いる機会が増えた現在、セキュリティ性もビジネスPC選定の上で重要なポイントになるが、AMD Ryzenプロセッサでは「Zenアーキテクチャ自体がセキュリティを重視して設計されていますし、ほかにも何層にもわたって強固なセキュリティ機能を実装しているので、いつ、どこに持ち歩いても安心を担保できます」と楊氏。

加えて関根氏は「AMD Ryzen、とくにエンタープライズ向けプロセッサのAMD Ryzen Proは、メモリーを暗号化するメモリー・ガード機能を備えています。PC本体のHDD/SSDが暗号化されていても、スリープ状態で電源が入っているとメモリーからデータを盗まれてしまう可能性がありますが、この機能はメモリー内のデータをすべて暗号化するため、より安心度が高まります」と、その強みを披露した。

業界に先駆けNPU搭載し、AMD Ryzen™ AIを提供してきたAMDの魅力

「これから」とはいいつつも、やはり注目したいのがAI PCだ。NPUを搭載するAMD Ryzen™ AIは、FPGAメーカーの米ザイリンクス社が開発した技術をベースとしており、AMDが同社を買収したことで実現した。NPU搭載により、今までCPU・GPUで処理していた計算の一部をオフロードできることで、消費電力を抑えながらAI処理性能を高めることが可能となる。AMD Ryzen™ AIは業界に先駆け、すでに2023年1月発表のAMD Ryzen 7040シリーズからNPUを搭載していた。

「AMDはGPUも得意にしています。映像処理系AIなどGPUのほうが向いているものはGPUで、CPUでの処理が向いているソフトはCPUで、そしてNPUが力を発揮する生成AIなどの推論はAMD Ryzen™ AIでと、“餅は餅屋”の発想で最良のパフォーマンスを生み出していける体制をAMDは整えました」(関根氏)

  • 日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング担当 マネージャー 関根正人氏

    日本AMD株式会社 コマーシャル営業本部 セールスエンジニアリング担当 マネージャー 関根正人氏

また、楊氏も「AMDのプロセッサは性能、省電力性、セキュリティ性のいずれにおいても自信を持っておすすめできますし、とにかく使ってみれば価値を実感していただけると確信しています。すでに多くの企業様、官公庁様、地方自治体様にご採用頂き、採用して良かったというお言葉や、何年もリピートして採用して頂いているお客様が多くいる事実もあります。また、Zenアーキテクチャが登場した頃より、HPさんには製品ラインナップに加えていただいており、本当に感謝しています。これからも我々は、お客様が最良の選択をできるよう、さまざまなPCに当社製プロセッサを搭載していただき、技術、営業が一丸となってお客様のビジネスに貢献する製品を提供していきます」と、さらなるシェア拡大に向け意欲を示した。

ビジネスに求められるスペックと機能を備えた日本HPのAMDプロセッサ搭載PC

ビジネス向けクライアントPCに関しては、働く場所が多様化したことによりモバイルノートPCが求められるようになり、現在は軽量ノートPCへのニーズが強いのが傾向だ。日本HPでビジネスPCやワークステーションを法人顧客に提案する高橋真一氏は、そうした動きの中で目立つトレンドとして「2024年は“AI元年”といわれているように、お客様からもAIへの関心の高さが伺えます」と話す。

背景にあるのは、やはり人手不足の現状においていかに生産性を高めるかという企業の切実なニーズだ。その中で、AIの活用が生産性向上に寄与するという観点から、AIを低消費電力かつセキュアな環境で動作させられるAI PCへの興味が強まっている実感を高橋氏は得ているそうだ。

「AIのセキュリティに対する懸念はよく聞きます。現状ではクラウドでのAI処理が多いわけですが、やはりオープンな世界に情報を流すことには不安があります。その点、エッジ側で処理するAI PCの発想なら、やはり安心を感じるようです」(高橋氏)

  • 株式会社 日本HP HP Store &オムニチャネル事業本部 コマーシャル営業本部 ダイレクトセールス部エキスパート セールス レプリゼンタティブ 高橋真一氏

    株式会社 日本HP HP Store &オムニチャネル事業本部 コマーシャル営業本部 ダイレクトセールス部
    エキスパート セールス レプリゼンタティブ 高橋真一氏

ユーザーのAI活用に対する期待が膨らむなか、今後AI PCはますます普及していくだろう。また、ビジネス環境の変化に合わせて、パフォーマンス、低消費電力でありながら持ち運びがしやすい軽量ノートPCという需要を満たす、AMD Ryzen搭載の日本HP製品にはどのようなものがあるだろうか。

「まず、軽さとタフさを両立した機種としていま大きく注目されているのが、AMD Ryzen 8040シリーズを搭載した『HP EliteBook 635 Aero G11』です。13.3インチで約0.99kgと、何より軽量という点で日本におけるモバイルノート最大のニーズを満たしていますし、頑丈さをトレードオフとせずにその軽さをしっかり実現しています。AMD Ryzen™ AIでAI処理を高速化する点も注目ですし、コストパフォーマンスの点でもおすすめできます」(高橋氏)

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HPには一時、コスパに優れた軽量ノートのラインナップがない時代があった。そこで日本HPは日本での強いニーズをグローバルに伝え、同モデルが日本で先行して発売される形になったという。

「2つ目は、14インチで約1.44kgの薄型スタンダード『HP ProBook 445 G11』です。AMD Ryzen 7000シリーズ搭載で高い性能を発揮しながら、約14時間という長時間バッテリー駆動も実現します。また、オプションでデータ通信を無制限に利用できる『HP eSIM Connect』を選択可能であり、いつでもどこでも安定した高速モバイル回線につないで利用したいというニーズにフィットします」(高橋氏)

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最近はAMD Ryzenシリーズの性能や省電力性の高さが知られてきたことから、法人顧客での導入も広がっているという。

「AMDにはこれからも、その高い技術力でお客様のビジネスを支援していける製品を提供し続けていただきたいです。また、AMDはロードマップについてもしっかりと公表されており、企業の情報システム部門の方も安心なのは間違いないでしょう。

また、AI PCはまだまだ普及し始めたばかりですが、ハードウェアメーカーである当社としてもお客様にAI PCのメリットをより力を入れてお伝えしていきますし、アクセルを踏んでAI PCのラインナップを広げていきます。今後も共に新たな価値を世の中に提供していくことで、情報システム部門の方はもちろん、ユーザーの方も含めてみんながハッピーになっていけばいいですね」(高橋氏)

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