「ピュアセールスの時間が足りない」――。営業社員であれば誰でも一度は感じたことがある課題だ。

「バイトル」をはじめとした複数の求人広告媒体を展開するディップ株式会社も例外ではなく、営業部門は大量の申込書処理に追われていたという。その課題を解決するべく同社が選んだソリューションが、弁護士ドットコムが提供する電子契約サービス「クラウドサイン」だった。クラウドサインの導入でどのように改善されたのか。そして、彼らが描く理想の営業組織とは――。今回は導入を推進した、ディップの西谷龍二氏にその全貌を聞いた。

  • ディップ株式会社 メディア事業本部事業推進統括部
    セールスディベロップメント部セールスマーケティング課/業務企画部BPM課
    西谷 龍二 氏

求人広告240万件分の掲載申込書を扱う営業現場での悩み

アルバイトや派遣、社員の求人サービス、看護・介護職の人材紹介など幅広い領域で人材サービスを手掛けるディップ。「バイトル」や「はたらこねっと」をはじめ、複数の求人広告媒体を展開しており、西谷氏が所属するメディア事業本部では、営業部門が求人広告240万件分の掲載申込書を扱っている。

「営業担当者の業務時間の多くが事務作業に費やされていました。とくに紙での申込書処理が大きな負担となっていたのです。営業担当が顧客先に出向いて申込書にサインをもらったり、郵送、FAXでの対応をしたりなどの工数が時間的な負担になっていました」(西谷氏)

西谷氏が率いるBPM(ビジネスプロセスマネジメント)チームのミッションは、営業活動に関わる業務プロセスを改善して生産性を向上させること、そしてピュアセールスタイムを増やし会社の利益向上に貢献することだ。営業担当者の「時間がない問題」を解決し、本質的な営業活動に集中できる環境をつくることが求められていた。

申込書の多くは基幹システムで電子化されていたが、一部、基幹システムでは対応できない申込書が紙で残っており、それらの処理に多くの時間を費やしていた。西谷氏は当時の状況を振り返る。

「基幹システムでは対応できない申込書の場合、テンプレートとなるファイルを探してそこに情報を入力、紙やPDFで出力して郵送やメールで送るといった作業が必要でした。1件あたりの対応にかかる時間はさほど長くなくても、とにかく申込書の量が多いので、それが積み重なることでかなりの時間を要していたのです」(西谷氏)

新規ビジネス立ち上げに貢献したクラウドサイン。営業現場に抵抗なく受け入れられた理由とは

ディップは電子契約をいち早く取り入れており、コロナ禍前となる7~8年前には他部門でクラウドサインを導入していた。そこから2020年ごろに、営業現場に残っていた紙の申込書を電子化するソリューション検討が行われたが、社内の導入実績もあり、クラウドサインの採用が決まったという。

「契約締結までに要する時間、紙と電子のフローが混在していることによるコンプライアンスやガバナンス面のリスクなども含め、従来の申込書処理のプロセスにおける課題を洗い出したうえで、クラウドサインの導入をまず提案しました。ほかの部門ではすでにクラウドサインの導入実績があったことも後押しとなり、最終的には大きな反対もなく導入が決まりました」(西谷氏)

クラウドサイン導入が着々と進められるなかで、2021年の3月ごろ、「バイトルPRO」の立ち上げに伴い、突発的に大量の申込書を処理する必要が生じたと言う。ビジネスモデルが従来の媒体とは異なっていたため、申込書のフォーマットも違い、限られた時間のなかで処理しなければならなかった。

「膨大な量の申込書を捌くには、紙では到底追いつかず、電子契約で対応するほかありませんでした。ちょうどそのタイミングでクラウドサインの導入を進めていたので、新しい媒体向けのシステム開発が完了するまでのあいだ、クラウドサインで対応する方針となったのです」(西谷氏)

この出来事をきっかけに、多くの社員がクラウドサインを使用し、定着度がより高まったという。抵抗なく現場に受け入れられた理由は、他サービスとの連携ツール「クラウドサインMAKE」を使用してkintoneと連携したことにあった。

さらに、現場に受け入れてもらうための工夫として「ピュアセールスタイムを増やすという同じ目的を持ちながら、普段の業務についてこまめにヒアリングしていました」と西谷氏は振り返る。

「営業現場で利用されているkintoneをベースにシステムを開発することで、クラウドサインの導入に伴う営業担当者の学習コストを最小限におさえることができました。操作感は基幹システムとほぼ同じで、インターフェイスが少し異なる程度です。また、As-IsとTo-Beを比較し、何が変わって何が変わらないかを説明したことで、営業現場には抵抗なく受け入れてもらえています」(西谷氏)

前章の話にも上がった、基幹システムで対応できない申込書に関しては、基幹システムを改修して実装する手段も考えられるが、費用も時間もかかってしまう。そこで、kintoneとクラウドサインを組み合わせたことで、費用も時間も最小限で申込書処理の仕組み化ができたという。

ディップが描く、営業組織の理想形

クラウドサイン導入後、申込書の処理業務は大きく効率化された。その効果について西谷氏は次のように述べる。

「取引先とのやり取りと申込書管理の2点がとくに効率化されました。基幹システムで対応できない申込書の処理のフローにおいては、営業担当みずから申込書を作成して先方に送付する必要があったのですが、現在はkintone上に情報を入力してボタンを押せば、自動的に申込書が先方に送信されます。また従来の仕組みでは、返送されてきた申込書の管理が属人化しがちでしたがそれも解消され、コミュニケーションと管理面で負担が削減されたことで、営業担当者のピュアセールスの時間創出に大きく貢献できたのではないかと思います」(西谷氏)

さらに西谷氏は、BPMチームとして目指す理想的な営業組織について、次のように語る。

「営業が営業だけに注力できる組織を目指しています。営業活動において事務的な処理は必ず生じますが、それは営業のミッションと直結するものではありません。お客さまと向き合い、会社の売上を上げることが営業のコア業務です。我々BPMチームとしては、営業担当者がそこに専念できる時間を捻出したいのです。クラウドサインの導入は、そうした理想に近づくために必要なステップでした」(西谷氏)

目指すは変化に強い組織。実現の秘訣とは

クラウドサインの導入は順調に進み、現在も多くの営業社員が活用している。今後も「営業が営業だけに注力できる組織」であり続けるためには、継続的な業務改善が重要だと西谷氏は強調する。

「現状の方法が絶対に正しいということはありません。改善すべきポイントを常に探し、進化し続けなければならないと考えています。そうすれば、先に述べた新媒体立ち上げ時の申し込み対応のような突発的な事態にも対応し、ビジネスチャンスをしっかりと捉えていけます。目先の業務を効率化するだけでなく、先を見据えて継続的にチャレンジしていくことこそが、変化に強い組織にしていくための秘訣だと考えています」(西谷氏)

いまや顧客との打ち合わせをオンライン上で実施することは当たり前とも言えるが、コロナ禍以前の打ち合わせは対面形式のものがほとんどだった。そんななか、ディップはいち早くオンライン面接を取り入れるなど、人材市場に新しい価値を提供してきた。このように、電子での書類のやり取りやオンライン上のコミュニケーションなどを早々に取り入れていたことで、コロナ禍も大きな混乱なく事業を継続できていたという。

「今も他社の業務改善事例なども含め最新ツールの情報収集を行い、新しい改善策を模索し、常に大小問わず20個くらいのアイデアをストックしています。実際はそのなかから1つ実現できるかどうかという世界ですし、1つひとつは細かい施策かもしれませんが、『今のままでよい』ではなく『こうすればもっとよくなる』というマインドを大事にしています。常に変化するビジネス環境に対応していくためにはそうしたマインドが重要だと考えています」(西谷氏)

クラウドサインの導入を皮切りに、ディップは継続的な業務改善と営業DXを推進している。営業担当の「ピュアセールスの時間が足りない問題」の解決にとどまらず、さらなる効率化と変化への対応力強化を目指す同社の取り組みは、多くの企業にとって参考になるだろう。

営業プロセスを効率化
クラウドサイン

[PR]提供:弁護士ドットコム株式会社