サーバーやストレージといったインフラ系のハードウェアベンダーという印象が強いデル・テクノロジーズ。一方で、同社は近年、通信業をサポートする専任部隊『TSB』の創設や、ソリューション検証環境ラボ『OTEL』の設立など、ハードウェア領域に留まらないさまざまなサービスを展開しています。

こうしたデル・テクノロジーズの取り組みと、昨今のAI時代においても同社が見据える未来について、デル・テクノロジーズ株式会社の日下幸徳さんにお話を伺いました。

<プロフィール>

日下幸徳さん
デル・テクノロジーズ株式会社 上席執行役員テレコムメディア営業統括本部長
2000年にEMCジャパン入社。2016年、デルとの合併によりデル・テクノロジーズへ。
大手通信会社やエンターテインメント企業などを担当する営業責任者も務める。

デル・テクノロジーズの新たな取り組み『TSB』とは

――デル・テクノロジーズには通信業のサポートを担う『TSB』という組織があると伺いました。 『TSB』について教えてください。

『TSB』はTelecom Systems Businessのことで、本社CEOの直下で活動する2,000名ほどのグローバル組織です。私が所属する日本法人の営業部隊とは別の組織として、世界中の通信業のお客様をサポートする、専任部隊として設立されました。

弊社はこれまでITサーバーやストレージなどの汎用製品を提供してきましたが、『TSB』ではそれに留まらず個々のお客様のご要望やリクエストにお応えして、カスタマイズした製品も提供しています。

また、『TSB』の中には営業部門やプロダクト開発部門だけでなく、アライアンスやパートナーシップを担当する部門も設けました。そこでは弊社と通信業のお客様のソリューションを統合し、連携してGo to マーケット(市場への展開)を行っています。例えばお客様のネットワークやデータセンターと、我々のストレージやネットワーク、サーバーなどを組み合わせて、そこで生まれたサービスを一緒に他業種のお客様にご提案する、などといった試みです。現在は自動運転の領域を中心に取り組みを行っています。

顧客やパートナー企業のためのソリューション検証用環境
『OTEL』を提供

――製品を提供するだけでなく、お互いの強みを活かした協業というわけですね。たしかにこれまでのデル・テクノロジーズの事業とは違った印象を受けます。

そうですね。『TSB』の最大の特徴として、『OTEL(Open Telecom Ecosystem Lab)』というものがあります。これはテキサス州ラウンド・ロックの本社内に構えたラボのことで、内部には100ラック以上のITサーバーが稼働している環境で、さらに拡大しております。弊社ではこの『OTEL』をお客様に全面的に開放しています。

――ものすごい規模ですね。なぜそういった環境を作ろうと考えたのでしょうか。

『Open RAN』という仕組みができたことにより発生する検証作業のコストを削減していく目的です。元々、弊社の専門分野は通信機器ではなく、情報システム部門でした。お客様の社内システムやインフラを構築するところに、弊社のサーバーやストレージ、ネットワークなどをお使いいただいていたわけです。通信系の機器は専用のものを使用されることがほとんどで、情報システム向けの汎用機器が使われることはありませんでした。

ところが近年になって、5Gネットワークをはじめとする通信系のシステムにも仮想化技術が取り入れられ、汎用機器が使われるようになってきたのです。これらは『NFV(Network Function Virtualization)』と呼ばれています。また、通信系のネットワークをオープンにして、汎用機器を使えるようにする仕組みを『Open RAN』と呼ぶのですが、新たな仕組みを導入するということはさまざまな検証を行う必要があります。その際には手間と労力、そして技術力が必要です。これらをすべてお客様自身が用意するとなると負担も多く難しさもあります。そこで、弊社が検証用の環境として『OTEL』を提供し始めました。

――『OTEL』はどのような企業が利用しているのでしょうか。

世界中のお客様はもちろん、日本のお客様にもたくさんご利用いただいています。また、通信系のお客様だけでなく、従来よりお付き合いのあるエコシステムパートナー様にも開放しています。

『OTEL』の詳細はこちら

自由度が高く、コスト削減につながる『Open RAN』構築を
デル・テクノロジーズがサポート

――先ほどお話されていた『Open RAN』について、詳しく教えていただけますでしょうか。

RANはRadio Access Networkのことで、スマートフォンなどの携帯電話における通信を担うコア装置とお考えください。以前はこのRANを構築するのに一般的なサーバーなどが使えず、専用機器が必要でした。その専用機器を開発・提供している企業はグローバルでも数社しかなく、ハード面からソフト面のインフラをオールインワンで提供していたんです。

しかし、それらのインフラをレイヤーごとにオープン化することで、さまざまなものが接続できるようになりました。これを『Open RAN』と呼んでいます。

――必要に応じて適切な接続ができるようになるということですね。

はい。汎用機器が使えるようになると、これまで以上に機器の選択肢が増えるため、通信業のお客様にとってもコストはどんどん下がります。すでに5Gネットワークは汎用機器で動くようになっており、今後はより専門性の高い機器で構成されているネットワーク領域もオープン化されていくでしょう。

――コストが下がるのであれば顧客にとっては喜ばしいことだと思いますが、オープン化のデメリットはないのでしょうか。

オープン化で自由度が増すことはメリットでもありますが、それがデメリットにもなりえます。これまでは選択肢がなかったため“まとめておまかせ”すればよかったのですが、オープン化により選択肢が増えたことで、おまかせして導入することが難しくなりました。

――そういった点をサポートするのがデル・テクノロジーズというわけですね。

はい。お客様が1から10まですべて対応するのではなく、例えば弊社からAパターン、Bパターン、Cパターンとある程度機器を組み合わせて検証も済ませた、TSBが提供する『InfraBlock』をご提供したいと考えています。

――お客様からするとコストダウンになり、さらに1から組む手間もないということですね。

まずはセミオーダー型の『InfraBlock』で導入し、そのままご利用いただいてもいいですし、知見を構築して、のちにお客様ご自身で1から選択するパターンも可能になると思います。オープン化のメリットを活かしながら、デメリットである複雑性を弊社でお手伝いしていきたいところです。

OTEL Short Videoより

――具体的な事例はあるのでしょうか。

グローバルでも国内でも現在取り組みがスタートしたばかりといった状況でして、まだ商用化や実用化までは至っていません。今まさにお客様が『OTEL』を活用して検証を行っているところです。ありがたいことに大変好評をいただいていて、今後はさらに『OTEL』の規模を拡大していきたいと考えています。

AI時代にマッチした「一気通貫」の方針。デルが見据える未来とは

――『Open RAN』が普及した先の未来をどのように見据えていますか。

『Open RAN』によってコストを削減し、インフラの知見を蓄積されていった先に待っているのは、やはり“AIの活用”だと思います。AIの活用については2通りあると考えていて、1つ目は業務や運用オペレーションの高度化・効率化、さらには自動化していくことです。これらのことを『AIOps』や『AI RAN』 とも呼んでいますね。ネットワークの管理には膨大なコストがかかっているので、それをAIで自動化させてコストダウンを目指す考え方です。

2つ目はAI自体をサービスとして提供し、いろいろなユースケースを作って発展させていくことです。この点についても通信事業者様は積極的に投資をされていて、日本政府も助成金制度を作るなど盛り上がりを見せています。今後が期待できる分野だと思いますよ。

――そうした未来に向けて貴社はどのように携わっていきたいと考えていますか。

多くのお客様は、どのようにすれば「AI」を、自社に特化した、「真にビジネスに貢献するAI(シンAI)」に進化させられるかをお悩みになられています。そこで弊社のような企業が、各社が実際に自社のデータを使って検証をできる環境を提供することでAI活用の発展につながると思います。また、AIの進化のためには、弊社だけでなく、パートナー様とのエコシステム構築が必須だと考えています。ぜひいろいろな企業の皆様とコラボレーションしたりパートナーシップを作ったりしていきたいですね。

――デル・テクノロジーズというと、ハードウェア中心のインフラを提供する企業というイメージが強かったですが、本日のお話ではそこに留まるものではないことがわかりました。

ありがとうございます。ハードウェアからソフトウェア、そしてエコシステムに至るまで、一気通貫でご提供できるベンダーはそう多くはないと思います。先日開催した「Dell Technologies World 2024」の中でも、まさにそうした取り組みとして「Dell AI Factory」を発表しました。ここ数年、IT業界はどちらかといえば機能を切り離して、一つひとつにフォーカスしていくのがトレンドでしたが、AIの盛り上がりで一気通貫の強みが再び注目されています。そんな中、弊社はずっとサーバーからクライアントまでを手がける「エッセンシャルインフラストラクチャーカンパニー」であり続けることにこだわってきました。

今後はクローズドなコンソーシアムを作るなどして、お客様同士のコミュニティを構築し、事例やナレッジの共有を進めたいと考えています。どの領域においてもご相談に乗れることが弊社ならではの強みですので、業種を問わず、まずはお気軽にご相談ください。

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インタビューを通して、デル・テクノロジーズはハードウェアからソフトウェア、そしてエコシステムに至るまで一気通貫でサービスを提供していることがわかりました。

企業の可能性を最大限に引き出してくれるデル・テクノロジーズに、ぜひ相談してみてはいかがでしょうか。

『OTEL』の詳細はこちら

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