2024年2月、ローコード開発プラットフォーム「Claris FileMaker」で自ら開発したオリジナルのカスタムAppの機能やアイデアを競う「Claris FileMaker 2023 アプリ開発選手権」(通称:FileMaker選手権)の受賞者が発表された。作品応募期間2023年10月10日から12月12日にかけて約2カ月の間に、多くのユニークな作品が寄せられた。本記事ではGolden App賞の栄冠を勝ち取った2名の受賞者にインタビューし、開発にあたってこだわったポイントや受賞の感想についてお話を伺った。
FileMaker選手権へ応募したきっかけと受賞の感想
──はじめに、お二人のFileMaker歴と今回のFileMaker選手権に応募したきっかけについて教えてください。
キリンさん: FileMakerは2019年に自社の社内システムを刷新する開発プラットフォームに採用されていて、実際に触ってみて面白そうだなと思っていました。
社内のアプリ開発を続けるなかで自分のレベルを確認する機会をうかがっていたところ、2020年の「FileMaker選手権」を知りました。しかし、そのときはすでに募集が終了し2021年は開催に気づくのが遅く、次こそはと思い今回の応募に至りました。
日向こじろーさん:FileMakerは会社のスケジュール管理で導入されたのがきっかけで、そこから独学で学んでいます。私は会社員をする傍ら小学生サッカーチームのコーチもしているのですが、ちょうどサッカーチームのためのアプリを作成していたとき、Clarisのメルマガで「FileMaker選手権」のことを知り、腕試しのつもりで応募しました。
──FileMakerの開発スキルはどのようにして身に付けたのでしょうか。
キリンさん: 社内システムの内製化を行うなかで、開発をしながらFileMakerのスキルを身に付けていきました。Clarisが主催するトレーニングやセミナーに参加したり、社内システムの開発にご協力いただいたClarisパートナー様から教えていただいたりしました。アプリ開発の基礎は、これらの実践で身に付いたのだと思います。また「FileMaker の自習室」という YouTube チャンネルの「10分でスキルアップ」シリーズを参考に学んでいきました。今回受賞した「soocoonooto」(読み方はソーコーノート)のヘルプ機能でも、そこで学んだことを活用させていただいています。
日向こじろーさん:開発スキルは、「自分がイメージしたものを作るにはどうすればよいのか」を逆引きして、独学で身に付けてきました。Clarisコミュニティには解決方法がたくさん掲載されており、何度も助けていただいています。いつもありがとうございます!
──キリンさんはGolden App賞とテクニカル・ユニオン賞を、日向こじろーさんはGolden App賞と寿商会賞を受賞されました。受賞について率直なお気持ちをお聞かせください。
キリンさん: すごく嬉しかったですね。会社で受賞のメールを見て、自席で周りに悟られないようにガッツポーズをして、じっくりコメントを読みました。そこから1時間ぐらいは受賞の余韻に浸っていました(笑)。
日向こじろーさん:受賞のメールが届いたときは、本当にびっくりしました。入選でも驚きなのに、Golden App賞にも選ばれるとは思っていなかったので。会社の方々や知人に嬉しい報告ができました。自分の名刺に「Claris FileMaker 2023 アプリ開発選手権 Golden App賞受賞」を入れちゃおうかと(笑)。
「soocoonooto」が生まれたきっかけはスーパーカブ
──ここからはそれぞれのアプリについて伺っていきたいと思います。まず、「soocoonooto」のコンセプトについて教えてください。
キリンさん: iPhoneで自動車の走行や燃費/電費の記録を行い、PC/iPadでそのデータを一括管理するアプリです。最初はアプリの名前を「燃費計算アプリ」にしようとしましたが、検索で埋もれてしまいそうなのでユニークな名前にしようと「soocoonooto」にしました。
さっと手軽に運転や燃費の記録を取りたい方に向けて作っていて、オイル交換やエアフィルターなどの交換のタイミングをアラートで通知してくれる機能なども実装しました。
実際に使うシーンも具体的に想定し、QRコードやNFCタグで簡単に複数の車両のデータを切り替えられる機能も作りました。自信作なのでプログラムに興味がある方にもぜひ触ってみてほしいなと思っています。
──「soocoonooto」のアイデアが生まれたきっかけを教えてください。
キリンさん: 車には日常的にもよく乗ります。休日には青森の竜飛岬や滋賀の琵琶湖など、いろいろなところを旅していますね。私の愛車はホンダのスーパーカブで、燃費の良い車両として認識されているのですが、実際にその燃費はどれくらいになるのかを知りたくなったんです。
最初は一般的な燃費記録アプリと運転記録アプリを使っていたんですけども、街乗りと遠乗りを比較しようとすると意外に手間がかかるんです。既存の便利なアプリがないか探してもみましたが、自分で作った方が早いかなと思って開発を始めました。別開発のために空いた期間もありますが、開発期間はおよそ2年ですね。
──開発で苦労した点を教えてください。
キリンさん: PCだと一個一個のプログラムの動きが見えるのに対して、iPhoneだとそれが見えません。なので、どこで間違っているのかわからないんです。FileMaker Serverを持っていないので、iPhoneに毎回アプリをコピーして確認を繰り返し行いました。そこが一番苦労しましたね。
あとはJavaScriptを独学で学びながら開発したのですが、ネットの解説のレベルが高くて何を言っているか分からない、ということもありました。これも開発時間が長くなった要因の一つです。
──「soocoonooto」のこだわりポイントはありますか?
キリンさん: こだわりのポイントは2つあります。一つ目は、初めての方に向けたチュートリアルですね。審査委員の方からも高く評価いただいたんですけれども、会話っぽく表現しているところがポイントです。最初は簡単なメッセージだったのですが、アイコンと吹き出しを使うことで表現を柔らかくできるんじゃないかと思い実装しました。
もう一つは、なるべく操作を簡単にしたところです。例えばガソリンスタンドで給油して記録を取るとき、後ろの車に迷惑をかけないように最短で終わらせたいですよね。そこで iPhoneのショートカット機能でアプリを起動した際にカメラも同時に起動するようにする機能を搭載して、ひとまず写真を撮って記録する、という使い方ができるようにしました。FileMaker 2023 の新機能である、画像からテキストを読み取って文字として記録する機能を使って、写真から手間なく記録ができるよう工夫しました。
──「soocoonooto」をご自身で使ってみた感想をお聞かせください。
キリンさん: ガソリンスタンドの7セグメント表示のメーターを読み取れるのは自分でも便利だと思いました。私の場合は愛車のメーターに小数点表示がないのですが、そういった情報を補完してくれます。
小学生サッカーチームの運営を軽減する「クラッキサッカー管理」
──「クラッキサッカー管理」のコンセプトをお聞かせください。
日向こじろーさん:「クラッキサッカー管理」は、サッカーチームに限らずスポーツに打ち込む子どもたち、またそれを支えるコーチや保護者の方を応援し、サポートするアプリです。
機能としては、「練習メニュー」、「選手名簿」、「背番号くじ及び背番号管理」、「測定会の記録」の4つです。開発期間は、構想から開発まで土日休日の作業で3カ月くらいですね。
「練習メニュー」はカテゴリごとに練習メニューを管理し、バランスよくメニューを組み立てるための機能です。「背番号くじ及び背番号管理」は、新入団のお子さん本人に「START」&「STOP」ボタンを押してもらい、在籍メンバーの誰ともかぶらない自分だけの背番号を決定します。「測定会の記録」はその場で記録を入力し、スピーディーに印刷、配布することで、子どもたちのモチベーションアップにつなげます。
──「クラッキサッカー管理」のアイデアはどのようにして生まれたのでしょうか?
日向こじろーさん:息子が所属していたサッカーチームのコーチや保護者の方の負担を軽減したいと考えて作成しました。とくに「背番号くじ」は、以前は紙のくじ引きで決めていましたが、それだと番号を紛失したり、引いた番号の紙を誤って戻してしまい、次に引いた子が在籍メンバーと番号がかぶってしまったりと、意外と管理が大変でした。これをなんとかできないかと思ったのがきっかけです。
──開発で苦労した点を教えてください。
日向こじろーさん:「背番号くじ」が一番苦労しました。「START」ボタンを押すと番号がパパパッとランダムで高速表示されるのですが、WindowsとiPadで表示速度に違いがあったので、何回も調整をしました。
──「クラッキサッカー管理」のこだわりのポイントを教えてください。
日向こじろーさん:子どもが使うことを想定して思いつく限りのエラー処理を追加した点です。例えば、番号が確定したのに「もう一回やりたい!」と言って、また「START」ボタンを押しちゃう子もいるだろうな……と。背番号確定時の「ジャジャーン」という音選びも3日くらいかかりました(笑)。
そのほか名簿管理の「新年度更新」ボタンもこだわりましたね。名簿に学年と背番号が入っていて、「新年度更新」ボタンを押すと6年生は卒団扱いになり、名簿に背番号を残しつつ使用していた番号を背番号マスタへ返上、5年生以下は学年が自動で繰り上がります。1年に一度の、地味に手間のかかる作業をボタン一つで行えるところです。
――「クラッキサッカー管理」をご自身で使ってみての感想をお聞かせください。
日向こじろーさん:「練習メニュー」は頻繁に使用しています。4つのカテゴリの運動を色分けしたことで見やすくなり、新しいメニューもすぐに追加できたり、前回の練習メニューの確認もできるのでかなり活躍しています。
――今後機能を新たに追加する予定はありますか?
日向こじろーさん:撮影した写真から文字を読み取れるテキスト認識機能はぜひ試してみたいです。レシートを撮影することで、チームの経費精算などをペーパーレス化できたらいいなと思います。「練習メニュー」では組んだメニューの回数をカウントしたり、子どもに人気のメニューには星印をつけられるようにしたら、今後の練習メニューを考えるときに役立ちそうだなと思いました。「背番号くじ」は、ビンゴゲームなんかにも使えそうですね。
ローコード開発プラットフォーム Claris FileMakerの魅力とオススメのポイントは?
――お二人から見て、FileMakerの魅力はどんなところにあると思いますか?
キリンさん: やはりiPhone用のアプリを作るのに非常に良いですね。スマホアプリの作り方を知らなくても、FileMaker ならiPhoneで動くアプリが作れる。センサーを使ったり、iPhoneに記録された運動の履歴を読み込んだりなど、iPhone 搭載の機能を活用できるところが便利です。
また、日本語でスクリプトが書ける点と、プログラミングとレイアウトが一緒にできることも作りやすさにつながっていると思います。とくにレイアウト操作はすごく柔軟で、いろいろ工夫して表現できるので、夢中で開発しているうちに次の日になってしまっていたということもありました(笑)。
日向こじろーさん:プログラミング言語の知識がなくても直感的に開発でき、レイアウト作成も自由度が高いのが魅力です。だれかと話し合いながらその場でスピーディーに変更できたり、後々思いついたアイデアも柔軟に追加できるので、小さく始めて大きく育てることができます。
――まだFileMakerを使ったことがない方に向けて、最後にメッセージをお願いします!
キリンさん: FileMakerは、Claris公式サイトに45日間無料の評価版があります。トレーニング教材も充実していて、サンプルファイルをダウンロードできたり、先ほどお話したようにYouTubeの解説チャンネルもあります。始めるハードルが低いので、すごくやりやすいと思いますし、ぜひちょっとでもいいので試していただければなと思っています。
日向こじろーさん:45日間無料の評価版、私も利用しました。専門知識がなくても直感的に簡単に作れるので、モノづくりがしたい方はぜひ試していただきたいと思います。私自身も「気付き」「開発」「笑顔」をモットーにFileMakerの開発に挑戦し続けていきたいと思います。このたびはありがとうございました!
――インタビューに応じてくださり、ありがとうございました。受賞おめでとうございます!
「FileMaker 2023 アプリ開発選手権」では、Claris FileMaker 2023のバージョンアップで追加された新機能を積極的に取り入れたさまざまなカスタム Appをご応募いただきました。その発想力と技術力に、審査委員一同は何度も感嘆の声をあげることになりました。ご応募いただいたみなさまにお礼を申し上げるとともに、受賞されたみなさまにあらためて賛辞を贈らせていただきます。ぜひこれからも、Claris FileMakerを活用し、誰かを笑顔にできる素敵なカスタム Appを作り続けてください! See you next time!
関連リンク
-
FileMaker の自習室
https://www.youtube.com/channel/UCTXGoKl99g9MQxP_iPIwbFQ -
Clarisコミュニティ
https://community.claris.com/ja/s/group/0F90H000000gDX3SAM/ -
FileMaker初心者向け無料サンプル&テンプレート
https://content.claris.com/jpapps -
Claris FileMaker 2023 アプリ開発選手権
https://content.claris.com/fmchampionship2023 -
Claris FileMaker の 45 日間無料評価版
https://www.claris.com/ja/trial/
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