さまざまな業種で導入検討が進められている生成AI。コンタクトセンターも例外ではなく、生成AI活用による業務効率化と顧客応対品質の向上が期待されている。一方で、生成AIの導入と活用には多くの課題があるのも事実だ。コンタクトセンターにおける生成AIの利活用を成功させるにはどうすればいいのか。
2024年4月16日に開催された「成功ストーリーを支える『顧客体験DX』」に株式会社ギブリーDECA AI接客エヴァンジェリストを務める守屋 翔太氏が登壇。コンタクトセンターへの生成AI導入成功のポイントについて語った。
AI利活用はソリューションの選択が重要
守屋氏は前職の不動産系事業会社にてセールスコンタクトセンター管理者・マーケティング実務に携わってきた。現在はその経験を活かし、カスタマーサポート領域の生成AI活用のプランニングを推進している。まさに本講演のテーマである「コンタクトセンターにおける生成AI利活用」に関するプロフェッショナルといえる。
そんな守屋氏は“企業における生成AI活用の現在地”をどのように捉えているのだろうか。
「多くの人が何らかの業務に生成AIを取り入れるべきだと考えているでしょう。一方で、情報収集しているもののソリューションを決めきれないとか、社員が生成AIを使いこなすのに時間がかかりそうとか、一部の社員しか使わないならROIが見合わないのではないかといった課題も出ていることでしょう」(守屋氏)
生成AI(ジェネレーティブAI)を一言で説明するなら「生み出す/生成できるAI」と守屋氏は言う。たとえば調べ物に対して回答をくれたり、アイデアを出したり、文章を要約したりなど活用の幅は多岐にわたる。
そうした生成AIの「脳」とも呼べるのがデータベースである。たとえばChatGPTであれば、開発元のOpenAI社が提供しているモデルが学習したデータをもとに、回答を生成しているわけだ。
生成AIが参照するのはあくまでも一般的に公開されている情報のデータベースであり、特定の企業や製品、サービスなどに特化した知見は持っていない。自社の製品やサービスの多くの問い合わせが寄せられるコンタクトセンターの業務で生成AIを活用するには、企業が独自に保有する接客履歴やマニュアルなどのナレッジが蓄積されたデータベースが生成AIの参照元になることが重要になり、それを実現するソリューションや、生成AI活用に知見を持つ企業の力を借りる必要があるのだ。
生成AIによりコンタクトセンターは今後プロフィットセンターに……?
では、生成AIはコンタクトセンターの課題をどのように解決できるのか。守屋氏はまず、コンタクトセンターにおける課題として「オペレーターの人数」、「業務の効率」、「顧客応対品質」、「多様化する問い合わせチャネル」の4点を挙げる。
このうち、生成AIは「オペレーターの人数」、「業務の効率」、「顧客応対品質」の3つの課題の解決に寄与できるという。具体的には「チャットBot」や「有人チャット」、「応対履歴の自動要約」、「オペレーションに溶け込むナレッジ管理」などの実現に生成AIを活用するわけだ。
とくに本講演でメインとなるのが「オペレーションに溶け込むナレッジ管理」である。なぜなら、ナレッジ管理システムを構築することで検索性の高い豊富なナレッジが現場に浸透し、結果としてオペレーターの業務支援にもつながるからである。
なお、生成AIによりそもそもオペレーター業務そのものが人からAIに置き換わるのではないかという意見があるかもしれないが、その点について守屋氏は次のように言う。
「コンタクトセンター業務では、ときに感情を伴うコミュニケーションを求められます。これをAIに任せられるようになるのは、まだ先の話で、少なくとも今後5年間は、問い合わせ応対の主体は人間が担い、AIは補助的な役割を果たすでしょう」(守屋氏)
ますます重要になるコンタクトセンターの、ナレッジ管理システム構築における重要な4つのポイント
とはいえ生成AIの活用により、今後のコンタクトセンターの業務効率化と、応対品質の向上が進むことはたしかだ。顧客からより良質な体験を求められるようになった今、コンタクトセンターは顧客接点として重要な役割を担うようになると守屋氏は予測する。
「オペレーションに溶け込むナレッジ管理」について守屋氏が提案するのが、「生成AIが企業独自のデータベースを参照できるようにする」ことだ。先述したように生成AIは通常、一般に公開されている汎用的なデータベースを参照する。ただ、それではコンタクトセンターに寄せられるような掘り下げた質問に回答することは難しい。回答そのものは人が行うとしても、そのサポートとして生成AIを活用するためには独自のデータベースとナレッジ管理システムが必要になるわけだ。
では、具体的にどのようなナレッジ管理システムを構築すべきなのか。守屋氏が成功のポイントとして挙げるのが以下の4点である。
まず、ナレッジを「入手」し、ナレッジ管理システムに入れること。ただし、煩雑化しないよう「構造化」すること。さらに、ナレッジを「利用」するシステムがユーザーにとって使いやすい仕組みになっていること、ナレッジ管理システムの「運用」が容易であることである。
実はこの4項目は、昔からコンタクトセンターで重視されてきた「KCS(ナレッジセンタターサービス)」と呼ばれるフレームワークに基づいた考え方である。
「生成AIが台頭するまでは、同じサイクルを既存システムで構築しようとすると莫大な費用がかかり現実的ではなかったのですが、生成AIの登場により、ようやく実用的にナレッジを運用できる可能性が高まってきました」と守屋氏は言う。
そして、このKCSを実現に導くソリューションこそが、ギブリーの提供する「DECA AI接客」である。
DECAが実現するコンタクトセンターのオペレーションとは
DECA AI接客を採用することで、どのようなオペレーションが可能になるのか。
たとえば、まだ経験の浅いオペレーターが初めての問い合わせ内容を受けたとしよう。従来であれば他のオペレーターに確認したり、マニュアルを確認したりするのに時間を要していただろう。しかし、「DECA AI接客」のシステムを採択したうえで生成AIを導入すれば、KCSの方法論を手軽に取り入れることが可能になり、かつ問い合わせ内容を生成AIに尋ねるだけでいい。
もちろん、生成AIは顧客の感情を考慮して回答しているわけではないので、生成AIの回答の言い回しをオペレーターが調整するなどの対応は必要だが、少なくともこれまでよりも格段に早い時間で顧客対応が可能になる。
あるいは、経験豊富なオペレーターのケースでも、対処法を想像できていたものの、念のためマニュアルを検索して調べるケースがあるだろう。そうしたときに、該当する回答例がなく、初めて対応するケースであることに気づくことができる。
さらに今回の対応をナレッジとしてデータベースに登録することで、生成AIは新しい対応ケースを学習し、別の人が同じ問い合わせを受けた際に適切なサポートができるようになる。
むろん、ナレッジの登録は無条件にできるわけではない。オペレーターができるのはナレッジの登録の「申請」であり、実際にナレッジとして登録するかどうかは管理者の承認が必要だ。このようにDECAは運用面の機能も充実しているため、管理者がナレッジ内容を管理・修正し、必要に応じてブラッシュアップするなどといったナレッジ管理を行えるのである。
豊富なAIアシスト機能で生成AI利活用を強力にサポート
DECA AI接客と生成AI活用の合わせ技は、「チャットbot」、「有人チャット(メール)」、「ビデオ(電話)接客」などのでコンタクトセンターの業務を効率化してくれると守屋氏は言う。
まず、顧客からの質問に自動回答するチャットbotについては、外部データベースと生成AIを連携するRAGを用いる。DECA ナレッジベースと連携させることで、生成AIが商品やサービスなどの独自の情報を参照して生成AIが回答を作成できるようになるわけだ。
チャットbotで参照できるデータの形式は、Q&A型やテーブル型、ドキュメント型、外部データベース連携型など複数のタイプに対応している。
有人チャットにおいては、AIのアシスト機能を豊富にとりそろえており、会話文の要約や文脈に沿った返信の生成などが可能だ。さらにウィジェット機能により、必要なAI機能をカスタムしたUIを構築できる。
また、ビデオ接客においてもDECA AI接客は力を発揮する。本サービスを活用すれば音声がリアルタイムで文字起こしされ、そのデータを分析したうえで適切な商品を提案したりしてくれる。
ナレッジデータベースで生成AIの参照元を構造化し、回答精度を高めることで、コンタクトセンターにおける生成AIの利活用をギブリーはサポートしている。ぜひ同ソリューションを用いて顧客応対品質や生産性の向上を実現してみてほしい。
〇ご紹介したサービス
・「生成AI」を活用したカスタマーサービスプラットフォーム「DECA AI接客」
〇講演企業
・株式会社ギブリー
・AI ソリューション
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