医療機器や測定機器などの開発・販売を手がける製造業者にとって、長期間にわたり安定的に稼働する製品を提供することは極めて重要なミッションといえる。各分野に特化した機器では、専用の装置に制御用のPCを組み込んで製品化しているケースが多く、長期利用を前提に設計された装置と、そこに組み込まれるPC製品ライフサイクルの差異が長期・安定供給を妨げる要因となっているそうだ。
本稿では、組み込み用途に特化した日本HPの「ロングライフPC」と、導入時の工数を大幅に削減できる「菱洋エレクトロキッティングサービス」を組み合わせたソリューションをピックアップ。医療機器・測定機器における組み込みPCの最適解を確認していく。
長期利用を前提とした医療機器・測定機器において、組み込みPCの製品ライフサイクルが課題に
半導体/デバイスとICTの2つを軸に、幅広い製品・サービスを手がけるエレクトロニクス商社である菱洋エレクトロ。単に製品を調達・販売するのではなく、企画から導入、運用、保守に至るまで、顧客にとって付加価値の高いソリューションを提供するトータルサービスカンパニーとしてビジネスを展開している。
同社では、製造メーカーが開発した装置に組み込まれるPC製品に注力しており、製品ライフサイクルの長い「ロングライフPC」を軸に、キッティングサービスや長期保守サービスを組み合わせたソリューションを提供している。菱洋エレクトロ株式会社 ソリューション事業本部 ソリューション第4ビジネスユニット 営業第1グループの石黒 聖哉 氏は、医療機器や測定機器を開発・販売している製造メーカーが抱える課題と、その解決に寄与するロングライフPCの役割について次のように語る。
「医療機器や測定機器に組み込まれるPCは、装置の制御など特定用途で使用されるケースが多く、一般的なPCのような汎用性は求められていません。必要となるのは、長期間の利用に耐えうる信頼性を備え、常に同じ部材が供給されること。このため昨今では、1年、2年で新しい部材に入れ替わるPCやワークステーションではなく、特定業務に対応するフレキシビリティを備え、長期間の利用を想定したプラットフォームデザインを採用するロングライフPCの導入を検討する企業が増えてきています」(石黒氏)
長期にわたる部材固定と保守対応を実現した日本HPのロングライフPC「HP Engage Flex Pro」に注目
医療機器をはじめ、問題発生が許されないミッションクリティカルな製品においては、検証作業の重要性が極めて高く、そこに組み込まれるPCでの部材変更は作業工数的な負荷が高まる要因となっている。「部材が1つ変わっただけでも検証に多くの時間を費やすことになり、そこが一般的なPC/ワークステーションを組み込み用途で使いづらい要因となっています」と、石黒氏は製造メーカーの課題について言及する。
医療機器などに組み込むPCとしては、高い堅牢性と長期的な保守契約を提供するFAPC/産業用PCと呼ばれる製品も存在するが、導入・保守にかかるコストが高く、すべての機器に最適な選択肢とはいえないのが現状だ。石黒氏は、「長期にわたる安定稼働を求める企業をターゲットとしたロングライフPCは、コスト的にFAPCの導入に踏み切れないでいる開発現場のニーズにマッチしています」と話を展開。ロングライフPCを製品開発における自由度を高め、開発者が抱える課題を解決する製品と位置付ける。
昨今では、さまざまなメーカーからロングライフPCがリリースされているが、菱洋エレクトロでは日本HPが提供するロングライフPC「HP Engage Flex Pro」シリーズの導入を提案するケースが多いという。その理由について石黒氏は、最長5年間の安定した部材供給と標準5年、最長10年の保守契約、さらに専用窓口を介して手厚いサポートを提供する「プライオリティアカウントサービス(PAS)」の存在を挙げる。
「当社では、さまざまな分野で日本HPと協業してビジネスを展開しており、ロングライフPCに関しても、HP Engage Flex Proは高いカスタマイズ性を備えており、さまざまな装置と組み合わせて利用することが可能となっているため、製造メーカーの要求に応えられる製品として高く評価しています。
ベンダーレベルで使用する部材を固定できることが特徴で、部材変更に伴う検証作業を最小限に抑えられます。また最長10年の長期保証と長期供給を実現しているため、世代管理の工数も大幅に削減でき、価格もFAPCより安価です。さらに、専用コール窓口を設けて迅速な障害対応を実現するPASも利用でき、導入から運用・保守までの課題を払拭できる製品といえます」(石黒氏)
また一般的なPCと同様、ロングライフPCにおいても処理性能やセキュリティの向上が求められるようになっているが、日本HPのロングライフPCではセキュリティを強化するための機能も数多く実装。さらにCPUやメモリ、ストレージ、GPUなども用途に応じてカスタマイズでき、多様な機器向けに構成することが可能だ。菱洋エレクトロでは、セキュリティを担保したい企業に対して、ホワイトリスト型セキュリティ対策ソフトの導入も提案しており、オフライン環境で稼働するEmbedded OSと組み合わせて、安全性の向上を図っているという。
菱洋エレクトロキッティングサービスと組み合わせることで、作業工数の大幅な削減が可能に
菱洋エレクトロでは、日本HPのロングライフPCを、同社のキッティングサービスを組み合わせたソリューションとして提供している。キッティングセンターは同社の倉庫内に設置されており、年間1万台のキッテングに対応できるキャパシティを有しているとのことだ。Embedded OSの導入からメモリやインタフェースボードなどハードウェアの組み込み、ソフトウェアのインストール、各種設定までを施した製品が納品されるため、手元に届いた段階ですぐに使い始めることができる。
「当社のキッティングサービスを利用することで、納品されたPCを使える状態にするまでの作業工数を大幅に軽減できます。さらにPCを在庫として持ちたくないというお客様のニーズに応え、当社で在庫を持ち、必要なときに必要な製品を納品するJIT(ジャストインタイム)納入のサービスも提供しています。弊社が提供するサービスと日本HPの製品、サービスを組み合わせることで、開発工数の削減、検証期間の短縮をはじめ、イニシャルコストの軽減や保守レベルの向上など、さまざまなメリットを享受することができます」(石黒氏)
さらに石黒氏は、日本HPのロングライフPCを採用するメリットとして、グローバル展開における優位性について言及する。
「医療機器や測定機器を海外に輸出する場合、RoHSやREACHなどの規則に対応する必要があります。日本HPでは、単に規制をクリアした製品を提供するだけでなく、導入企業が用意しているフォーマットに合わせた書類の作成までをサポートしてくれます。また前述した部材の固定についても、導入企業ごとの特別型式を取得することができます。この型式さえあれば、どの国でも部材構成をすぐに確認することができるため、グローバルに機器を展開したい製造メーカーにとって、日本HPのロングライフPCを採用する価値は高いはずです」(石黒氏)
実際、日本HPのロングライフPC+菱洋エレクトロキッティングサービスを導入し、機器の長期供給における課題を払拭したという企業は増加しているという。「部材変更による検証作業が減ったことでストレスが解消された」「PCの仕様や型番などの項目をまとめた図面を、作り直すことなく長期間使えるようになった」など、本ソリューションを導入した開発現場からの反響に、石黒氏は確かな手応えを感じている。
「日本HPのロングライフPCは、製品ロードマップがしっかりと明示されており、長期間にわたる部材の固定も合わせて組み込み用途での優位性は非常に高いものがあります。当社ではPCだけでなく、プリンターやディスプレイなどの周辺機器を含めて、日本HP製品をトータルで提供することができます。組み込み用途のロングライフPCをフックに、医療機器、測定機器メーカーの課題を払拭するソリューションを提案していきたいと考えていますので、ぜひ気軽に相談いただければと思います」(石黒氏)
高品質でグローバル対応のPC製品・サービスを展開する日本HPと、エレクトロニクス商社として企業のニーズに寄り添うサービスを提供してきた菱洋エレクトロ。両社の協業により生まれるソリューションには、今後も注視していく必要がありそうだ。
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