大企業を中心にSDGsへの前向きな姿勢を示す企業が増えている一方で、具体的な取り組みには繋がらず、自社の事業活動とSDGsを結び付けられていないケースも見受けられます。こうしたなか、ペーパーレス会議システム「ConforMeeting」は、SDGs貢献度を表示する機能を実装し、実際の植樹活動につなげる取り組みをスタートする予定です。これによってSDGsの自分ごと化を促し、企業の具体的な行動の第一歩を後押しします。その取り組みの背景や狙いについて、NECソリューションイノベータと森づくりフォーラムの担当者に話を伺いました。

  • (写真)集合写真

    (左から)
    NPO法人 森づくりフォーラム 事務局長 宮本 至氏
    NECソリューションイノベータ株式会社 営業統括本部 マネージャー 佐藤 雅彦氏
    NECソリューションイノベータ株式会社 営業統括本部 林 雅一氏

"デジタルと紙のいいとこ取り"を実現したConforMeeting

―まずは、ConforMeetingの特長や基本機能についてご説明ください。

NECソリューションイノベータ 佐藤氏(以下、NEC 佐藤氏):
ConforMeetingの特長の1つに、デジタルのよさと紙のよさをハイブリッドに実現できる点があげられます。ConforMeetingでは、画面や説明資料を会議参加者全員で同期するだけでなく、個人で資料を先読みしたり手書きメモを記入したりと、紙の資料を渡されたときのような体験を提供します。

また、議事やタイムスケジュール、出席者の表示画面を管理する機能をはじめ、会議主催者側にとっても会議の進行をコントロールしやすいものとなっており、ConforMeetingという名前の由来にもなっている"concentration(集中)"と"comfortable(快適)"を兼ね備えた会議運営を支援します。ConforMeetingは、単なるペーパーレス会議を実現するツールではなく、会議のあり方を変えるツールだと考えています。

  • (写真)インタビューに答える佐藤氏

    NECソリューションイノベータ株式会社 営業統括本部 マネージャー 佐藤 雅彦氏

全社展開や継続性、従業員の"自分ごと化"にハードル...SDGs達成に向けた現状と課題

―日本企業におけるSDGs達成への取り組みの現状について、どのように捉えていますか?

NECソリューションイノベータ 林氏(以下、NEC 林氏):
2006年に国連によって、投資判断にはESGの要素を考慮すべきというガイドライン「責任投資原則」が提唱されたことを機に、企業経営においては環境問題を意識した取り組みが重要視されるようになりました。2030年までに持続可能でよりよい世界を目指す国際目標 「SDGs」が2015年9月の国連サミットにおいて採択されたこともあり、企業における環境保護への取り組みは世界的な動きとなっています。

森づくりフォーラム 宮本氏:
こうした背景のもと、当団体も含めた森林保全団体への企業からの問い合わせは、ここ数年で増加してきています。これまで森林保全分野は、企業による社会貢献の領域となるCSRの活動として展開されてきました。しかし、生物多様性保全や気候変動対策といったSDGsへの関心が高まるなか、自社のサービスそのものに森林保全への貢献を組み込んだり、売上を森林保全のために寄付したりなど、森林保全に対して何かしらの形で事業活動を関連付けることができないかといった相談が多く寄せられるようになってきています。

―日本企業がSDGs達成に向けて取り組むうえでの課題は、どこにあるとお考えですか?

NEC 林氏:
サステナビリティレポートを公開するなどSDGsのPRは大企業を中心に活発になっている一方、帝国データバンクの調査では、中小企業の約7割はSDGs実現に向けた具体的な活動ができていないという結果が出ています。

NEC 佐藤氏:
環境保護やSDGs達成に向けた取り組みをしている企業からも、各従業員の行動にまでは落とし込めておらず、環境問題を"自分ごと"として捉えてもらうことが難しいという悩みの声をいただいています。

森づくりフォーラム 宮本氏:
我々のような団体との窓口となるSDGs推進部門担当者のモチベーションは非常に高いのですが、それを全社的に広げようとすると難しい部分があるようです。単発のイベント開催にとどまってしまったり、取り組みがマンネリ化してしまったり、担当者変更によって活動が縮小してしまったりと、継続性にも課題があります。また、我々自身も感じているのですが、取り組みの成果を発信することの難しさもありますね。

会議のペーパーレス化によるSDGsの貢献度が"見える化"される

―ConforMeetingにおけるSDGsへの貢献度を表示する機能は、こうした課題をどのように解決するのでしょうか。

NEC 林氏:
この機能の根底には、コロナ禍以降ペーパーレスが当たり前になってきているなかで、それがどれくらいSDGsへ貢献しているのかを把握することが大切であるという考えがあります。

ConforMeetingでは、採取したログの値をもとに紙の枚数、人件費、CO2の値を算出しています。会議のペーパーレス化により貢献できるSDGs4項目(「8. 働きがいも経済成長も」「12. つくる責任 つかう責任」「13. 気候変動に具体的な対策を」「15. 陸の豊かさも守ろう」)に対し、それぞれ人件費/印刷費、紙の枚数、CO2の貨幣価値、CO2の排出量といった軸で評価します。当社のサポートのもとあらかじめ企業ごとに目標値を設定しておき、会議後に「SDGsメーター表示ボタン」を押すと、その達成度が確認できます。

また、木1本から製造できるA4用紙は約1万3000枚といわれています。ConforMeetingでは、会議のペーパーレス化によって削減できた紙の枚数をもとに、温存された木の本数も算出されます。各会議のデータを集計し、会社全体でのSDGsへの貢献度をレポートとして表示するダッシュボード機能の開発も進んでいるところです。これにより、削減コストや費用の推移なども含めて統計資料として取り組みの実績を評価できるようになります。

  • (写真)インタビューに答える林氏

    NECソリューションイノベータ株式会社 営業統括本部 林 雅一氏

―宮本さんから見て、ConforMeetingのSDGs貢献度表示機能の印象はいかがですか。

森づくりフォーラム 宮本氏:
紙の原料となるパルプの多くが海外の木材をもとに製造されているため、供給リスクが高い資源といえます。日本国内の木材自給率を上げる取り組みも進んでいますが、需給と木材使用のバランスの調整が必要になるときが来ると考えています。

そこに向けて、紙資源を削減していくための活動は重要です。実際に、コロナ禍を経てペーパーレス化が急激に進み、領収書や請求書などの電子化に関する制度もここ数年で整備されてきています。ただ、紙の使用量はこれまで具体的に可視化されてきておらず、その実態を把握することは難しいといえます。国が発表している木材自給率のデータからは、何にどう使われているのかまで見ることはできません。紙資源の削減量を可視化できるサービスが広がることで、こうした状況に大きなインパクトが与えられるのではないかと考えています。

  • (図)SDGs貢献度表示メーター

    SDGs貢献度表示メーター

SDGs達成への取り組みを後押しし、"自分ごと化"につなげる植樹活動

―NECソリューションイノベータは、森づくりフォーラムとともにConforMeetingをとおして“実際に保存できた本数の木を植樹する”という取り組みを新たにスタートされる予定です。まずは、森づくりフォーラムの普段の活動内容についてお聞かせください。

森づくりフォーラム 宮本氏:
都市部に人々の生活拠点が移り中山間地の人口が減少したことで、関係者のみによる森林保全の継続が困難になるなか、当団体では「森とともに暮らす社会」をミッションに掲げ、一般の方々にも森林保全の取り組みに参加してもらうための活動を行っています。

当団体が運営する市民参加型の森づくり実践フィールドである「フォレスト21"さがみの森"」では、25年ほど前より、神奈川県相模原市にある国有林で植樹から森づくりをスタートし、助成金や寄付等のサポートを受けながら、一般市民自らが管理計画を立てて森づくりに取り組んできました。現在は、約20ha(=東京ドーム4個分)のエリアのなかで、スギ・ヒノキの人工林と尾根沿いを中心に保残された天然林、市民ボランティアが植樹・育林した広葉樹林を管理しており、月2回ほどボランティアによる定例で森林整備・イベント活動を行っています。

長年活動を続けていると、雪で木が倒れたり、虫で木が腐ったりと、さまざまな現象を目の当たりにします。植樹によって森林内の樹種が増えたことで、そこで育つ虫や菌、それを捕食する動物種が増え、生物多様性の度合いが高まっていく様子も見受けられます。こうした現象は科学的にも示されており、今後もより多様性のある森づくりに取り組んでいければと考えています。

―ConforMeetingを通して、そうした植樹活動に参加するための流れを教えてください。

NEC 林氏:
SDGs貢献度表示機能を利用したうえでお申し込みいただければ、当社側から森づくりフォーラムへ申請を行います。植樹活動を実施していただいた後には、社名を森づくりフォーラムとNECソリューションイノベータのWebサイトに掲載し、また双方のDMで紹介記事を配信する予定です。実際に植樹活動をスタートさせるのは、来年の春ごろを見込んでいます。

―この取り組みの狙いについて、お聞かせいただけますか。

NEC 林氏:
大企業の場合、自前で森林を所有している会社もありますが、中堅中小企業のお客様は具体的な取り組みに向けて一歩踏み出すことが難しい状況にあります。そうした企業の背中をそっと押してあげられるようなサービスにしていきたいと考えています。「紙を◯枚削減できた」「◯本の木を植えられるようになった」とゲーム感覚で利用していただき、社内で話題にしてもらえるといいなと思っています。

NEC 佐藤氏:
企業のSDGs達成を全面的にバックアップするというよりは、きっかけをつくって行動変容を促す「nudge(そっと押す)」の考え方を重視しています。ConforMeetingの数値をただ眺めているだけでなく、植樹という実際の行動に移すことで、参加者の環境意識は一段と大きく変わるように思います。企業としては、こうした活動を発信することでESG経営に真剣に対峙しているというPRにつなげていくこともできます。

森づくりフォーラム 宮本氏:
実業で森林を利用していない中小企業などにとっては特に、森林保全はコミットしづらい分野だと思います。このサービスを通じて、森林保全への参加のきっかけにしていただければありがたいですね。

  • (写真)インタビューに答える宮本氏

    NPO法人 森づくりフォーラム 事務局長 宮本 至氏

環境以外の領域もカバーできる機能追加を目指す

―ConforMeetingの提供や植樹活動を通して、実現したいことをお聞かせください。

NEC 佐藤氏:
現状では、SDGsのなかでも環境領域をメインターゲットにしていますが、今後は環境のみにとどまらず、社会や人にも焦点を当ててよりよいコミュニケーションを取れるような機能を追加していければと考えています。

NEC 林氏:
SDGs貢献度表示機能は、現時点ではあまりピンときてない人がほとんどです。そうした意味でも、SDGsを自分ごと化してもらえるよう、まずはConforMeetingの利用者となる従業員のみなさんの意識を高めていくことが、第一の目標です。そして森づくりフォーラムと連携しながら、リアルでの環境保全に役立てていきたいですね。

森づくりフォーラム 宮本氏:
森林保全にあたっては、木を植えた後も育てて手入れをするという循環をつくっていくことが必要となります。植樹をきっかけに、森林保全へ参加する人々の裾野が広がっていくことを期待しています。

関連リンク

[PR]提供:NECソリューションイノベータ