DXに取り組むことが当たり前となるなか、思うような効果が出ない……、といった課題を抱える企業も少なくない。とくに営業の現場では、顧客と向き合うことが第一に求められるため、事務作業にかかる工数やシステム導入にともなうフロー変更は現場に受け入れられず、せっかく導入したシステムがなかなか浸透していないといったことも多い。TECH+の調査で、営業現場・DX推進サイドの双方に営業DXの満足度を聞いたところ、「満足」との回答はわずか38%にとどまっている。現場にDX施策を受け入れてもらい、業務効率化を実現し、DXを成功へと導くにはどうすればよいのだろうか。
一方、とある企業X社ではまさに「DXすれ違い問題」が起きており、営業とDX推進サイドで「営業が営業活動に集中できる環境を作るには?」をテーマに座談会を開催した。本記事ではその模様をお届けし、営業DX成功への道筋を見出していく。なお、ファシリテーター役はTECH+統括部長の星原康一が務めた。
そもそも「営業DX」とはなにか?
TECH+ 星原:
最初に、「営業DX」とはどういうものか、みなさんのイメージを教えてください。まずは営業部 課長のAさん、その部下のBさんに伺います。
営業部Bさん:
営業に関する情報がデジタル化され、それを営業活動で活用したり、日々の事務処理を効率化して工数を減らせたりできるようになる……、というイメージを持っています。
営業部 課長Aさん:
今までスプレッドシートで管理していたものをSFAに移行し、顧客企業の受注額や対前年比の数字をすぐ見られるようになったのは、業務効率化につながっていると感じます。その成果を次の施策に活かし、組織に還元するところが営業DXというイメージですね。
TECH+ 星原:
対してDX推進部のCさん、Dさんは、システムを扱う立場から営業DXをどう捉えていますか?
DX推進部 部長Cさん:
未来に投資するものだと思っています。システム導入で業務を効率化したり属人化を防いだりするのはもちろんですが、それは会社の未来を見据えた投資なので、現場のみなさんが目の前のメリットとして感じづらい部分ではあるかもしれません。
DX推進部Dさん:
入り口はやはり業務の効率化ですが、それだけで終わってしまうとDXではなく、ただのIT導入にとどまってしまいます。DXはトランスフォメーション、つまり変革を起こすことなので、業務効率化をして、どう変革につなげるか、それがDXだと考えています。
営業部 課長Aさん:
例えば、SFAを使って営業活動の未来予測が自動的にできるようになったとします。今その予測作業に使っている10の力を2に減らして、浮いた8を顧客と向き合う時間や部下とのコミュニケーションに充てることで、営業の数字にも反映されれば、変革をより実感できる気がします。
営業部Bさん:
そうですよね。でも実は私、デジタルとか機械とか本当に苦手なんです。使うシステムの数がどんどん増えて、それぞれ使い方が違って、そこからさらにアップデートがかかるとなると、とても大変で……。変革以前に使いこなせていないのが正直なところです。
DX推進部 部長Cさん:
先ほど未来と言ったように、蓄積した情報が現場のみなさんにとって本当に役立つものと感じられるようになるのは、3年から5年ほど先だと思うんです。私たちはその数年先を見据えて、情報をシステムに集約・蓄積したいのですが、今すぐ売上に効果が出るわけでもないので、そのギャップはいつも感じています。
“溝”を越えて先へ進むためのヒント
TECH+ 星原:
立場が異なると見るものも変わってきて、Aさん、Bさんは目の前にある営業の仕事をどう効率化し、成果を出すか。対してDX推進側のCさん、Dさんは経営目線でDXを考えているようですね。他部門の立場をおもんぱかるのはやはり難しいのでしょうか。
営業部Bさん:
たぶん、お互いが思っていることをうまく伝える場がなかったのだと思います。私自身、システムの導入について営業の立場で思うところはあっても、今思えば直接伝えることはなかったです。反対にシステム導入側の思いも知る機会がなく、本当に今日初めて知りました。話し合える場があればお互いの思いを理解でき、会社全体の視点で歩み寄りながら良い方向へと進められると思います。
TECH+ 星原:
たしかに、コミュニケーションは重要と理解されながら、営業とDX推進サイドでこうして話し合う機会はなかなか少ないのかもしれませんね。では、システム活用を浸透させるにはどうすればいいと考えていますか?
DX推進部 部長Cさん:
これまでDXは、トップダウンでの取り組みが主でした。とくに経営層からのトップダウンでは、「システムを使いこなせない」は言い訳でしかないということになるでしょう。
営業部 課長Aさん:
営業の立場としても、トップダウンが一番効くことは実感しています。上から「これをやりなさい」と言われたら、やはりみんな焦りますからね。
DX推進部 部長Cさん:
ただ一方で、現在のトップが実現してきた成功はアナログ時代のものが多いのも事実で、発信する側がデジタルに懐疑的だと浸透が思うように進まないことの要因につながります。
DX推進部Dさん:
そうした背景を受けていまは、現場の意見を聞いたうえでトップも巻き込むボトムアップのDXを試しているところです。現場のメリットを交えながらシステムの操作手順を説明するようにしました。それによって、浸透が進む兆しが見えてきたと感じています。
TECH+ 星原:
なるほど。トップダウンとボトムアップの使い分けが求められるということですね。
間違いが許されない契約業務を効率化させるには
TECH+ 星原:
ではここからは業務効率化に焦点を当てていきましょう。デジタルが苦手というBさんは、システムを使いこなせるようになるために何をしてほしいですか?
営業部Bさん:
操作ができるだけ減るとうれしいです。工数が減るのはもちろん、そもそも覚えるべきことが減りますし。すみません、私のわがままな気持ちではありますが……。
DX推進部Dさん:
それはよくわかります。この記録はこのシステムで、この報告はあのシステムで……、となると大変ですよね。
営業部 課長Aさん:
たしかに、操作を減らせれば時間を創出できるので、すべてがワンクリックで連携できればいいなと、いつも思っています。多くのシステムを操作していた時間を、顧客と向き合う時間にしてアポを増やせれば、結果がついてくるでしょう。デジタル化によってアポの母数を増やせれば自ずと受注数も上がってくるわけです。そうしたビジョンが描ければ現場のデジタルを活用するモチベーションにもなるのではないでしょうか。
TECH+ 星原:
営業が顧客と向き合う時間を作るため、ひいては売上を上げるために、効率化できる業務はいろいろあると思います。効率化のメリットが高いのはどういった業務でしょうか?
営業部 課長Aさん:
契約業務ですね。営業の仕事はもちろんどれも重要ですが、契約業務は絶対に間違いが許されません。管理職としては、間違えがないように部下をしっかりサポートすることは当然必要ですが、システム操作がシンプルであることも重要だと思います。
TECH+ 星原:
たしかに、契約業務は慎重に進めなければいけないですよね。現状のフローはどのようなものなのでしょうか?
営業部 課長Aさん:
簡単に言うと、見積書や申込書を作るためにSFAで帳票出力し、それをクライアントにメールで送り、加えて電子契約で進めたい旨を伝え確認を取ります。電子契約でOKであれば、社内のチャットで関係部署に電子契約の準備を進めてもらうよう依頼をし、クライアントから申込書が返送されたらそれをSFAに登録して社内承認を受けます。請求書を送るときもSFAで社内承認を得てから、売上を別システムに手入力して報告します。さらに入金確認でも、また別のシステムを使う必要があります。合計5個のシステムを用いて契約業務を行っていることになりますね(笑)。
営業部Bさん:
自分もいつも携わっている仕事なのに、あらためて聞くとなんだか気持ちが悪くなってきました(笑)。とくに契約の核となっているのがSFAと電子契約で、この2つが繋がっていればどれだけラクか……と何度も思ったことがあります。
DX推進部 部長Cさん:
これまで部門ごとに個別のシステムを入れてきた背景からシステムが分断され、フローが煩雑になってしまったのでしょう。一元化が理想だというのは私も同感です。反省ですね。電子契約に関しては、他のシステムと連携されていないことによって、せっかくのメリットを十分に享受できていないのはとても残念なことだと思います。
DX推進部Dさん:
電子契約システムはもともと他の事業部が導入し、そこからAさん、Bさんの事業部にも広がったのですが、事業部ごとにSFAが異なっていたため連携されていないのが現状です。もちろん分断された状態はほめられたものではないので、一刻も早く改善していきたいですね。
DX推進部 部長Cさん:
こうした契約関連の煩雑な業務工程を効率化するために、SFAと電子契約システムを一体化し、業務負荷削減を図るというのが現実的な突破口のように感じますね。
営業部 課長Aさん:
たしかに、SFA上で電子契約のステータスを確認できたら、格段に管理しやすくなるので、部下のフォローもしやすくなりますね。
営業部Bさん:
システムが異なることで、クライアントに別の契約書を書いていただかなければならないことがあります。SFAと電子契約システムが一体化されれば、クライアントに手間をかけなくて済みますし時間のロスもなくなります。そうすれば、私自身も案件の刈り取りに集中できるので、契約業務のスピードアップにつながりそうですね。こうした営業現場での事情は営業にしかわからないものなので、今回のような話せる機会を作ることが大切だと感じました。
DX推進部 部長Cさん:
今後は電子契約をはじめとしたシステムをボトムアップの進め方も取り入れながら、ユーザーファーストな環境を目指していきたいですね。社内各部門と力を合わせて、経営層から現場までみんながハッピーになれる世界を作っていければと、思いを新たにしました。
TECH+ 星原:
意思は明確に、お互いを理解し、部門間・システム間は密に連携を、そして操作はシンプルに。これがDXに向けた理想のスタート地点ですね。ありがとうございました!
営業DX成功の秘訣:
- 現場とDX推進部門の対話の重要性を強調し、お互いの立場を理解する機会を設ける
- トップダウンとボトムアップのアプローチをうまく活用する
- 現場のスタンスに耳を傾け、ユーザー本位の姿勢をとり、DXへの前向きな気運を醸成する
- 契約業務などの現場が非効率と感じる業務プロセスの改善から繰り上げ、具体的な変革を実現する
- システム連携によりユーザーフレンドリーな環境を整備する
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営業DXを実現するには、ユーザーである現場をいかに理解し、的を射た施策を打っていくかが重要だ。コミュニケーションで営業・DX推進間の温度差を解消することが重要であり、ユーザーファーストな環境を構築するためにはシステム連携がカギとなる。システムの分断を解消し、業務が効率化できれば、そのぶん顧客とのコミュニケーションの時間に充てられ、売上という数字に反映されるかもしれない。いかに営業現場に寄り添ったDXを推進させるかが、ビジネスの明暗を分けると言っても過言ではない。
座談会の後半では契約業務効率化をテーマに話が展開され、契約の核となるSFAと電子契約システムの連携が重要であることがわかった。弁護士ドットコムが提供する電子契約サービス「クラウドサイン」は100以上のサービスとの連携が可能で、独自の基幹システムにも対応。現場の状況に応じて柔軟に環境を構築できる。たとえばSFAと連携することによって、現場の管理工数を格段に減らすことができる。また、契約を電子化すれば契約書や申込書、発注書の回収リードタイムが減少し、ビジネスの加速につながるだろう。売上シェア、導入率、認知度、導入自治体数がいずれもトップかつ、弁護士監修という信頼性が最大のポイントで、各種認証制度を取得した高度なセキュリティも強みだ。
また、同社は座談会でも話題となったDXをめぐるすれ違いが起きないよう、導入コンサルティングや運用フォローも行っている。真の営業DX実現に向けた一つの選択肢として、クラウドサインの導入を検討してみてはいかがだろうか。
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