1884年の創業から130年以上にわたり、ものづくりとエンジニアリングのグローバルリーダーとして、民間航空、輸送、発電所、ガスタービン、機械、インフラから、防衛・宇宙システムにいたるまで、陸・海・空、そして宇宙という幅広いフィールドをステージに活躍する三菱重工業株式会社(以下、三菱重工)。
国内外約260社、連結社員約8万人でグループを構成し、設計、製造、建設から販売、アフターサービス、一般サービスまで、グループとしてシナジー効果を発揮しながら、それぞれの領域で事業を展開する。
三菱重工では従来から製品の競争力強化や業務の効率化を図るためにITを活用してきた。2014年にはIT部門を統合し、2024年現在は「デジタルイノベーション本部」が中心となり、同社の製品群とデジタル技術を“かしこく・つなぐ”ことで顧客に新たな価値を提供している。
DX推進や社内業務改革に取り組む、デジタルイノベーション本部
デジタルイノベーション本部は、デジタル戦略やデジタルプラットフォーム整備、デジタルエクスペリエンス構築などを担っている。デジタルイノベーション本部 コーポレートIT改革室 主席技師 石井義知氏はこう話す。
「中期事業計画で、収益力の回復・強化と成長領域の開拓を掲げ、コロナ禍からの回復や既存事業の伸長、DX活用やリソースシフトによるサービス事業の拡大などに取り組んできました。たとえば、DXの取り組みでは、さまざまな機械システムを同調・協調させる標準プラットフォームを活用してお客様のデジタル最適化を推進する『ΣSynX(シグマシンクス)』などがあります」(石井氏)
一方、社内の業務改革やDXについて、デジタルイノベーション本部 BPI部 上席主任 加藤篤史氏はこう話す。
「BPI部では、営業から設計、調達、アフターサービスまでのいわゆるバリューチェーンのDX化を推進しています。社内には多種多様な製品があり、システムも多岐にわたっています。それらをできるだけ共通化・標準化しながら、ITコストや開発コストを最適化することで、企業価値向上と事業発展に貢献できるよう努めています」(加藤氏)
こうしたDX推進や社内業務改革の取り組みのなかで重要な役割を果たしているのがGeneXusだ。
2005年にGeneXusを導入し効果を実感、以来20年にわたって社内での活用を推進
三菱重工は国内拠点を全国各地に展開し、拠点や工場ごとに多種多様なシステムが開発・運用されている。システム数は周辺システムを含めると1000を超え、開発や運用管理にかかわるIT人材は協力会社を含め1000人超の規模となっている。
「多種多様な製品や業務プロセスが存在するなかで、製品ごとにシステムが構築されてきたという経緯があります。長年の開発や運用を通してさまざまな課題が生まれてきたため、2018年から全社で共通して利用可能な標準システムを整備・展開する取り組みをスタートさせました」(石井氏)
長年の蓄積があるシステムや業務プロセスを見直すことは一筋縄ではいかない取り組みとなるため、事業部トップ、マネジメントトップがICTやDXの重要性を理解し、社内外のさまざまな関係者を巻き込み、現場の取り組みを後押しすることが欠かせない。
こうしたシステムや仕組みの共通化・標準化の取り組みは、BPI部 部長 藤原直之氏による強力なリーダーシップのもと進められたものだという。
GeneXusの全社への展開は藤原氏の意思決定のもと、石井氏と加藤氏らが地道に取り組んできたものだ。
「システムの共通化と標準化の取り組みは大きく3つに分けられます。1つめは、多種多様な事業・製品において、類似システムの個別開発を廃止し、高品質なシステム共通利用を実現するため、経営・営業・設計等の業務プロセス別にMHIグループで広く活用できる機能を有したシステムを整備する『標準システム整備』、2つめは、アプリケーションのなかで共通性の高い機能を部品化する『共通部品整備』、3つめは、標準システムとその内部を構成するマイクロサービスをコンテナ化し業務に展開する『CI/CD(継続的インテグレーション/継続的デプロイ)』です。当社では2005年にGeneXusを導入して以来20年にわたって社内での利用拡大を図ってきました。当時はまだローコード開発という言葉はありませんでしたが、最小限のコードで高速開発するメリットを実感していました。それを踏まえ、2018年からGeneXusを標準ツールに選定し、システムの共通化・標準化を進めたのです」(加藤氏)
初期に開発されたアプリケーションが稼働環境を変えながら約20年間稼働しているケースも
2005年にGeneXusを導入して初期に作られたシステムの1つに、支社や工場などで働く派遣社員向けの作業指示(オーダー)や業務内容を管理するアプリケーションがある。従来は紙で行っていた細かなオーダーをGeneXusで電子化し、効率を大幅に向上させた。
このアプリケーションは、その後、労務管理システムや人事給与システムなどの基幹システムと連携し、周辺システムの1つに位置づけられながら、現在も継続利用されている。
20年近く前に開発したアプリケーションが、現在も何の問題もなく日常的に使うシステムとして引き継がれている理由を加藤氏はこう語る。
「画面の構成やオーダーの項目などは開発当時から変わっていません。システムのアップデートに伴って連携の仕組みは変える必要がありますが、その場合は、GeneXusを用いて連携の仕組みだけを変えればよく、ビジネスロジックをそのまま新しいシステムに引き継いでいくことができます。時代とともにシステムが取り扱う範囲は広がっていきますが、GeneXusで作りきることができれば、長く使い続けられるシステムの開発が可能になるのです」(加藤氏)
2005年頃は、ちょうどシステムアーキテクチャがクライアントサーバ型からWeb 3層アーキテクチャへと移り変わっていく時期にあたる。
GeneXusの導入と展開にあたっては、Windowsアプリケーションの開発言語としてC#/.NETを、ミドルウェアとしてWindows ServerやMicrosoft SQL Serverを採用したが、その後、開発環境が多様化していくなかでもGeneXusで「作りきる」ケースが増えていったという。
たとえば、COBOLで開発したプログラムを.NETに移行したり、Notes/DominoのデータベースをWindowsアプリケーションに移行したりといったケースだ。
「GeneXusは、当初はWeb開発のための飛び道具として利用されていました。ただ、実際に使ってみると、手に馴染むし、きちんとした仕組みとして動かすことができるという理解が進みました。次第に、日報の作成や、申請と承認のフロー、在庫の管理などをおこなうツールとして利用されるようになり、徐々に各拠点に広がっていきました。2010年頃までには、SAPなどの基幹システムと連携して日常業務で利用するようなシステムが100システムほど稼働するようになっていったのです」(石井氏)
開発効率の高さと学習のしやすさ、管理統制のしやすさなどが標準開発ツールとしての選定ポイントに
2018年からシステムの共通化・標準化を目指すなかで、GeneXusが全社の標準ツールとして採用された大きな背景には、このように三菱重工グループ内でGeneXusを用いた開発が広がってきていたことが挙げられる。
もともと三菱重工グループには、現場で課題を見つけると、使い慣れたITツールをフル活用して自分たちで改善する文化がある。ただ、情報システム部門から見ると、多種多様な周辺システムや開発ツールが拠点ごとに存在することで、運用や管理コストの増加、統制が難しくなることが課題になり始めていた。そこで標準化のためのツールとしてGeneXusに白羽の矢が立つこととなった。
システム共通化・標準化のツールとしてのGeneXusが持つ開発においてのメリットについて、加藤氏はこう話す。
「まずは、ローコードツールであり開発効率が高い点です。開発にかかる期間や費用、人的リソースを大きく削減できます。生産性の高さは、実際に現場が主導し開発していた100システムの事例からも確認しています。次に、学習が容易なこともメリットです。導入当初は、Webシステムの知識やノウハウについては社内にほとんどないという状況でしたが、GeneXusを使って開発を進めながら、知識やノウハウを学んでいくことができました」(加藤氏)
さらに加藤氏は、運用管理面について、こう話す。
「IT部門として、管理や統制がしやすいこともメリットです。開発するアプリケーション、開発ルールやポリシーの設定、また、セキュリティの設定などを一元的に管理できます。また、ライセンスの柔軟性と使いやすさも特徴です。GeneXusは利用するユーザー単位で課金されるのではなく、開発者の同時接続数で決まるうえ、開発したアプリケーションが実行環境に依存することもありません。ユーザーが増えても利用料金が比例して増えていくことはなく、全社展開しやすいのです。さらに、ツールとしての進化が速いこともポイントです。コンテナやAIなど、最新のITトレンドを機能として取り込み、簡単に利用できるようになっています」(加藤氏)
「標準システム整備」「共通部品整備」「CI/CD」の3分野で共通化・標準化を推進
標準ツールとしての展開は、上述したように「標準システム整備」「共通部品整備」「CI/CD」という3つの分野で進められた。
1つめの標準システム整備について、加藤氏はこう話す。
「標準システム整備は、当社グループのさまざまな事業において、製品・業務プロセスのQCD向上を、短期間・低コストで実現することを目的に、デジタルイノベーション本部が、業務プロセス別にシステムを整備・展開する活動です。これにより、業務プロセス改革を促進し、事業環境変化への迅速な適応が可能となり、製品/業務プロセスの競争力向上を実現します。この活動にGeneXusを全面的に活用し、現在までに数百のシステムがGeneXusで開発した標準システムに移行しました。GeneXusは、データベース、画面、処理などアプリケーションに必要なすべての機能を高速に開発できるため、その強みを生かして、システムそのものを開発しています」(加藤氏)
2つめの共通部品整備は、GeneXusが提供するデータベースやAPI、ライブラリなどの豊富な外部連携機能をフル活用し、開発者向けのポータルサイトで部品を作る際のガイドラインや部品情報を一元管理しながら、多様な共通部品を整備し活用していく取り組みだ。
共通部品の例として、下記のようなものがあるという。
■ UIコンポーネント:リッチテキストエディタ、Excelライク入力機能
■ 共通マスター:社員情報、組織情報等
■ その他:MHIカレンダー参照機能
「これら共通部品を組み合わせ、システム開発を効率化・高品質化が可能になることで、機能の再開発を防ぎ、セキュリティやガバナンスが効いた状態で品質の良いアプリケーションの開発につながります」(石井氏)
使用頻度の高いものは部品化を進めることで重複開発をなくし、開発期間を削減し品質確保を図る取り組みというわけだ。
3つめのCI/CDは、GeneXusが持つ、コードの一元管理や自動テスト、コンテナ化の機能をフル活用して、アプリケーションの継続的な改善や短期間でのサービス提供を実現する取り組みだ。現在進めているところで、今後は、コンテナ化したアプリケーションが多種多様な製品や業務プロセスに展開されていく予定となっている。
スクラッチと比べ開発工数は最大2分の1に、トレーニング教材の活用で大規模な技術者育成を実現
2018年からスタートした共通化・標準化の取り組みは、デジタルイノベーション本部が設置され、2020年から中期事業計画がスタートしたことでより一層本格化し、現在では、年間200名以上がeラーニングを受講している。
「2005年に導入した当初はGeneXusを使って開発できる開発者は3人でした。それが2010年には20人へ、2023年には200人規模へと拡大しました。当初、GeneXusの教育は社内の有識者が業務の傍らで個別に行い、1日8時間で5日ほどかけていましたが、現在は、ジェネクサス・ジャパンが提供するeラーニングを活用し、全国のさまざまな組織への教育を行い、大規模な技術者育成を実現しています。受講者もまとまった時間を確保せずとも、eラーニングの受講期間のなかで柔軟に受講でき、また、実践的な内容を体系的に学習できるため好評です」(加藤氏)
GeneXusの導入効果はさまざまな面であらわれている。まずは開発工数の削減と開発の効率化だ。
「設計作業や実装作業が自動化されたほか、画面や処理などの機能も高速に開発できます。以前のようなスクラッチ開発と比べ工数は3~4割、最大5割を削減できています。また、豊富な外部連携機能により、パッケージツールやSaaSなどとの連携機能や共通化した部品の組み込みも効率的に実施できるようになりました。さらに、各拠点にGeneXusの開発者が増え、協力会社でもGeneXusを扱える担当者が増えてきたことで、特定の人の技術やスキルに頼らずに、拠点間で人材を融通しながら柔軟に開発を進めることができるようになっています」(石井氏)
GeneXusがもつ「IT技術の進化に対応する」という特徴により、技術トレンドに適応しやすくなったという効果も大きいという。
「自動テストやコンテナ化によるCI/CDの実現、クラウド連携、モバイルアプリへの対応など、GeneXus自体に機能が備わっているため、開発するアプリケーションにも新たな技術を素早く反映させることができます。また、すでに開発したアプリケーションもツール側で対応してくれるので陳腐化せず、時代にあわせて改善ができるのです」(加藤氏)
GeneXusを標準開発ツールに据え、DXと社内改革をさらに加速させていく
今後の活用について、石井氏はこう話す。
「共通化・標準化できていない領域はまだたくさんあり 、デジタルイノベーション本部として、それらの領域への取り組みを加速させていきます。そのための中核的なツールがGeneXusです。DXを推進するなかで、システムの共通化・標準化、機能の部品化をさらに進め、開発生産性をより一層上げていくつもりです」(石井氏)
また、加藤氏は、GeneXusの社内への普及に地道に取り組んできた経験をもとにこう述べる。
「三菱重工には、バリューチェーン全体で非常に多岐にわたる業務が存在します。こうした状況でも『GeneXusで作れないシステムはない』という感覚があります。製品や事業、業務プロセスの種類が多岐にわたるような組織でも、標準的な仕組みを作るためのツールとして十分に活用できているため、より多くの方にGeneXusを使ってほしいと思います」(加藤氏)
国内ファーストユーザーとしてGeneXusを導入し、20年にわたって活用しつづけている三菱重工。GeneXusを標準開発ツールに据え、DXと社内改革をさらに加速させていく。
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