企業は近年、劇的な変化にさらされている。人々の価値観や、それに伴う市場の変化はもちろんのこと、コロナ禍を受けて働き方も大きく変わりつつある。いま求められることは、「いつでも」「どこでも」「快適に」業務を行える多様性の実現だ。オフィスのあり方一つとっても、リモートワークの普及にともない、タッチダウンオフィスなど普段は無人となる拠点も増えていることから、社員が常駐しないオフィスのセキュリティと、その運用管理が重要なテーマとなる。本記事では、統合セキュリティプラットフォーム導入によって複数拠点を一つの基盤上で管理し、遠隔からの運用と防犯対策強化を実現したネットワンシステムズの取り組みに迫る。

  • (写真)インタビュイー集合写真

    (左から)ネットワンシステムズ株式会社
    管理本部 総務部 ファシリティチーム 阿部 崇之氏
    管理本部 総務部 ファシリティチーム エキスパート 谷口 勇氏
    セールスエンジニアリング本部 市場戦略部 第2チーム 清水 ケリー氏
    セールスエンジニアリング本部 市場戦略部 第2チーム エキスパート 佐々木 藏德氏

新イノベーション拠点開設を機に、セキュリティの強化と運用管理の健全化を目指す

世界の最先端技術を取り入れた情報インフラ構築と、それらに関連したサービスを提供するネットワンシステムズは、2023年5月、ワークプレイスとコミュニケーション・コラボレーション・シナジー創出に向けた新事業拠点「イノベーションセンター netone valley」(以下、netone valley)をオープンした。netone valley開設の目的について、プロジェクトマネージャーを務めた総務部の阿部 崇之氏が次のように語る。

「オフィスと物流倉庫を機能的に統合することに加えて、さまざまな部門が一つの場所で一緒に活動することを目的として開設しました。もともとの計画はコロナ前から始まっていたのですが、コロナ禍を機にさまざまな社会の変化やワークライフバランスの実現、多彩な交流を生み出せる施設となるべくコンセプトを再設計して開設にいたりました。オフィススペースだけでなく、社員同士が食事やスポーツを通して交流を深め、パートナーとの共創といった新たなチャレンジにつながる場を目指しています」(阿部氏)

  • (写真)インタビューに答える阿部氏

    管理本部 総務部 ファシリティチーム 阿部 崇之氏

netone valleyの開設以前、同社では複数拠点における物理的なセキュリティ運用管理に課題を感じていたという。監視カメラ等のフィジカルセキュリティ製品を主に担当する市場戦略部の佐々木 藏德氏が、その背景を説明する。

「弊社はもともとテレワークを推奨していたこともあり、コロナ禍の際にも早い段階で全従業員が在宅勤務にシフトできました。ただ、そのためオフィスの様子がガラッと変わり、各拠点に人がいない状況が当たり前になってしまったのです。そこで浮上したのが、それぞれの拠点のセキュリティをどう担保するか、そして“VMS(ビデオマネジメントシステム)”をどう運用するかという課題でした」(佐々木氏)

同社では10年以上前からVMSを導入しており、防犯・監視カメラの映像によって各拠点の運用管理を行っていた。しかし、防犯カメラ映像はネットワークから閲覧できたものの、管理サーバーそのものはカメラがある場所に設置する必要があった。当時の運用状況について、総務部の谷口 勇氏はこう振り返る。

「システムにトラブルが発生した際や、パッチ適用やアップデートを行うたびに運用担当社員が現地に赴かなければならず、負担となっていました。また、システム自体も常にウォッチする必要があり、管理負荷が大きく手間もかかっている状況でした」(谷口氏)

  • (写真)インタビューに答える谷口氏

    管理本部 総務部 ファシリティチーム エキスパート 谷口 勇氏

加えて、老朽化や故障でサーバーを入れ替えようとしても、当時のシステムではOSをバージョンアップできない、録画データを引き継げないといった問題もあった。

そのサーバーがコロナ禍のさなかに保守期間切れを迎え、入れ替えの必要が生じたため、そのタイミングで新システムへのリプレイスを検討し始めた。その頃、netone valley立ち上げプロジェクトも動き出していたことから、これに合わせて新システムを本番稼働するという計画を策定した。

多拠点の遠隔運用を高セキュリティで実現する「Genetec Security Center」

新たなシステムとして選定したのが、Genetec社のVMS「Genetec Security Center」(以下、Security Center)だ。ビデオ映像監視、入退室管理、ナンバープレート認識の3つの機能を一つのプラットフォームに統合した製品である。

  • (図)Genetec Security Centerの構成図

映像監視ではカメラのライブ監視はもちろん、録画による証跡保存、さらには各種センサーも統合しており、多様なデータの一元的な集積・管理が可能となっている。Security Centerについて、市場戦略部の清水 ケリー氏は次のように解説する。

「Security Centerが持つ最大の特徴は、従来は別々のシステムで実現していたフィジカルセキュリティの各機能が一つにまとまっている点です。個別にシステムを導入するとなると、それぞれのデータをチェックしたいとき、各システム担当者に連絡するという運用の手間が発生していたのですが、Security Centerであれば一つのプラットフォーム上で完結するため業務負荷の軽減につながります。また、インシデントが起きた際にも素早い対応が可能となります」(清水氏)

  • (写真)インタビューに答える清水氏

    セールスエンジニアリング本部 市場戦略部 第2チーム 清水 ケリー氏

さらにポイントとして挙げられるのが、システム自体をデータセンターの仮想基盤上に構築できるという点だ。

録画データはGenetec社のクラウドストレージに保存されるため、複数拠点の統合管理・運用が可能になり、メンテナンス性が格段に向上する。担当者が各拠点に足を運ぶ必要はなくなり、ネットワーク上で遠隔に一元的な運用管理ができるようになるわけだ。

また佐々木氏は、「弊社では社内データセンターのストレージを増設しないという会社方針が出ているのですが、データが増えた場合はクラウドストレージの容量増加で対応できる点もメリットに感じました」と話す。

加えて、管理画面は直感的でわかりやすいUIとなっており、自由にカスタマイズすることができる。システム全体の主要な情報を単一の画面に集約・表示が可能な点も、運用する上で大きな強みとなる。

  • (図)Genetec Security Centerの構成図②
  • (キャプチャ)Security Centerダッシュボード画面

    カスタマイズが自由なSecurity Centerダッシュボード画面

Security Centerは、同社グループ内のディストリビューターであるネットワンパートナーズが販売している製品であり、今回の導入にあたってネットワンシステムズがネットワンパートナーズから製品を購入し、構築は自社で行う形をとった。

構築は2021年末、1年半後に控えたnetone valley開設に向けスタートした。最初に共通の仮想基盤を作り、そこにリモートからカメラを登録していく作業が主であったため現地に行く必要はほとんどなく、スムーズにいったと総務部の谷口氏、阿部氏は声を合わせて評価する。まずはnetone valleyのシステム構築を終え、その後に他拠点にも水平展開していく形をとったが、Security Centerはカメラの汎用性が高く既存のものからほとんど入れ替えの必要がなかったため、こちらも作業は順調に進んだという。

  • (写真)インタビューに答える佐々木氏

    セールスエンジニアリング本部 市場戦略部 第2チーム エキスパート 佐々木 藏德氏

顧客の課題解決に加えて新たな活用方法への期待感も生まれる

ネットワンシステムズにおける、現時点でのSecurity Centerの活用状況について清水氏は話す。

「現在は映像監視とナンバープレート認識の機能を利用しています。netone valleyだけでなく他拠点のカメラも統合しているので、各拠点のライブの状況や録画の確認をどこにいても高いセキュリティを担保しながら一元的に行えるようになりました。入退室管理については今のところ使用していないのですが、あとから簡単に追加できるため、今後課題が生まれた場合は検討したいと思います」(清水氏)

  • (写真)ナンバープレート認識カメラ
  • (写真)ナンバープレート認識カメラ_寄り
  • ナンバープレート認識カメラ─netone valleyにて

  • (写真)映像監視カメラ
  • (写真)映像監視カメラ_寄り
  • 映像監視カメラ─netone valleyにて

Security Centerには防犯に関わる映像だけでなく、AIを搭載したカメラや、センサー等のデータを記録し、さらに記録したデータを各種システムと連携して利活用できるインターフェースが用意されている。こうしたSecurity Centerの発展性を受け、阿部氏は「セキュリティ以外の用途、例えばカメラ映像から施設内の混んでいる場所をAIで検知・解析・予測して、より快適な働き方につなげる、といった活用の可能性が見えてきたことにも手応えを感じています。netone valleyのコンセプトは“チャレンジする場”ですので、Security Centerを新たな価値づくりに活かしていきたいです」と今後の展望を述べた。

また清水氏も、「ビルの防犯以外にも、工場や野外などさまざまなシーンで生まれる課題の解決にアプローチできるのでは」と、顧客に提案する視点から新しいニーズが生まれる期待感を示した。そうした今後の展開も視野に入れつつ、最後に佐々木氏が語った。

「どの企業も時代の変化に合わせた、従業員が働きやすい環境・快適なオフィスを作りたいと考えています。ただ同時に、それを実現するにあたって運用の負荷やコストは可能な限り削減したいという思いもあるはずです。弊社における導入効果から、Security Centerはこの相反するテーマを両立できるソリューションであると認識できました。今後は弊社メンバー一人ひとりがnetone valleyで感じたこの経験と価値をお客様の課題解決へと活かしていきたいと考えています」(佐々木氏)

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