BIPROGYグループの総合ICTサービス企業であるユニアデックスは、20年以上にわたって運用してきたフィールドサポートシステムを「Salesforce Field Service」で刷新した。同社では2021年から、これまで個別に運用してきた業務システムのSalesforce移行を段階的に進めており、今回の「Salesforce Field Service」は、コールセンターシステム(Salesforce Service Cloud)、営業支援システム(Salesforce Sales Cloud)に続く3つ目の移行となる。ユニアデックスと、一貫して同社の構築パートナーを務めてきたテラスカイによるSalesforce導入までのストーリーを紐解いていく。
企業にとってITの戦略的な活用が不可欠となっている今、その基盤となるITインフラが担う役割と責任も大きなものになっている。そして、企業がITインフラに求める要件もまた、ビジネス環境の変化や技術の進化に合わせて変化し続けている。1997年に設立されたユニアデックスは、創業以来、多様な業種、業界向けに、ITインフラの設計、構築、運用、サポートを手がけている。顧客のニーズに最適なネットワーク、ハードウェア、ソフトウェアの組み合わせをマルチベンダーでアレンジし、構築から運用までをワンストップで提供できる点が同社の強みだ。
情報関連部門のトップとして指揮を執る執行役員 CIOの須貝達也氏は、「創立当時は小さな組織でしたが、現在では約2,500名の社員がおり、売上高ベースでBIPROGYグループ全体の約4割のビジネスを支える企業へと成長しています。セキュリティや次世代ネットワークをはじめ、オンプレミスからマルチクラウド環境に至るまで、お客様のニーズに合った商品、サポートサービスを幅広く提供できる体制を作り上げてきました」と話す。
ユニアデックスでは、中期経営計画2021-2023の中で「カスタマーサクセスの強化」を主要テーマのひとつに掲げている。この取り組みをシステム面から支える施策のひとつとして、会社設立当時に作られサイロ化が進んでいた業務システム群を、Salesforceプラットフォーム上に統合していこうとしている。
2021年には更改を控えたコールセンターシステムを「Salesforce Service Cloud」に、2022年には営業支援システムの「Salesforce Sales Cloud」による移行を完了。2023年には、保守サービスチームが利用するフィールドサポートシステムを「Salesforce Field Service」により刷新した。
Salesforceへの統合で業務システムの生み出す価値を高める
同社では長らく、独自開発の「FSS」(Field Support System)と呼ばれるシステムを利用してきた。開発から20年以上を経てさまざまな問題が生じていたという。
「FSSのリリースから年月が経ち、機能の建て増しが繰り返されたことで、システム内部を理解しているエンジニアがほとんどおらず、ブラックボックス化された状態にありました。将来的に、私たちのビジネスモデルを改善し続けていこうとすると、このままFSSを使い続けていては追従が難しい状況になることは明らかで、抜本的な刷新を必要としていました」
そう話すのは、DXシステム改革推進部の部長を務める高畑浩史氏である。高畑氏は、FSSから「Salesforce Field Service」への移行を中心的な立場でリードした人物だ。 「フィールドサービス管理という単体の機能だけを見れば他のパッケージを検討する選択肢があったかもしれません。しかし今回の一連の取り組みでは、これまで個別に存在していた業務システム群と蓄積されるデータを、Salesforceという単一のプラットフォーム上に統合することが、より大きな意味を持っていました」(高畑氏)
合わせて、同社では近年、事業の拡大とともに自社のエンジニアだけでなく、社外のビジネスパートナーの協力のもとでサポートサービスを提供していたが、旧システムは社内ネットワーク上に構築されていたため、必要な情報をパートナーへ共有するには人手による作業が必須だったという。
「Salesforce Field Serviceを採用することで、パートナーにもクラウド上の同じプラットフォームを社内メンバーと同じように使ってもらうことができます。タイムリーな情報をよりスムーズに共有できるようになるという点だけでも、価値のある変化になると期待していました」(高畑氏)
基幹システムと業務システムの“あるべき姿を描き、進めた移行作業
ユニアデックスでは、2021年10月よりフィールドサービス管理システムについての現状把握作業を実施。2022年3月からは、開発パートナーのテラスカイも参画し、Salesforce Field Serviceでのシステム構築に着手した。
Salesforceの導入にあたり、既存のビジネスプロセスに合わせてシステムをカスタマイズするのではなく、Salesforceの標準機能にビジネスプロセスを適応させる「Fit to Standard」(標準主義)の方針をとっている。標準主義には、ビジネスプロセスの標準化による業務効率の向上が見込め、Salesforce自体がアップデートした際の対応コストも低減できるというメリットがある。Salesforce Field Serviceの導入にあたって、その基本方針は踏襲された。
しかし、フィールドサービスと一口にいっても複数のビジネススキームが混在しており、そしてシステム側にも保守サポートや購買関係の機能が含まれている。一概的に標準化するのは、折り合いがつかない。20年来の事業成長とともに建て増しで使われてきたシステムの移行は容易ではなかったと、高畑氏は話す。
「今回のプロジェクトでは、フロントのエンジニアが使う機能だけをSalesforceに移行し、それ以外のものについては基幹システム側に統合したいと考えたため、その仕分けを行う必要がありました。機能の数が膨大で依存関係も複雑だったため、整理と議論にかなりの時間と手間がかかりました」(高畑氏)
新システムの要件定義には約6カ月を費やしたという。実際に開発を進めると見落としていた機能や想定していなかった問題が新たに発見され、その都度方針を決め直し、システムを修正するという作業を繰り返した。また、BIPROGY側でも基幹システムの刷新を進めており、仕様の追加や変更に応じて、フィールドサービス側も対応する必要があるため、プロジェクト推進は難易度を高めた。基幹システム刷新を進めるチームとの正確な情報共有や柔軟な修正対応が不可欠だったという。
「社内では“パンドラの箱を開けた”と言われるほど大変な作業でしたが、このタイミングだったからこそ、われわれがこの先使っていく基幹システムと業務システムの“あるべき姿”について、グランドデザインを描きながら作業を進めることができたように思います。機能の仕分けについても、『Aの機能は基幹システム』『Bの機能はSalesforce Field Service』といったように仕分けし、迷子になる機能を出さずに移行することができました。現時点では満点とは言えませんが、新しいシステムを使いながら改善していくことで、最終的な価値は高められると確信しています」(須貝氏)
同社では約10カ月の開発作業を経て、2023年6月にSalesforce Field Serviceによる新たなフィールドサービス管理システムをリリースした。
各部署が「お客様の現状を知る」ための統一された基盤が完成
同社のフィールドサービス業務は、日本全国に展開するフロントチームとパートナーによって支えられている。新システムへの移行にあたって、彼らの理解と協力は不可欠だった。同社では多数の説明会やマニュアル作成を通じてスムーズな移行を図った。
新システムの稼働開始から間もないこともあり、数値による具体的な成果が見えるのは少し先になるという。しかし、すでにいくつかの定性的な評価は聞こえてきている。例えば、エンジニアがスマートデバイスを使って現場で作業指示や地図を参照できるようになった点は評価が高いという。また、現場のチームがSalesforceのレポート機能を使い、自分たちの見やすい形式でデータを確認するといった使い方も始まっている。近日中には、これまで紙で作成していた作業報告書の電子化も実施される予定で、これが実現すれば報告業務の効率化、ペーパーレス化といった、より具体的な成果も期待できるという。
また、先に稼働を開始している「Salesforce Service Cloud」「Salesforce Sales Cloud」との連携もメリットを生んでいる。
「以前は、フィールドサービスと営業系のシステムがそれぞれ独立していたため、営業担当者は顧客情報を管理するのとは別のシステムでエンジニアに作業依頼を出していました。現在は、そのプロセスがSalesforce上で完結し、営業とエンジニアの双方が同じ情報を見て業務を進めることができるようになっています」(高畑氏)
同社ではSalesforce Field Serviceの導入を通じて、今後、年間数百人規模での業務効率化を実現することを目標に掲げている。
2021年から進められてきた業務システムのSalesforceプラットフォームへの統合は、今回の「Salesforce Field Service」によって3つ目のシステムとなった。須貝氏は「登山で言えば、ようやく5合目あたりに来たと感じている」という。
「グループで目標としている“カスタマーサクセス”の実現にあたっては、お客様の現状を正確に把握し、その情報に基づいて各部署が最適なアクションを実行することが必要です。しかし、これまでは“お客様の現状が分からない”ことが最大の課題でした。Salesforceへの業務システムの移行が進んだことで、お客様についての統一された情報を、各部署で参照するための基盤がようやく整いました。ただ、各部署がうまく連携して動くためには、その基盤をどのように使うかの全体的なイメージが不可欠です。組織として取り組むべき課題はまだ多くありますが、ようやく整った基盤をしっかり使い込んで、価値を高めていきたいと思っています」(須貝氏)
テラスカイの「ユーザー」と「Salesforce」への深い理解を高く評価
ユニアデックスのSalesforce導入にあたり、テラスカイは企画初期から一貫してパートナーを務めてきた。高畑氏は、長期のパートナーシップを通じたユーザー理解に基づく支援内容を高く評価しているという。
「テラスカイには、要件定義から構築、リリース、保守までのサポートをお願いしています。今回が3つ目のシステムだったこともあり、われわれの内情をよく理解した上で提案型の要件定義をしてもらえた点が大変助かりました。また、開発フェーズに入ってからも、基幹システム側と調整をしながら計画どおりに仕上げてくれました」(高畑氏)
また須貝氏は、Salesforceのアーキテクチャや技術に対する深い理解がテラスカイの強みであると評価した。
「Salesforceの標準的な仕組みを熟知していない企業が開発を行うと、どうしても余計なカスタマイズが増えてしまい、将来的な運用コストの増大にもつながります。Salesforceというプラットフォームに対する正しい理解を持ってカスタマイズの相談を受けられるというのも、テラスカイの大きな強みだと思います」(須貝氏)
同社では、導入したSalesforceの活用を、今後さらに強化していく計画だ。例えば、顧客接点の拡充に向けて、デジタルマーケティング分野におけるSalesforceの導入や、すでに導入しているSalesforce Experience Cloudのさらなる活用なども視野に入れているという。さらに、蓄積したデータの分析や、現在注目が高まっている生成AI機能「Salesforce Einstein AI」による業務プロセスの自動化、効率化などにもチャレンジしていく。
「今後もテラスカイには、Salesforceのアップデートや機能強化を常にキャッチアップし、ユーザーであるわれわれに情報を共有してほしいと思っています。そして、開発におけるガバナンスやマネジメントをどう確立していくかといった点で、テラスカイの実績に基づいた適切なサポートを得られることを期待しています」(須貝氏)
⇒ Salesforce Field Serviceの詳細はこちら
関連リンク
■ユニアデックス[PR]提供:テラスカイ