自治体の情報システムにおいて、いま最も注目を集めているものといえば、「ガバメントクラウド」といって過言ではないだろう。これは自治体の情報システムを標準化・共通化しようというものだが、2025年度までの対応が努力義務化されているだけでなく、スマート自治体の実現という観点からも前向きに取り組む自治体も多い。ここではガバメントクラウドによる最大のメリットである、全体最適のなかにある個別最適とは何か……、についてNECとUiPath、両社の連携から紐解いてみたい。
ガバメントクラウドの影に潜む業務課題
全国の地方自治体はこれまで、業務システムの開発や保守運用を個別に行ってきたため、提供するサービスの利便性や安全性にどうしてもバラつきが生じがちであった。このことは、住民サービスの質や住民情報の安全性にも関わるのに加えて、システムの維持・管理、制度改正対応等においても財政的・人的な負担が大きい。だからこそ、標準的なシステムを用いて全国一定以上の水準でサービスレベルやセキュリティ、業務効率性を確保することは重要課題となっている。
とりわけ2040年には全国の地方自治体のうち半分の存続が難しくなるとの予測もあり、国としてもこの「2040年問題」に備え、人口減少・超高齢社会における行政経営改革の方向性を打ち出している。
国では、児童手当、子ども・子育て支援、戸籍の附票、印鑑登録など標準化対象の20の業務に関する地方自治体の情報システムについて、2025年度までに各自治体が政府共通のクラウドサービスの利用環境である『ガバメントクラウド』上で構築された標準準拠システムを利用する形態への移行を明確に打ち出している。
すべての地方自治体にとって標準準拠システムへの移行が必須事項となっているわけだが、ここで注意したいのが、ガバメントクラウドなど各種システムの標準化により全体最適の恩恵が受けられる一方で、移行に伴う課題も存在するということだ。
これまでは各自治体がそれぞれの業務ニーズに合わせて独自のルールで運用を行っていたが、今回の標準化によって多くの見直しが必要となってしまう。ただでさえ人手不足が深刻化している地方自治体にとって、運用見直しのための工数増加は、さらなるリソースの逼迫を招きかねない。
「今回の標準準拠システムへの移行で各自治体にとって重要となるのが、いかに現場の混乱を最小限に抑え、市民へのサービス提供を継続できるかどうかです。こうした運用検討部分で頭を抱えている自治体も少なくないというのが現状です」(NEC 塚田氏)
あらゆる業務シーンに対応する、自治体向け住民情報総合パッケージ「COKAS-i」
標準準拠システムへの移行に向けて、従来のシステムの仕様の見直しにどのように取り組んでいくかがカギとなる。こうした背景を受け、各ベンダーが動き始めている。
地方自治体向けにNECが独自に設計・開発した自治体向け住民情報総合パッケージ「COKAS-i(コーカスアイ)」は、総務省が公開した住民記録システムの標準仕様に完全準拠するなど、全国で約100団体が導入している。
中小規模自治体から政令指定都市まで、標準化に対応したシステムへのスムーズな移行が可能であり、オンライン処理機能はもちろん、自治体が有する大量データの一括処理を可能にするバッチ処理機能を備えるなど、自治体職員にとって使いやすい機能が豊富に用意されている。
NECはこれまで40年以上にわたり住民情報システムの提供を続けてきており、その歴史の中で、さまざまな自治体のニーズに合わせて積極的に製品開発を行い、システムのブラッシュアップを繰り返してきた。
「自治体様の業務に精通したスタッフが全国におり、蓄積されたノウハウやお客様の運用に対する深い理解を生かし、標準仕様後の運用提案も行えることが当社の強みであると考えています。市場環境の変化も鑑みつつ、お客様それぞれの課題に応じた解決策のご提案が可能です」(NEC 塚田氏)
COKAS-iについては標準化に合わせたパッケージシステムの刷新をまさに進めている状況だが、今年に入りすでに数団体で移行が完了し、本稼働が始まったという。
すでに標準化への移行が完了しているユーザーからの声として、NEC 森氏は「従来動いていたパッケージシステムを標準仕様に合わせることが主目的でしたが、移行後も従来と変わらないシステムのご評価を頂いております」と述べた。
シェアの大きいCOKAS-iを導入することで、より標準化に則ったシステム導入が実現できるわけだが、前段で記した通り標準化によって生じる課題として、自治体ごとの個別最適のニーズが存在することが挙げられる。
「国の標準仕様に則って全体最適を図りながらも、それぞれの自治体や部署ならではの業務のあり方を踏まえた“かゆいところに手が届く”個別最適の自動化をどう実現していくかが、各自治体の腕の見せどころともいえるでしょう」(NEC 塚田氏)
UiPathとの連携で、かゆいところに手が届く自動化が可能に
NECは地方自治体の情報システムの全体最適化&標準化と、個別最適化&自動化の双方を効果的に組み合わせるべく、自動化プラットフォーム「UiPath」とCOKAS-iの連携を強めている。
この背景についてNEC 森氏は、「標準準拠システムへ切り替わることで、運用上必要なものの、システムでは対応できないといった部分も出てくるはずです。そうした課題に対してのアプローチとしてUiPathがベストソリューションになると思い、今回の取り組みをお願いしました」と明らかにした。
UiPathはRPAの技術を基盤とした世界的な自動化プラットフォームだが、他の一般的なRPA製品とは一線を画する特徴を備えている。自動化の実行に際し、他社のような座標や画像の認識ではなく、画面の構造を正確に認識(オブジェクト認識)できるため、対抗システムやWebサイトの画面構成が多少変更されたとしても影響を受けにくく、環境の変化に強いのである。
UiPath 湯浅氏は、NECとの取り組みによって実現できる世界観への期待を語る。
「自治体という組織の特性上、自動化のためのナレッジが貯まりづらい傾向にあります。COKAS-iのユーザー同士でワークフローや課題を共有できることは大きな強みであり、そういった地域属性などの垣根を超えたコミュニティを作ることで、ガバメントクラウドにおける運用課題も乗り越えていけるのではないかと思っています」(UiPath 湯浅氏)
自治体職員のウェルビーイング実現を目指して
今後NECでは、UiPathとのパートナーシップのもと、それぞれの地方自治体ごとのニーズに向き合いながら、「COKAS-i」をはじめとした最適なソリューションを提供していく構えだ。NEC 塚田氏とUiPath 松本氏は、今回の標準準拠システムへの移行に対する意気込みを語る。
「自治体業務の標準化は、将来の人口減への対応策の一つとして、ネガティブな印象とともに受け止められてしまいがちです。しかし、各自治体の職員が本来やるべき業務に前向きに取り組める環境を実現するための施策ととらえ、“デジタルの力で明るい未来を”という信念のもと、自治体の皆さまと一緒にその未来に向けて取り組んでいきたいと考えています」(NEC 塚田氏)
「今後、自治体職員の皆さまがよりウェルビーイングな働き方を実現することが、自治体業務の標準化の本質であると考えています。共通化と最適化、そこで必要となる自動化を叶えるためにも、ぜひCOKAS-iやUiPathを活用いただきたいです」(UiPath 松本氏)
国の方針が示すとおり、社会問題への早急かつ適切な対応という点において自治体業務の標準化が実現する全体最適は必要不可欠なものである。しかし、実際に日々の業務を行う自治体職員にとっては、地域の特色、部門ごとの業務内容により、個別最適化された業務環境が必要なことも紛れもない事実である。NECのCOKAS-iとUiPathのコンビネーションは、全体最適のなかでこそ必要な、個別最適を実現するために最適なソリューションといえるだろう。
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