ビジネスのデジタル化が進む中、ITシステムに対する重要性はますます高まっている。なかでも注目度が増しているのがアプリ開発を支えるITインフラだ。ビジネスサービスを展開するうえで、その中核となるアプリケーションの重要性は言うまでもない。ただ、アプリ開発を支えるITインフラの重要性は見落とされがちだ。そのせいで、ITインフラがビジネスの足かせになることも多い。

企業はこれからのITインフラをどう捉え、どんな取り組みを進めていけばよいのか。今回、ニュータニックス・ジャパン(Nutanix)でアドバイザリーソリューションアーキテクトを務める吉瀬 淳一氏と、SCSK サーバ・ストレージ部に所属しながら、プラットフォームエンジニアリングの普及を進めている浅沼 伸行氏という2人のプロフェッショナルに集まってもらい、これからのアプリ開発に求められるITインフラのあるべき姿を語っていただいた。

  • (写真)集合写真

    (左)ニュータニックス・ジャパン合同会社 アドバイザリーソリューションアーキテクト吉瀬 淳一氏、(右)SCSK株式会社 プロダクト・サービス事業グループ ITインフラ・ソフトウェア事業本部 サーバ・ストレージ部 副部長 営業第一課長 浅沼 伸行氏

Nutanix=HCIは誤解!? クラウドネイティブに最適な基盤としてのNutanix

──まずはおふたりの経歴やミッションについてお聞かせいただけますか。

吉瀬氏:これまでCloud FoundryやKubernetesなどを中心に、インフラやクラウドネイティブなアプリ開発に関するソリューション開発や提案、情報発信に関わってきました。Nutanixは今、HCI(ハイパーコンバージドインフラ)からハイブリッドマルチクラウドカンパニーに軸足を移しています。私は今年Nutanixに入社して、クラウドネイティブやAI(人工知能)といった新しいワークロードにフォーカスしたソリューションアーキテクトとして活動しています。

浅沼氏:吉瀬さんと直接お会いするのは初めてですが、エンジニア界隈では有名な方なので、よく存じあげています。

SCSKの強みは、約8000社のお客様基盤を持ち、製造、流通、小売、通信など業種を問わず、お客様と近い距離感で、アプリ開発から運用までのサービスを一気通貫で提供できることです。その中で、私はSCSKで海外ベンダーのハードウェア提供を行うサーバ・ストレージ部に所属しています。サーバ・ストレージ部では、以前からHPE社やデル社のOEMとしてのNutanix製品を取り扱っておりました。さらに今年からサーバ・ストレージ部にRed Hatの部隊も加わり、ハードウェアだけでなくソリューションとしてお客様に新しい付加価値を提供できる体制になりました。

──NutanixはHCIでITインフラのあり方を一新しました。何が価値だったのか改めて解説いただけますか。

吉瀬氏:ITインフラにスケーラビリティとアジリティをもたらしました。それを実現したのが、分散ストレージや仮想化技術で構成されるHCIです。ただ、注目していただきたいのは、Nutanixはそもそも最初から、今でいうクラウドネイティブを目指していたということです。実際、Nutanixは、Kubernetesやコンテナアプリケーションを動かすのに最適な基盤として、スケーラビリティやアジリティを備えています。また、ストレージサービスをKubernetesのAPIからコントロールしたり、それをオンプレとパブリッククラウドをまたがったかたちで実現したりできます。

  • (写真)吉瀬氏

    ニュータニックス・ジャパン合同会社 アドバイザリーソリューションアーキテクト吉瀬 淳一氏

浅沼氏:今のクラウドネイティブ技術を最初から持っていたのがNutanixということですよね。HCIは、VDI(仮想デスクトップ)に最適な基盤として普及した経緯もあり、そのイメージのまま固まってしまっているお客様も数多くいらっしゃいます。しかし、実際は、コンテナやマイクロサービスなど、クラウドネイティブなワークロードに最適な基盤でもあります。お客様の間ではNutanixに対するイメージの見直しが始まっているところです。

人手不足、運用体制、マインドの課題を解決しうる、SCSKの「NebulaShift」とは

──DX推進などでクラウドネイティブに取り組む企業は増えていますが、課題も多いようですね。

浅沼氏:はい。まずは人手不足です。伝統的なJavaでの開発がまだ主流で、クラウドネイティブに取り組むエンジニアは増えてはきているものの、まだ数が少ない。スキルやノウハウ、運用体制がないことも課題です。ニューオンプレのように、オンプレ環境をパブリッククラウドのように動かす技術やシステムも登場していますが、そのインフラを誰がどう面倒を見るかははっきりしていません。意識の問題もあります。クラウドネイティブにそもそも敷居の高さを感じてしまっている。これは、お客様だけでなく、われわれSCSK自身が抱えている課題でもあります。

吉瀬氏:SCSKでは、浅沼さんのチームが中心となってクラウドネイティブサービスの企画を進めているそうですね。

浅沼氏:はい。部全体の取り組みとして「NebulaShift」という名称で、お客様向けにアプリ開発に関連するコンサルティングや、ミドルウェアまでを含めてサブスクリプション型のマネージドサービスを提供することに取り組んでいます。クラウドネイティブはお客様の案件で少しずつ活用されはじめてはいますが、積極的に利用するにはハードルが高いと感じるエンジニアも多いです。そこで社内でもっと気軽に利用できる環境が必要だということで、アジャイル開発やプラットフォームエンジニアリングの社内啓蒙を目的に、Nutanixの技術を活用した検証環境を提供予定です。

吉瀬氏:いま浅沼さんが指摘した人手不足や運用体制、マインドの課題は、レガシーシステムをクラウド化する際に直面するものだと思います。加えて、課題になるのは、開発者にとってのツールの使いやすさや学びの環境です。CI/CDやビルドのツールチェーン、オブザーバビリティなどを実現していこうとすると、オンプレよりもパブリッククラウドのほうがやりやすい。するとわざわざオンプレを使おうとはしなくなる。オンプレとクラウドの間にある分断、ギャップをどう埋めるかがポイントです。このままギャップが大きくなり続けると、インフラ管理の仕事に魅力を感じなくなり、インフラエンジニアを志望する若手も減ってしまうでしょう。

浅沼氏:実際、ツールによる自動化で急場をしのいでいる面は感じています。運用自動化からCI/CDへ、監視からオブザーバリティへなど、ITインフラのあり方を見直していく必要があると思っています。NebulaShiftは、その1つとして取り組んでいるものです。

ITインフラのあるべき姿を目指して 「プラットフォームエンジニアリング」に取り組む

──オンプレとクラウドのギャップという話がありました。この課題をどう解決していけばよいのでしょうか。

吉瀬氏:有効なアプローチの1つとして提案しているのがプラットフォームエンジニアリングです。ITインフラをインフラとして捉えるのではなくプラットフォームとして捉え、アプリケーションの開発を支えるプラットフォームをどう作っていけばよいかを突き詰めていく。このアプローチを不特定多数に行ってきたものがパブリッククラウドです。ただ、例えばAWSのサービスすべてをオンプレミスに持つ必要はありませんよね。ユーザーにとって共通で必要になる機能を共通化し、個別に必要なものはアドオンで提供する。そうしたプラットフォームの考え方を適用していくのです。SCSKさんが取り組むNebulaShiftもプラットフォームエンジニアリングの1つの姿です。

浅沼氏:実際、インフラ技術は成熟してきています。Kubernetesを使ってパブリッククラウドとオンプレミスで同じ環境を作り、ニューオンプレとして提供することもできるようになっています。同じ環境で同じようにCI/CDやDevOpsのツールチェーン、オブザーバビリティ、セキュリティなどが運用できるようになれば、ギャップは小さくなっていきます。

吉瀬氏:そうですね。Kubernetesはアプリとインフラの共通言語です。APIを通してアプリをデプロイする人がインフラをコントロールしたり、インフラ側からアプリのオブザーブをしたりできます。今はKubernetesを核として周辺の部品を組み合わせやすくなっています。データについてもNutanixの分散ストレージを活用すれば、クラウドと同じようにスケールできます。ギャップを埋めるテクノロジーが揃ってきていて、あとはそれをどう組み合わせてサービスするか。それがプラットフォームエンジニアリングです。

浅沼氏:Nutanixさんは、そういうバックエンドの仕組みをすでに提供しています。Kubernetesのデプロイ/ライフサイクル管理の自動化はもちろん、オブジェクトストレージなどのストレージサービス、データベースを提供するDatabase as a Service、統合管理サービス、セキュリティ管理サービスもあります。開発に関わるミドルウェアもNutanixと相性の良いRed Hat OpenShiftなどを組み込むことで対応できます。NebulaShiftの取り組みでも実感したことですが、技術者向けポータルやプラットフォームを作りやすいのです。

若手エンジニアを惹きつける「超大規模なインフラを管理する魅力」

──SCSKさんはユーザーとしてNutanixを活用していることに加え、パートナーとしてお客様にNutanixを提供する立場でもあります。両社がタッグを組むことで、エンドユーザーにはどんなメリットがもたらされますか。

  • (写真)浅沼氏

    SCSK株式会社 プロダクト・サービス事業グループ ITインフラ・ソフトウェア事業本部 サーバ・ストレージ部 副部長 営業第一課長 浅沼 伸行氏

浅沼氏:使いたい機能を柔軟に組み合わせることができることは大きなメリットです。例えば、生成系AIの取り組みをしたいと思ったら、それに適したソリューションが提供されています。

吉瀬氏:9月に発表した「Nutanix GPT-in-a-Box」ですね。Nutanixでストレージ機能とGPUをサポートして、そこにフレームワークを乗せればすぐにAIの開発が始められます。発表したのは最近ですが、もともとNutanixが持っていた機能を使うことで実現したものです。あとは、この上で、SCSKさんのインテグレーション力やコンサルティング力、サポート力を活用して取り組みを進めていただければ、大きな価値が提供できると考えています。

──課題にあがっていた人手不足や運用体制、マインドセットの解消にも役立ちそうです。

吉瀬氏:NutanixとSCSKの技術やノウハウを活用することで、基本的にパブリッククラウドでできることはオンプレミスでできるようになります。プラットフォームエンジニアリングを推進することで、少ない人数で運用を回すことができるようになり、コンテナやマイクロサービスなどのクラウドネイティブ開発や、CI/CD、オブザーバリティなどの運用スタイルへの変革にもつながります。Nutanixが目指すのは、クラウドかオンプレかといった場所を問わずにデータを活用できるようにすることです。プラットフォームエンジニアリングを推進することで、開発をパブリッククラウドで行い、運用をオンプレで行うといったことがしやすくなります。

浅沼氏:インフラエンジニアとしての楽しさ、面白さを体感できるプラットフォームでもあると思っています。多くのお客様の意識は、システムをクラウドへリフト&シフトしようというよりも、オンプレとクラウドをうまく使い分けようという意識に変わってきています。そのなかで、インフラエンジニアの従来から持つ知識を生かしながら、クラウドネイティブな知識を習得し、これまでにない価値を提供できるようになると思います。若手エンジニアがより楽しく仕事ができるようになります。

吉瀬氏:自分でコードを書いて自分で超大規模なインフラを管理することは若手エンジニアにとって大きな魅力ですね。

──最後にメッセージをいただけますか。

浅沼氏:今後社内向けには、自動販売機のようにボタンを押すだけでさまざまな機能が利用できるサービスを提供していきます。お客様に対してはこうした社内実践で得たノウハウも活用しつつ、サービスを拡充していく予定です。クラウド開発や新しい運用を検証できる施設や環境を提供することにも力を入れていきます。

吉瀬氏:Nutanixが提供するのはオープンなハイブリッド、マルチクラウド環境です。ベンダーロックインもありませんし、クラウドロックインからも解放されます。いま、クラウドネイティブに代表されように開発のあり方が大きく変わってきています。その変化を楽しみながら、ぜひインフラが変革をリードしていってください。

──ありがとうございました。

  • (写真)対談風景

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