2023年12月18日、米国ではすでに発表になったためご存じの方が多いと思うが、日本においてもいよいよインテルの最新プラットフォーム、コードネーム「Meteor Lake」が発表された。インテル曰く、40年に一度の大変革というこのプロセッサーの内容はどのようなものか、インテルが直前に配布した資料と日本で開催された発表会、そして独自に行った取材から紐解いていきたい。
2023年の締めくくりとなる発表会
2023年12月18日、インテルは今年最後となる製品発表会を開催した。会場となった帝国ホテルにはマスコミ関係者を中心に大勢の人々が集まり、インテルの発表を見守った。
前々の噂から「40年に一度の大変革」とされていただけあり、壇上にはインテル株式会社 代表取締役社長 鈴木 国正氏をはじめ、執行役員 経営戦略室長 大野 誠氏、執行役員 技術本部長 町田 奈穂氏、技術本部 部長 工学博士 安生 健一朗氏らが登壇するなど、実に気合の入った布陣で臨んだ発表会となった。
冒頭、壇上に上がったのは鈴木氏。インテルが今年に入ってから使うようになった「Siliconomy(シリコノミー)」という造語を引き合いに半導体市場の成長が著しいことを伝える一方で、日本のデジタル化が特に人材の面で大きく後れを取っていることを示唆、それに伴いインテルが盛んにデジタル人材育成に力を入れていることや、世界をリードするインテルの製造力について語った。
続いて登壇した大野氏はAIが多くの人々に変革をもたらすと語り、インテルが掲げる「AI Everywhere」の実現のためのAIコンティニュアムの構想を説明。インテルの戦略がそれに基づいたものだとする一方で、近い将来、AIがPCやエッジで活用されることを示唆した。同時にすでに多くのAIが機能として実装されていることについても触れ、その延長線上に来る、インテルの最新テクノロジーへの期待を語った。
もちろん、そのテクノロジーとは今回発表となった「インテル Core Ultra プロセッサー(Meteor Lake)」および「第5世代 インテル Xeon スケーラブル・プロセッサー(Emerald Rapids)」となる。
この言葉と共に次にマイクを取ったのは町田氏。同氏は「インテル7」「インテル4」そして「インテル3」「インテル20A」「インテル18A」と続く、4年のプロセスノード・ロードマップを順調に消化していることを説明。さらにエンタープライズ向けの製品ロードマップを紹介し、前モデル、前々モデルとのベンチマーク比較を発表しつつ、現在の最新モデルとなるEmerald Rapidsの優位性を解説した。
また、現在提供中である「インテル Gaudi アクセラレーター」「インテル Gaudi 2 アクセラレーター」に続いて、2024年には「インテル Gaudi 3 アクセラレーター」がリリースされると発表。現製品と比較し、大幅に演算処理が向上すると語った。
続いて話題はコンシューマ向け製品へと移行、壇上に上がった安生氏はいよいよ「Meteor Lake」について語った。詳細は後述するが、マルチスレッド時におけるパフォーマンスの優位性や電力効率の良さ、AIが自在にGPU、NPU、CPUのリソースを使い分けることができる柔軟なプラットフォームであることも解説。安生氏は様々数値やベンチマークによる比較を公表し、Meteor LakeがAIアプリケーションにおいて、大きくパフォーマンスが向上していることをアピール。AI PCのさらなる普及のための取り組みとしてインテル AI PC ガーデンなどのコミュニティや、OpenVINO™ ツールキットなどの開発ツールを通して、AIアプリケーションの開発者育成にも力を入れていくと語った。
発表会の概要は以上だが、今回の発表の中でも特にMeteor Lakeについてもっと話が聞きたくなった筆者はそのままインテルに取材のお願いをしたところ、快く受け入れていただいた。その際、面白い話をたくさん聞くことができたので、ここで紹介したいと思う。
コンセプトは「インテル、AI入ってる。」
この日、40年に一度の大変革と称して紹介されたインテルの新プロセッサー「Meteor Lake」。大幅に刷新されたアーキテクチャーはもちろんだが、その後に聞いた話でもっとも気になったのは関係者が口々にする「インテル、AI入ってる。」という言葉だ。
ここでいうAIは文字通り、「Artificial Intelligence」の意味と、日本語の「愛」というメッセージをかけた、ふたつの意味を持つ言葉となっている。そもそものグローバルコンセプトは「AI Everywhere」となっているので、つまりは人間にとってAIがより身近なものとなり、お互いを強く結びつけるためのテクノロジーが、「Meteor Lake」であると解釈することができる。
これには、インテルがこれまでに行ってきた施策を見ても納得がいく部分がある。かつて我々は、AIは勝手にクラウドから降ってくるものと捉えていたと思う。だがインテルは、今後訪れるであろうAIのパーソナル化を見据え、AIアプリケーション開発者向けの「AI PC Garden」というコミュニティを開設している。また、AIアプリケーションの開発を手軽に始められる、「OpenVINO™ツールキット」という推論アプリケーション開発ツールを無償提供するなど、まさに「インテル、AI入ってる。」を体現しているのではないだろうか。
本記事の後半でMeteor Lakeについては詳しく紹介するが、取材の際にインテルの担当者は、「Meteor Lakeの性能を引き出すためには、OpenVINO™でアプリケーション開発されたものが最適で、開発者には是非、OpenVINO™を使ってAIアプリケーション開発を行って欲しい。」と、意気込みを話してくれた。
AI PC GardenDiscord コミュニティはこちら OpenVINO™ツールキット
についての資料ダウンロードはこちら
これによって見えてくるのは、より身近な場所、例えば自分が所有するPCの中でAIが直接推論する世界がやってくることを期待させる。ただし、その機能が備わっていても、肝心のAIアプリケーションが無ければ意味をなさないことになる。そのため、インテルはAI開発者を全力でバックアップしているのだ。
インテルの発表会を聞いて、筆者が一番感じた部分はまさにそこで、今回の「Meteor Lake」にはそういった希望が詰まった、新たな世代の始まりという意味があると考えることができる。そういったコンセプトを汲み取っていくと、今回のプロセッサーが40年に一度の大変革という言葉通りの期待に満ちた製品であることも理解できる。我々が本当の意味でAIと直接的に関わり、それによってより良い生活が送れるようになる。そんな明るい未来を表現したいがために、インテルは「AI=愛」としたかったのだろう。
少し熱くなってしまったが、それだけインテルの期待が大きいMeteor Lakeについて、次項では紹介していこう。
Meteor Lakeのすべてが明らかに
ここで再度、Metero Lakeのコンセプトを見ていこう。当日のスライドのなかに「AIをPCに導入」というものがあった。これは、今まではさまざまな機能の拡張にとどまっていたAIが、PCに入ることでよりAI活用の幅を広げていくことができる、という意味だろう。
つまり、今まではクラウド上にあるAIサービスにこちらからアクセスして、結果だけを持ち帰るという手法がメインだった仕組みを、今後はクラウドだけではなくクライアント、そしてエッジの部分でも推論を行う仕組みに変化していくということだ。
以前の仕組みでは、クラウドの利用料金やリソースの遅延などがあり、開発企業にも負担が大きく、AI事業の成長や利活用する側にもデメリットが存在していた。そうなってしまった背景として、そもそもPCにAIを動かすだけの力がなかったことが挙げられるが、そのパフォーマンスをPCが得ることができれば話は違ってくる。先ほどから触れているように、Meteor Lakeは自分のPC上でAIを直接動かすことを前提に設計されたプロセッサーであり、Meteor Lakeを搭載したPCはいわば”AI PC”と言えるだろう。
では、インテルが考えるAI PCの定義とは何だろうか。これに関しては安生氏が発表会内で答えてくれた。
「インテルが考えるAI PCとは、ハードウェアとして、AI処理に特化したプロセッサーであるNPU (Neural Processing Unit)を搭載しているだけではなく、その目的に合わせてGPUやCPUもAI処理に活用し、プラットフォームとして最大のAI処理を実行できるPCとしています。それに伴い、ソフトウェアをGPU/CPU/NPUで使い分ける、または同時に実行するため、コードを書き換えることなく実現するのが、我々インテルが提供するOpenVINO™と呼ばれるツールキットとなります。」(安生氏)
NPUの搭載により大幅に刷新されたアーキテクチャー
ここまでの話のなかで、Meteor LakeというのはAIをクライアントPC上で動かすことを前提に設計されている、まったく新しいプロセッサーであるということは理解いただけたと思う。ここからは、そのインテル® Core™ Ultra プロセッサーについて紹介していく。
AIの動作を前提としたその設計思想は、今回用意された「タイル」というアーキテクチャーからも見て取れる。グラフィックス・タイル、SoCタイル、コンピューティングタイル、IOタイルと大きく4つのタイルがあり、それぞれに専用の役割と設計がなされているのが特徴だ。
ちなみにこの配置をみて違和感を覚える読者もいると思う。これまではグラフィックスとコンピューティングの各機能は密接に連携している必要があるため、隣り合っているべきと考えるのが自然だった。しかし、今回新たな3Dパッケージング技術の「Foveros」によって、高密度で電力効率がよくレイテンシーが極端に低いベースの上にタイルが乗ることで、距離に関係なく、スムーズでタイムラグのないデータアクセスができる環境となっている。そのため、これまでの常識にとらわれない、新たな意図を持ったタイル設計が可能になったといえる。
今回のタイル・アーキテクチャの中でも特に注目したいのはやはりSoCタイルであり、AI PC実現のための要ともいえるAIエンジン内臓のNPUを搭載している。そのほか、DDRメモリコントローラーとDDRインターフェイスを持っているほか、低電圧アイランド E-core、インテルNPU、メディアエンジン、Wi-Fiインターフェイス、ディスプレイ、ディスプレイインターフェイスなどが搭載されている。
AIコンピューティングの要ともいえるNPUを持つことができたのがこのアーキテクチャーあってこそのものだということもわかるが、同時にこれまではグラフィックスに振り分けられていた機能や、ハイブリッド・アーキテクチャーで使うべきE-coreまでもがここに設定されているもの特長といえる。
コンピューティングタイルに関しては、これまでインテルが開発を続けてきたプロセッサーのほぼすべてがここにあるような形になる。Meteor Lakeでは、パフォーマンスはRaptor Lakeを維持しつつ、より低電力で動作するような設計がなされており、そういった効率重視の設計は新しくなった3D パフォーマンス・ハイブリッド・アーキテクチャにも表れている。
これまで各演算はE-core、P-coreに振り分けられていたが、今回からは先ほど紹介したSoCタイルに搭載された低電圧アイランドE-coreが加わることで“3D”という表現そのままに進化を遂げているのだ。
大まかな流れとして、まずはSoCタイルの低電圧アイランド E-coreに演算を割り当て、それがすぐに100%に届くような場合は、コンピューティングタイルを起動してE-coreにまずやらせてみる。ダメだったらP-Coreを使うといった順になるのだという。これにより、不要な時にはコンピューティングタイルの電力供給が停止できる時間を長くすることができ、結果的にPCの電力消費は抑えられるというメカニズムになる。
また、グラフィックスも大幅にパワーアップしており、その実力は製品版のインテルArcグラフィックスと同等となっている。
さらに今回からはXeコアという単位が導入され、これをEU換算すると概ね16EUとなるという。EUは今回128のベクターエンジン、すなわち「VE」という形になり、96EUから128VEに増えているので約33%増加。さらに、ジオメトリパイプラインのユニットは2倍、ハードウェアサンプラーについては33%増え、ピクセルバックエンドについても33%増えている。
それらに加え、新たにハードウェアのレイトレーシングユニットを8機搭載。全てトータルすると、DirectX12 Ultimateに準拠したハードウェアになっているという。また忘れられがちではあるが、ロイヤリティフリーのAV1エンコードが内蔵されているという点も見逃せない。AV1はh.265に比べて動画の圧縮効率が非常に高く、これにより、効率よく動画のネットワークトラフィックが使われる世界がくることも想定できる。
最後に付け加えたいのはインテルUnison2で、モバイルデバイスとノートPCを連携させる際に、拡張スクリーンが使えるようになっていることだ。例えばiPad、もしくはAndroidタブレット、スマートフォンなどとPCを連携させれば、デュアルディスプレイとして利用することが可能になる。これは現実的にすぐにでも活用できる正統進化といえるテクノロジーだ。
発表会内でもMeteor Lakeの実力は明らかに
ここで、発表会内で紹介されたMeteor Lakeのデモンストレーションの一例を紹介しておこう。取り上げられたのは入力したキーワードに合うイラストをAIに生成させるStable Diffusionだ。
また、会場では「Intel4」で作られた実際のインテル Core Ultra プロセッサーも展示されていた。
こうして、機能を見ていくと正統進化をしている部分と、AI時代を見据えた新機能がうまく融合しているプロセッサーであると感じる。AIがより身近になることで、私たちの生活は非常に豊かになるはずだ。その礎となるのはやはりパーソナルコンピューターであり、それをバックグラウンドで演出するのはインテルのプロセッサーであることがよくわかる発表会だった。今後、さまざまなベンダーからMeteor Lake搭載のAI PCが発売されていくだろう。
インテルの積極的なAI開発事業サポートにより、今後様々なサービスが手元で感じられる日が来ることは間違いなく、その時のためにMeteor Lakeがどのような役割を果たしてくれるのか、今後の興味も尽きない。2024年度もインテルの活躍に期待したいと思う。
Meteor Lake搭載! AI PCを各社続々と発売予定!
最後に、Meteor Lakeを搭載したAI PCの発売情報が入ってきているので紹介したい。
Acer Japan
製品名:Swift Go SFG14-72-F73Y/FE/
Intel® AI Boost専用エンジンを内蔵、最新のIntel® Core™ Ultra 7 プロセッサーを搭載したモバイルノートパソコン Swift Go!独自の冷却技術を搭載しているのでクリエイティブな用途も快適。360万画素のQHD Webカメラや、美しい2.2K高解像度14インチIPSパネルを搭載。最大100Wの急速充電に対応、長時間駆動バッテリーを採用しているのでモバイルに最適です。
発売日:12/15(金)
ASUS JAPAN株式会社
製品名:ASUS Zenbook 14 OLED UX3405MA
薄型軽量を極めたポータブル設計に、インテル?? Core™ Ultra プロセッサー、75Whバッテリーを搭載した14型モバイルノートPC。リアルで鮮やかなビジュアル体験を実現する有機ELディスプレイ、Thunderbolt™ 4をはじめとする各種高速インターフェイス、AI ノイズキャンセリング機能などを備え、次世代のPC体験をお楽しみいただけます。
発売日:2024年2月下旬以降 発売予定
デル・テクノロジーズ 株式会社
製品名:New Inspiron 13
心揺さぶる映像体験を。美しいビジュアルと驚異的なサウンドを備えた、持ち運びに便利な軽量の13インチ ノートパソコン。最新のインテル® Core™ Ultraプロセッサーを搭載。
発売日:12/15(金)
Lenovo
製品名: YOGA Pro 7i
LenovoからもYogaシリーズで発売予定!
発売日:未定
エムエスアイコンピュータージャパン
製品名:Prestige 16 AI Evo B1Mシリーズ (Prestige-16-AI-Evo-B1MG-1001JP)
薄型軽量を極めたポータブル設計に、インテル?? Core™ Ultra プロセッサー、75Whバッテリーを搭載した14型モバイルノートPC。リアルで鮮やかなビジュアル体験を実現する有機ELディスプレイ、Thunderbolt™ 4をはじめとする各種高速インターフェイス、AI ノイズキャンセリング機能などを備え、次世代のPC体験をお楽しみいただけます。
発売日:12/15(金)
インテル® Core™ Ultraプロセッサー搭載AI PC体験コーナーのご案内
日本初となる「インテル® Core™ Ultraプロセッサー搭載のAI PC体験コーナー」を発売開始初日の12/15から「ビックカメラ有楽町店」、「ソフマップAKIBA パソコン・デジタル館」にて 展開、最新のAI PC をご体験いただけます。
また「ビックカメラ有楽町店」では発売記念ベントも12/18~21日に実施。イベント期間中は限定数でノベルティーも用意しています。仕事にも遊びにも使える最新のAI PCの進化を体験しに「ビックカメラ有楽町店」&「ソフマップAKIBA パソコン・デジタル館」のパソコンコーナーへ!
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