戦略的なサプライチェーンの構築、継続的なコスト削減、安定供給の実現、エシカルな調達など、購買・調達部門が担う役割や責任は時代の変化とともにより大きなものとなりつつある。そして高まる不確実性や競争環境のなかでは、購買・調達プロセスの進化や革新の必要性が増している。
11月22日に開催されたオンラインセミナー「持続的成長を支える購買・調達改革 ~変化の時代におけるデジタル戦略~」で、日本アイ・ビー・エムと日本オラクルは、購買・調達改革の重要性とその実現方法、クラウドによる調達改革ソリューションなどについて紹介した。
IBMが考える間接材購買改革に向けた3つの実践ステップ
IBMは事業会社とコンサルティング会社両方の性質を持っており、自社におけるグローバルでの購買改革の経験をもとにしたコンサルティングサービスを提供している。日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 購買変革コンサルティングリーダー 山崎周一氏は、過去に手がけた事例を踏まえ、日本企業が直面している課題について次のように話す。
「直接材購買は力を入れて管理している一方、間接材購買については管理が限定的で、改善の余地が残されています。間接材支出は製造業であれば売上の15%ほどを占めるとされる一方で、その管理は各現場に任されており、ガバナンスや競争環境実現において懸念があるケースは多いです。
一部の汎用品については総務部門主導でカタログサプライヤを選定している場合も多いですが、利用は要求部門の任意であることが多く、ボリューム集約の効果は限定的です。結果として、購買プロセスが拠点ごとにブラックボックス化し、購買専門でない担当者による場当たり的な価格査定、価格交渉機会の損失など、多くの問題につながっています」(山崎氏)
これらの課題に対して、IBMコンサルティングでは3つのステップによる段階的な間接材購買改革の推進を推奨している。
ステップ1:購買基盤のデジタル変革
間接材購買は関係部門が多く、改革を進めるにあたり多くの関係者の理解や強力を得ることが不可欠となる。購買部門としては、本来コスト削減を効果としてアピールしたいところだが、改革着手前には各部門が何をどれだけ購入しているか把握できていない場合が多く、コスト削減効果が見えづらいために現場を納得させることは難しい。そこで、まずは購買システムを導入して支出を可視化し、現場でブラックボックス化している運用プロセスの統一化や生産性向上を主目的に購買基盤を整備することが重要となる。
ステップ2:購買構造改革
各部門の購買品や支出規模、取引先が可視化されると、それらをもとに全社横断の購買戦略を立案し、実行する組織体制に変革していくことができる。そして、集中購買組織が立ち上がれば、バイヤースキルが蓄積されていき、適切な価格の実現、取引先に対する緊張感をつくりだすことが可能となる。一方で、購買基盤で業務が標準化されているため、BPOベンダーの活用など、購買部門としてより効率的な組織運用を実現できる。
ステップ3:業務高度化・効率化
オペレーションセンターに業務を集約できると、AI、RPA、DAPP(Digital Adoption Platform)などさまざまなツールの効果が高まり、さらなる業務の効率化・自動化を推進できる。
「トップダウンの会社であればステップ1からステップ3を同時に進めることも可能です。ステップの進み方、改革の実現までの時間軸を考慮して改革ロードマップを策定することが重要となります」(山崎氏)
間接材購買システム構築プロジェクトを成功に導くための勘所
こうした間接材購買改革の基盤となりえるのが、調達関連領域のSaaS型アプリケーション「Oracle Fusion Cloud Procurement」を利用した購買統合プラットフォームである。
同プラットフォームでは、一般従業員向けのポータル機能「セルフサービス購買」、調達部門のバイヤー向け機能「見積管理」「発注管理」、サプライヤーへの見積依頼や発注などを行える「サプライヤー・ポータル」、システム上に蓄積されたデータを分析する「購買分析」といったOracle Fusion Cloud Procurementの機能を利用している。これらの機能により、間接材に対する購買依頼の作成、見積、発注、検収までの一連の調達業務、データ分析までを行える。
日本アイ・ビー・エム IBMコンサルティング事業本部 オラクルコンサルティング リーダー 中村健一氏は、Oracle Fusion Cloud Procurementを活用した間接材購買システム構築プロジェクトを成功に導くための勘所を3つ紹介した。
1つめは、「業務とシステムが一体となった推進」である。中村氏は「オンプレミスのように外部に機能を作り込みづらいSaaSは、Fit to Standardで業務をいかにシステムに合わせられるかが肝。特に初期段階でプロジェクトトップがFit to Standardでの推進にコミットし、プロジェクト/業務メンバーに浸透させることが重要」と説明する。
2つめは、「Fit to Standardへ向けた柔軟な業務改革」だ。現行踏襲にこだわりすぎず、何のためにその業務が必要か、目的達成のために別の方法はないかという柔軟な考えで業務プロセスを検討する必要がある。「Oracle SaaSは四半期ごとに強化された機能が自動でアップデートされる仕組みです。標準機能を使いこなしてこそ、そのメリットが生かされます」(中村氏)
3つめは「オンプレミスとの違いを理解する」こと。メンテナンスフリーはSaaS利用の大きなメリットとなるが、それゆえに余裕を持った計画を立てていく必要がある。中村氏は「早い段階で環境計画を立案してOracleとともに事前に調整し、システム立ち上げまでをスムーズに行うことがキーポイントです」と助言した。
部分的・段階的な導入がしやすい統合型調達・支出管理ソリューション
日本オラクル クラウド・アプリケーション統括 ソリューション戦略統括 ソリューション・エンジニアリング本部 SCM・PLMソリューション部 プリンシパルセールスコンサルタント 蓮見恵美氏は、Oracleのクラウドアプリケーション「Oracle Fusion Applications (Oracle SaaS)」製品群の特徴について、次の3点を挙げる。
- 自社提供のセキュリティや可用性に優れるクラウド基盤であるOCI(Oracle Cloud Infrastructure)上で提供されていること
- 企業活動に必要な業務領域を網羅的にカバーする製品機能を提供しており、シングル・データベース、シングル・データモデルでインテグレーションされていること
- 部分的な導入、段階的な導入がしやすいアーキテクチャであること
「Oracle SaaSは、オンプレミスシステムをクラウドに載せただけのプライベートクラウドとはまったく異なり、四半期ごとの自動アップデートにより常に最新の環境・機能が提供されるため、アップグレードにかかる莫大なコストを回避できます。さらに、AIをはじめ技術革新の価値を常に享受できるのです」(蓮見氏)
特に、近年OracleはAIに注力しており、インフラ・PaaS・SaaSの三層全領域に対して各種AI機能が提供されている。自動化、画像認識、トレンド・ニーズ予測、アクションの最適化に加え、今後は生成AIの領域での実装が加速していく予定だ。
Oracle SaaSの統合型調達・支出管理ソリューションであるOracle Fusion Cloud Procurementは、Procure to Payのプロセスから、Analysisのプロセス、Negotiate to Contractのプロセスまで、調達に必要なすべてのプロセスに関する機能が搭載されている。
Oracle Fusion Cloud Procurementの製品構成図は下図のとおり。これらの製品を自社の課題や検討範囲にあわせて選択し、導入することができる。
初回導入範囲をグローバルテンプレートとして定義しそれを多拠点に展開するケース、製品機能ごとに展開するケースの双方に対応しており、たとえば、まず間接材購買のみを対象として、後から直接材購買に展開していくような機能拡張を行うことも可能。また、財務会計、サプライチェーンなど他の業務領域に拡張していくこともできる。
またOracleでは、グローバルでのノウハウをプロセス改革の雛形として用意したモダンベストプラクティス(MBP)という事前定義済みのプロセスフローを提供している。MBPのメリットについて蓮見氏は次のように説明する。
「MBPにより、Fit to Standardなアプローチを適用し、ビジネス変化や最新テクノロジーへの適用に対応することができます。また、直接材、間接材など商材を問わず、カタログ購買や契約購買、都度見積、生産管理機能との連携、出来高払を行うようなサービス購買など、多岐にわたる購買方法にも対応しています」(蓮見氏)
調達・購買改革を進めていくための選択肢の1つとして、Oracle Fusion Cloud Procurementを検討してみてはいかがだろうか。
[PR]提供:日本オラクル