Google Cloud に特化したクラウドインテグレーション事業を展開する G-gen。2021年9月に3名のメンバーでスタートした同社だが、現在、全従業員数は50名、うちエンジニアが20名強の組織にまで成長している。Google Cloud のすべての認定資格を持つエンジニアが8名在籍するなど、技術力の高さも同社の強みの1つだ。11月15日から16日にかけて東京ビッグサイトで開催された技術カンファレンス「Google Cloud Next Tokyo '23」で、株式会社G-gen 執行役員 CTO / クラウドソリューション部 部長 杉村勇馬氏は、自社の経験を踏まえながら、エンジニア組織の立ち上げにおける6つのキーポイントについて紹介した。
エンジニア採用では実績よりもカルチャーマッチを重視
立ち上げ当初、G-gen のエンジニアは杉村氏1名のみであった。現在に至るまでの約2年間、組織規模もビジネスも急速なスピードで拡大してきているが、どのような観点でエンジニアの採用活動に取り組んできたのだろうか。
杉村氏によると、先端技術を扱う一方、スタートアップ企業で手厚い教育制度がないため、スキルや実績よりも、スタートアップマインドがあるかどうか、カルチャーマッチを最も重視しているという。実際に23名のエンジニアのうち、採用時点でクラウドを経験していた人は14名、Google Cloud 経験者は5名ほどだが、Google Cloud の全11資格をコンプリートした社員が8名、Pro 資格保有者が21名という現状の数字を見ると、入社後に大きく成長したメンバーの多さがわかる。Google Cloud Japan の Partner Top Engineer は9名、グローバルでの表彰制度である Champion Innovator は杉村氏含め2名と、トップ層のエンジニアも在籍している。
以下では、こうしたエンジニア組織を立ち上げる際に杉村氏が意識していたという6つのポイントについて見ていきたい。
エンジニアチーム立ち上げのための6つのキーポイント
1. 行動指針
1つめは「わかりやすい行動指針を示すこと」。G-gen では全社で12の行動指針を設けているが、技術部門は、このなかから特に「オーナーシップ」「スピード」「成果」「顧客視点」に注目している。杉村氏は「なるべくわかりやすいものにすることで、営業やプロジェクトで迷った際、行動指針に立ち戻って判断できるようになる」とその狙いを説明する。
2. 業務
2つめは「すべての業務を成長の場にする」。G-gen のエンジニア1人における業務領域は、クラウドインテグレーション、技術サポート窓口、技術マーケティングと、あえて部署横断で広範囲に業務を担う形となっており、メンバーはこれらをすべて成長の場として捉えている。
本業のクラウドインテグレーションはもちろん、技術サポート窓口は、技術的な質問に対して回答をしていくなかで、Google Cloud の知識を身につけられるほか、顧客対応やマルチタスクをこなすスキルも得られる。技術マーケティングでは、特にテックブログ執筆やウェビナーへの登壇に力を入れており、これらは設計ドキュメントをわかりやすく書くスキルにもつながる。
「プロジェクトの1メンバーとして単一の業務をひたすらこなしていくのと、多数の視点を持って業務に取り組んでいくのとでは、一定期間後に雲泥の差が現れます」(杉村氏)
3. 学習とアウトプット
杉村氏が最も重要とするのは、3つめの「学習を奨励する文化を作る」ことだ。エンジニアの教育をしたいと考えても「それ、お金になるの?」と経営陣から難色を示されるジレンマを抱えている組織もあるが、杉村氏によると「数字で換算するのは難しいが、ロジックは成り立つ」という。
「エンジニアがスキルアップすれば、アウトプットを高品質に速く作成できるようになります。そこから派生する形で、たとえば、設計書・開発・構築が速くなると、顧客満足度が向上しクラウド利用が拡大、売上・利益につながるといった流れが生まれます」(杉村氏)
G-gen では、資格試験の受験代金補助制度があるほか、勉強会の開催や知識のシェアが奨励されている。たとえば、親会社のサーバーワークスグループの Slack のチャンネルに技術的な質問を投稿すると5~10分で誰かが回答する環境ができており、エンジニアが安心してチャレンジできる仕組みが整えられている。杉村氏は「技術マネージャーや部門長が率先してカルチャーを醸成していくことが重要」と説明する。
4. 認定資格に対する捉え方
4つめは、「資格を正義にしない」。資格を取得したから偉いというわけではなく、業務ができる人にならなければ意味がない。杉村氏は「知識レベルが0から100まであるとすると、資格取得はレベル50程度。レベル100でなれけば、お客さまと対話しながらインフラ要件を定義したり、アーキテクチャを構築したりできない」とする。
「資格は入り口。そこからさらに上を目指してほしいと考えています。知識だけではなく、技術で誰かの生活や世界を変えられて初めて成果だと思ってほしいです」(杉村氏)
5. 顧客
5つめは「会社のなかに閉じない」。G-gen では、顧客と積極的に技術交流することが奨励されている。これは、技術的な知見が得られるだけでなく、新しいビジネスにつながる可能性があるためだ。実際にみずほリサーチ&テクノロジーズ株式会社とコラボレーションして G-gen Tech Blog の記事をリリースしたり、ギリア株式会社とともに勉強会を開催したりといった取り組みをこれまで実践してきている。また、顧客向けの「Google Cloud のアップデートを確認する会」を週次でWeb開催しているのも、知識を社外に共有していこうという意識の現れである。
6. コミュニティ
6つめは「コミュニティに貢献する」。G-gen のエンジニアは、業務時間中のコミュニティ活動が許容されており、Jagu’e’r (Japan Google Cloud Usergroup for Enterprise)のエバンジェリストや、分科会の運営メンバーが揃っている。
杉村氏は、コミュニティ活動のメリットについて「人の輪が広がることが一番。技術的な知見も広がる」と話す。実際にクラウドスキルと認定資格の獲得を目指すコミュニティイベント「Google Cloud Study Jam by Jagu’e’r」(2022)ではトップランカーを多数輩出しており、エンジニア教育にも大いに役立っていることがわかる。
トップダウン・ボトムアップ双方の取り組みが必要
以上の6つのポイントを実現するためには、トップダウン、そしてボトムアップ両方の取り組みが必要となる。杉村氏は「トップは組織文化を資料やキックオフなどで明確に示すことが重要。一方、メンバーはフォロワーシップを発揮して現場で実践していくことが求められる。今回の講演をヒントにして、よりよい組織づくりを実現していただければ」とメッセージを送った。
Google Cloud Next Tokyo '23 ではブースも出展
Google Cloud Next Tokyo '23 で、G-gen はブースも出展していた。同社が運営する G-gen Tech Blog の内容を活用したパネルをもとに来場者の疑問に答えるなど、活発な議論を生み出すための工夫がなされていた。
また、同ブースでは G-gen の社員やソリューション導入企業による複数のセッションが行われていた。11月15日に行われた Google Cloud 認定資格の全11種をコンプリートした全冠エンジニアたちによるパネルディスカッションでは、Google Cloud 認定資格のおすすめ勉強方法や資格取得後の業務の変化について語られた。
おすすめの勉強方法について、三木宏昭氏は「G-gen Tech Blog を読んでいただきたい」と、ブログの内容をメインに勉強に取り組んだことを明かした。堂原竜希氏は「AWS 経験者は、Google Cloud との比較表を見ながら知識を整理していくとわかりやすい」とアドバイスした。
資格取得後の業務の変化について、武井祐介氏は「業務自体は正直あまり変わらない」としながらも「責任感が強まるなど意識が変化した」とマインドセットに良い影響があったことを紹介した。藤岡里美氏は「業務で新しいサービスを触る際に、取っ掛かりができ、つかみやすくなった」とコメントしていた。
展示ブースは、学習とアウトプットを重んじる文化をはじめ、G-gen のエンジニア組織のカルチャーのエッセンスが垣間見える空間となっていた。同社エンジニアたちが執筆する G-gen Tech Blog もぜひご覧いただきたい。
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