日本のIoT市場が急速に成長する中、株式会社インターネットイニシアティブ(IIJ)とキャセイ・トライテック株式会社は、"SoftSIM"や"eSIM"といった最新の通信技術によって日常生活から医療まで幅広い分野でのニーズにIoTで応えています。
本稿では、2社の対談を通じて協業の背景と未来への展望を紐解きます。
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IoTデバイスの新たな通信のカタチ
──まずは、自社のご紹介をそれぞれお願いします。
小野氏
:インターネットイニシアティブ(IIJ)は国内初のインターネット接続事業者として、30年ほど前に創業した会社です。現在はIoT、クラウド、セキュリティなど様々な事業を展開するに至りました。
岡野氏
:私たちキャセイ・トライテックも、創業はIIJさんと同時期でした。20年以上前から移動体通信の事業に関わり、2010年くらいから通信モジュールやルータ等の開発・販売に取り組んでおります。世界上位のシェアを誇るセルラーモジュールメーカー"SIMCom Wireless Solutions, Limited."の日本総代理店でもあります。
──現在、IIJとキャセイ・トライテックは強固なパートナーシップのもと、IoTビジネスを展開されていると伺いましたが、もともとのきっかけは何だったのでしょうか?
小野氏
:IIJが2008年にMVNOサービスを始めた時、キャセイ・トライテックさんから端末を仕入れて販売したことがきっかけの一つでした。その後、2018年に我々が「フルMVNO」のサービスを開始し、SIMの独自開発・提供ができるようになったことで、協業が深まっていきました。
岡野氏
:2社でネットワークと機器をお客様に提案をしていますので今ではまるで一つの会社のように見えているかもしれません。最近は「SIMカード不要の通信」によるサービス提供を中心に展開しております。
──SIMカードはセルラー通信の認証のために必ず用意すべきものだと思っていました。「SIMカード不要の通信」とはどういうことなのでしょうか?
小野氏
:順を追ってご説明しますね。まず、IoTビジネスに必要なものは3つあります。すなわち、どんなビジネスを提供するかという「アプリケーション」。そして、実際に使う端末としての「モノ」。それから「ネットワーク」です。このうちモノをキャセイ・トライテックさんが、ネットワークをIIJが担当しております。
岡野氏
:「モノ」担当として見ると、実は「SIMカード」という形式は、IoTデバイスには使いづらい事が多いのです。振動や温度変化などの影響で、SIMを認識しなくなってしまうことがあるからです。
小野氏
:我々もお客様から同様のご相談をよくいただいておりました。どうすればお客様の悩みを解消できるのか。IoTデバイスにふさわしいSIMの在り方をキャセイ・トライテックさんに相談して、生まれたのが「SIMカード不要の通信」を可能にする"SoftSIM"なのです。
岡野氏
:SoftSIMは通信用のプロファイルをモジュール内に直接書き込んで提供するという、言わば「組み込み型」のSIMです。これならばコストや故障・通信障害のリスクをぐっと削減することができます。
──IoTビジネスにおけるニーズを踏まえて新たに開発したのがSoftSIMなのですね。
小野氏
:その通りです。さらに2022年には、IoTデバイスにあとからSIMをダウンロードする「eSIM」の提供も始めています。IoTデバイスをWi-Fiなどに繋げば、リモートで通信プロファイルを設定することができます。
──あとから設定するのはひと手間増えるように感じますが、どんなメリットがあるのでしょうか?
小野氏
:一番のメリットは、組み込み型SIMの利便性を享受しつつ、その場所に最適な通信事業者をエンドユーザーが選べることです。
岡野氏
:たとえば旅行先で「自分はスマホが繋がらないけど友達は繋がる」といった経験はないでしょうか? キャリアによって電波のカバーレッジは異なります。特にIoT機器の場合、人があまり立ち入らない河川やダムに設置されるケースなどもあるので、その場所で最も通信しやすいキャリア・プランを選べるというのは大きな利点なのです。
小野氏
:過酷な場所にデバイスが置かれがち、というのがIoTあるあるですよね。屋外に設置されれば当然、風で揺れたり、日差しに晒されたり、雪が積もったりします。そういった場所ではSIMカードではなくSoftSIMやeSIMを利用した方が、通信を確実にできるというわけです。
岡野氏
:IIJさんが最適な「ネットワーク」を、我々キャセイ・トライテックが最適な「モノ」を、それぞれ支援することによって、お客様のビジネスを支えることができていると感じています。また、IIJさんのサポートも充実していて、両社での共同提案を行うことも多いので自然と関係が密になっていると思います。
日常に寄り添うためのIoTを
──IoTビジネスは場所やシチュエーションなど多種多様なケースがあることが分かりました。具体的には、どのような場面において支援されているのでしょうか?
小野氏
:たとえば「子どもの見守り」があります。小さなお子さんにスマホを持たせることに躊躇する親御さんは多くいらっしゃいます。かといってどこにいるか分からないと心配です。そんな時に使われるのが子どもの位置情報を把握する見守り端末なのですが、これにSoftSIMが使われています。
岡野氏
:SIMカードを使わないメリットは見守りにも活きています。カードを挿すスロットが不要で機器を極少化できるため、小さな子でも持ち運びやすいサイズにしやすくなります。
小野氏
:それから医療分野でもIoTは活況です。日本では医療費を抑えるために在宅医療が推進されているのですが、家庭用の酸素吸入機にも利用状況をモニタリングするために我々のSIMが使われています。
岡野氏
:家庭で通信するならWi-Fiに繋げばいいのではないかと思われるかもしれませんが、医療のシーンでは通信の安定性が強く求められるのです。モバイル回線ならスイッチを入れさえすれば、あとは自動的・安定的に繋がりますから。
小野氏
:自動販売機やタクシーなど、街で見かける身近なものもIoT化が進んでいます。あらゆる産業のお悩みを支援できることが我々の楽しみになっています。
──多様な産業のニーズに応えることには大変さもあると思いますが、どのような点に苦労されていますか?
岡野氏
:小さくて、軽くて、省電力で、丈夫で……と、制約事項がたくさんある中でも「通信が止まらない」ようにするのはやはり大変ですね。
小野氏
:エンドユーザーの方は「ネットワークは繋がって当然」と思われているでしょうし、その安心感に対価をいただいているわけですが、裏ではいろいろな苦労があります。昨今はサイバー攻撃がさらに深刻化しているので、セキュリティについても慎重に設計をしています。
グローバル市場への進出も2社でサポートしていく
──先ほども少し話がありましたが、IIJさんとキャセイ・トライテックさんで共同提案をすることは多いのでしょうか?
岡野氏
:そうですね。通信モジュールや関連機器を提案するのは我々の仕事なのですが、IIJさんの営業の方は回線・ネットワークの知識だけでなく通信モジュールや関連機器を提案するスキルをお持ちです。SIMCom関連製品の商談をIIJさんのみでクロージングいただくこともありますし、我々がサポートを行い成約に至る場合もあります。このような業務も通して両社の関係が深まっていると思います。
小野氏
:確かにお互いに協力し合える関係性が築けていますよね。逆にもっとこうしてほしいというご要望はありますか?
岡野氏
:IIJの皆様にご協力いただいておりますが、中にはハードウェアの提案・説明に不慣れな方もいらっしゃると思います。案件が埋もれてしまうのは非常に勿体ないので、我々に繋いていただければ喜んでサポートさせていただきます。また、IIJの皆様に対してSIMCom製品の勉強会を行うことも検討していきたいと思います。
──最後に、今後の展望についてお聞かせください。
岡野氏
:ここ最近、「国内で成功したIoTサービスを海外にも持っていきたい」というご要望が増えてきています。そこで、IIJさんにSoftSIMのグローバル対応ができないかご相談しました。SIMカード不要のまま海外キャリアにも対応できるようになれば、ハードウェアへの投資を最小限にしながら海外展開が可能になりますので。
小野氏
:現在調整中ではありますが、近いうちにそのような支援も始めることができそうです。
岡野氏
:IIJさんは大きな事業を展開されていますが、同じ目線で価値観を共有した上で必要なことを言い合えるのでパートナーとして非常に心強いと思っています。
小野氏
:これからも一緒に、日本社会のお悩みに応えて参りましょう。
フルMVNOとして、それぞれのお客様に最適なサポートを
IIJはフルMVNOとして通常SIMでも様々なプランを用意しているほか、eSIMやSoftSIMなどといったようにSIM形状も幅広く取り揃えているため、お客様の目的に合わせた提案が可能です。また、NTTドコモとKDDIのマルチキャリアに対応。利用するエリアや環境に応じて最適なキャリアを選択できます。導入前後のフォロー体制も充実しているため、IoTのノウハウがない場合でも安心です。 IoTビジネスでお悩みの方は、ぜひ一度IIJに相談してみてはいかがでしょうか?
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